トラックバック企画「2009年 このファンタジーが良さげ・・・」

Leonさんが開催されているTB企画「2009年 このファンタジーが良さげ・・・」に今年も参加してみます。

要項は以下のとおり。


・2008年内に出版されたもの(*)のうち、個人的なベスト3(1~2冊でも可)のタイトルと著者名
・締め切りは1月末まで
・ジャンル特定が難しいものもあると思いますが、「ファンタジーと思ったものがファンタジー」の方向で
・トラックバックに限らず、コメントで寄せられたものも集計の対象に致しますので、blog を利用していない方もお気軽に!
*: 初出タイトルはもちろんのこと、文庫化されるなどして新たに書店に並んだものや新訳、復刊を含みます。(増刷は対象外です。)



2008年は例年になく懸命に本を読んでいたみたいで、しかも2008年刊のものもけっこう混じっていたらしく、選出に大変悩まされました。候補がありすぎです。

困った困ったとうろうろしていましたが、時間がなくなってきたのでえいや! と選んでみました。ええもう、無理やりなのです。


一位 アーシュラ・K・ル=グウィン『パワー 西のはての年代記3』

運命という名の津波の中でひとりの人間がどのように生きのびるかを、魔法の生きている世界で描き出す、スケールの大きなファンタジー三部作の完結編。
ひとつの世界の運命を丸ごと描こうとするのではなく、あくまでも個人の生を追いながらも、それが世の流れにも大きく関連していることが感じられてくる作品です。

少年達の成長物語でありつつも、魔法が物語に重要な役割を果たしていて、その先に人間社会のあり方といった遠大なテーマが見えてくる。さすがル=グウィン。とてもまっとうで生真面目な面白さを持つ物語です。

主人公は例外なく災難に遭うため読んでいて辛いのですが、この辛いことがとてもリアルだと感じられることも読書の醍醐味のひとつなのですね、私にとってはですが。

そういう系統でいうと歴史小説家ローズマリ・サトクリフも大好きなのですが、ル=グウィンのこの三部作はまるでサトクリフがファンタジー世界を舞台に書いたおはなしのようにも思えました。

物語の終わりにたどり着いた時にはずしんと重たくいつまでも響いてくるような余韻が残って、泣けてきそうな気分になったのをおぼえています。

すごく地味な外見ですが、そういうわけでぜひ読んで欲しい作品です。

パワー (西のはての年代記 3)


二位 妹尾ゆふ子『翼の帰る処』上下巻

魔法の気配の色濃い物語を書かせればいま日本で一番すばらしい、と私の思っている作家さんのオリジナル新作です。

今回は幻想シーンのすばらしさに人間ドラマの面白さも加わって、たいへんフレンドリーかつ躍動的なお話になりました。

巨鳥を駆るひとびとの伝説や、沢山の塔のある都に落ちる絢爛な闇。
南の生温かくまとわりつくような大気と、北方の冷涼とした風の吹く山岳地帯。
広がる情景に歴史の重みが付加されてたいそう深みのある物語世界を歩く嬉しさ。

そこでくり広げられる生き生きとした登場人物たちとの必ずしもいつも幸せとはいえない現実と、主人公の見るこちらはあきらかに不幸な過去の夢とが交錯するさまを、どきどきワクワクしながら楽しみました。

主人公が過去へと縛りつけられていた自分を解き放って、今、このときにおいて自分が大切だと思える物をみつけてたどりつくまでの物語に、生きているという実感がここまで濃密なものになりうるのだと感動させていただきました。

続刊の刊行が待ち遠しいです。

翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1) 翼の帰る処 下 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-2)


三位 栗原ちひろ『オペラ・アウローラ 君の見る暁の火』

全八巻のファンタジー「オペラ・シリーズ」の完結編。
ひとつの世界の謎と終焉と再生を、真摯に生きる登場人物達のドラマとともに描く物語。

このシリーズは最初のうちはなかなかなじめずにいたのですが、三巻くらいからそれはもう見事にファンタジーらしさにあふれた、うつくしく儚く哀しくそれでいて熱く強い展開を見せ始めまして、最後の三巻くらいは怒濤の勢いで読み切りました。

これこそがファンタジーの精髄、みたいな純粋に透明な水晶のような雰囲気を持つ話。

私にとってはとにかく文章が美しいのが好みでして、なにげない一言からここは狙ってるなと思われる決めシーンの描写まで、すみずみまで堪能させていただきました。

当然のことですが、美しいものは美しい言葉で表現された方が嬉しいものです。
美しい物語には美しい文章が似つかわしいのです。

ファンタジーらしいスケールの大きさと美しさに魅惑されました。

オペラ・アウローラ―君が見る暁の火 (角川ビーンズ文庫)


以上でございます。

残念ながら三位までに入れられなかったのは、ロイス・マクマスター・ビジョルド『影の棲む城』、エレン・カシュナー&デリア・シャーマン『王と最後の魔術師』、パトリシア・A・マキリップ『オドの魔法学校』『ホアズブレスの龍追い人』あたりです。

とくにマキリップは入れたり出したり何度もしてましたが、短編集と長編どちらにするかに迷ったのと、マキリップの最上とはいえないかなーと思ったのとで今回は泣く泣く……。

それから池上永一『テンペスト』はどうやっても1月中に読み切れないということが判明し、評価をつけられませんでした。

総じて去年の読書は収穫が大きかったなーと思います。

今年もわくわくドキドキ悲鳴をあげながら読むようなファンタジーに出逢いたいものですね。

20090130の購入

結構な雨降りだったので行こうかどうしようか迷いましたが、前回の教訓(買い逃してそのまま)をもとに突撃しました。

伯爵と妖精 すてきな結婚式のための魔法
谷 瑞恵
4086012545


以上、購入成功。

待ちに待っていた図書館の予約本も受け取れてほくほくでしたが、雨にはかなり降られてしまい、足もととコートの裾はずぶぬれに。

しかも、鞄の側面ポケットのファスナーがイカれてしまい。

さらになんだか体調もよろしくない。インフルエンザではないと思うけどいまも腹具合がちょっと(汗。

出かけてよかったのか悪かったのか。
ともかく少し休みます。

『Tesoro オノ・ナツメ初期短編集 1998*2008』

オノ・ナツメ短編集TESORO~テゾーロ (IKKI COMICS)
オノ ナツメ
4091884180



借りて読了。

タイトルは「テゾーロ」と読む。

イタリア語で
宝、宝物
大切な物(人)
などの意。



だそうです。
十四編の短篇を収録。

初「オノナツメ」です。
ずっと「いいですよー」と言われつづけていたのですがようやくお借りしました。

結論。面白かった!

かなり独特な絵柄のマンガなんですけど、これがまた日常的なのに抽象的というか象徴的というか、人間の感情の綾みたいなものを乾いた感じでやさしく表現した話にぴったりなんですねえ。

そう、描かれているのはほんとに日常的な些細な出来事なんですが、それを切り取って描き出す方法が独特なんだと思います。その独特さの多くは絵柄に負っている部分が多いような。

マンガというよりグラフィックデザインのような雰囲気なんですよね。画面が。

読んでいて、トーベ・ヤンソンのムーミンシリーズのマンガを思い出しました。
絵そのものに飄々とした存在感があって、登場人物をつつむ空気と時間がなんとなく印象に残るような、そんな感触。

舞台になっているのは日本とイタリア。
日本が舞台の物はいかにも現代日本の家族の風景だなと思われるものが多くて、イタリアの場合は日本では描きにくい外国的な風俗? を題材にしているような気がしました。

というか、私はイタリアに統一されたイメージをもってないので、舞台がイタリアである意味はよくわからなかったというのが正直なところ。

あ、でもイタロ・カルヴィーノの雰囲気には少し似ているかもしれない。あのへんてこな発想は抜きにして、比較的ふつうな『マルコヴァルドさんの四季』とか『魔法の庭』の雰囲気。といっても最後に読んだのが1992年だから断言したりはできませんが。

ごちゃごちゃと書きましたが、この作品の魅力はとても私には伝えられません。

大人の、ちょっとシニカルでユーモアありの、すこしウエットでかなりドライなスマートな短編集をお求めの方に。
恋愛成分はほとんどありません。

『本屋の森のあかり 2』

本屋の森のあかり 2 (2) (講談社コミックスキス)
磯谷 友紀
4063406857



読了。


本屋の店員の女の子の日常を、本にまつわる人間模様と副店長への片想いを絡めて描くほのぼのマンガ。シリーズ第二巻。

一巻を読んでからずいぶん経ってしまったなあと思いつつ、二巻もまた衝動的に購入しました。

派手な展開はないけれど、本当にありそうかなと思えるラインできらりと光るエピソードをつづる、しみじみと余韻の残る連作です。

本屋のきびしい現状と、本に携わる人びとの希望がちょうどよいバランスで、シビアな現実と理想のロマンのまんなか位にいるヒロインの書店員としての成長物語にもなってます。

この巻の内容はこんな感じ。


Book6「戦争と平和」
Book7「ドリトル先生と月からの使い」
Book8「千一夜物語」
Book9「寒山落木」
Book10「雪の女王」



書店員だからって本を好きな必要はない、という言葉も中にありますが、このマンガは本好きのほうがより共感を持って受けとめられる類のお話だと思う。

しかし、いろんなジャンルの本を読んでる人じゃないとこういうふうな万人向けのお話は書けないだろうなー。
私のような世界の名作文学はタイトルしか知らないよ、な奴はそんな方々を尊敬いたします。

あー、でもドリトル先生は「秘密の湖」が私的にはベストですな。あとはカナリアオペラの話とアシカだか何だかを海へ連れていく話ね。

本屋さんの内実はかなり大変のようですが、街の小さな本屋さんも末永く続いていって欲しいと思います。

というわけで私は今日も発売日に本屋に突撃するのであった。
……が玉砕。
発売延期だって(涙。←ちゃんと調べてから突撃しなさい。

本屋の森のあかり 3 (3) (講談社コミックスキス)
磯谷 友紀
4063407020


『時間のない国で 下』

時間のない国で 下 (創元ブックランド)
ケイト・トンプソン 渡辺 庸子
4488019501


[Amazon]


読了。

現代アイルランドを舞台にした音楽あふれる明るいローファンタジーの下巻。

なくなった時間はどこへ行ったのか?
母親への贈り物として失われた時間を取り戻そうとJJが向かった先はティル・ナノ・グ、常若の国と呼ばれる妖精の国だった。

というわけで、ティル・ナノ・グと人間界の両方が同時進行で語られる下巻は、ティル・ナノ・グの特異性とそのために生まれる住人達の特性のためにいちいち行動を疎外されてしまうJJの、悪戦苦闘というにはなんだかほわわんとして夢を見ているみたいな冒険と、JJが行方不明になってから大騒ぎになる人間界がやっぱりなんとなくあっけらかんと描かれて、なんともいえない幻想奇譚となっています。

この危機感の薄さは乾いたユーモアに満ちた筆致もさることながら、妖精国の「今このとき」のことしか考えられない、陽気で刹那的な住人達とかれらの生み出している音楽によるところがおおきいのかなあと感じました。

アイルランドの歴史はかなり苛酷で辛いもので、そのあたりのこともきちんと触れてある話なのに、この身軽さはおどろきです。

同時に、妖精の丘で時間を忘れて音楽に身をゆだね、戻ってみたら何百年も経っていた――というはなしが、こんなにリアルに感じられる話は初めてでした。

ああ、そうなのか。こんなふうに誘われたら戻ってこられないし時間も忘れるよなと実感した。

そうしている間に人間界では深刻な事件が進行しているのにね。

妖精国のそんなふわふわ感は、名前からどんな存在だか推測できる人物があらわれてもまったく変わらず、むしろその地に足のつかない感がどんどんひどくなっているのがおかしいです。

視点がまだまだ無邪気で人生のつらさをあまり味わっていない少年に据えられているから、という理由もあるかな。

JJのお母さん視点だったら、こんなのんきな話に話にはなかっただろう。

なにを書いているのかだんだん私も訳がわからなくなってきましたが、とにかくこれはまさに現代の妖精譚だと太鼓判を押しておきます。

妖しく美しく荘厳なものではなく、あっけらかんとしてのんきでたのしくそれでいて切ないお話でした。
それから、アイルランド人ってほんとうに音楽とダンスが好きなんだなあというお話でもありました。

私は靴下がなくなるエピソードと、笛のエピソードがお気に入りです。

それにしても、アン・コーフはどこへ行っちゃったんだろう?

巻末に「妖精のさきわう国」として井辻朱美さんが解説を書いておられます。


上巻はこちら。

時間のない国で 上 (創元ブックランド)
渡辺 庸子
4488019498


こちらは続編。

プーカと最後の大王(ハイ・キング)―時間のない国で〈2〉 (創元ブックランド)
Kate Thompson 渡辺 庸子
4488019641

『犬夜叉 20』

犬夜叉 (20) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091255906



読了。

中学二年生の日暮かごめが戦国時代にトリップ。半妖の少年犬夜叉とその仲間達とともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇冒険アクションラブロマンスマンガのシリーズ第二十巻。

この巻には、
鉄砕牙を使いこなすために竜骨精の心臓を貫こうとする犬夜叉の前に、奈落が竜骨精の封印を解き、竜骨精と犬夜叉のバトルになるエピソードの完結編と。
生前の桔梗に恨みを持つ黒巫女・椿が奈落の片棒を担いであらわれ、かごめちゃんに呪詛をうつエピソード。
が収録されています。

犬夜叉、かごめちゃんそれぞれがメインのエピソードでどちらも読み応えたっぷりでした。

鉄砕牙に振りまわされていたのが、かごめちゃんのためにと想いを定めたとたんになんだか意外な潜在能力があることを証明する犬夜叉。

椿に操られながらも犬夜叉を傷つけまいと必死に自分を保つかごめちゃん。

おたがいの存在を糧に着実に成長を続けるお話は読んでいてなんとも頼もしいものでした。

あいかわらず奈落は暗躍してますが、見逃せないのは桔梗の存在だなと思います。
桔梗は無条件に犬夜叉の味方ではあるものの、かごめちゃんに対する複雑な思いを隠そうとはしない。彼女はかごめちゃんに対しては無関心を装うとしますが、じつのところ、かごめちゃんの存在こそが桔梗をこの世にひきとめているのではないかと想像します。

クールな面とは裏腹に熱く滾る想いが彼女の本質なのだな。
椿を追い詰めての捨て台詞が超かっこいい! です。

しかし、このクールな美女、桔梗姉さんとガキ大将みたいな犬夜叉はどうやって恋仲になったんだろう……そこが謎(笑。

それとも昔の犬夜叉はもっとハードボイルドだったのか。
とりまきがいじるからお笑いキャラになってるけど、孤独な犬夜叉はもっと荒んでいたのかもしれないなー。

などと勝手に妄想を膨らませつつ、つづきを待つことにいたします。

犬夜叉 (21) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256414


20090124の購入

「ヴァルデマールの使者」完結編をゲット。

天翔の矢 (C・NovelsFantasia ら 1-3 ヴァルデマールの使者 3)
マーセデス・ラッキー 澤田 澄江
4125010633


二巻ほどだらだらしてなければいいんですが(汗。


すでに予算オーバーの今月はあと、
棺担ぎのクロ。~懐中旅話~ (3) (まんがタイムKRコミックス)
きゆづき さとこ
4832277693




伯爵と妖精 すてきな結婚式のための魔法
谷 瑞恵
4086012545


以外は買わない買わない買わない……。

『サンシャイン&ヴァンパイア 下』

サンシャイン&ヴァンパイア〈下〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055273


[Amazon]


読了。


デーモンが闊歩する近未来アメリカを舞台に、パン職人の娘がヴァンパイアがらみの事件に巻き込まれて本来の自分と向き合うことになる、パラレルダークファンタジー完結編。

はー、面白かったー!
光と影、善と悪のコントラストの強い世界に魔法とパン屋の甘い香りの漂う、個性的なファンタジーでした。

現代社会派ミステリ並みに日常的な人間の世界に、ヴァンパイアと魔物と魔法の非日常が覆いかぶさってくる様と、それに混乱し、反発し、絶望し、それでも前に進み続けようとするヒロインのつよさが印象的。

話自体がヒロインの一人称で語られているので当然なんですが、彼女の庶民的かつ強気な性格がこの話をからりとドライな雰囲気にしている大きな要因だと思われます。

おなじようにヴァンパイアのいるアメリカが舞台でも、アン・ライスの「ヴァンパイア・クロニクル」の妖しさ耽美さ歴史ものぽさはほとんどなく、自称“シナモン・ロールの女王”の鼻っ柱のつよさ、頑固さで、皮肉まじりのユーモア混じり描かれていく当たりがいかにも現代のヴァンパイアものという感じ。

ときどきあまりにもヒロインの感情というかパン作りへの情熱がつよくて、「あれ、いまどんな状況なんだっけ?」と一時的な記憶喪失になりかけたりしましたが、最後はきちんと本筋に戻ってくれるのでストーリーにもついてゆけました。

そう、パンなのです。
この話の大きな魅力のひとつはヒロインのいるパン焼き室とヒロインの作るパンにあるといってもよいかと思います。
義父チャーリーのはじめたコーヒーハウスで子どもの頃からパン焼きを習っていたヒロインは、周辺界隈ではパン作りの名人として有名な存在。
話には彼女の作る独創的な名前のパンがいくつもいくつも、それこそ雨あられのように頻繁に登場します。
このパンのネーミングがまた凄いんだよね。
いかにもアメリカンスウィートってかんじの、ドデカかつ極甘なブツを連想させる、とんでもないネーミング。
なのになぜか無性に食べたくなってくるんです。実際に食べたら胸焼け必至だとおもうんだけどとても魅力的に描かれているのでそんなことはどうでもいいわ! と思ってしまう。

話が佳境になるにつれてパンの出番は減るのかと思いきや、さらにあらたなメニューが加わったりと大忙しです。
このパン達のおかげでヒロインが日常にこだわる気持ちがとってもよく伝わってくるので、その点でもパンの効果は絶大だと思います。

そんなわけで日常のすばらしさを堪能できる本書ですが、魔法と魔物の幻想的なシーンもたいそういろいろと工夫されていて、闇の魅力にあふれています。

ヴァンパイアや獣人達はぜんぜん美しくないんですが、ヴァンパイアの異質な存在感はそれこそ生理的嫌悪をこえるほどに際だっていて、醜さもきわまれば強さになるといった態。
ヒロインに与えられる防御の仕掛けのうつくしい描写にはヘドロの中でみつけたひとすじの光のような希望を感じるし、得体の知れない何を考えているかもわからないけれど、とにかく味方であるはずのヴァンパイアの描かれ方もたいそう魅力的。

この話はほんとうに最後まで二項対立の話で、その点はじつにアメリカ的だなと感じるのですが、その単純さがいい意味で魅力になっているというか、こういうところがアメリカ的爽快ハッピーエンディングに結びつくんだなーとあらためて感じた次第です。

ところで、上巻でほのめかされてる? と感じたロマンス方面ですが、あまり期待しない方がよろしいかと思いました。
ロマンス目当てに読んでしまうと、きっと欲求不満に陥ると思います。

そういえば、扶桑社ミステリーはロマンス小説のレーベルじゃないんでしたね。
『嘘、そして沈黙』とかを出してた本格的なミステリのレーベルだったんだったとあとで思い出しました。シャーロット・マクラウドのシャンディー教授シリーズなんかも出てましたね。

『サンシャイン&ヴァンパイア』は『ヴァンパイア・レスタト』とかの流れで出したのかなと思いますがあれはもうずいぶん昔の話だし、その点でいうと対象読者を間違っている様な気がしないでもありません。
むしろ、先日読んだビジョルドのほうをこちらで出した方がよかったのではなかろうか。

サンシャイン&ヴァンパイア〈上〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055265


『桃源の薬 星の杖と暁の花』

桃源の薬 星の杖と暁の花 (コバルト文庫)
山本瑤 香坂 ゆう
408600724X


[Amazon]


読了。

可愛らしい雰囲気の中華風異世界ファンタジーロマンス。シリーズ二冊目。


東株国の名家の娘・招凛花は、白翼山に住む方士インシェンのもとに住むことになり、初めての冬を迎えていた。山の冬は雪ばかり。訪れるものも少なくなりインシェンはあいかわらず無口なまま薬づくりに没頭中。凛花が退屈していることにようやく気づいたインシェンが、南の蘭城へ避寒に行かないかと切り出した時、人面を持つ馬神・英招が訪ねてきた。仙人を名乗る人間のはじめた妖狩りによって恐ろしい蟲毒に侵されたかれは、みずからの統べていた蓮州の結界を救うため龍の血をひくインシェンに助力を求めてきたのだ。



第一巻が楽しかったので借りてみた第二巻です。
前巻でヒーローとヒロインが心を確かめあったあとでなにが焦点になるのかという好奇心は、だいたい満たされた模様です。

まず、金龍の血をひくインシェンが龍王位を望むか否か。

どうやらこの世界ではインシェンの父親が幽閉されたために王がいず、すくなからぬ混乱状態にあるらしい。状況を安定させるために魔物達はインシェンに龍王位を象徴する杖をとるようにとせっついているようです。でもインシェンはいまのところ妖精を突っぱねつづけているらしい。

それから、インシェンと凛花がいつ本当にむすばれるか。

凛花もまだ「インシェンが好き」と思うだけでそのあとに進むことは考えもおよばないようですが、インシェンは半妖の自分の身の置き所にまだ決心がつかず、よって凛花のすべてをひきうける自信がない模様。

というわけで、さっさと決意して凛花をものにして龍王位についてしまえ、その逆でもよろしと、狐狸精の娥瑛ばあちゃんは凛花の方をたきつけるわけですが、こういうのって言われれば言われるほど頑なになるものですよね。

この巻のエピソードは、英招の遺言を実行しようとする凛花がみずからの母親へのわだかまりをとくことと、英招の縁者に出逢っていろいろと見聞を深めるというあたりがメインかと思いました。

やっぱり、甘くてほんわりとあたたかい手触りのお話です。

でも、私はもういいかなーという気分。
このまま甘々展開が続くと途中で飽きてしまいそうな予感がする。
もともとハード展開の方が好きな性分なもので。

インシェンがもっとずっと朴念仁だったりしたら、もすこし感じることもあるかと思うんだけど、かれ、私の希望ラインよりもできてるんですよ人格が。

安心して読める話でももすこしスパイスが効いたほうが好み。
……やはり歳のせいだろうか。

でも最後がどうなるのかは知りたいなー。
もう完結してるのかな。完結編だけ読んだらだめかしらん。

つづきはこちらです。

桃源の薬―春風に舞う後宮の花 (コバルト文庫)
山本 瑤
4086007657


『サンシャイン&ヴァンパイア 上』

サンシャイン&ヴァンパイア〈上〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055265


[Amazon]


読了。


 魔物と人類が共存するアメリカを舞台に、毎日パンを焼いていた若い女性が突然ヴァンパイアがらみの事件にまきこまれていく様を、ディテール豊かに描くサスペンスダークファンタジーの上巻。


子どもの頃からパンを焼くことに魅力を感じていた彼女は、今や家族経営のコーヒーハウスの主戦力としてパンを焼く毎日を楽しんでいた。コーヒーハウスは順調で、そこには両親も友人も恋人もいる。おかげで彼女の世界はほとんどコーヒーハウスで完結していた。不満はないはずだったがそれでもストレスがたまる時はある。その夜、彼女は昔家族と過ごした湖の別荘へとひとりで足を伸ばした。そこは彼女の本当の父親の持ち物で、両親が離婚してからはときおり祖母と会うためにきていたところだ。だが、ヴードゥー戦争と呼ばれる魔物達との戦いを境に、祖母と会うこともなくなっていた。世界には人間と人間ではないものが存在している。獣人の血をひく人間など珍しい存在ではないがかれらが人間の味方であるというわけではない。とくに危険なものはヴァンパイアだ。危険を冒しているつもりはなかったが、彼女はいつのまにかそのヴァンパイア達に取り囲まれ、捕らえられてしまう。



レーベルからロマンス物かと敬遠してましたが、どうやらそうではないらしいという噂を聞き、読んでみました。

おお、これは面白いです!

ほとんどフツーの世界日常を描いているようなはじまりから、どんどん違う側面が見えてくる。
パン屋の娘の忙しくてクタクタだけれどどこまでも地に足がついた日常が、じつはとんでもない世界の上に成り立っていたことがわかっていく過程がたいへんにスリリングでした。

それだけではなく、同時に日常に溶けこむために伏せられていたヒロイン自身に関する物事があきらかになっていくので、どこを読んでいても気がぬけない。

荒唐無稽な非日常と日常の地続き感が絶妙で、うわーうわーとクロワッサンの薄皮を剥いでゆくような快感が味わえました。

物語世界の説明とヒロインの背景の説明とを、導入部の勢いの中でこなしてしまってる。
気がつくと説明的な文章はかなり多めなんですが、それをうっとおしいと思わせずに読ませてるところが、すごいなーと思いました。

それからですね、この話の中でのヴァンパイアはかなり非人間的でしかも非生物的で、生理的な嫌悪感を抱かせる存在として描かれているのですが、それでもなおかつ魅力的だと思わせるあたりも、おおーっでした。

いまのところ、ロマンス小説的な描写はなく、たしかにこれはロマンス小説ではなくファンタジーだなと納得。とはいうもののロマンス要素が皆無というわけではなく、それを予感させるようなシーンは随所に散見されてます。

ヴァンパイアものはやはり血だよね、血液。
なまあたたかい赤い液体が体をつたう感触だけで、どこかエロティックな雰囲気が漂うのです。

実際に自分の体から血液が流れ出るのを見ても、痛いかうへえと思うだけなのに、フィクションだとどうして興奮するのでしょうか。

ともあれ、この世界では魔物の存在は人類にとっては危険であり、間違っても友好関係を持つような雰囲気でないことはあきらかです。

魔物と人間が一緒に住んでるアメリカというと縞田理理さんの『モンスターズ・イン・パラダイス』が浮かびますが、根本的な姿勢が敵同士なので両者の間によこたわる世界は殺伐としています。

なんとなく妖怪達と仲良しになってほのぼのしてしまう昨今の日本のフィクションとは、かなり違いますねえ。
ロシアのルキヤネンコ作「ナイト・ウォッチ」シリーズの方が雰囲気としては似ている気がします。
やはり、キリスト教が根底にあるからかだろうか。よくわからないけど。

お話は、そんなハードな環境で出逢ったヴァンパイアとヒロインは、実際に共同戦線を張ることができるのかというところで下巻に続いてます。

人とあやかしが理解し合えるのかというテーマは、日本の妖怪ものと同じな気もするんですけど、こちらのほうがずっとハードルが高いのでクリアできたら感動しそうだなと思います。

あら、やだ。自分の感想を予想してるますよ私ったら。

余計なことは考えずにつづきを楽しみたいと思います。

サンシャイン&ヴァンパイア〈下〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055273


『ケロロ軍曹 9』

ケロロ軍曹 (9) (角川コミックス・エース)
吉崎 観音
4047136514



借りて読了。

地球侵攻にやってきたカエル型宇宙人ケロロ軍曹とかれ率いるケロロ小隊。
ケロロが居候することになってしまった地球人一家日向家の面々。
さらにその周辺のひとびとがおもにケロロ小隊による様々な事件に遭遇するギャグマンガ。
シリーズ9巻目。

ケロロももう9巻目か~。
この巻は作者さん曰くテーマ「友達」なんだそうで、そういえばそんな感じのほのぼのエピソードが多かったです。

ケロロ小隊の構成員って軍人なんだからみんな一応成人に達しているんだろうけど(タママはオタマジャクシだけど)、どうも体型のせいかみょうに子どもっぽい。(←重心が高いのですぐこけそう。歩き始めたみよちゃん状態)

だからなのか、子どもとの相性がとてもよい気がする。
しかも絵柄がかわいいからか子どものキャラもとても生き生きしている。
冬樹くん五歳バージョンなんていかにも五歳児なキャラクターで、もうわははと笑いころげました。

それから、日向家の秋は秋奈おばーちゃん(提督)でしたね。
うう、とーちゃんの存在する余地なしか。

キャラクターもどんどん増えていって基本的におバカな中にも時々おバカなSFなエピソードもあったりして、大変楽しい巻でした。そういえば今回サブカルパロネタをほとんど発見できなかった。発見しようと思うよりまず話そのものが面白かったのでスルーしてしまったのだと思いますが。しかしほんとはこれがフツーのマンガの読み方ですよね。うむ。

ところでケロロの所属するケロン軍ですが、これってあきらかにジオン軍をもじってますよね。
ケロン軍ケロロ小隊ケロロ軍曹。
これをジオン軍に直すと、
ジオン軍ジオロ小隊ジオロ軍曹。
……になるわけがないですな。
おそまつ。

ケロロ軍曹 (10) (角川コミックスエース)
吉崎 観音
4047137057


『黒執事 1』

黒執事 1 (1) (Gファンタジーコミックス)
枢 やな
475751963X



借りて読了。

ヴィクトリア朝チックなどうやらパラレルワールドを舞台に、きれいなお坊ちゃまと美形万能執事の活躍を描く、時代オカルトサスペンスコメディー? 第一巻。

薦められてアニメを見、面白かったので原作も読んでみました。
面白かったです。
面白かったけど、アニメとは微妙に違うのですね。

アニメでは監修もついていてヴィクトリア朝を舞台として限定しているようですが、原作マンガはどうもそこまで徹底していない模様です。なにせ、携帯電話が出てくる……。

キャラクターや話の大筋はほとんど変わらないので、アニメでは舞台設定をより綿密にしたということなのでしょう。

キャラクターはとくに主人公の執事が日本人にとってのこれまさに定番という設定。
最初に名前がセバスチャンと聞いて私は吹きました。
なんですか、これはと思いつつ見ていたら、そういうノリが実に一貫していて、そこが面白い話なのでした。

現実的にヴィクトリア朝にセバスチャンなんて名前が一般的なのだろうかと疑問だし、セバスチャンの決めぜりふも日本語でしかインパクトないだろうし、まあ、いろいろとつついていくとあれなのですが、この話はノリで突っ走る系なのでこれはこれでいいんだと思いますし、私はそれで十分に楽しめました。

アニメは無機質な絵柄が美しいですが、原作のちょっと癖のある絵柄はいかにもマンガ! という気がして手書きのあたたかさが感じられます。それにやはり美しいです。

ところで、坊ちゃんシエル君ちの家名ファントムハイヴって何系の名前なのだろう。
アニメで見てるときにはてっきりファントムファイブだと思ってたけど、違うのね(苦笑。

あと作者さんの名前「枢やな」は「とぼそ、やな」と読むそうです。

つづきは読むかどうかわからないけどアニメは間違いなく見ると思う。
録画時間を間違えなければ、ですが(汗。

黒執事 2 (2) (Gファンタジーコミックス)
枢 やな
4757520638

『時間のない国で 上』

時間のない国で 上 (創元ブックランド)
ケイト・トンプソン 渡辺 庸子
4488019498


[Amazon]


読了。

現代アイルランドを舞台にしたロウファンタジーの上巻。

みんなが「時間がない」と焦りながら生きている。
時間はどこへ行ってしまったんだろう。

母親のために失われた時間を求めて異界へと踏み込んでしまう、十五歳の少年JJのお話です。

はじまりはすこしミステリめいている以外、これといってファンタジーぽくは感じられないのですが、変わっているのはパートの一項目のあとにかならず関連するようなタイトルの曲の譜面が載せられているところ。

毎週ケイリー(音楽のダンスの夕べ?)をもよおすアイルランドならではのお話で、音楽が行間にあふれている展開にふさわしい趣向ですね。

きちんと譜読みできた頃はこれでだいたいどんな曲だかわかったのになあ……とかなり残念です。弾いてみればわかるだろうけどゆびが動かんし。

シーンの転換の速さの意味やなにやかやの理由は、読み進むにつれてしだいに納得できるようになりました。

アイルランドの妖精譚がこんなふうにとりこまれているお話は、私にとっては初体験かもです。
アイルランドの話にしては翳りがあまりないのも目新しい感じ。

歴史的なことも踏まえてあるんだけど、現代の少年の視点で描かれているからでしょうか。

残念なのは、一冊の分量があまりにも少ないことです。
これで上下巻に分けるなんて、ちょっとひどいと思うですよ。

下巻を同時に借りなかったという自分の失点が恨みを倍加させてるのであった(苦笑。

つづきはこちらです。

時間のない国で 下 (創元ブックランド)
渡辺 庸子
4488019501


『犬夜叉 19』

犬夜叉 (19) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091255892



読了。

戦国時代へトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉と仲間達とともに四魂の欠片を求めて旅をする、伝奇冒険アクションファンタジーロマンス。シリーズ19巻。

この巻には、
珊瑚ちゃんの弟琥珀くんが奈落に操られてかごめちゃんを襲うエピソードのつづきと、
妖怪蛾天丸の毒粉のために重傷を負った犬夜叉が己を見失いそうになったところを、朴仙翁から鉄砕牙の秘密を知らされた殺生丸が助けてくれるエピソードと、
犬夜叉が鉄砕牙を操りきれないのは自立していないからで、父親が封印した竜骨精を斬るがよいといわれて出かけた先で奈落の妨害に遭うエピソードの途中まで、
が収録されています。

……いいのかなここまで書いて(汗。
『犬夜叉』に関しては自分のための覚え書きとして書いているのでときどき書きすぎじゃないかとあとで思うことがあるのですが、どうなんでしょう。

とはいえ、今から犬夜叉を読むから粗筋書くなという方はあんまりいないんじゃなかろうかとも思うしなー。

ま、いいや←オイ。

今回の見所は珊瑚ちゃんが弟を思う切ない姉弟愛と、殺生丸が犬夜叉に抱いている複雑な兄弟愛というかライバル心というかと、少年ものにつきものの成長するために親父は超えねばならないハードルであるという宿命かなと、思いました。

こうしてみると話の冒頭からすでにお亡くなりとはいえ、犬夜叉の父ちゃんって実に偉大なひと……いや妖怪だったんですねえ。

妖怪なのにあとあとまでの子どもたちのことまで考えてたんだと感心してしまいます。
妖怪にも親子の情があるんだなあ。
それにしても、よほどいい男だったんだろうなあ……。
犬夜叉のお母さんはおぼろに回想シーンに登場してますが、殺生丸のお母さんはどんな方だったんだろうか。妄想してしまいそう。

しかし、常日頃犬夜叉にくっついてる親父様関連の配下って冥加じいちゃんだけなんですよね。この落差はなんなのだろうか。

つづき、はやく読みたいです。
どうなるのかは知ってるけども(苦笑。

犬夜叉 (20) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091255906


20090116の購入

寒さのあまり穴蔵でこもっていたらだんだんストレスがたまってきた。
甘いものがたまらなく食べたくなって、ついついいろいろつまんで、体重も増えてしまって、またストレスの原因にという悪循環。

さいわい予約本到着のお知らせが来たので、図書館本を受け取りに行くことを理由に外に出る。


本屋の森のあかり 2 (2) (講談社コミックスキス)
磯谷 友紀
4063406857


ついでに本屋に寄って、衝動的に買ってしまった一冊。
今月はあと2冊と我慢していたんですけどどうにもこうにも、忍耐が尽きた模様です。
でもこれ以上は衝動買いはしないぞ。と心に決める。決めるだけで終わらないように。

しばらくぶりに歩いたのでどうだ! と思いつつ体重計にのったら、前夜よりも増えてた(涙。

『死者の短剣 惑わし』(追記あり)

死者の短剣 惑わし (創元推理文庫)
Lois McMaster Bujold 小木曽 絢子
4488587089


[Amzon]


読了。

異世界ロマンスファンタジー。

うーむ。これってどういう話?

ファンタジー的には話は終わってないと思うけどこれで完結ならこれはファンタジーではないのだと思う。

ロマンス小説なのだろうか。
フツーのロマンス小説には縁がないので語ることはしませんが、これがロマンス小説的な作法に則って書かれた話なら、私には縁がないものだと思わざるを得ません。

いろいろとファンタジー的に魅力的な小道具や世界背景があるのに、結局描かれているのは異民族間の恋愛だけという気がする。しかもハードルはけっこう低かった。

それならば別に舞台を異世界にしなくてもいいじゃん、というのが私の考え。
こんなふうに話を収束させるなら思わせぶりにいろいろ出さなければいいのに、と不満たらたらで読み終えました。

『チャリオンの影』のビジョルドだからという期待は見事に外れた。

最重要と踏んでいたアイテムのその後がとても気になりますが、訳者あとがきには続編があるような記述はなかったのでおそらくないのでしょう。
あったとしても読む気になるかどうかはわかりませんが。

それから、こちらは些末なことですが、ヒロインであるフォーンの家族の呼ばれ方に統一性がないことが大変気になりました。
父親が「父ちゃ」で母親が「母ちゃ」なのに兄たちは「兄さん」て。

とにかく、
男性がかなりの年上で女性がうら若いという年の差カップルがお好きな方でロマンス小説好きなら、楽しめるかもしれないですね。

私はフツーのロマンス小説は不得手なのだということがよっくわかりました(苦笑。

ファンタジー好きにはこちらをお薦めします。
チャリオンの影 上 (創元推理文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド
448858702X


チャリオンの影 下 (創元推理文庫)
ロイス・マクマスター・ビジョルド
4488587038



追記。

あとで気がつきましたが、この話はまだ完結していなくて四部作の第一部だそうです。
あとがきの冒頭を読み飛ばしていた模様です、ごめんなさい。

「恋人の石~〈荒地の民〉の物語」

冬木洋子さん作「恋人の石~〈荒地の民〉の物語」読了。

異世界ファンタジーロマンス短篇。精神的にちょっと大人向けと思う。
穏やかな雰囲気と歳月の流れが印象的。

『流れ行く者 守り人短編集』

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド)
二木真希子
4035403601


[Amazon]


読了。

アニメ化された『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズの番外短編集です。
描かれているのは本編よりかなり過去のこと。

バルサがまだ十代のはじめで、育ての親ジグロとともに逃亡の旅をつづけながら様々なことを体験する物語。

収録作品は以下の通り。


浮き籾
ラフラ〈賭事師〉
流れ行く者
寒のふるまい



どれも物語世界の深みと人間へのぬくもりある洞察に満ちた、しみじみと余韻の残るお話でした。

「浮き籾」はバルサよりさらに幼いタンダ視点で描かれた、フーテンの寅さんみたいな近所のおじさんの人生にまつわるお話。

「ラフラ〈賭博師〉」は、バルサが年老いた賭博師の女性にさまざまなことを教えられるお話。すこし『マルドゥック・スクランブル』を彷彿とさせました。

「流れ行く者」は、ジグロとともに加わった隊商で流れ者の末路を見届けるお話。かなりハードなアクションものでもあり。

どれも人間に流れてゆく歳月の積み重ねが身にしみましたが、人生って甘くないけどやろうと思う意志があればいろんなことができるものだということも感じました。

今回、興味深かったのはジグロが生きて登場している! ということ。
かれがバルサにどう接し、どうやって育て、どんなことを学ばせてきたかがよくわかって、なるほどーと思いました。こうやってあのバルサ姐さんができあがっていったんだなーと。

それからこの世界の賭事のこと。
アニメ版にもサイコロ博打がでてきましたが、ここに出てきた賭博はさらに複雑で、戦略や戦術をも駆使する高度なものになりえて、さらにバルサがこのゲームを得意としているというあたりがなるほどでした。

全体的に幻想色は薄めでしたが、バルサにはその手の素養が欠けていたし、まだ自分のこと以外を背負い込む能力はないので、いたしかたないかなと思います。

唯一、タンダ視点の「浮き籾」が濃厚な異界性を持っているのは、タンダには生まれつきの能力があるからで、そのことがけして歓迎されていたわけではないこともわかります。

本編ではけっこうのほほんと日常を送っていてバルサの故郷みたいな雰囲気でいたタンダですが、かれはかれなりにいろいろと苦労があったんだろうなあ、というかこれから苦労するんだろうなあ、と思わされました。

それでも、最後の短篇でやはりタンダはバルサにとっての家のぬくもりを象徴している存在なんだなとあらためて感じ入った次第です。

読み終えた時にはシリーズ本編の最後がかさなって、なんとなくじわーっと来てしまいました。

とても上質な短編集だったと思います。

『RIDEBACK 1』

RIDEBACK 1 (1) (IKKI COMICS)
カサハラ テツロー
4091884717



借りて読了。

近未来SFロボットアクションマンガ、シリーズ開幕編。

アニメ化されるから読んでみといわれて読んでみました。

素人の女の子がいきなり二輪と人型ロボットの中間みたいなメカに乗って、天才ドライバー(?)ぶりを発揮するお話です。

メインはメカと女の子。

それに政治情勢とか七十年代の学園紛争みたいな背景とか、バレエダンサーをめざしていた女の子の過去とかがいろいろと絡んで来るみたいですが、とりあえず大方の読み手であろう男性のハートを捕らえたのは、メカと女の子なんだろうなと。

メカはともかくサービスカットの数々に萎えながらも最後まで読みました。
物語背景が硬派なのが私的にはポイント高かったです。

数々の「ええっ、そんなんアリ?」(素人になんの防護手段も与えずに勝負とか)なシーンは流し読めと言われました(苦笑。

そもそも二輪を人型にする意味はあるのかといったら、この話は成り立たないんですよね(苦笑。

アニメではライドバックなる二輪ロボット(?)の疾走シーンをうまくやってくれれば面白いかも、と思いました。

つづきは読むかもしれない。

RIDEBACK 2 (2) (IKKI COMICS)
カサハラ テツロー
4091884725

『古代の声 増補版 うた・踊り・市・ことば・神話』

古代の声―うた・踊り・市・ことば・神話 (朝日選書)
西郷 信綱
4022596325


[Amazon]


やっとこさ読了。

おおむね日本とすこし沖縄の古代の精神世界を、歴史的な資料の言葉の意味から読み解いていく、興味深い本。

『古代人と夢』『古代人と死』が面白かったのでふたたび同著者の本を借りてみました。

面白かったけど難しかった。

難しいのは私が古文を読み下せないことによるのが大半なので、日本人としては恥ずかしいかぎりです。字面見てなんとなくわかったような気になるけれどけっきょく意味わからん、てな感じで読んでいくので、解説されていることの半分も理解できていない気がするのです。

ああ、もったいない。英語でもフランス語でもアラビア語でもペルシャ語でもない、日本語の文献なのにさー。日本人なのにさー………。

持てなかった能力を嘆いても仕方ないので、読める限り読みました。途中で何度も眠りましたが(汗。

内容は以下の通りです。


市と歌垣
 資料 市と境 市と歌垣の相関 筑波 山のカガヒ 歌垣から踊り念仏へ

御霊会の意味
 資料と疫神 御霊会と民衆 恐怖への勝利

アヅマとは何か
 地名起源譚としての「アヅマはや」 妻と端の連動 二つの辺境 アヅマとサツマ 坂・境・峠 宮廷と辺境

古事記の行間を読む
 ヤマトタケル東征譚をめぐって 鹿島と蝦夷のこと 科野の坂と諏訪の神 神話と歴史と

枕詞の詩学
 枕詞の謎 枕詞をどう定義するか 口承言語の力学 「大和」にかかる三つの枕詞 「八雲立つ」と「やつめさす」の対立 韻律単位の問題 古代歌謡における枕詞 柿本人麿と枕詞 再び枕詞の不思議さについて

オモロの世界
 オモロと未詳語 詩形の問題 歌と舞踊 祭式歌謡としてのオモロ オモロの本義 オモロにおける宗教思想

古代研究の罠
 固定観念 誤読の歴史のなかで 観念による上空飛行 構造的連関の発見


あとがき
朝日選書版あとがき
初出一覧
索引




アヅマとサツマが連動しているとか、枕詞の不思議とか、市の様子とか、今回もなるほどねえとうなずかされることが多うございましたが、今回もっとも興味深かったのは、沖縄の「オモロ」について書かれた項でした。

これってまんま池上永一『テンペスト』の世界です。
下巻を待ちつづけて数ヶ月、もうどうなって上巻が終わったかを忘れ果てている『テンペスト』の、ファンタジー的側面を支える根幹部分がここに解説されていますよ、お姉さん!

読んでいてそういえばそうだったと思いあたること数しれず、しかし読んでいてあれでいいのかなというかなんというかそうとう不謹慎な描き方されてないか『テンペスト』の聞得大君、という気分にも(苦笑。もともとがああいう作風だし、断然面白いから許すけど。

それに『テンペスト』があったからこの項がとくに理解しやすかった気もするし。

というわけで、内容を受けとるのにたいそう苦労しましたが、読めてよかったです。
ファンタジーを夢想するのに便利な道具をいくつかもらった気分。←結局そこにつきる。

それにしても私はいつになったら『テンペスト 下巻』を読めるのでしょうか。るるる。

『桃源の薬』

桃源の薬 (コバルト文庫)
山本 瑤 香坂 ゆう
4086006731


[Amazon]


読了。

中華風異世界ファンタジー少女向け。シリーズ開幕編。



皇帝を助けた金竜の伝説が伝えられる東株国。もうじき十五になる少女招凛花は都の北方にある白翼山を懸命にのぼっていた。この山には魑魅魍魎が跋扈するといううわさがあるものの、そんなものが現実にいるわけがない。険しい道のりにひるみもしない彼女には、ある人物に会うという大きな目的があった。その人物はおそらく方士で薬を作ることにひじょうに長けているのだ。ところが、やはり白翼山はあやかしの場所だった。獣の気配に足どりを乱した凛花は、逃げようとして斜面を転がり落ちた。目の前の犬のような狼のような白い獣が言う。『喰わせろ』 ぺろんと頬を舐められた凛花は昏倒した。




なんとなーく気になっていたシリーズ、ふと思いついて検索したら予約待ちなしだったので借りてみました。

結果。

おお、これはけっこう当たりかも。

きっちりと説明描写のゆきとどいた文章に、生き生きとしたキャラクター。
若干甘めではありますが、筋の通ったストーリー展開。
なによりも中華風の物語世界がディテールゆたかに描きこまれているところが嬉しいです。

端的に言ってしまえば、異界めいた山奥にひとりで住まう、不思議な存在感を放つ若き方士インシェンと、大貴族の姫ながら放置されていたため庶民感覚で素直に育った凛花のロマンスがメインですが、インシェンの複雑な生い立ちやかれの周囲に薬を求めてたちあらわれるあやかし達の存在をときにユーモアを交えてあたたかく描き出していて、読んでいて「かわいい話だなー」と心がぬくもりました。

とくに属性が犬っぽいけどじつは○○のシロがとても可愛く、いい味出してるなーと思います。ちと可哀想な役だけど(苦笑。

雰囲気としては中国仙人譚風ラブファンタジー、少女向け、ほのぼの風味というかんじでしょうか。

この巻では、二人の出会いと、その後が描かれていまして、これはこれでもう完結でもいいかなと思うのですが、シリーズはここから延々とつづきます。
どういう目的で続くのかは読んでみないとわかりませんが、とりあえず次巻は借りてみるつもりです。

収録タイトルは以下の通り。


黄金の媚薬
龍の秘薬

あとがき



つづきはこちらです。
桃源の薬 星の杖と暁の花 (コバルト文庫)
山本瑤 香坂 ゆう
408600724X

「銀の矢が指すその先に」

塩さん作「銀の矢が指すその先に」読了。

近未来SF青春短篇。「光の速さで16秒」シリーズ第2作。
全然雰囲気は違うのだけど、私にとってはなぜか昔の萩尾望都の短篇を思い出すシリーズです。

『ケロロ軍曹 8』

ケロロ軍曹(8) (カドカワコミックスAエース)
吉崎 観音
4047136131



借りて読了。

地球侵攻のためにやってきたカエル型宇宙人ケロロ軍曹とその愉快な仲間達、かれらを居候させる羽目に陥った日向家のひとびとがくり広げる、日常ほのぼのギャグマンガ。シリーズ八巻目。

あいかわらずサブカルパロディー満載で続いてます、ケロロ軍曹。
今回はネタがわからなくてもけっこう楽しめる話が多かったので安心しました。

一番気に入ったのは、「第六拾五話 衝動買! 我翼整備不良!?…の巻」でした。
木の上に上った子猫が降りてこられなくなってみーみー泣いてるようなエピソードで、ケロロが可愛かったので。

でもきっちりと宇宙戦艦ヤマトネタ、キューティーハニーネタ、トキワ荘ネタには食いついてましたけどね。

あと、私は頭身が大きくなって筋肉むきむき姿になったガマ星人がとっても苦手です。
顔が変わらないので余計にウエッと思う。
だからナメクジを変化させたウェットルマンも気持ち悪(汗。

かわいい絵柄に突然筋肉ムキムキが出てくるのはインパクトあるけど私にとっては興ざめなのでした……。

でもまあ、だから読みたくないってほどではないんですけどね。
歳食ったからかな。

というわけでそのうち続きも読むと思います。

ケロロ軍曹 (9) (角川コミックス・エース)
吉崎 観音
4047136514


『町でうわさの天狗の子 3』

町でうわさの天狗の子 3 (3) (フラワーコミックスアルファ)
岩本 ナオ
4091322581



読了。

天狗を父親に持つ女の子・刑部秋姫ちゃんがごくフツーに高校に行ってごくフツーに恋をする、かなりフツーだけどちょっとフツーでない日々を描く、ほのぼのコメディーマンガの第三巻。

つづきが出るのを楽しみに待っていた、読んでいて心がほわっと温まるような日常ファンタジーです。
今回はお山がほとんど出てこず、天然美少年タケルくんとのぎこちないおつきあいが中心だったため、さらにフツー度が高まりました。

というわけで今回はうれしはずかし初デートや、学祭関係でのもめ事、親友の緑ちゃんが生徒会初期に立候補事件、などなど、かなりフツーの学園もの的なお話が多かったです。

そのフツーなお話にちょっとずつ不思議風味が混じっているところが楽しいv

ヒロイン秋姫ちゃんにとって父親が天狗である影響は、自分が大食いであることと一般人よりもかなり力持ちであること、それとたまに修行をしなければならないこと、くらいのもので、自分がちょっと特殊な運命を背負っていることにたいして無自覚。

ほんとうは周囲ではいろいろと影響があるようなのですが、そのところをほとんど瞬くんがフォローしているために自覚せずに生きてこられたのだなあと思います。

困った時に出てくる名前が瞬くんである、ということは秋姫ちゃんは瞬くんにずいぶん依存して生きているってことですよね。

てことで、次巻では瞬くんとの関係がクローズアップされる模様。

緑ちゃんが瞬くんに言った、

姫ちゃんが
楽しいときも
近くにいれば
いいのに



という言葉が大変印象に残りました。

ところで私は、瞬くんはかっこいいけどタケルくんはカワイイよなー、と思います。
このタケルくんに対する感覚って甥っ子を見ている時の嬉しさに似ている、ような(笑。

町でうわさの天狗の子 1 (1) (フラワーコミックス) 町でうわさの天狗の子 2 (2) (フラワーコミックス)

20090109の購入

寒くて寒くて仕方がなかったけど使命感に燃えて本屋に突撃。

町でうわさの天狗の子 3 (3) (フラワーコミックスアルファ)
岩本 ナオ
4091322581


茨文字の魔法 (創元推理文庫)
Patricia A. Mckillip 原島 文世
448852009X


一度目の作戦では一冊しか買えなかったのですが、偶然二度目の作戦が発動したので無事ゲットできました。

やっぱり近所の本屋の場合、創元やハヤカワは一日遅れで入荷するみたいです。
でも『死者の短剣』は発売日だったような?
法則は法則として受け入れるつもりなので法則破りはやめて欲しいなと思う。

『犬夜叉 18』

犬夜叉 (18) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091255884



読了。

戦国時代へタイムトリップした女子高生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉とともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションメロドラマコメディーマンガ。シリーズ十八冊目。

今回収録されているのは、

影郎丸対犬夜叉+鋼牙くんのバトルエピソードの完結編と、
人間だった鬼蜘蛛の想いを断ち切ろうとする奈落においつめられた桔梗が犬夜叉と出逢うエピソード、
ふたりのようすを目の当たりにしてしまったかごめちゃんが、嫉妬と不安に思い悩み身を引こうとするエピソード、
珊瑚ちゃんの弟・琥珀くんがすべての記憶を失ってあらわれるエピソードの途中まで、

でございます。

この巻のクライマックスは、やはり犬夜叉・桔梗・かごめちゃんの三角関係なんだろうけど、いやはや、さきにアニメで見てしまってたんで展開にはそれほどぐぐっとこなかったのが残念無念です。

でも、ほうけたような犬夜叉の顔がめずらしかったのと、犬夜叉に決意を告げるかごめちゃんの表情がとても穏やかで痛々しいのがかわいそうでした。

それにしてもなかなかアニメに追いつかないなー。
週一で読んでればそのうち追いつくと思っていたのになかなかそう順調にはいかないものです。
年末年始を挟んだのでまたちょっとペースが遅れ気味です。

つぎはすみやかに到着してくれないかな。
アニメを見なければいいんだけどやっているとつい見てしまうので。

犬夜叉 (19) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091255892

『イムリ 5』

イムリ 5 (BEAM COMIX)
三宅 乱丈
4757746113



読了。

どこかの惑星でくり広げられる支配者の血なまぐさい権力闘争と、それに巻き込まれて悲惨な運命を辿る少年、そしてかれと被支配者達とのかかわりと謎をドラマチックに描く、SFファンタジーマンガ。第五巻。

どういうストーリーのマンガなのかを説明するのにえらく苦労する作品です。
広義に言えば異世界ものなんだろうな。惑星とかが出てくるとどうもSFだと認識してしまうのですが、物語的にはファンタジーなんだと思う、いまのところは。

このマンガが魅力的なのはそのファンタジーぽいけどSFぽくもある不思議な雰囲気を、泥臭く描いているところかなあと思います。

けして洗練された絵柄ではないのですが、どこか魔的で不思議な存在感のある線で描き出される、雰囲気あふれる画面。
そこから超常現象がわきだして、波動のように読み手にまで伝わってくる……気がします。私には。

この巻はちょっと、いやかなりハードな展開で、初めのうちはページをめくるたびに「うわっ、うわっ、ひいーっ、まだつづくのっ」と悲鳴をあげておりました。

血みどろに弱い人は読まないほうがいいかもです(汗。

でもデュルク(主人公の少年の名前。「呪師系寄宿学校の新入生で候補生。」と登場人物欄と書いてあったのでようやく属性を思い出した)の不思議な夢の秘密やらなにやらがあきらかになったりして、たいそう興味深かったです。

いったいこの後はどういう話になるんだろうか。
興味津々です。

『アンゲルゼ 永遠の君に誓う』

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)
須賀 しのぶ
4086012391



[Amazon]


読了。

ウィルスによって人類の変化した生物アンゲルゼとの戦時下で、中学生の少年少女達が苛酷な運命と向かいあう様を描く、近未来SFシリーズ。完結編。

うわーーーん、なんという結末だ~~。
つねに少女小説としてはハードな作品を書く作者さんですが、ここまで緊密に濃密に苛酷で哀しくしかも美しい情景を描いた話は初めてではないかと思います。

ヒロイン陽菜ちゃんの視点から始まった物語は次第に世界を広げ、中盤あたりからはほぼ群像劇でした。しかも視点人物である青少年だけではなく年上の者たち、とくに親世代である中年のひとびとがしっかりと、それぞれの思いを抱えて懸命に生きている様がきちんと描かれている。

充実しているなーと思いました。
この作者さんは大人だ。

年齢的に敷島少佐に感情移入して読むことが多かったのでとくにそう感じたのだと思いますが。

かれは冷徹にふるまいながらも子どもたちのことを本当に思いやっていたんだなとわかって、嬉しいような切ないような気持ちになりました。
かれの過去がこの話の背景としてあったからこそ、この話はここまでの深みを持つことができたのだと思います。

もちろん、主役級の青少年達の不安と葛藤も切実に迫ってきました。
たしかにこれは日本の胸キュンな青春小説です。ハードすぎるけど。
でもこれまでの須賀作品には見られなかった初恋の甘酸っぱさをふんだんに味わえたです。

五巻予定が四巻になったとどこかで漏れ聞いた覚えがありますが、あわただしく詰め込んだような気配は微塵もなく、きちんと伏線を回収して緊張の糸を切らさずにラストシーンへとなだれ込んでゆくまで、実に濃密な時間を堪能いたしました。

読み終えるといろいろと感慨がわきあがり、深く余韻に浸ってしまいました。

物語としてこれほど完成されている話にひとつだけ願ったのは、かれらがアンゲルゼのいない世界で生きていたらという、まったく読み手のワガママな望みだった。←それってもうアンゲルゼじゃないから。

アンゲルゼのいないアンゲルゼ世界の妄想をバルーンのように膨らませてしまったのは私ですが、詳細は伏せます。

あとはさ、もーちゃんと湊君と少佐あらため大佐の軍隊ライフはどんなんかな、とか。このあたりはいつもの須賀作品テイストでいけそうなんですが、それよりも新作を書いて欲しいとも思うのでま、ただの欲望ですね。

ともかく、大変に面白かったし感動しました。
クライマックスシーンの美しさにも泣けました。
全四巻ですので、興味を持たれたらぜひ手にとって見てください。
少女向けが苦手な人でもけっこう平気なんではと思います。

アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭 (コバルト文庫) アンゲルゼ―最後の夏 (コバルト文庫) アンゲルゼ―ひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫)

『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』その2

弟宅に行った時、たまに見せてもらう近未来SF連続アニメシリーズです。
アニメとしてもSFとしてもドラマとしても音楽としてもとても面白いのですが、昨年の夏頃から見始めているのにいまだにDVD二枚分しか終えてません。

ところでその二枚分が実際には単品版だと四枚分だということに、いまさら気づきました。
ということは奴はこれのDVD-BOXを持っているのか。

これは四枚分見たよ記念記事です。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 3 [DVD]
田中敦子, 神山健治
B000083G91


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 04 [DVD]
下村一 寺岡賢司 士郎正宗
B00008BDBH


作品は好きなのですが、気になることが。
草薙少佐はカッコイイのに、どーもコスチュームデザインが気になります。
擬体化していると露出度の高い服が着たくなるのか、それとも作者の趣味か。
あんな薄ぺらい服で戦闘したら布が破けるのではとか、いやあれはきっと特殊な強度の布でできているのだろうとか、余計なことばかり考えてしまいます。

見たばかりの話で出てきた看護士の制服がまたいやーんなものだったので、やはり作者の趣味?

あと私の好きなのはタチコマくんたちです!
ハードな本編の後で見るおまけアニメ「タチコマな日々」には和みますねv

『夏目友人帳 7』

夏目友人帳 7 (7) (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592186672



読了。

人ならぬものが見えるために孤独に育った少年が、あたたかな関係に恵まれてしだいに世界を広げてゆく、シリアスほのぼの胸キュンのあやかしマンガ。第七巻。

祖母のレイコから受け継いだ妖怪の名を縛る友人帳のせいで妖怪達と常に関わるようになった夏目少年の連作シリーズ。

夏目の死後友人帳を譲り受ける変わりに護衛をすることになったニャンコ先生はじめ、個性的な妖怪や人間達と夏目のかかわりを描いた物語も、アニメ化したりしてどんどん知名度が上がっている模様です。

連載も読み切りシリーズではなく続き物が増えているようで、この巻は番外編とシリーズ外短篇を除くとまるまるひとつのおはなし。

あやかしを使役する道具としてのみ認識する的場一門登場の衝撃的な一編です。

これまでは基本的に悪意の出てこなかったシリーズですが、あやかしに対する一般的な認識は悪であるわけで。

そんな側からのアプローチに夏目が大変動揺させられるエピソードだったので、これまでの均衡が崩れていく、不安な展開となりました。

なので特別編7 夏目遊戯帳にはとても救われた気持ちです。

あとはニャンコ先生の存在。
砂袋の様なもの、とか
ねこまんじゅう、とか
さんざんな言われようですが、相変わらずラブリーv

斑に変化した時はカッコイイと思っていたんだけど影踏み鬼のときに本性発揮してやっぱりニャンコ先生はニャンコ先生だったのね、と悟りました(笑。

「犬の会」というネーミングも笑えた。

こういうちょっとしたお笑いがシリアスに混じっている雰囲気が、とても好きだなーと思います。

ところで、テレビではアニメが「続 夏目友人帳」として放送開始されましたね。
タイアップ企画としてでしょうか、↓こんな本も出てました。
ちょっと読んでみたいかも。

夏目友人帳公式ファンブック-夏目と友人たち (花とゆめCOMICSスペシャル)
緑川 ゆき
4592186966