『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 外伝 tea party's story』

外出中の暇を埋めようと入った本屋でつい購入(苦笑。

空ノ鐘の響く惑星で外伝-tea party’s story (電撃文庫 わ 4-24)
渡瀬 草一郎
4840239142

[Amazon]

さらに読了。

異世界戦乱SFファンタジーシリーズ完結後の番外編。
本編の十年後? のアルセイフの平和な日常を外枠に、脇役キャラクターを中心に据えた番外編をまとめた短編集です。

馴染みの世界の馴染みのキャラのその後を読むのは大変楽しく、駆けまわる子供たちの気配を感じるのも嬉しいことでした。
が、登場するひとみんならぶらぶカップルばかりであてられました。
まるで『ちゅらさん』だあ~(苦笑。

ひとりだけ壮絶な悲恋経験者がおいででしたが、そのほかはそうじて恋愛成就者ばかり。
みんなしあわせで大団円で、ああ、このはなしってほんとうに善のベクトルにみちた話なんだとしみじみ感服致しました。

そうそう、ディアメルとライナスティのその後はきちんと描かれてました……けど、こいつらもかーと溜め息ついちゃいましたけどね(苦笑。

さいごにフェリオの性格に関する考察というか、感慨がしめされたのが私にとっては収穫、かな。
さりげなく、ほんとうにさりげなくパンプキンの事件後のようすもわかったし。

とにかく、個人的に勝手に思い入れていたシアちゃんが元気に育ってくれたのが一番嬉しかった。
たのしい番外編で読めてよかったです。

『王への手紙 下』

王への手紙 (下) (岩波少年文庫 575)
トンケ・ドラフト 西村 由美
4001145758

[Amazon]

はい、読了。

青少年向け中世ヨーロッパ風異世界冒険物語。
上巻にひきつづき着実に地に足のついた、少年の冒険と成長をすなおにのびやかに描いたものがたりとなっていました。
たいへん健康的な児童書ですね。
旅の半ばで道連れとなった少年との友情には共感できましたし、橋守の領主の深みのあるお人柄にはうっとりし、裏切り者の市長を罵倒するじいさんに萌え(笑。
あと、エトヴィネム騎士の愛馬だった黒馬ちゃんが、黒馬ちゃんが……(以下うわごとなので省略)。

おなじ少年文庫からでているサトクリフの悲壮感がないため、どんな困難な状況に陥ってもひどいことにはならないだろうと予想でき、それでいてご都合主義に流れない展開で安定感がある。おかげで安心して読み進むことができました。
とっても、楽しかったです。

続編もぜひ読みたいと思います。
白い盾の少年騎士〈上〉 (岩波少年文庫)
トンケ ドラフト Tonke Dragt 西村 由美
4001145774

『新 アラビアンナイト』

新アラビアンナイト (集英社文庫 し 22-14)
清水 義範
408746203X

[Amazon]

読了。
タイトルというより装画に惹かれて購入した本。
買ってから、そういえば清水義範を読むのは久しぶりだなーと思い出しました。
しかしどんな話を書く人だったかいまいち思い出せなくて、いつものことですがどうしようもなく苦笑いがうかんできた。
たしか、パスティーシュの名手として一時話題になったのですよね。
パスティーシュという言葉の意味がよくわからなかったので、理解できないままに読んでいたのかもしれない……。

閑話休題。
この本は、白泉社の雑誌『MOE』に連載されていた短篇に、ケータイ雑誌『the どくしょ』に連載された短篇を合わせたもの。
たぶん、まったくパスティーシュではありません。
ごくごく素直に、イスラム圏の事物とか言い伝えとか歴史とかを題材にしてきれいにまとめたおとぎ話風の短編集です。
著者は四十歳にして飛行機旅行に開眼し、それ以来イスラム圏をいろいろと旅して回ったそうです。
どうりで、かなりいろんな場所が舞台になっているなーと思ったですよ。
ちょうど読んでいたシリーズにあちこちオーバーラップして、かなり楽しんで読めました。
題材も広範囲にわたっていて偏りがないし、千夜一夜に期待されるふしぎなできごともきちんとおさえられている。
事実と反して流布しているイスラームに関するイメージをただしてくれるような記述が随所に見うけられて、読んでいてきもちのよいお話ばかりでした。
「アラビアンナイト」と銘打ってあるので阿刀田高の本みたいな再話本かとおもったけど、きちんとしたオリジナルです。

ヨーロッパ人による翻訳物よりも原典の雰囲気に似ているんじゃないかなとおもいました。
原典の日本人には受け入れにくいけどアラブ圏の人には物語的なお約束なのだろう、ある種独特の過剰さ(とくに感情的な。すぐに泣きわめくし、失神するし、服を破いたり、精神に異常を来して放浪したりするのであっけにとられてしまう;)がないので、むしろ初心者にはこちらのほうがおすすめしやすいかもしれない。

短篇といいますがひとつひとつがほんとうにみじかくて、でもきちんと独立していて、さらに語り口がさらりとしていてそのさらりがかなり男性的なさらりなので、大変明解でわかりやすく読みやすかったです。
すこしの気分転換に読むのに最適な本かと思いました。

20070927の購入

中国古代の文化 (講談社学術文庫 441)
白川 静
4061584413

エマ 9巻 (BEAM COMIX)
森 薫
4757737262

介子推 (講談社文庫)
宮城谷 昌光
4062637960

女王の矢 新訳 (C・NovelsFantasia ら 1-1 ヴァルデマールの使者)
マーセデス・ラッキー 澤田 澄江
4125009996


以上、購入順。
本屋にはいると手ぶらで出てこられない自分が恨めしい……。

『王への手紙 上』

王への手紙 (上) (岩波少年文庫 574)
トンケ・ドラフト 西村 由美
400114574X

[Amazon]

読了。
本屋で見かけてから読みたくてしかたがなかったシリーズ。
オランダの作家が1962年に書いたヨーロッパ中世風異世界冒険ものの上巻です。

内容は、騎士叙任式の前夜、外からの助けを求める声に応えて最後の試練の最中にぬけだしてしまった少年が、隣国の陰謀に巻き込まれ、だれにも知られずに隣国の王への手紙を運ばなくてはならなくなる、というお話です。

状況のまったくわからないなかで、騎士叙任式を抜け出してしまった罪悪感とたたかいながら亡くなる騎士に託された使命を果たすために前進する騎士見習いの少年ティウリの悪戦苦闘が地に足のついたおちついた文章で語られます。

ファンタジーらしい魔法の気配はいまのところ見あたりませんが、異世界ものとしては世界はきちんと構築されているし、地図もあるし、ひとびとの生活のにおいがただよう描写が素敵な、わたしの好きな部類の作品です。
挿絵も作者さんが描いているとのことで、状況がじつに映像的に浮かんでくるおはなし。

うん、私の目に狂いはなかった(笑。

そういえば、これってオランダの児童文学なんですね。
オランダの小説ってあんまり読む機会がないのですが、固有名詞がすこし変わっていて面白いなーと思いました。
騎士に呼びかける時、「○○騎士」というのは英語ならサー・○○になるのかなーとか。

そういえば、騎士がたくさん出てきますが、そのひとたちはそれぞれに個人のいさおしをうたわれるような立派なひとびとのようですが、土のにおいのする描写のせいか浮世離れした雰囲気は皆無。
善人ばかりでない、かといって完全な悪人ばかりでもない、いまのところ非常に庶民的なふんいきで物語は進んでおります。

さあ、下巻を読みましょう。

『イスラム世界の人びと 4 海上民』

イスラム世界の人びと (4)
家島 彦一 渡辺 金一
4492812644

[Amazon]


ようやく読了。

このシリーズの中でいちばん内容が想像ができなかったのがこの巻でした。
そもそも「海上民」という言葉から私の頭がイメージできるものが貧困なんですよね。
でなんとなーく、守り人シリーズのラッシャローの人たちなんかを思い浮かべていたのですが、あたりまえですがそれだけではなかった。
全体を見渡してみると海上民というくくりのなかで、海上生活者と漁業生活者と航海者と商人のことがばらばらに語られていたような。

ラッシャローのような人びともいないではなくて、東南アジアの島々の海上民の話にかぎられていたような気がします。
陸上に土地を持たず、筏のような舟のような建築物の上で生活する人たちですね。

興味深かったのはインド洋貿易がものすごく昔から発達していた、ということ。
あの数年前のインド洋大津波の時に被害が大変に広範囲にわたっていたことに驚きましたが、ようするにそのあたりはインド洋を航海する人にとっては日常的につながりのある場所だったわけです。
地理的に言えば東アフリカからアラビア半島、イランにインドに東南アジア。

海上民の研究はまだそれほど進んでいなくて、しかもとりとめなくあちこちのてんでばらばらな例が報告されているので、読んでいる最中はなんだか統一感のない巻だなーとおもいましたが、最後の座談会でいっきにすべてが繋がったような気がします。

そして座談会はトリビア知識の宝庫なんですよね。
中国はこの分野では後進で参加し始めたのは唐の頃からだそうで、そして地中海貿易というものはインド洋貿易がなければ成り立たないようなものだとか。
エーゲ海なんかは栄養が少ないので魚もあんまり捕れないのだとか。
地中海でガレー船が発達したのは波が少ないからだけど、積載量がすくないので香料貿易くらいにしか引き合わないのだとか。
ユダヤ人がもっていたのはネットワークと情報で、他民族の作ったインフラを利用して儲けてたとか。
ユダヤ人もムスリムも巡礼のあいだに商売をするのがごくごく普通のやりかたであるとか。
イスラム世界でも辺境の人びとのほうが巡礼熱が高いらしいとか。
へー、ほー、ふーんの連続です。

うーん、おもしろかったー。
今回はひとつの新たな世界を発見したような面白さでした。

『風の王国 朱玉翠華伝』

小説+まんが 風の王国 朱玉翠華伝 (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
408600769X

[Amazon]


読了。
吐蕃の王に嫁いだ唐の公主の歴史ロマンスシリーズ、えーと……七冊目ですか。

この巻は雑誌掲載の短篇と挿絵の増田メグミさんのまんがとをあわせた混合版。
まんがはすこし二次創作っぽい雰囲気がありますが、短篇はそれぞれに趣ある仕上がりでなかなか読み応えがありました。本編よりも切れ味がよいかも。

翠蘭の輿入れ前のエピソードと、たぶん本編前話の『月神の爪』あたりのエピソードに分けられるような気がしますが、本編がどうなっているかを思い出せないので確かなこととは申せません。
あー、やだやだ。この記憶力のなさ。

唐での翠蘭の話は彼女が不幸な生い立ちにありながらいかに愛されて育ったか、がよくわかりました。
朱瓔との出会い編もおもしろかったですが、私は宮中ミステリめいた「花の名前」が好きです。
才気煥発な女人、武才人がたいへんに印象的でした。
この方ってもしかして則天武后なのかしら……どうやらそうみたいですな。
これだから『世界史用語集』は手放せません……。

けっこう面白かったので、つづきはまた書架にあったら借りてきたいと思います。

やっと図書館に

行けました。
前日の涼しさにいくらなんでももう秋だろ、と出かけたのですが、なんだかとっても暑かったです。

ずいぶんご無沙汰していたので借りたいものが山。とりあえず手近なところから拾い歩いたら、児童書とティーンズですぐに制限冊数を超えてしまいました。

白川静の『字統』、中井久夫のエッセイ、などはパラ見で確認のみ。

雑誌がほとんど出払っていて最新刊は『本の雑誌』しかなかったのが残念。

あとは予約して帰宅しました。

その後疲れて爆睡したのは内緒です(汗。

『エンドロールまであと、』

エンドロールまであと、 (小学館ルルル文庫 か 2-1)
壁井 ユカコ
409452021X

[Amazon]

読了。

旧家に生まれた一卵性の双子は厳しい祖母の監視下で共依存して育った。ところが、高校生になった双子の姉の佐々右布子は超のつく虚弱体質のままなのに、弟の佐々左馬之助はふつーの健康な男子になった。ふたりは自分たち以外の友達を作るという約束をするが、保健室の備品状態で一歩も動けない右布子をよそに左馬之助はさっさと友人を作ってしまう。左馬之助はどんどん変わってしまうと疎外感を感じる右布子。だが左馬之助の事情には気づきもしない。そのうち、参加している映画研究会で映画を作ることになり、右布子は主演女優をすることになるが……。

というようなお話。
『キーリ』の作者さんの現代青春ものです。
描き方はやっぱり『鳥籠荘』の作者さんらしく、ちと奇天烈なところがありまして、そこがまた好きなんですが、まったくもっていまの現代の、しかもまっとうな青春ものです。
一昔、いやもしかしたら二昔くらい前の集英社文庫コバルトみたいな。
(むかしはコバルト文庫じゃなかったんですよ……)

作者さんのぜんぜん幻想やSF風味がないお話ははじめてでしたが、これは悪くなかったです。
つーか、たぶん高校生の時に読んでたらものすごくカンドーしていたと思います。
禁断の愛とかは置いておいてきますが(笑。
ああ、青春時代に読みたかった……そしたら純粋に感情移入してたかも。
でもものすごくイタかったかも……。
いまでも部分的にイタかったりしたけど。実は私もペットボトルの蓋が開けられないんです(汗。

青春もので恋愛ものなので、さすがにこのトシになるとこっぱずかしい部分が多々あって、完全にのめり込んだりはできませんでしたが、人生のある一時期、視界がせまくて矛盾だらけで、縛られてばかりいると思っていて、それでもその一瞬がのちのちきらきらと光って見えるのだろうなー、というような青春時代を描いたお話だったと思います。
そのことを自覚している西丸くんがいちばんかわいそうだったかも。いや、左馬之助もそうか。

いつもの硬質な描写が少ないのがちと残念でしたが、これは少女小説仕様ということなのでしょう。
生理生理と連呼しながらもこの清潔感はやはり作者の持ち味だと思う。

これがベストだという終わり方。前向きだけど私はちょっと不満。
現代物だと飛んでしまえないから不自由ですな。
これがもしSFだったら、こんなふう↓に解決できたかもしれないのにねえ、と思った。
愛に時間を (1) (ハヤカワ文庫 SF (581))
ロバート・A・ハインライン
4150105812

「北の恋の魔法」

一枝 唯さん@【yuen】作、「北の恋の魔法」読了。
異世界ファンタジー中~長編、完結。
「北の島の魔法」の番外編? 本編と出来事も時系列上もからみあっているのでまずは本編を読むが吉。

しっかし、この若様、とんでもない人物だなー。思考回路がうちの甥っ子(小一)そっくりだ。
お付きの者の苦労がしみじみとわかるぞよ(苦笑。

日本語漢字辞典

先日新聞で見つけた気になる辞典。
これまでの漢文を読むための漢和辞典ではなく、日本語を読むための漢字辞典、なんだそうで。
家族がえらく気に入って「買ってくれ」というのでe-honで頼もうとしたら発売日前でまだ注文不可でした。
Amazonでは頼めるみたいですが。

4107302156新潮日本語漢字辞典
新潮社 2007-09-25

by G-Tools


辞典といえば、何ヶ月か前にこんなのも気になっていた。

明鏡ことわざ成句使い方辞典
加藤 博康 北原 保雄
4469021105


最近慣用句の使い方で気になるシーンが多くて、自分の使い方が合っているのか自信がなくなってきた。これを見たら正式な意味と使い方がわかるのかなーと思ったので。

それから、宮城谷作品を読み始めてずっと気になっているのがこれ↓。

新訂 字統
白川 静
4582128068


素晴らしく面白そう、なのだがお値段も素晴らしいのでとうてい買えない……。
しかもこれは三部作の一冊だ。

というわけで手近なところでこれを手に入れようかなーと。
でも一度中身を見てからと思っていたら、なかなか現物にお目にかかれない……。
こんど図書館で探してみよう。

常用字解
白川 静
458212805X

20070922の購入

昨日も暑かったです。夜も暑くて眠れなかった。
9月に入ってから秋になるかなーと思うとすぐに夏に逆戻りするので、肉体的精神的ダメージでふらふらくらくらしています。きょうからはもう夏には戻らないと各局の気象予報士が
口を揃えていっているようなので、それに期待しています。……まだ信じてはいないけど。

エンドロールまであと、 (小学館ルルル文庫 か 2-1)
壁井 ユカコ
409452021X


積ん読がなくなってつい買ってしまいました。
きっぱり現実ものらしいけど、どこまでついていけるか(私が)たのしみです。

『天平の甍』

先日、『三国志』関係にあまりに無知な自分を自覚してすこし知識を補充しようと思い立ちました。

で「そういえば家族が吉川英治のを持っていたはず……」と本棚を探したのですが見つからず、当人に尋ねてみると「このあいだ古本屋が来た時に持っていった」。家族は神田の古本屋に依頼して来てもらい、売れそうな本を見繕ってもらってそれだけ売っていたのでした。

ほかに中国ものはないのかと尋ねた私にしばし沈黙の後に帰ってきた答えは「無い」。
それからつけたすように「井上靖ならあるぞ。吉川英治と大して変わらない」←そうなのか。

うーーーん。私が読みたかったのは三国志なんだけどなあ……。と思いつつ、手元の読むものがだいぶ枯渇してきたのでとりあえず読んでみました。

天平の甍 (新潮文庫)
井上 靖
4101063117

[Amazon]

前置きが長かったですが、これは遣唐使として入唐し、日本のためにえらいお坊さんを連れてくることを任務とされた若き留学僧たちの話です。
えらいお坊さんというのが、つまり唐招提寺などで有名な鑑真和上なわけですが、かれについては「えらいひとー」ということがわかるだけで、あくまでも留学僧たちの苦労と苦悩と辛苦の年月が描かれています。

それはもう、淡々と。

書きようによってはものすごいスペクタクルな手に汗握る話になりそうな題材なのに、ごくごくストイックに、真摯に、突き放して書いてあります。
これがこのひとの持ち味なんだろうなあ……。

もうちっと色を付けてくれてもと思うところもじつはあるのだけど、この長い長い苦労の物語を中心を外さずに描くにはこれくらいしないとダメなんだろうなー。

サービス精神豊かとはとても言えないけれど、読んだあとにいろいろと考えさせられる、文学ってこういうものなんだねえとしみじみ感じた作品でした。

しかし、遣唐使ってものすごく無謀な企てだったんだなあ。
なにかすべてにおいていきあたりばったりな感じで、遭難したり捕縛されたり密告されたりするのも当然かと。
それでも知識を得たい、という思いで命をかけて大陸まででかけた日本の人たち。
その切迫感が作品全体の格調高さ故にすこし薄められたような気がするのは、私の読みが浅いせいなんだろうな……。

ところで、主人公が日本人だったせいか、中国のあちこちを転々とする展開だったにもかかわらず中国ものを読んでいる気分にはほとんどなれませんでした。
時代背景的には中国は唐王朝の絶頂期で、皇帝は玄宗で楊貴妃や安禄山の活躍しているころらしいというのがなんとなくわかりましたが。

あと、難破して南の方に漂着したところでインドや中東のほうからきた舟の描写があり、ちょうど『イスラム世界の人びと』の海上民をよんでいる私は、ああこのころこんな感じなのねーと嬉しがったりしてました。

結論。
世界は繋がっている。

『輝くもの天より墜ち』

輝くもの天より墜ち (ハヤカワ文庫 SF テ 3-6)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 浅倉 久志
4150116237

[Amazon]

読了。

遠未来宇宙SF長編ミステリ風。

ティプトリーが書いた長編は二作しかないそうですが、そのうちの一作。
短編集とは雰囲気が異なり、かなり明るくわかりやすく読みやすい作風になっております。
ティプトリーの他作と比べると『たったひとつの冴えたやりかた』に近い感じでしょうか。

スーパーノヴァのもたらす光の饗宴を見物に田舎惑星にやってきた観光客にイレギュラーがいて、そのために3人しかいない地元スタッフと他の客たちがたいへんな事件にまきこまれる、しかも助けを呼ぶ手段がないという、まるで嵐の孤島のような設定で展開されるサスペンス。

表面的にはまるで無邪気な娯楽作品のようなお話ですが、そこはティプトリー、SF設定をふんだんにもちい、さらに悲劇的な歴史を絡ませて人質事件あり、復讐あり、暴力沙汰もありとハラハラドキドキうるうるさせてくれます。
異星人の設定は独創的だし、各キャラクターは個性的。それぞれにみあった活躍をしてくれて、まったく飽きさせません。そして最後はお約束通り。ある意味では勧善懲悪の話とも言えるかもしれません。

しかし、最後になだれこんだところがなんとも言いがたい場所で。
ネタバレ必至なのでくわしいことはかけませんが、これで大団円なのかもしれないけど、これでも大団円なのか、しかしこんな境地でそのときを迎えられればそれはそれでしあわせなのかもしれないと、ぼんやり呆然としてしまったのでした。
このあたりの葛藤をこえていく部分をあっさりと描いたところが、ティプトリーの達した境地なのかもしれませんねえ……。

光の描写が印象的な話でした。
しかし、うつくしいスーパーノヴァは、もしかしたら生命に満ちていたかもしれない星の死後の姿なのだなーとおもうと複雑です、な話でした。

たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ,ジュニア ティプトリー 浅倉 久志 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア
4150107394

谷山浩子の新譜

谷山浩子さんのアルバムが11月に出るそうです。

この情報を初めて知ったのはたしか日刊スポーツで「中島みゆきさんが歌詞を提供した」という記事を目にしたからなんですが、それから調べたアマゾンではまだ発売前なのに売り上げランクが480でした……すごい。

フィンランドはどこですか?フィンランドはどこですか?
谷山浩子

ヤマハミュージックコミュニケーションズ 2007-11-07
売り上げランキング : 480

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


それからいつものことですが奇妙なタイトルだなあ……と思っていたら、別の場所でこんな本を発見。

北極ライフ
谷山 浩子 ナショナル ジオグラフィック
4863130090


映画との連動企画のようなんですが写真に絵本のような文章がついているものなのかな。
しかしなぜに浩子さんが……?

と疑問符だらけのとどめはNHKの『ぴあのピア』。
きのうフィンランドの作曲家シベリウスの作品を取りあげていたところ、突然浩子さんがお出ましになってシベリウスの音楽について語っておられました。

この『ぴあのピア』には以前もバッハの時に尾崎亜美さんが登場してびっくりしたことがあるのだけど、こんかいはびっくりすると同時にうーむ……新譜となんとなくつながっているのかも……という気持ちになりました。

それに、たしかにシベリウスのピアノ曲は浩子さんのイメージにも似ているかもと思った。
そういえば、尾崎亜美さんのバッハもそれはそれで納得できる部分がありました。曲がきっちり構築されているという部分でね。

というわけで、フィンランドっぽい新譜、お待ちしております~。

『吸血鬼ドラキュラ』

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)
ブラム ストーカー Bram Stoker 平井 呈一
4488502016

[Amazon]


弟が蔵書整理をしていた時に譲り受けたモノ。
そういえば、吸血鬼ものはいろいろ読んだけど原点とも言えるこの作品は読んだこと無かったなーと思いまして。

読み終えて思うのは、「これはやはり原点だった」。
いろいろと趣向を凝らしているようだけれど、つまりは一方的に人間側から見た化け物退治のお話でした。
吸血鬼側の事情などはまったく斟酌されず、ただ奇っ怪で怖ろしげな容貌と力を持った不死者、悪の権化としか描かれてません。

対する人間側の心理描写などもそれほど深くは描かれてはおらず、なにもしらずに読んでいたらそれなりに楽しめるかもしれませんが、すでに筋書きを知っている身としては驚くようなことはなにもなく……つまり、だから原点なのねーというわけです。

たぶん、この話を読んでいろいろと自分なりにつけ加えたいところ掘り下げたいところを持った人たちがあらたな吸血鬼伝説を書き続けてきたのでしょうねー。

それと、発表時の年代(19世紀)や作者の経歴も反映されているのだと思うけど、なんとなーく舞台演劇っぽいなーと思うところがあります。なんでこんなに登場人物がいるの、とか。

十九世紀のロンドンといえばヴィクトリアンなわけですが、当時の人びとがそのいちいちを愛でているはずもなく、描写はしごくあっさり(笑。なのでヴィクトリア朝のロンドンを楽しみたいという向きにはあまり期待できないかもしれません。
当時の建前的なモノの考え方などはよくわかるかもしれませんが。

あと訳も結構古いので、ところどころ意味をとるのに苦労するところがありました。
「うじゃじゃけた」傷口ってどんなんでしょう?

私としてはおなじ吸血鬼ものでもカーミラのほうがエロスと雰囲気があって好みだなと思います。
吸血鬼カーミラ 創元推理文庫 506-1
レ・ファニュ 平井 呈一
4488506011


本編では吸血鬼の伝承についてはほとんど流された状態なのでもし知らない人がいらしたらこれなど読むと伯爵の背景などがわかります。↓
ドラキュラ伝説 吸血鬼のふるさとをたずねて
ラドゥ・フロレスク レイモンド・マクナリー 矢野 浩三郎
4047030260


ちなみに吸血鬼もので一番最近に読んだもの↓
モンスターズ・イン・パラダイス〈1〉 (新書館ウィングス文庫)
縞田 理理
4403541097

『ドラキュラ』のはじめのほうでの犠牲者ルーシー・ウェステンラの名前を見たとたんにニヤリとしました(笑。

『イスラム世界の人びと 3 牧畜民』

イスラム世界の人びと (3)
永田 雄三 松原 正毅
4492812636

[Amazon]


読了。

イスラム世界といったらやっぱりイメージとしては遊牧民……と思うけれど、イメージと現実は違います、という本でした。
でもまあ、このあたりの本は私も結構読んでいるので(二十年前にだが)それほど驚くようなことはなかったですね。むしろ今の状況を知りたいような……。

タイトルが牧畜民なのは、遊牧は牧畜の一形態である、という考えからきているらしいです。そりゃそうだな。

そして遊牧というのは家を持ち運びして家畜とともに移動するものと定義されています。
おおよそ夏と冬とにそれぞれ放牧の基点があるのですが、どちらかに固定した家がある、たいていは冬営地のほうに畑なんかもあって家族はそっち住まい、というのは牧畜に入っている模様。

興味深かったのは「ヒツジにとっての牧夫とはなにか」(谷泰)の蓄獣の群れをイスラム世界各地の牧夫はどう管理しているのか、というとっても具体的な報告。

それと、例によって座談会。
蓄獣のランク付けとか(馬→ラクダ→ヒツジ(ヤギ)、らしい)、どの程度の規模で生活できるのかとか、遊牧民の誇りはどこからくるのかとか、牧畜民に貧富の差があまり無いのは何故かとか、いやー、これはネタの宝庫って感じでうはうはでした。

そして最終的に印象に残ったのは、耕作できない土地で生きてゆくための方法として牧畜というのは非常に優秀な手段なんだなあ、でもそれがいまでは歴史的にはという留保をつけとかなくちゃいけない状態になっているのが哀しいなーということです。

資本主義って環境に悪いんだなとしみじみと感じました。
生きていくためじゃなくて売るためになんでも必要以上に作るから、あちこちゆがみが出てくるんだよなー。
それで遊牧民はどんどん減っている。朝青龍のご両親もマンション住まいだもんね……。ウランバートルの光景(特に電気街 ;)を見た時にはうわーと思ったけど、それは部外者の感傷というモノなのでしょう。

でも、いまから牧畜民しろといわれたら軟弱な私には絶対できませんし。
とても大変な仕事だなとほんとに感じましたよ。

面白かったです。

参考までに私が以前読んだ関連本はこのあたりです。
遊牧の世界 トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から (平凡社ライブラリー)
松原 正毅
4582765203

私は中公新書の上下巻を読んだのだがなんかいろいろと版が出ている……名著なのね。

ラクダの文化誌 アラブ家畜文化考
堀内 勝
484570210X

こちらは絶版。マイナー過ぎか……。

「聖女と騎士のはなし」

bokuさん@【Windia】作、「聖女と騎士のはなし」、第11話~第14話と番外編の「聖女と騎士と竜にまつわるてんまつ」読了。

中世ヨーロッパ風異世界ファンタジー、短篇連作。
聖剣に選ばれたのんびりやの村娘と彼女の守護役となった堅物の騎士の物語。

ちょっと古風な語り口がとてもやさしい、厳しい前線の砦の日常を描く、ほのぼのラブストーリー。

個性豊かな脇役たち(上司に同僚に部下にレディたちに子供たち、さらに動物含む)につつかれまくる堅物騎士の懊悩がほほえましいのです。

『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 12』

空ノ鐘の響く惑星で〈12〉 (電撃文庫)
渡瀬 草一郎
4840235899

[Amazon]

大変に遅ればせですが、ついうっかりと(苦笑)手に入れてしまったので読み終えました。

異世界SF戦乱ファンタジーシリーズの最終巻です。

感想。
すげえ、あの大風呂敷がきっちりかっちりぜんぶたたみ込まれて終わってるー。
そして、やっぱりSFでしたねー。しかも壮大な異世界落っこちモノでもあったわけだー。
さらに。
なんかずるいよフェリオー(苦笑。

十二巻つづいた大長編の完結編にふさわしく、おおきくもりあがり手に汗握る展開、緊張感に満ちたシャープな戦闘シーン、そのうえ幾多のキャラクターのひとりひとりにまで心配りのされたエピソードという、最後までなんとも充足感に満ち満ちた、大団円の最終巻でした。

これまで疑問に思っていたこともだいたいすべて氷解しましたし。
いや、ほんと、素晴らしい娯楽作品だったと思います。
大枠の謎だけは残ってしまったわけですが、それはこの話とは関係ないのかもとも思うし。
ふー、いい物語を読んだ、という気分で心がほころびます。

とくに、みんなが大活躍のクライマックスでとびぬけていたカボチャのあの御方。
読み終えて、この巻じつはパンプキンのためにあったのではなかろうか、とまで思ったほどのご活躍でしたね。
いやー、どこまでも芝居がかったお言葉を吐かれちらしつつも、じつは一番大人の人物でございました。
かぼちゃ頭に幸いあれ !!

そのほかのひとびとの後日譚もほのぼのとしていて楽しかったです。

あ、でもそういや王宮騎士のふたりに対するほのめかしのオチがなかったような……。
もしかして外伝に収録されてるんですかね、うーむ。知りたいかも。
なにやらさらに墓穴を掘ったような気がしてきたわ……(汗。

空ノ鐘の響く惑星で外伝-tea party’s story (電撃文庫 わ 4-24)
渡瀬 草一郎
4840239142

『架カル空ノ音 2』

架カル空ノ音 2 (B’s LOG Comics)
吟 鳥子
4757736967

[Amazon]


読了ー。

戦争中に脱走した?軍医が、ふしぎな少年を助ける。かれは明らかに人間ではない。頭に冠羽、背中には翼……かれは幻の古代鳥人だったのだ。少年とつきあううちに、軍医は絶滅しかけたかれの部族と関わり合うようになっていくが……。

というような内容でございます。
古代鳥人というのは「数万年前の化石だけが人間に知られている、人類とは異なった進化をたどった生物」で「かれらの言い伝えでは龍の末裔である」そうです。

雰囲気的には南北戦争中にネイティブアメリカンと関わった白人の話、みたいなんですが、じっさいの時代も土地も戦争しているのがどことどこなのかもよくわからない、現代風の世界でのお話。

異世界ではない、ような気もするのですが、戦闘機が飛んでいる時代で戦争している火山のある北の土地ってどこよ……てなところで疑問がわいてきまして。

元軍医の名前からすると英語圏のはなしなのかなーとか。
時代は第一次大戦当たりなのかなーとか。

それともやっぱりそういう異世界なのかなーとか。

面白いんだけどなんかひっかかるなーという微妙な気分で読み進めています。

でも、古代鳥人たちの滅亡へと向かっていく予感を漂わせた話はほんとうになんというか劇的というか悲愴というか哀切きわまりなくて、滅び行くものたちの最後の光というか、とにかく素晴らしい。そこらへんでつづきが読みたいとやっぱり思うのです。うむ。

余談。「古代鳥人」というネーミングを口に出すと「古代超人類」と口走りそうになってあわわとなります。いや、全然違うだろって(汗。

『ナイツ・フロム・ジ・アルハンブラ』

ナイツ・フロム・ジ・アルハンブラ(DVD付)
ロリーナ・マッケニット
B000UO6JMO

[Amazon]

日本盤だと画像が無くてさみしいので、ジャケット写真だけ輸入盤から借りてきました↓
Nights from the Alhambra

ケルト風から出発してワールドワイドな楽曲づくりを続けるロリーナ・マッケニットのライブ盤。
CD二枚とDVD一枚が組みになっています。
楽曲だけならiTunesStoreでも購入できるようですが、このアルバムの肝は映像でしょう、ということでリアル盤を買いました。

というわけでDVDに収められたライブ映像を見たわけですが……う、うらやましい~。
なんつっても場所があの、アルハンブラ宮殿! インターバルに差し込まれるロリーナが宮殿内を散策するすがたが幻想的に映し出されるシーンにはもだえました。あうう、私もあの場所を歩いてみたい~。

楽曲のほうも、もともとのすばらしさもさることながら、演奏者の表情やからだが伝えてくれる熱気、というものが加わって、ああ、ライブっていいなあ~~。
演奏される楽器にヨーロッパの古楽器がたくさんあって、なのにエレキギターやエレキヴァイオリンもあるのがおもしろかった。なるほど~これがいまのサウンドなのですね。

列柱回廊にかこまれたパティオとおぼしきステージで、蒼い照明によってうかびあがる楽人たちのすがたは、なんとなくストーンヘンジでおこなわれている聖なる儀式のようにもみえました。

残念なのは、演奏された曲はほぼすべて知っている曲だったのにほぼすべてタイトルを覚えていなかったということですか……(汗。

音楽を聴く媒体をレコードからCDに変えた時から、私の頭にはタイトルとか歌詞とかいった音以外の物が蓄積されなくなったようなのですな。

もちろん、英語が聞き取れない、聞き取れても多分意味わからない、という致命的な原因が根底にふかーく横たわっているわけですが(苦笑。

『Landreaall 6』

Landreaall 6 (6)
おがき ちか
4758051534

[Amazon]

繁華街の本屋でかなりの巻数が揃っているのを発見して、いそいそと続きを一冊購入してきました。
こういうときに大都会の本屋よりもこちらのほうが“私にとっては”使い勝手がよいなあと思うのです。
とはいうものの、一年ぶり近かったので陳列棚のレイアウトがビミョーに変化してまごついた。もう恒例行事っぽいですが。

というわけで読了ー。おもしろかったー。
異世界ファンタジー、いつのまにか学園物語の第六巻。
妹と護衛ともにアカデミーに入学したDXのトラブル続きの日々はまだまだつづく模様。
この巻ではアンちゃんの正体が判明し、ルーディーがDXを毛嫌いする理由が判明して、それがとんでもないことに繋がっていたので下を上への大騒ぎに……てな展開でした。

ポップなかわいい絵柄で普段はフツーのまんがなのに、ときどきもの凄く濃いファンタジーアイテムがきちんと規則を守って登場するのが私のツボを刺激致します。

ルーディーとDXの過去の顛末は笑い事以外の何ものでもないのに、それによって現在のDXのみならず周囲に及ぼす深刻な波紋が、あーこれがファンタジーなのよねえとしみじみ。

しかし名門の長子だけ真名を隠すというのは、他の人の名前にはそれほど力がないってことでしょうかね。もしかして隠すということ自体に名前の力をつよくする意味があるのかなあ……。

とにかく、つづき!
つづきを読みたいっす。
あそこにいけばある、ということが判明したのでそのうちまた買い出しに行きたいです……でかける用事がないかなあ(笑。

『イスラム世界の人びと 2 農民』

イスラム世界の人びと (2)
佐藤 次高 冨岡 倍雄
4492812628

[Amazon]

読了。今回は一週間くらいかかりました。

イスラム世界で農民というとなんかイメージがよくわかないわけですが、イスラム世界のすべてが乾燥地帯だったり沙漠だったりするわけではないので、まあ、いろいろとあるわけです。
おとりあつかいは、シリア、イラン、エジプト、トルコ、インドネシア、西アフリカ、モロッコ、となっています。

でも、やっぱりシリアの話とかの中心部の話が面白かったですね。むかーしからの灌漑農業の村の話。
乾いた土地に忽然とあらわれる緑の果樹園。
外側には窓がひとつもない家々は内側に向かってひらかれていて。
ひとびとがあつまって歓談していて。
というような、村の内部の雰囲気がわかって楽しかったです。

現在よりも過去のことに重心がかかっている話が多かったからかもしれませんが、これってまるで異世界ものを読んでいるような気分。
多分私が異世界ものに求めているひとつの要素がこういうことなのかと思います。

読んでいて増えるなるほど知識は、遊牧民は乳製品が食べられるから体格がよく、武装しているから雇われて村の警備をしたりすることもあるんだとか。独立独歩でプライド高そうでもかれらも農村や都市がなければ生きてはいけない。必需品を自給自足できるわけではないからですね。それにいまでは近代化で遊牧民から脱落したひとびとが流しの特殊技術であちこちを渡り歩いていたりとかするらしい。といってもこれも二十年前の記述だからいまどうなっているのかは不明なのですが。

印象深かったのはイスラム社会の流動性。乾燥地帯での農業はそれこそひとびとの生きているそのままのすがたなわけだから、農民には農民という自覚はあんまりないとか。なのに何百年もひとつの土地に居着いている農民、というのはあまりいないのだとか。

というのもイスラムではメッカに巡礼に出かけるので農民も外に出かける機会がけっこうあったらしいのですよね。
あと、ウラマーはほとんど外からやってくるようだし、コーランの内容を砕いてひろめる物語師とかもくるようだし、農民はかなり世界のことについて詳しかったようだ、と書いてありました。

それと農業にしてからがなんとなく商業的なんですよね、それが小規模であるがゆえになんでも取引の材料になるらしく。かなり昔から農民が硬貨をもって取引していたんだそうです。へえーー。

うーん、かなり興味深い内容でした。書き手の人によって読みやすいのとそうでないのとの違いはありますけど総じておもしろかったです。

あと、最後の座談会がたいそう面白かった。
参加者はさまざまな地域を専門としてフィールドワークをしている研究者ばかりなわけですが、かれらがいろんな題材をあげて比べてみるだけで、なにがその地域独特の慣習なのか、イスラーム世界の共通点なのかが見えてくるんですよ。農業は自然環境に依存しているので、わりと土着の慣習や信仰がイスラムの物と混じって残っていることが多いのだなーということがよくわかりました。

『孟夏の太陽』

孟夏の太陽 (文春文庫)
宮城谷 昌光
4167259052


読了。

中国春秋時代を舞台に晋に仕えた趙一族の、波瀾万丈な行く末をえがく、連作短編集です。

私は、のちに名君と呼ばれる重耳の流浪の旅につきしたがって孤氏の集落にやってきた趙衰とかれに娶られることになった叔隗の話がたいへん好みでした。主人公はかれらの息子趙盾なんですけどね(苦笑。

その後は趙盾にはじまりかれの子孫が、趙氏の中心として晋国のなかや他国との権力闘争を生き抜いていく話となります。対立する豪族の罠にかかったり主君に権勢を疎まれたりして、滅亡の危機にさらされたのが臣下の命がけの行動によって救われたり、その歴史はまさに波瀾万丈。

その上がったり下がったりが大変な物語を、端正な文章でしずかに力強く描き出す文章にまた酔いました。

短篇だけに最後の「後世から見たひとむすび」というのがなくて、最後まで緊張感が途切れなかったのもよかったです。

ところで、この本は短篇が全部で四編収録されてまして、当初の計画では一晩一編という予定だったのですが、途中狂いが生じ3編目の途中で寝落ちしてしまったため、その後理解できない部分が頻出。
自分の脳内メモリの機能の悪さに溜息が出そうですー。

だいたい、私は宮城谷作品を最初に読んだのが『重耳』のはずなのに、最初のエピソードをぜんっぜん覚えてませんでした。もちろん趙衰も「あなたダレ?」状態。たしかに読んだのはたぶん十年以上前だったと記憶していますが、それにしても……。→1995年でした。

しかし、高貴な賓客がやってきたからって敵対氏族から娘さんを嫁にするために奪ってきたりするなんて、古代の中国はおそろしやです(汗。

つぎは何を読もうかなあ。
ついうっかりと晋まで来ちゃったから、重耳関連のひとびとのはなしにしようかな。

20070909の購入

繁華街の一角で、姪っ子の電子オルガンの先生が演奏会(?)をするというので、出かけてきました。もちろん姪連れで。繁華街に出るのはもの凄く久しぶりで、もしかすると一年ぶり。

……しかしなにゆえ救急の日のイベントで沖縄の歌の演奏会なのだろう……。
救急関係の○×クイズに参加して、全問正解じゃないのに景品もらってしまいました(汗。

Landreaall 6 (6)
おがき ちか
4758051534

架カル空ノ音 2 (B’s LOG Comics)
吟 鳥子
4757736967

ナイツ・フロム・ジ・アルハンブラ(DVD付)
ロリーナ・マッケニット
B000UO6JMO


ひさしぶりの繁華街で浮かれてたくさん買い込みそうになりましたが、自粛。
とくに活字の本は自粛。
ロリーナの新譜がお高かったのでおかげで抑制力がつよくなりました。
あと、子供連れで本屋を堪能するのは無理っぽいです(苦笑。

にしても、繁華街って人が多いですねえ。日曜日だとはいえ、この混雑ぶりはちと堪えました。
演奏はすてきだったんですけども。生演奏聴くのも久しぶりでうれしかったです。

『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3』

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 3 (3) (電撃文庫 か 10-13)
壁井 ユカコ
4840239355

[Amazon]


読了。
通称鳥籠荘と呼ばれる奇人変人たちが住むアパートでくり広げられる、奇天烈でふしぎでひょっとするとダークで、けれどかなりほほえましい連作短編集。

今回は落雷で起きた停電を中心に、あっちの子たちとこっちのひとたちとが右往左往しているあいだになんと殺人事件が起きていた――というつながりで一冊まとまっています。

着ぐるみパパと暮らす山田華乃子ちゃんとそのクラスメート加地梢太くんの小学三年生コンビの話はひたすらほほえましくて、あーもうなんてこの子たち可愛いの、むぎゅ! とやってしまいたいくらいでした。

一応シリーズヒロインの衛藤キズナとその雇い主でゲージュツカの浅井有生の話は、有生のいとこ井上由起にかきまわされてびみょーに変化する二人の距離感にドキドキするかとおもうと絶妙のタイミングで外される、これまたほほえましい笑いに満ちたコメディー。

最後のまとめがちと黒めな感じで、この題材をこんなふうにあっけなく使ってしまうのかーと少し驚いた、窮地に陥った王子様を救おうとしていたお姫様がいつのまにか絶体絶命になってしまうお話。
ラストの爽快感と有生のトラウマのとりあわせがこれまた絶妙でありました。

おまけ短篇「着ぐるみには着ぐるみを?」にはひたすら笑いました。
西部劇のガンマンとアライグマとペンギン……(笑。

そうじてこのシリーズには『キーリ』の悲壮感がないかわり、なんでもひっくるめて笑い飛ばしてしまうような懐の深さを感じます。

何が起こっても不思議はない。
何しろここはホテル・ウィリアムズチャイルドバード。〈現実(リアル)〉と〈非現実(ファンタジイ)〉とが交じりあう場所。



続きをお待ちしています。

「北の島の魔法」

一枝 唯さん@【yuen】作、「北の島の魔法」読了。
異世界冒険ファンタジー、完結。
おもしろかった~。でもかなりの大長編で時間もずいぶんかかりました。
これは連載を追いかけて読む方が臨場感もあってよいのかも……と毎回思うのですが、更新速度がえらくはやいので私にはついてゆけないのだった。

「風読みの冠」の続編にして「翡翠の宮殿」「風謡いの首飾り」関連作品。
キャラクターがたくさん重複していてそれぞれに事情を抱えている。そしてそれぞれにドラマが用意されているので、もうこれは群像劇ですね。
というわけですべて読んでから読むが吉。
順番は「翡翠の宮殿」→「風読みの冠」→「風謡いの首飾り」→「北の島の魔法」です。
それぞれにもれなく大長編ですので読み出すのに覚悟も必要と思われます(苦笑。

『鋼鉄三国志 ~呉書異説~』

鋼鉄三国志~呉書異説 (KONAMI NOVELS 18) (KONAMI NOVELS 18)
妹尾 ゆふ子
4861551838

[Amazon]

読了。
テレビアニメ『鋼鉄三国志』のノベライズ。本編が始まる五、六年前の出来事を主要人物視点で順繰りに描いた短編集です。

アニメにも三国志にも知識が薄いまま、作者様のファンという理由で購入致しました。
ということで、やっぱり登場人物に関する知識はほとんどなく、読みながらも「そういえばこんな人がいたかもー」という具合におぼろな記憶がゆらいだり消えたりという状況で。
やっぱり北方三国志ひとつ読んだだけじゃだめだわーとあきらめぎみでしたのでそれはそれでいいことにします。

この本自体は、運命に翻弄されたりあがいたり克服しようとしたりする人びとの短編集として、深みのある良作だったのではないかと思います。
品のあるストイックな文章は戦乱の緊迫感をたたえた物語世界にとても合っていたと思う。
孫権と陸遜の章は少年の物語として、太史慈の章は破天荒なおっかさんと息子の話としておもしろかった。
でも一番迫力があったのは孫策の章でした。この話がいちばんファンタジー要素が強かったかな、と思います。

ただやはり、基本的にファンタジー作家としての資質があまり生かされない題材だったようなのが惜しい。
できればオリジナルを読みたい、というのがファンとしての希望です。

ところで、これを読む前に一度くらいはと思ってアニメも見たのですが……すみません、ついていけなかった。とくに劉備のキャラクターに(汗。

追記。
ページ数を確かめようとしたら、その横に小さく章タイトルがありまして、上ばかり見て「なんの章かわからん」と愚痴っていた自分を笑いました。
しかし、あとがきの下に「周瑜伝」とあるのはいかがなものかと……(苦笑。

「ネット小説を読もう。」キャンペーン終了

2007年8月中に行われた【「ネット小説を読もう」キャンペーン】が先日終了しましたので、その感想を。

最初は「参加できるかわからない」などと言明を避けていたにもかかわらず、終わってみるとけっこう読んで報告していた自分がいたりします。

そのあいまいな宣言は、現状の体調では、パソコンで読書するのは無理だなーと感じていたからなのですが、そういやクリエという便利な物があったやん、と気づきまして、いままで読もうと思っていて読めずに溜めこんでいたテキストファイルをがつっと全部クリエにぶち込んで、ひたすら読んでいったのがこの結果であります。

だからいま人気のとか話題のとかの新作はほとんど入っていなかったのはごらんのとおり。
ほんとは短篇のほうがたくさん読めてたくさん紹介できるかなとも思ったけど、私が長編好きなので溜めてたのが長篇ばかりだったのと、短篇をわざわざテキストに変換したりするのは面倒ということがあり、けっきょく長編ばかり読んで、読んだ割にはあんまりタイトルを報告できなかったのが残念です。

今年の8月はとにかく暑くて、とくにお盆あたりは寝っ転がって読書をするには最適な季節だったと思います。暑さから逃避していたともいいますが。

そのあまり暑さの中で酷使したせいか、クリエのジョグダイヤルが一時馬鹿になって、ページ繰るのにたいへんな労力を費やしてしまいました。
現在は治っているので、やはりあれは暑さのせいだったのでしょう。

クリエがイカレたらどうやってテキストを読もうかとうろたえましたおかげで、携帯で小説が読めるという情報を得たりしました。

おかげでじつはなんにもしていないのに何かをしている気分になれました。
どうもありがとうございます。

あと、他の皆様が読んでいる作品がわかったのもおもしろかったです。
みなさん、マメに連載中の作品を追いかけているのだなーー。
クリエでまとめ読みの怠惰な私にはとてもできない……と感心しました。

それと、これは私の勝手な希望ですが、完結長編にはテキスト一括版があったらなあと思いました。興味を持った作品でもテキスト版がないと読む気が減退してしまう、要はめんどくさがり屋なんですが。OSをバージョンアップしたらHTMLをテキストに変換するソフトが使えなくなってしまったので、これからは自分でテキスト版をこしらえるのもむずかしくなってしまったし。

ところで、じつはまだキャンペーン中に読みはじめた長編のエンドマークにたどり着いてません。
ものすごく長いとわかっているのに手を出した私がいけないのですが……。
それについては読み終えたあとに、キャンペーンとは関係なくいつものようにここに報告をするつもりです。

そういや、キャンペーンといっても書いてることは普段とおなじでしたね。
最初の頃、トラバするのに苦労したのがいい想い出となりました。

この記事は【「ネット小説を読もう。」キャンペーン】の「読書企画感想」へトラバしています。

『彩雲国物語 白虹は天をめざす』

彩雲国物語白虹は天をめざす (角川ビーンズ文庫 46-14)
雪乃 紗衣
4044499144


民を救う官吏をめざしてがんばる女の子と、彼女をめぐる男たちの話……というと少し誤解を受けるかも? な中華風異世界ファンタジーシリーズ第十二弾。

読了。
タイトルと表紙絵を覚えてなくても内容はほぼ覚えていましたよ! な最新刊でした。
ちなみに私も表紙絵真ん中の人が誰だかわかってちと驚いた口です。

いままでも展開は速いシリーズですが、今回もそうとうジェットコースターでした。
基本的には楸瑛を追いかけて王様が、王様を追いかけて秀麗が藍州に行く話、なのですが。
あっちではあんなことが、そっちではそんなことが、同時進行してるのですよねー。
輪郭をぼかしつつどんどん核心に近づいていってるなあという気がするものの……どうしてもはっきりと書いてくれないので読み飛ばさないように注意して読み進めてるのでちょっと疲れます。といいつつ、一気読みしてるんですが。

今回印象が一番強かったのは王様。
これまでの不遇をとりかえすかのように王様がてんこ盛りでした。だからといって王様が甘やかされていたわけではなくかなり艱難辛苦してましたが……パンダにかこまれてる王様がかわいい……やはりこの王様はかわいいキャラクターなのねと認識をつよくいたしました。

あとは陰に日向にお父上が大活躍してましたね。その弟はすねてすっかりひねくれてしまいましたが(苦笑。

そんなこんなしているうちに、いつのまにか陣取り合戦をしていることがわかったり、戦況がいちじるしく不利だったり、ということがようやくどこから見てもあきらかになってきて、話の方向性がわかってきて少し安心しました。

あんまりどこ行くのかわからないと落ち着かないんですよね……歳をとったせいでしょうか。

とりあえず、貴陽に帰還してからの話はひとくくりになったのかな、ここまではいうならばタンタン編だったんだなーと思いました。

つぎからはセーガ編でしょうか、それとも旺季編?

茶州編の終わりあたりからほのめかされてきた秀麗ちゃんの秘密も気になりますが、いずれにしろ、都の悠舜さんが心配です~。それとやっぱり燕青はかっこええなあ……(笑。