『復活のヴェヌス ヴェヌスの秘録4』

復活のヴェヌス (ヴェヌスの秘録 (4))
タニス・リー
4863110014

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読了。

パラレルヴェネチアを舞台にしたファンタジーシリーズ、完結編。


はー、ようやく読み終えました。
何でかわからないけどえらく読むのに時間がかかってしまった。
一番の理由は、ヴェヌスが未来になっちゃってたということかと思う。
どうしてか、リーの描く未来は私の脳裏に映像を結ばないんですよね。むー。

未来のヴェヌスはなんと海底にあるドームの人造都市。
システムはわかりませんが、太陽がめぐっていたりして美しい日没の描写が印象に残ります。燃えあがる中世都市の景観が圧巻。建物はまがいものなんだけどね。

(これを読んでいて山田ミネコの『西の22』の中はどういう構造だったのだろうとしばし思いに耽ってしまいました。あれはたしか球体だったようですが。)

物語は黒人の天才アーティスト、カササギという名のピカロ。
それと墓から掘り出してきた人間を復元するというプロジェクトで甦った、古代ローマの女剣闘士ユーラ。
大柄な考古学者でプロジェクトに参加はしているものの中枢には関わっていないフレイド。
の三人を中心に語られていきます。

ここで私は途方に暮れる。
のろのろ読んでいたため話の流れに乗りきれず、中心のストーリーがなかなかつかめなかったから。

ユーラとおなじように甦らされた17世紀の歌い手クローディオの存在が、なんだか妙だなあと思っていたら、いつのまにか伝染病が発生して一度に何人も死んでしまったり。
プロジェクトが何を目標としているのか、疑心暗鬼のまま不愉快な任務を与えられるフレイドとともにこちらまで疑心暗鬼になってみたり。
ユーラの行動がいちいち不可解で、でも彼女の心中を赤裸々に書いたりするのはリーの作風ではないから懸命に推理してみても、つぎに読むときにはそれをすっかり忘れていたり。

いったいこの話はなにを言いたいの!

と、切れかけたところでピカロのお母さんの話でうへえとなったり。

なかなか激しく翻弄される読書体験だったと思います。

多分、あちこちに出てきていたはずの象徴がわかってればこんなに苦労しなかったと思うんだけど。
そういう論理的な思考ができるくらいなら、私はファンタジーを読んでいないのだ。

そんな訳わかってない能なし読者も、クライマックスのあの方の発現には驚天動地。
つぎつぎと立ち現れるシーンにあふれる光の奔流には目をくらまされました。
うわー、このシーンは大好きだー。
あいかわらず意味わからず読んでたけど、理屈抜きで魅せられました。
インディアの説明は説明すぎてすこし興を削ぎましたが。
でもなだれ込んでいくラストシーンもすごかったし。
シリーズの中でもっともスペクタクルな展開だったと思います。

結論。
やっぱり、舞台は未来だけどファンタジーだな、これは。
キリスト教を知っていればもう少し楽しめたのではないかと思われて残念です。
中に出てきた神秘主義を思わせる一節、私はどうしてもイスラームと関連づけて読んでしまう(汗。

個人的には、できることなら舞台を未来に設定しないで欲しかった……。
それと、誤植がかなり多かった気がします。

そういえば。
話の中にシリーズの第一作に出てきたカップルが出てきて意外な形で関わってます。
フレイドがコーランを唱えるシーンは第二作が思い出されました。
それから、ユーラの古代ローマからの生はもしかすると第三作と関わりがあるのかなあと思いました。

微妙につながっている、のかなあ。

20080730の購入

何日ぶりかで外出しました。目標は書店なり。

LEGAの13 2 (2) (フラワーコミックス)
やまざき 貴子
409131693X

聖☆おにいさん 1 (1) (モーニングKC)
中村 光
4063726622

聖☆おにいさん 2 (2) (モーニングKC)
中村 光
4063727203

海獣の子供 3 (3) (IKKI COMIX)
五十嵐 大介
4091884229


無事到着。
作戦は『海獣の子供』のゲットだけだったのに、気になっていたタイトルがあれもこれも。……つい余分な購入行動を働いてしまいました。。
おそらくストレスがたまっていたのでしょう。支払いのために財布が軽くなったら気分もスカッとしました(汗。

でもこれで今月の購入額が突然鰻のぼりに。

残ったのは罪悪感なり。

Last.fmにはまる

このところ暑い暑い夏の津波に翻弄されて何も考えられない日々が続いてます。
そんなぼんやり頭でネットをうろついていたら、うっかりこんなサービスを見つけて、出来心で登録してしまいました。

Last.fm

元々が英語サービスなので日本語の案内がわかりにくいのですが、どうやら自分のiTunesで再生した曲を専用ソフトでつなげて、リストだのなんだのが公表できて、曲にコメントをつけたり、お友達をみつけたり、自分好みのおすすめ音楽が試聴できたりするらしい。

音楽を聴くと曲名が Last.fm へ送信され、あなたのミュージック・プロフィールに追加されます。これが「曲を Scrobble する」ということです。



登録して以来、自前のCDのリッピングを延々半日以上続けたり、オススメ音楽ラジオを延々半日以上聴きつづけたり、おかげでパソコンが熱くなって悲鳴をあげそうになったりと、猿のような生活をしていました。
今日もしてしまいそう。

私がおバカなのは、わざわざリッピングしたCDを聴いてるうちに「これはもう好みじゃないし」とふたたび消去してしまう、ということを一度や二度ならず繰り返していることです。

しかし、無駄なデータでハードディスクを消費したくないし。

あとあと、サラ・ブライトマンの『ハレム』がコピーコントロールCDだったのにはショックを受けました。わかってて購入したはずなんだけどね。でも悲しい。
いまならiTunesでも買えるみたいなのでなおさらです。

ハレム
サラ・ブライトマン
B0017W7FC6


それと、これは私の持ってるアーティストがマイナーだったり古かったりするせいだろうと思うけど、アルバムが登録されていないことがかなりある。
ジャケット写真がないだけではなく、アルバムそのもののデータもないのは悲しいぞよ。

Last.fmの私のページはここ

いつものアカウントがとれなくて次善のもとれなかったので妙な名前になってしまった。

『アボリジニの世界 ドリームタイムと始まりの声』

アボリジニの世界―ドリームタイムと始まりの日の声
Robert Lawlor 長尾 力
4791760158

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読了。

とても読みにくかったので時間がかかりました。多分一週間くらいかかったんじゃないかな。

とくに読みにくかったのは初めのほう。
中盤にはいると慣れてきたのかだいぶらくに進むようになりました。

そんなに苦労してそれでも途中で投げ出さなかったのは、内容が大変興味深かったから。
アボリジニについて書かれている本を読むのは初めてだったので、たんに目新しいかったというのもあるけれど、とにかく著者いわく最古の人類であるアボリジニの精神世界の構造がおもしろかったのです。

これ、そのまんまファンタジーの設定に使えそうですよ!
すべてをつつむ共感の世界は佐藤史生の火星人を彷彿とさせました。あちらには王様がいるのですが、共感がすべてにゆきわたっていたらそんな存在も必要ないんだなとか。

著者はことあるごとにアボリジニの世界を西洋文明と対比させて、自分たち西洋人の世界が危機に瀕しているのはアボリジニのもっている素晴らしいものをすべて捨ててきたからだ、いまこそ原点回帰をと訴えていて、その部分はちょっとうっとうしかった。
それと他人の文章や発言からの引用がかなり多いので、どこまで著者の調べたことなのかがわかりにくくて、信頼性については今ひとつな気がしました。
けれど、その他の内容自体はもう一回くらい読み返したいほどでした。

個人的におおと思ったのは、うーんとどこだったか忘れてしまいましたが、「眼内閃光」という現象に触れられているところです。
眼内閃光ってべつに病気じゃないんですよね?
私、子供の頃しょっちゅう見てたんですよね、まぶたの裏にキラキラ光ってどんどん変化する幾何学模様を。
それを親に話したらすぐに眼科に連れていかれたのですが、結局どういうことになったのかは覚えていない。
いまネットで調べてみても、あんまり芳しいことは判明せず。
いまはもう、そんなキラキラはほとんど見られなくなってしまい、すこし寂しくなっていたのですが、あれは私だけのことじゃなかったんですね。
ちょっとホッとしました。

ボリュームたっぷりの本で、膨大な事柄について書かれているので内容の説明はしませんが、かわりに目次のタイトルを書いておきます。
これを見ているだけでなんとなくわくわくしてくるのです。
長くなるのでたたんでおきます。

続きを読む »

『LEGAの13 1』

LEGAの13 1 (1) (フラワーコミックス)
やまざき 貴子
4091311660



ルネッサンスのイタリア! 水の都ヴェネツィア! 錬金術に権謀術数!
な少女マンガです。

画面が少しうるさい(コマが小さい、書き込みが多い、線の書きわけがあまりない)のを除けば、かなり楽しく読めました。

薬師見習いとは表の顔の美貌の少年錬金術師レガーレ。かれが魔女の疑いをかけられた父親を救うために元首おかかえの不自由な境遇に身を落とすお話。

元首が求めるのは黄金の生成。
レガーレはそのために十三番目の合金(レーガ)“賢者の石”を探している。
というわけでタイトルが『LEGAの13』。

もっとも話は錬金術そのものというより、レガーレを取りまく胡散臭い神父だの他人には見えない少女だの元首の娘との出会いだのかつての親友との辛い再会だのという、ヒューマンドラマを中心に描かれているので、妖しいお話は苦手という方も大丈夫だと思われます。

ちょっと森川久美の『ヴァレンティーノ・シリーズ』を思い出したり。
読み途中のタニス・リー「ヴェヌスの秘録」と重なったり。

個人的にもお楽しみの多いマンガでしたね。

やまざき貴子のマンガを読むのもずいぶんと久しぶりです。
絵そのものには違和感なかった。けど、線がさらに多くなった気がするな。
コマ割が細かいのは以前からだったけど、おかげで全体的にメリハリなくごちゃごちゃしてる気が。
そのせいで読むのにちょっと苦労した。
目が弱くなってるのだろうか、トシだから……。

二巻はすでに刊行済みです。

LEGAの13 2 (2) (フラワーコミックス)
やまざき 貴子
409131693X

『風の王国 初冬の宴』

風の王国 初冬の宴 (コバルト文庫 も 2-29)
毛利 志生子
408601064X

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読了。

中国唐王朝の時代。吐蕃の王に嫁いだ公主の波乱に満ちた人生を描く、少女向け歴史ロマン。シリーズ十二冊目。

久しぶりの本編はたぶん新たなエピソードの開幕編。

長い旅のあとでようやく本拠地ツァシューに戻ってきた翠蘭とリジム。年に一度の行事聖寿大祭と翠蘭の友人の婚礼の準備にあけくれるが、そのあわただしい日々の中でも不穏な動きの種はまかれていたのだった――。

という感じでしょうか。

翠蘭の妊娠からリジムの前妻の子ラセルの置かれた状況が複雑になり、乳母の座を一族の娘にと押しかけてくる有力者に、二つに割れている吐谷渾の王族の不審なうごき、唐の公主を目の敵にする大臣の身内、などなどなど。
とにかく仕込みが多くて、まるでミステリの事件直前、といった趣でした。

うう、全部把握しきれない予感。

読んでてとくにあぶないなーと感じたのは大臣ティサンの兄で翠蘭を敵視するツルティムの素直な娘ロナアルワの存在。
この子はたぶん火種になる……と思う。
弱気なのは自分の読みが当たることは稀だからです。
でも、ものすごく微妙な立場の彼女をさらに微妙な立場で微妙な心情を抱えているラセルの側に置くのは、かれらにも対外的にもよろしくないんじゃないかなあと思うのよ。
たしかに性格的な相性はいいようだけれども。

この話を読んでいると人々を導く立場にいることの面倒くささをつくづくと感じます。
だれかがしなければいけない役割なんだけどねー。

今回、タイトルからもわかりますが季節感が甚だしくずれまくった読書となりました。
吐息が白くなるほどの寒さなんて、いまの私からするとウラヤマシイ限りです。

毎日暑すぎる……。

つづきはこちら。

風の王国 金の鈴 (コバルト文庫 も 2-30)
毛利 志生子
4086010992



『魔使いの弟子』

魔使いの弟子 (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー 金原 瑞人 田中 亜希子
4488019528

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読了。

七番目の息子の七番目の息子トムは、手に職をつけるために魔使いの弟子になって修行を始める。
たぶん近代のイギリスを舞台にしたローファンタジー。

これは楽しい!
面白くて途中で止められず最後まで一気に読み切ってしまいました。
児童向けなんだけどイギリス土着の言い伝えやら習俗がしみわたった雰囲気がすばらしい、ファンタジー読みにはたまらないあれこれがたんと詰まった作品です。

主人公トムの「七番目の息子の七番目の息子」という設定からして萌える。
さらに魔使いグレゴリーのミステリアスな存在感がたまらない。
魔使いの家のお料理は児童書特有のお楽しみ。
その料理人がこれまたたのしい!

トムはいうならばセカンドサイトの持ち主なんですよね。
魔使いは魔法は使わないけど人間の培ってきた知恵と経験で魔物と相対するので、トムは魔使いのまずは素質を十分にもっているというわけですが、かれの潜在能力にはこれまたミステリアスな母親から受け継いだものもあるようです。

そしてトムが出逢ってしまった魔女の姪、アリスちゃん。

彼女に振りまわされ続けるトムは女難の運命なのでしょうか。
魔女の姪だからというだけでなく、女の子ってこんなふうに感じられるものなんでしょうね、男の子には。と思った。
だからこういう設定は少しずるいのではともちと感じるのですが、アリスちゃんはとても魅力的なので許します。

それにトムに襲いかかる魔女の怖ろしさといったら……。子供だったら夢に見そうなくらい怖くて楽しかったですv

とっても楽しんでしまったのでこの続きは絶対に読みます!

魔使いの呪い (sogen bookland)
ジョゼフ・ディレイニー 金原 瑞人 田中 亜希子
4488019552

『図書館戦争』

図書館戦争
有川 浩
4840233616

[Amazon]


読了。

昭和から正化に元号が代わり、メディア良化法なる法律が成立したパラレルな現代を舞台にした、図書館ミリタリー成長ストーリー。

資料をメディア良化委員会の暴力的な検閲から守るために組織された武装組織図書隊に入った若い娘さんの奮闘記です。
突拍子もないけれどなるほどねえと思わされる設定は、一番普通じゃない武装集団の存在自体をうけいれてしまえば、虚構に現実感を持たせるためかなりきめ細やかに構築されたものであることがわかります。ディテールが細かい。

その超・現実的な世界でくり広げられるのは長身ヒロイン笠原郁の成長と恋の物語。
高校生の時に巡りあった王子様にあこがれて図書隊に入った彼女の姿は、まっすぐな女の子の姿を描いていて素直に共感できます。
背景がなければ体育会系のラブストーリーといってもさし支えないのでは。
ごくごくまっとうに、ストレートに進んでゆくお話は大変に読みやすかったし、楽しかったです。

キャラクターの配置もきわめて安心できるし、ステレオタイプながらそれぞれの個性が話に生かされているし。

これは人気が出るよなあと思いました。

図書館でなかなか借りられないのもうなずける。
今春、テレビアニメ化されるというのでそういやまだ読んでないと予約をいれたのですが、おなじことを考える人はたくさんいたらしく、数ヶ月待ちの後にようやく読めたのでした。

読む前にアニメを見てしまったのはつくづく間違いだった。
話はほとんど原作通りだった。
たぶん脇キャラの描き方は原作のほうがていねいだと思いますが。

一番楽しかったのは、後半にある堂上教官視点のとある部分。
ちょうどこのあたりで録画失敗を犯したため、アニメを見てなかったためもあるけれど、フクザツーな男の心情がつづられているこのシーン、めちゃくちゃ笑ってしまいました。

で、最後まで読んでみてアニメの途中までしか入っていないことに気づき、そういえば原作クレジットに『図書館内乱』も入っていたなと思い出しました。

次行くときに予約入れます。
今度は何ヶ月待ちだろう……。

余談。
この本にはまったく関係ないのですが。
最近、私が保証と書くべきだと思っているところであたりまえのように保障とされている場面が多々あります。
あまりに頻繁にあるのでどう区別をつけたらいいのか本気でわからなくなってきました。

でも「言論の自由は保障される」けど「面白さ保障つき」というのはやっぱり間違ってると思うんだよな。

それとも私のほうが間違ってるのだろうか。うーむ。
自分の日本語に自信が持てない……。

図書館内乱
有川 浩
4840235627

『犬夜叉 2』

犬夜叉 (2) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091252028


借りてきてすぐ読了。

二巻です。全五十何巻かのまだ二巻。
この巻では犬夜叉のお兄様殺生丸がご登場です。
見たとたんに「お雪ちゃん!」と心の中で叫んでました。アハハ。

全体的にアニメの絵のほうが原作よりシャープなんですね。
犬夜叉もマンガを見てるとかわいいとしか思えない。
かごめちゃんはキャラデザイン自体が違うせいもあるけど、やっぱりかわいい。
前髪が切り揃ってるとなんとなく年下イメージを抱くよね……私だけかもしれないけど。
アニメのかごめちゃんはお姉さんな感じなんだけど、原作のこの時点では犬夜叉の妹みたいに見えます。

でもって私はアニメのシャープな絵も好きだけど、原作の可愛い絵がなんともいえず好みだなと思うわけです。

なんといっても、ちび犬夜叉がとってもかわいい。
高橋留美子の描くちびっ子ってホントにラブリーだなあ。

しかもじじばばのキャラがまた生き生きしてるしさあ。

これで七宝ちゃんがでてきたら悶絶しそうだ。

ふと、『犬夜叉』だけ借りてるんなら週一ペースで読めるのにな……と思ったが、交通費がバカにならないので却下。

犬夜叉 (3) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091252036

20080721の購入

図書館帰りに寄った本屋で二巻を見、一巻があったのでつい購入。

LEGAの13 1 (1) (フラワーコミックス)
やまざき 貴子
4091311660



おんなじアルバムを何百回も聴いてないでもういい加減別のにしたら? という心の声に屈してアマゾンで購入。

RAKA
志方あきこ
B000HEZ2XE


iTunesStoreでもあつかっててそっちのほうがお安いのだけど、ギフト券があったのでv
好きな雰囲気だといいなあ。

『沙中の回廊 下』

沙中の回廊〈下〉 (文春文庫)
宮城谷 昌光
4167259168

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読了。

古代中国の晋で法の家に生まれ、徳を積み礼を遵守して武において才を発揮した天才兵法家、士会の人生を描く、歴史小説の下巻。

むー。
なんだかよくわからない話だった。

士会が秦へ亡命するあたりまではけっこう波乱もあったんだけど、その後、晋へ連れ戻されて以降はあまりピンと来なくてだらだらと読んでしまいました。

いや、もしかするとだらだらと読んでいたから面白みがわからなかったのかな。
でも面白かったらだらだらしないで読めたような気もするし。

士会があまりに徳と礼にこだわる人物のせいか、あまりはみ出した行動をとらないうえに、文章がまた不穏や昂揚を鎮めるように淡々と進むので、物語の焦点がぼやけたような印象が残ってしまったのですよ。
たくさん出てくる登場人物の行動に連続性が感じられないことが多々あって、あまりフォローが行き渡っていないような気がしたし。
いつもならこの落ち着いた文章がとても好みなのに、今回は抽象的すぎて生身の人間が見えてこないような感じがした。

私としては士会よりもその配下の人たちが何をしているかのほうが楽しみでした。
ほんのすこし、物事のはしっこにひょいと顔を出して主のために頑張る人たち。

とくに秦への恨みからあるじの亡命に随行せず、かわりに諸国を歩きまわって情報を集めてきた杜辛。かれのあゆみに焦点にした話にしたら面白い話になるんじゃないかなと何度も思いました。

士会自身の話はたくさんの国の思惑が入り乱れる展開の中で埋もれてしまったような気が。

今回、たくさんの国が出てきて、誓い合ったり裏切ったり攻め込んだり下ったりとめまぐるしく、だんだんわけがわからなくなってしまった。

晋の支配者の系列も文公、襄公、そのあとはあれあれ?

……自分の不勉強を恥じております。

このつぎは時系列だと『子産』ということになるのかな。
文中にえらく褒めてあったところがあったので。

沙中の回廊〈上〉 (文春文庫)
宮城谷 昌光
416725915X


『夢幻紳士』

夢幻紳士 幻想篇
高橋 葉介
4152086297


借りて読了。

『ミステリマガジン』に連載された怪奇幻想探偵マンガ「夢幻紳士」シリーズの三冊です。
Amazonに大きな書影はあるのに小さいのがないのでここにも表示されないのが残念。

『夢幻紳士』はあちこちに掲載されてあちこちで出版されて、そのさいにいろいろと編集アレンジが加えられているため収録作品が一定しないという、非常に全貌がつかみにくいシリーズ。
最初からつかもうとしていない私にとっては、弟が集めた本をほけほけと読ませてもらってるだけなので苦労はありませんが。

昭和初期の日本を舞台に黒衣の美少年(美青年)探偵・夢幻魔実也が活躍するシリーズ、というのがおおざっぱなくくり。

今回の魔実也くんは美青年タイプ。
以前のイメージからするとずいぶん爽やか系のご面相になっております。
目元が涼しげだからだろうな、おそらく。
しかし女好きで意地悪なのはいつも通りの模様。さらに非常に怠惰な探偵になっていました。つーか、探偵と名乗ってないよ。

幻想篇、逢魔篇、迷宮篇とつづくシリーズは、それぞれひとつの筋を持った連作短篇となっています。
しかも、このシリーズがすべてあるところで繋がっているという、複雑なつくり。
作者あとがきによると、最初からの構想というわけではなくいつのまにかそうなっていたらしいです。

話は絵のおかげか私が歳を食ったせいか、いくらかエログロ要素が減じたように感じます。
独特な描線によって創り出される暗くて隠微な雰囲気に変化はありませんが、話にいくらか救いが多くなったような気が。

とくに幻想編はまるまるハッピーエンドといってよいでしょう。
ここでの魔実也くんはまるで騎士様です。
なんか性格違うよとおもっていたら種明かしがあって、笑いました。

不条理というか不可思議というか、夢に片足突っ込んだような酩酊感というか、とにかくふつーの現実的なお話が好きなむきにはオススメしませんが、江戸川乱歩などが好きな方には向いているのではと思われます。

魔実也くんの横顔が美しい。

夢幻紳士 逢魔篇
高橋 葉介
4152087161


夢幻紳士 迷宮篇
高橋 葉介
4152088206

見てしまった

映画館には行かなかった。あまり評判がよくないようだったので。
でもやはり原作はあの本なのだし、興味がないわけではない。
テレビの地上波なら、たとえショックを受けても傷は浅いのではないか。

などという魂胆の元に、録画したこの映画を見てみました。

ハッハッハ。
乾いた笑いがこみあげました。

これはあきらかに原作とは別物。いや、原作というほうがどうかしてると思う。
原作のあらかたを忘れ去っている私ですら、そう感じる。

だから一本の映画としての感想を書きます。
説明ゼリフの多い映画です。とくに大賢者がしゃべりすぎなので貫禄が薄れます。
アニメの質としてはテレビシリーズの上等のものより若干落ちると思います。
線が硬くて投げやりな感じ。柔らかさとか温かさとかが感じられない。
こういうキャラクターデザインで生硬な描線のアニメなんて興ざめなのだった。
映像的に驚くようなシーンもなかった。

ストーリーはおそらく父殺しの話なのでしょう。
でも説明ゼリフが多い割に感情的に説明不足で、映画の中のキャラクターがひととしての共感を呼びません。

なんだかなー。

結論。
映画館に行かなくてよかった。
原作を読み直したくなった。

ゲド戦記
B000OPPTN4

『ともしびをかかげて 下』

ともしびをかかげて 下 (3) (岩波少年文庫 582)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145820

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読了。

ローマン・ブリテン四部作の第三作下巻。

しみじみと、いい話だなあ~~~と。
それ以外の何かを書こうとすると思い入れから過剰に書き連ねかねないので自粛します。

とにかく、サトクリフの臨場感のある描写には脱帽いたしました。
こんなこと体験しようったってできないでしょう、というようなシーンをどうしてこんなにリアルに描けるのでしょう。

解説の上橋菜穂子さんの

サトクリフが見ていただろう「風景」が、異常なまでに細かく、広い、ということだ。



という文章には深く深くうなずけます。

このリアル感は作品の隅々にまで徹底されて、歴史の波が押し寄せてくるなか、苦しみあがきながら運命を受け入れて生きてゆこうとするひとびとの輪郭が、書き手の感情はいっさいあらわさぬままに淡々と描かれていくところがたまりません。

ことにこの作品は、主人公の置かれた境遇が他作品よりも苛酷であり、かれが運命を肯定するまでの葛藤が並々ならぬものであるために、最後に訪れる感慨にはたいそう深いものがありました。

これが児童書で出ているなんてもったいないです。
私が児童の時に読んでも、意味はわかんなかったと思うしさ←これが本音。

今回の再読でさらにサトクリフ作品のすばらしさを堪能できてとても幸せでした。

ともしびをかかげて 上 (1) (岩波少年文庫 581)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145812

『ヴォイス 西のはての年代記II』

ヴォイス (西のはての年代記 2)
アーシュラ K.ル・グウィン; 谷垣 暁美
4309204783

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読了。

ル=グウィンの異世界ファンタジーシリーズ、第二部。
舞台は第一部よりだいぶ南下して、たくさんの神々を信仰する歴史ある商業都市アンサルとなります。


沿岸の美しく賢い都市アンサルは砂漠からやってきたオルド人によって侵略され、征服された。唯一の神を信仰し文字を嫌うオルド人たちによって、アンサルに蓄積された知識は破壊され海に沈められた。オルド人に襲われた母から生まれた少女メマーは、母の親族である道の長サルター・ガルヴァの館ガルヴァマンドで育った。オルド人の拷問のために身体が不自由となったガルヴァの元には、ひそかに救い出されてきた本が隠されていた。メマーは母親の記憶をたどってその秘められた部屋へ入ることができた。隠れて本を眺めていたところをガルヴァに見つかったメマーは、この部屋のことは秘密にしておくようにと命じられ、その後ガルヴァから読むことを習うようになった。そんなある日、アンサルに〈高地〉からすばらしい語り人がやってきた。語り人オレックは妻のグライとライオンとともにガルヴァマンドを訪れる。



はー、すごかった。面白かったという言葉ではなまぬるい、迫力がありました。
第一部は神話のような趣だったけど、第二部は完全に人間の物語。
〈ギフト〉にふりまわされる人々を描いた前作から一転して、今回描かれるのは異文化間の接近、衝突、融合です。

オルド人に暴力を受けたアンサル人の母から生まれた主人公メマーの複雑な生い立ちと環境は、オルド人とアンサル人の距離を象徴しているのですね。
彼女ははじめ自分を完全にアンサル人側に置いてオルド人を敵とみなしているけれど、自分の中のオルド人の要素から幾ばくかの利益もひきだしていたわけで、そのことを肯定していくことによって人生の影が希望にも転じうることを学んでいきます。

その手助けというかきっかけになるのが、第一部の主人公だったオレックとグライ。

かれらの客観的な意見がメマーにあらたな視点をもたらすのは、まさに旅の語り人の役割だなあという感じ。

そして、もちろんオレックはこの物語における大きな波に多大な影響をもたらすのだけれど、グライとライオンのシタールの存在感には特別なものがあると思います。メマーはオレックに憧れるけど、グライに抱く親近感と想いはたいせつな女性の肉親に抱く情に近いものがある気がする。

たぶんメマーにはガルヴァというおじいさんはいたけれどふた親の存在を埋めてくれる人がいなかったから、ふたりはそこにすんなりとおさまったんじゃないかな。

砂漠からやってきた一神教のオルド人はなんとなくイスラームやモンゴル人を思わせますがそれだけではなくキリスト教のイメージも含んでいるようです。

異なる文化を持つ者たちが憎しみあう、この殺伐とした社会から生まれる波がたんなる抗争で終わらず、対話と融合へと繋がっていく過程はただの歴史物では到達できないと思う。こういう解決の仕方ができるのはファンタジーの特権なのではと思います。

第一部の少しもの悲しいようなラストからこの希望の差し染める人のにぎわう所まで、オレックたちの歩いてきた道に思いを馳せると感慨深いものがありました。

うん、名作です。

第三部はまだ刊行されていませんが、今年予定ということになってます。

ギフト (西のはての年代記 (1))
谷垣 暁美
4309204643

『故郷に降る雨の声 上 バンダル・アード=ケナード』

故郷に降る雨の声 (上) (C・NOVELS Fantasia―バンダル・アード=ケナード (こ1-5))
駒崎 優
4125010366

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読了。

青少年というにははばかられる薹がたった腕利き傭兵たちの、異世界戦場ものがたり、シリーズ第三弾。

ちなみに第一弾は『運命は剣を差し出す』全三巻。第二弾は『あの花に手が届けば』となっています。

エンレイズとガルヴォ、二大国家による泥沼の戦争がはじまって三十年。
エンレイズ陣営に雇われる傭兵集団バンダル・アード=ケナードは、任務の直前に雇い主が死亡するというアクシデントに見舞われていた。身動きの取れない資金難から逃れるために、隊長のジア・シャリースは名を名乗らぬ人物からの護衛の依頼をひきうけることにする。雇い主の代理人は目的地も状況も説明せずにバンダルを見知らぬ土地へと向かわせるが――。



プロフェッショナルなおっさん傭兵たちの冒険物語。
たいていが依頼のために隊ごととんでもない窮地に陥って、そこから冷静に的確な判断を下しつつ、確かな技量を持ってして脱出してゆく様が、皮肉なユーモアとともに描かれる話です。

というわけで、今回もバンダル・アード=ケナードは孤立無援のまま途方に暮れるような事態に巻き込まれてます。寒くてひもじくて疲れる上に、なんとここはどこ? 状態にまで陥っている。

そもそも、この件は胡散臭いとはじめからわかっているのだから関わり合いにならなければよいのですが、貧乏所帯はお金のために目をつぶらねばならないことが多すぎるみたいです。

やな予感が何度もかさなって「ああ、これはまったく困ったもんだ」と皆が思っているところに、「やっぱりなー」な真相があきらかになる。これはもはやお約束といってもいいのではなかろうか。

主要登場人物が経験を積んだおっさんなため(といってもかなり若めのオッサン)、話にいろいろと陰影や味があって、そのへんが青少年の一直線な話と違う面白さとなってます。
青少年をかつての自分として見守る姿とか、なにげないところに懐の深さを感じて嬉しいのです。

私の希望はシャリースの元で番犬をつとめるマドゥ=アリくんと白狼エルディルちゃんのコンビがもう少し活躍してくれることです。

今回は上下巻のため、こんなところでか! というところで話がぶち切れております。なんと。
下巻は8月発売予定だそうな。

『イムリ 4』

イムリ 4 (BEAM COMIX)
三宅 乱丈
4757742975


SFなのにぜんぜん印象がシャープじゃない、むしろ泥臭くて怪しげなすてきな土俗的雰囲気を漂わせている不思議な感じのマンガシリーズ、第四巻。

設定が込み入ってるうえに刊行ペースがスローなため、鳥頭な私にはもはや何がどうだったかを説明できるほどの記憶が残っておまりせぬ。
クーデターのどさくさに被征服者のテリトリーに入り込んでしまった主人公のサバイバルと、クーデターの駆け引きが交互に描かれていていたような気がします。

そんな私が気に入ってるのは、征服者と被征服者の関係ですか。
異文化のようにみえるけど実はどちらかがどちらかの分化したものであるかのようなほのめかしに、ほうと感心した巻でした。

先日読んだル=グウィンの「西のはての年代記」に似た雰囲気があるような気がします。
あくまで私の期待ですが。

ストーリーの先が読めないのは、物語世界の全体像がまだ現れてきていないからか。
この先どうなっちゃうの、というところで次巻をお待ちしています。

イムリ 3 (BEAM COMIX)
三宅 乱丈
4757739702

憑きもの落ちる

ほぼ半月のあいだ、あちこちで食べたい食べたいと騒いでいたババロアをゲットしました。

ババロア


最近お世話になりっぱなしのYちゃんの提供品はいちごババロアです。
私の騒ぎを見かねたらしく、買い物中にずっと気をつけていてくれたらしい。
わーいありがとうーと喜んでいただいて帰りました。

食べたら飢餓感がすっかり落ち着きましたよ。
まるで憑き物が落ちたよう。
おいしかったのだけど、思ったより胃が重くなったのが原因か。
ババロアくらいで胃に負担がくるなんて、歳をとったものである。

記念に写真を貼りつけておくものなり。

『家族の深淵』

家族の深淵
中井 久夫
4622045931

[Amazon]


読了。

精神科医、ギリシャ現代詩翻訳家によるエッセイ集。
読みながら深い思いの底に沈んで浮かび上がれなくなるような瞬間を迎えることのあるないようもさりながら。
とても読みやすく明晰ながら日常性と詩情があり、冷静でしかも対象に対する思いやりの感じられる文章がとても好きです。

私の興味をかきたてるのは著者自身の歴史や経験について書かれたものと、精神医学に関するものと、神戸について書かれたもの。日本語について書かれたもの。

他の著者のものならだいたい面白がる外国についての文章にそれほど魅力を感じないのが不思議です。

現代ギリシア詩について書かれたものはすこし私には高踏すぎて、意味がつかめずに終わった部分がかなりあったのが無念です。

今回一番面白かったのは神戸大学の精神科病棟を改築するための準備についての話でした。

収録タイトルは以下の通り。



家族の深淵 往診で垣間見たもの
Y夫人のこと
二つの官邸へ
学園紛争は何であったのか
「マルス感覚」の重要さ
戦時中の阪神間小学生
新制大学一年のころ
雲と鳥と獣たち
旗のこと
文化を辞書から眺めると
漢字について 中国留学生との体験
治療の政治学

II
治療文化論再考 第一回多文化間精神医学会において
分裂病の陥穽
精神病棟の設計に参与する
重層体としての身体
精神病院入院患者に対する心理療法について
自己認識としての精神機能の老い
R.D.レインの死
多重人格をめぐって
医学部というところ
諸国物産絵図
歩行者の思考 土居健郎『日常語の精神医学』
日本に天才はいるか
一医師の死
居心地
きのこの匂いについて

III
ハンガリーへの旅から 一九九二年六月
カテドラルの夜
ある少女
イオニア海の午後
私と現代ギリシャ文学
劇詩人としてのカヴァフィス
リッツォス詩の映画性
カヴァフィスに捧げる十二詩 翻訳
詩の基底にあるもの その生理心理的基底
「心躍りする文章」を心がけたい
執筆過程の生理学 高橋輝次『編集の森へ』に寄せて

あとがき
初出一覧


『機動警察パトレイバー』

機動警察パトレイバー (1) (少年サンデーコミックス〈ワイド版〉)
ゆうき まさみ
4091247210



ワイド版全11巻を借りて読了。

近未来警察ロボットマンガシリーズ。
すでに近未来ではないようですが……。

アニメと同時進行の企画だったようですが、私はアニメは未見です。
結構人気があったことは知っているのだが、なぜか一度も見ていない。今に至るまで。
マンガのほうも連載しているのを知っていただけでスルー。
こうして貸してもらうことがなければ永遠に縁がなかったと思います。

このマンガを読んでみて思ったのは、すごくストレートでまっとうなマンガだなということで、かなりキャラもメカも描線もマンガ自体も地味なんだけどストーリーは読ませるなーということで、このパッと見の派手さがないのが私の興味をひかなかったところなのかなあと感じました。

でも面白かったです。
最初の一冊目はやっぱりダメかなとおもったけど、話が進むにつれてどんどん楽しくなっていった。
キャラクター描写よりストーリーに重きを置いた、骨太なマンガって最近読んでなかった気がする。
メカと同時に若者たちの成長ものにもなってるし、企業陰謀ものでもあるし、ストレートな少年マンガだなあと感じました。

個別のキャラクターの掘り下げはべつのところで、ということかな。

ところで読み終えて検索してみたら、ワイド版はもう手に入らぬようです。
現在の主力は文庫版らしい。おなじく全11巻。

機動警察パトレイバー (11) (小学館文庫)
ゆうき まさみ
4091932819

『GOSICKs II 夏から遠ざかる列車』

GOSICKs(2) ―ゴシックエス・夏から遠ざかる列車― (富士見ミステリー文庫)
桜庭 一樹
4829163526

[Amazon]


読了。

第一次大戦後のヨーロッパの架空の国ソヴュールを舞台にした、少年少女の学園・冒険ミステリシリーズ。番外短編集の二巻目。

東洋からの留学生久城一弥と天才的な頭脳をもつ美少女ヴィクトリカ。一弥がヴィクトリカにふりまわされているあいだに事件が解決してゆくパターンを、いつもの通りきっちりと描いたキャラクターノベル。

今回は本編の四巻と五巻のあいだ、学園に取り残されたふたりの夏休みのお話だそうです。

短篇なのでネタは小粒ですが、そのぶん周辺登場人物たちの機微や過去に触れられている話が多く、かなり楽しめました。

収録作品は以下の通り。


プロローグ
第一話 仔馬のパズル
第二話 花降る亡霊
第三話 夏から遠ざかる列車
第四話 怪人の夏
第五話 絵から出てきた娘
第六話 初恋
エピローグ

あとがき



一番めあたらしかったのは「夏から遠ざかる列車」。聖マルグリッド学園の寮母さんと先生のエピソードなんですよ。意外。

一弥の実家、とくにお姉さんの事情がわかる「怪人の夏」も興味深かった。

しかし私が一番楽しんでしまったのは「初恋」。
ヴィクトリカのお兄さんグレヴィール・ド・ブロワ警部の、初恋の人であり現在は上司の妻であるジャクリーヌさんとのエピソードなのですが。
どの状況においても警部が哀れですごくかわいそうでそれがまたすごく面白いという、かなり不謹慎な楽しみ方をしてしまいました。
五巻でドリルが二つになっていた理由がここで判明します。フフフ。

全編通して、ヴィクトリカの愛らしさにはくらくらします。
もうもう、まさに小動物ですよ、この子の可愛さは!

あと残っているのは短編集の三巻目。
それからあとは、どうなっているのかしらん。

GOSICKs 3 (3) (富士見ミステリー文庫 38-12)
桜庭 一樹
4829163879

『おもいでエマノン』

おもいでエマノン (リュウコミックススペシャル)
鶴田 謙二
4199500774



借りて読了。

原作は梶尾真治の『おもいでエマノン』。
著者にとっては五年ぶりの単行本だそうな。

梶尾真治の本はあんまり読んだことがなく表題作もタイトルのみ見聞なのですが、わずかに読んだ時間SF短篇の印象から推すと鶴田謙二の作風はかなり雰囲気に合っているのではと思います。

その鶴田謙二のほうの印象は、女の子がすこし骨格から痩せてしなやかな体つきになったような気がするくらいで、短期間におどろくほど長い期間に発表された作品を読んできたにもかかわらずイメージがほとんど変わらなかったことに驚かされました。

自分のスタイルを貫いているのだなあと思われます。

この作品は鶴田謙二のスタイルにとてもフィットしていて、とてもよいコミック化だったなと思いました。

余談。
13年後に手渡された定期券の始発駅名と経由駅名がとても馴染みだったもので、隠れて見えない至駅名がとても気になるのだった。

原作本。

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)
梶尾 真治
4199050086


『本屋の森のあかり 1』

本屋の森のあかり 1 (1) (講談社コミックスキス)
磯谷 友紀
4063406539



地方の支店から本店にやってきた女の子が、都会のスピードに驚きながらも大好きな本屋さんの仕事を続ける、ハートフル本屋コミックの第一巻。

この本はたしか第三巻が発売されたときに本屋で見て猛烈に読みたくなって、しかし一巻がなかなか見つからなかったのですな。
ようやくみつけてゲットしたとき図書館本に追いまくられているうちに存在を半ば忘れ去っていたという。

先日本棚をあさっていたら発掘されたので思い出して読んでみました。
むー、絵がつたないなあ。味はあるけどあんまり書き慣れていないような感じがする。
でも話は楽しいです。本屋さんがみんなこんなに楽しくお仕事をしているのなら嬉しいのですが。

ヒロインであるあかりちゃんのヒーロー(?)副店長のぬーぼーとした存在感がおもしろい。
つづきは見つけたら買います。

本屋の森のあかり 2 (2) (講談社コミックスキス)
磯谷 友紀
4063406857

『漂泊の王の伝説』

漂泊の王の伝説
ラウラ・ガジェゴ・ガルシア 松下 直弘
4035404802

[Amazon]


読了。

イスラーム以前、ジャーヒリーヤの時代のアラビアを舞台にしたファンタジー。

たしか新聞の書評に載っていたので気になって借りてみた本ですが、予想外に面白かったです。
タイトルからなんとなく想像されますが、王様が漂泊する話。
雰囲気がすこし千夜一夜風。描写があまりなくてリアル感も少ないのですが、そのぶん物語性と象徴性が際だちます。
端的に言えば、王様の贖罪の物語なんだろうな。
ただ、たどりついたところがかなり壮大でSFめいたところもあり、これにはちとびっくり。

それとなんとなく楽しいというか興味深かったことは、ジンが純粋に精霊として守護神としてこの世界の人の心の中に生きているところです。
イスラーム以後だと、ジンもムスリムとそうでないのとに分かれたりしますんで、なんか人間くさいんですよね。それはそれで面白いのだけど、もしかしたらフィルターがかかるまえはこんなだったのかなと想像してあらたな世界を発見した気がしました。

それから、アラブ人の詩好きは有名ですが、これだけアラブ詩を取り入れた西欧のファンタジーを読んだのは初めて。

あとがきで王様のモデルがイムルー・カイスとわかって、ああ、そうかあと腑に落ちました。その名前を知ってるだけなのですが、ああ知ってる人じゃんとおもうとなんとなく親近感がわくものです。

フィクションが主だけどそれだけではないお話だったのだなと思った一冊でした。

できたら詩の部分だけアラビア語での朗唱を聞いてみたいです。

ところで、日本語でジャーヒリーヤの時代について書かれている本て、今はあるのかな。
私が知ってるのは『ジャーヒリーヤ詩の世界』だけでしたが。あれもう探したときには絶版で図書館にしかなかったような。

『旬(いまどき)』

旬(いまどき) (Wings Comics)
鈴木 有布子
4403617468



『罪と罰』の作者さんのデビューコミック。
年の差義姉弟のほんわりどきどき短篇連作恋愛マンガ、です。

収録作品は以下の通り。


旬(いまどき)
粋(クール)
#(シャープ)
∞(ずっと)
花鳥風月



『丘の上のバンビーナ』でヒロインのパパがすげーかっこよかったのでおかーさんとパパの話であるこの作品を読みたくなったわけなんですが、読んでみて推測&期待のイメージは吹き飛びました。

パパ、かっこよくない。
でもかわいい~vvv

この作品の時点ではパパ=海くんは高校生。おかーさん=あや子さんは二十六歳。
必然的にかれがカッコイイ男であるはずがなく、イイ女にふりまわされる可愛い男の子というのが現実です。

でも役割がそうだからというだけでなくて、海くんたらほんとに可愛いんですよー。
それにツンデレのあや子さんもかわいいし。
読んでいてうわーフツーの少女マンガだなあ! と思いました。
『バンビーナ』とはまったく話が違いますので、ファンタジーをお求めの方は読まなくてもいいかもしれないです。
でもこの可愛さは読む価値があるのではと……私は感じたよv
オバサンの発想かもしれないが……(汗。

あんまり海くんが可愛かったので後日譚である『バンビーナ』を読み返してみました。
やっぱ、かっこええ……。
成長したんだねえ、海くんたら。
読んでいて可笑しかったのはふたりの娘であるひな子ちゃんがあや子さんそっくりの性格だったってことです。

子供は親に似るのね。
ひな子の弟くんが海くん似だったらうれしいんだけどももうそれは不明のままのようです。

丘の上のバンビーナ (WINGS COMICS)
鈴木 有布子
4403618960

『追放されしもの クロニクル千古の闇4』

追放されしもの (クロニクル千古の闇 4)
ミシェル・ペイヴァー 酒井 駒子 さくま ゆみこ
4566024148

[Amazon]


読了。

6000年前の北西ヨーロッパ。
父親と死に別れた少年がさまざまな苦難や陰謀を乗り越えて成長してゆく、冒険ファンタジー、シリーズ四冊目。

うわー、なんちゅー苛酷な。
もとから厳しい自然環境の中で生き抜いていくことの大変さをしみじみと思い知ることの多い話なのに、今回のはまたさらにそのレベルが高く生死に関わるような状況が連続してゆきます。

前作のラストであかされた衝撃の事実は、これほどまでに深刻なものであったのかと、かなりびびりました。
人間が集団をつくって必死で生きのびているような状況で、少しでも危険なもの不安なものは排除するのは合理的なのだろうし当然なのだろうとも思います。
でも排除される方は即座に死者とみなされて現実世界から追いやられてしまうわけで。
しかも死者は狩られるものでもあるらしい。

主人公のトラクはかなりサバイバル技術に長けた少年なのに、彼をここまで追い詰める陰謀がコワイです。

逃げ続けるトラクの孤独と葛藤、他者との距離感がつらく、一生懸命兄貴分を求めるウルフの心情がせつなかった。

救いはトラクの親戚の男の子アザラシ族のベイルがトラクを見捨てなかったことかな。
レン以外にベイルがこんなにトラクのことを考えてくれるとは思わなかったし、レンが悩み続けているところで大活躍してくれて話に動的な部分が生まれておもしろかった。

レンといえば、彼女がトラクに感情移入する理由があきらかになってきて、なるほどーと思いました。
こういう背景があったのですねえ。

一巻からくらべると登場人物も歳をとり、トラクとレンの関係も単純に友達という言葉では語れないものになってきたようです。

このあとはいったいどうなるのかなあ。
〈魂食らい〉たちがいなくなるまでトラクの日々に平穏は来ないような気がするが、そこにいたるまでを書くのでしょうか。

とにかくつづきをお待ちしています。


こちらは第三巻です。

魂食らい
ミシェル・ペイヴァー 酒井 駒子 さくま ゆみこ
456602413X

『ともしびをかかげて 上』

ともしびをかかげて 上 (1) (岩波少年文庫 581)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145812

[Amazon]


読了。

『銀の枝』につづくローマンブリテン四部作の三作目。

紀元三世紀、瓦解し始めたローマ帝国の正規軍がブリテンから消えて四十年。ブリテンは海の狼と呼ばれるサクソン人の襲撃を受けるようになっていた。ローマの砦ルトピエに駐屯する地方軍団の一指揮官であるアクイラは、休暇で家族の住む家にいたところを軍の急使に呼び返される。彼を待ち受けていたのはローマ軍団のブリテン撤退の命令だった。ローマ国籍をもちラテン語を話しているがブリテンで育ったアクイラは、苦悩の果てに出港する軍の艦隊から脱走し、砦の灯台に最後の炎を上げた。



一度ハードカバーで読んでいるから、岩波少年文庫版のこれは再読なんですが。
再読なんて信じられないくらい覚えているところがなかったです。すごく衝撃を受けながら感情移入しまくりで読んだはずなのに~。なにこれ、こんなの反則だよ、なんでこんなに鮮烈なの、初体験なの、素敵なの。

こんな感覚をおんなじ本で二度も味わえて私はお得な人間なのかも。

すこしだけ思い出しました。
ローマとブリテンとサクソンというとりあわせで、当時は『クリスタル☆ドラゴン』を連想したんだった。
でもいま読んでみると『ヴィンランド・サガ』ですね、見事に。
暴力に翻弄されていくブリテン人たちの悲愴な毎日に気分が重たくなります。

この作品の秀逸なのは、ブリテン側だけでなくサクソン側の事情も公平に提示してあることでしょうか。かれらの故地の苛酷な状況が客観的かつ叙情的に描かれていて、生きのびるために新たな土地を求めて命をかけているさまには納得するし、心を打たれます。

だからといってなんでも暴力で片をつけるのはイヤなんですが。

そんな読み手をまったく甘えさせてくれない殺伐とした状況であり展開なわけですが、かれらを取りまく世界が温度から手触りまで伝わってきそうな描写文の簡潔な美しさには詩情まで感じてしまうのです。

やっぱりサトクリフはいいなあ。

下巻の展開が楽しみです。

ともしびをかかげて 下 (3) (岩波少年文庫 582)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145820

『犬夜叉 1』

犬夜叉 (1) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
409125201X


時空間移動伝奇ファンタジーシリーズの開幕編。

家の神社にある涸れ井戸から戦国時代にトリップしてしまった少女かごめ。
妖怪に襲われたかごめの体内からは四魂の玉とよばれる玉が転がり出る。それは妖怪たちが喉から手が出るほどに欲しがる、とんでもない宝物だった。
なりゆきで封印されていた半妖の犬夜叉を解放してしまったかごめは、じぶんが桔梗という名の力ある巫女の生まれ変わりだと聞かされる。



借りて読了。

去年くらいからでしょうか、TOKYO MXではじまったアニメ版再放送を見ていまして、原作読みたいと思い続けていたところ、ふと思いついて調べてみたら地元図書館の蔵書にあったので思い切って予約を入れてみたのでした。

でワクワクしながら読んでみた。
おお、懐かしの高橋留美子!
やっぱり自分のペースで読めるマンガと他人のペースで進むアニメでは受け取り方がちと違いますね。
とくにギャグの間はマンガのほうが合ってるなあと思う。
自分は高橋留美子のギャグがけっこう好きだったんだと思い出しました。
そういえばいまでも妹との会話に挿入されてるギャグがいくつもあったりして。
おおざっぱラムちゃんの「こんなもんだっちゃ」とか。

閑話休題。
驚いたのはヒロインであるかごめちゃんのキャラクターデザインがアニメとかなり違うこと。
前髪が切りそろえられているし、全体的にウェーブがかかっているし、目は少しつり目気味?

といっても現在進行中の絵を見るとアニメのほうに近いから、これは多分時間とともに描きやすい方向へと流れていったのでしょうね。『めぞん一刻』の管理人さんタイプが高橋留美子のデフォルトなのかも。

導入部とその展開がなんとなーく同著者のタイムパラドックスもの『炎トリッパー』と似ていて、なつかしかったです。
あの話も好きだったんだよなあ。

まだ一巻なので話は全然進んでいませんが、原作を読めてこんなに幸せになるとは思わなかった。

つづきも借ります。

マンガは順番を指定しての借り出しができないので一度に一冊ずつ、しかも二週間に一度しか行かないというペースでは全部借りるのにどれだけかかるのかという感じですが、のんびり楽しみたいと思います。

最新刊はこちらです。

犬夜叉 54 (54) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091214282

『夏目友人帳 6』

夏目友人帳 6 (6) (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592184491


あやかしが見えるがためにずっと孤独だった少年が、すこしずつひとと心を通わせていくさまが繊細に描かれる、あたたかくて切ないもののけ幻想コミック。シリーズ第六巻。

最新刊の収録作品はめずらしく三回の連続ものだったようでその分話の厚みは増していろいろと楽しめましたが、するとエピソード自体の数は少なくなるわけで読み切り形式のお得感に慣れてる私は「一作だけじゃ物足りないぞう」と思ってしまったのでした。

その分、特別編を堪能しました。

「夏目観察帳4」は子ギツネちゃんがとっても可愛くていじらしくて、ああ撫で撫でしてやりたいよう。

「レイコ懐古帳」はヒノエとレイコの出会い編なのですが……ただ笑えた。

レイコさんは夏目の祖母なのに、いつもセーラー服で出てくるからなんだか不思議な感じがするひとです。
若くして亡くなったからなんだろうけど、セーラー服を身につけなくなるまで生きていたのだろうかとちと不安になったり。
夏目のじいさまはとか、夏目の両親はとか、いろいろと疑問が尽きないシリーズです。

同時収録のシリーズ外作品「まなびやの隅」が妙に意味深。
もしかしてレイコさんの相手も……だったりして。

ニャンコ先生がどんどん楽しくなっていくのが嬉しいです。

そういえば夏目のアニメもはじまりましたね。
録画しておいたのでそのうち見たいと思います。
ニャンコ先生がどんなふうになってるか、楽しみなような不安なような。

夏目友人帳 アニメ公式サイト

『Forget-me-not 1』

Forget-me-not (1)
鶴田 謙二
4063347516


借りて読了。

ヴェネツィアに住むずぼらでぐうたら娘のちょっととぼけた探偵ストーリー。

現実のような現実ではないような物語世界で、非現実的なストーリーが日常的に描かれる。
ディテールの細かさにうっとり、おじさんたちの個性の強さににんまり、ヴェネツィアの空気にうっとり。でも湿気寒そう。

とにかく雰囲気がたっぷりのマンガです。

今回は初めてヒロイン伊万里マリエルにおもしろみを感じることができたので、これまでよりもずっと楽しく読めました。

マリエルのじいさまの遺言の設定が非現実的ながらたいへん面白いです。

マリエルのふたりの妹、真鈴と満里奈が出てきたときは好感度がさらにアップ。
なんてったって「38年ぶりのV」新聞一面が秀逸なのでございます!
女性が胴上げ投手という嘘記事をすみずみまで読んでニマニマしていた横浜ファンは私だ。横浜は横浜でも真鈴が所属してるのはホエールズだけど。それでも当時の背番号19は誰だったか、わざわざ調べてしまったよ。アホです。バカです。でも嬉しかったんです。

ああ、あのときは楽しかったよなあ……。

思わず遠い目になるのも現状では致し方ないかと。

という超個人的な趣味でこのマンガは鶴田謙二作品の中でワタクシ的ナンバーワンと相成りました。

しかし、続編は出ていない模様。とほほ。