『トレマリスの歌術師 3 第十の力』

トレマリスの歌術師〈3〉第十の力
Kate Constable 小竹 由加里
4591107590


[Amazon]


読了。

歌による魔法が広く行われていたがいまは滅び去ろうとしている異世界を舞台にした、本格ファンタジー三部作の完結編。

 不毛の大地を癒そうととてつもない術を施そうとした結果、身もこころもボロボロとなってしまった主人公カルウィン。
 恋人のダロウを遠ざけて、友人のミカ、トラウトとともにアンタリスに戻ったカルウィンは、氷壁に守られていたはずの故郷がすでに安息の場ではないことを知らされる。



歌による魔法「歌術」という設定がユニークな異世界ファンタジーも、これが完結編。

いきいきとした幻想描写と堅実感とともにスピード感のあるストーリー展開で、一気に読まされてしまう一冊でした。

完結編にふさわしい大きな広がりのあるお話でしたが、あくまでも個人的な事情からのやりとりで話が進んでいくところが好ましかったです。

それとサミスの妹キーラ姫が再登場。話が素直に進まない面白さを加えてくれました。

でもとくに印象的だったのはカルウィンと最大の敵サミスの道行き。敵なのに共感できるというなんともいえない雰囲気でスリリングでした。

それとくらべるとダロウはすこし印象が薄かったかも。考えてみるとかれは非常に損な役回りだったなー。

悲劇や惨劇とともに新しい出会いがあり、クライマックスへと向かうにつれてトレマリスという世界の成り立ちが次第に判明していくあたりは、定番の方法ですがやはり興奮します。

この設定はたしかにオーストラリアの作家が書いたお話だなーと感じさせてくれる物でした。ちょっとスケールが大きくなってるけど、根本はオーストラリアの歴史みたいなところがあるよね。

カルウィンの父親が判明するところはとても感動的でした。このことについてはいろいろと書きたいことがあるのだけど、これ以上書くとネタバレになるので止めます。くすん。

トレマリスの荒廃を回復させる方法も、今日的な視点から発想されたとわかるうえに古代的にも納得できる方法で、深い感慨を抱かされました。

ひとりの人物の犠牲に依らない解決、という点でも興味深かったです。
キリスト教的でないというか。

浅羽莢子さんの遺訳作(?)として読み始めた作品ですが、ファンタジーとしてとてもレベルの高い三部作だったと思います。

読んでてとっても楽しかったです。

訳者あとがきによると本国ではこのトレマリスの三部作には続編が出ている模様です。
二十年後が舞台になっていて、主要キャラクターのひとりが登場しているらしい。
誰だろう……トラウトかな?


トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手
Kate Constable 浅羽 莢子 小竹 由加里
4591103439


トレマリスの歌術師〈2〉水のない海
Kate Constable 小竹 由加里
4591104958


『犬夜叉 24』

犬夜叉 (24) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256449



読了。

戦国時代へとトリップした現代の女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間達とともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇冒険アクションロマンスマンガ。シリーズ二十四巻。

この巻には、

鬼の首の出てくる城のエピソードの顛末と、
ちび猿達が可愛い猿神様のエピソードと、
七人塚のよみがえった死人達のエピソードの途中まで、

が収録されています。

前巻で奈落が一時撤退した余波で、なりをひそめていた化け物達がうじゃうじゃと復活したという設定の模様。

ということは奈落が戻ってくるまでこの状態が続くと言うことなのか。
大変だなー……。

読む方は楽しければなんでもいいのですがね。
今回は猿神様のエピソードが可愛くて楽しくて一番好きでした。

いっぽう、一番インパクトがあったのは七人塚からよみがえった外道達のひとり、蛇骨です。
犬夜叉を見て「かわいい~~!!」と犬耳を欲しがり、弥勒様を見て「色っぽい」と口走り、女と見ては目の敵にするその筋の人(笑。

高橋留美子作品でこういうキャラクターが出てくるのはもしかして初めてなのではなかろうか。

しかも、この七人集、もとがもとだけに邪悪でめっぽう強い。
ちょっとだけでてきた殺生丸様は……助けてはくれないだろうなあ、やっぱり。

かごめちゃん絶体絶命の危機に、犬夜叉は間に合うのか!
というところで次巻を待ちます。

犬夜叉 (25) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256457


『ヴィンランド・サガ 7』

ヴィンランド・サガ 7 (7) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063145441



読了。

ヴァイキングの侵攻に晒されつづけた十一世紀のヨーロッパ北部を舞台にした、歴史的人間ドラママンガ。シリーズの第七巻。

あいかわらず荒涼とした土地を背景に殺伐としたストーリーが展開します、『ヴィンランド・サガ』の新刊です。

読んでいると本当に中世イングランドの寒村で突然襲いかかる暴力の嵐に怯えながら暮らしているような気分になる、この臨場感がたまりません。

この巻では表紙の御方が大変貌。
あの臆病なクヌート王子が泣く子も黙るデンマーク王スヴェンの前で一歩も引かずに渡り合ってしまうのですから、これは目が離せない。

これまでもめったやたらに殺伐としていたのに、これからはそこにデンマークの王権をかけた争いが加わるのかと思うと、そこら辺の一般人には迷惑このうえないだろう大イベントが目白押しという予感でいっぱいです。

いっぽう、主人公のはずのトルフィン君はいまだにアシェラッドを父トールズの仇としてくっついて回ってますが、どうにもまだまだ相手にされていない様子。

当のアシェラッドに説教まで食らってしまうのだからたまりません。

トルフィンったらほとんど仇に育てられているようなものだよ、これじゃ……。

アシェラッドの生い立ちが語られれば、かれがトルフィンを歯がゆく思う気持ちもわからないではないなー。アシェラッドはトールズへの尊敬の念からトルフィンを見守っているのだと思うけど、いいかげんどうにかなれやって感じなのでしょうか。

ところで、このところ血なまぐさい戦闘シーンの連続ですっかり忘れてましたが、レイフおじさんの登場でタイトルの意味を思い出しましたよ。

ヴィンランド・サガというのだからヴィンランドに行くんですよね、トルフィンは。
以前読んだ別の本に載っていたヴァイキング入植者の名前にトルフィンをみつけたので絶対行くはずだ、と思っているのですが、いまのトルフィンを見ているとどうしてそうなるのかさっぱり見当がつきませんね。

もしかして、ヴィンランドへ行くぞー、いざ船出だーってところで終わったりして。

いやいや、そんなことは今は話に関係ありません。
とりあえずはクヌート王子とスヴェン王の対決に注目いたします。


シリーズ開幕はこちらから。

ヴィンランド・サガ 1 (1) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063144232



20090224の購入

雨の合間を縫って本屋まで出かけてきました。

ヴィンランド・サガ 7 (7) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063145441


つづきはまた明日 1 (1) (バーズコミックス ガールズコレクション)
紺野 キタ
4344815688


以上、購入。

発売日から遅れてもまだ手に入る本は「メジャーなんだなー」と感じます。
いっぽう、新刊平積み所に一冊しかない本は発売日にしか手に入らないと思うとつい買ってしまうことに。

この「つい」を減らさないとダメだなと思うのですが、なかなかどうして難しいものですね。

『嘘つきは姫君のはじまり 秘密の乳姉妹』

嘘つきは姫君のはじまり―平安ロマンティック・ミステリー ひみつの乳姉妹 (コバルト文庫)
松田 志乃ぶ
4086011662



[Amazon]


読了。

「平安ロマンティック・ミステリー」のシリーズ開幕編。


落ちぶれ貴族の姫君・薫子と乳姉妹宮子のふたりは、荒れ果てた屋敷で暮らしていた。現実的な薫子は生活の一助としてまた人生を謳歌するためにも恋多き日々を送っており、いまでは父親候補が三人もいる子どもを妊娠している。貧乏だけれど賑やかな日々。そんなおり、宮子は従兄弟で幼なじみの真幸ととうとう結婚の約束をした。婚約者の帰りを待つ夜、宮子は薫子と間違えられて盗賊に襲われる。窮地に陥った宮子を救ったのは、腹違いの妹の行方を捜していたという藤原兼通。なんと薫子は名門貴族九条家の隠し子だったのだ。ところが薫子は兼通の誤解を解こうとしない。宮子を自分の身代わりにたてて兼通の思惑を探ろうというのだ。



評判がよいようなので借りてみました。
うん、面白かったです。
文章はしっかりしているし、登場人物もきちんと書けている。ストーリーも、ミステリ部分は私にはわかりませんがまとまってると思います。

かつて氷室冴子を愛読した身であるので、こういう物語世界もあったのよねえ、と懐かしかった。
もちろん、現代に合わせてはっちゃけ度も高くなってますがね。

とくに現実的な上に合理的で、頭の回転も弁舌の巧みさも人並み以上の薫子姫の存在感が図抜けてます。
彼女の周りの人びと特に宮子は、美しい姫君の口八丁にだまくらかされて、何か魂胆があるとわかっていながらその通りの行動を取らざるを得なくなる。

こういうひとは黒幕というのでしょうか(苦笑。

性格があかるくてさばけているのでちっとも色っぽくはありませんが、薫子姫の活躍は爽快でした。

いっぽう、ヒロインである宮子ちゃんは、まだ夢見る乙女。
なのに薫子姫のおかげであっちこっちで魅力あふれる男性と出会い、そのたびにどきどきフラフラしています。
彼女は薫子姫の犠牲者なわけですが、かなりの役得もある模様。

というわけで、宮子と婚約したはずの真幸くんが一番の貧乏くじひきだろうという結論に達しました。
いと哀れなり。

たいそう楽しかったのでつづきも読んでみたいです。
予約がかなり混んでるので相当先になりそうですが。

嘘つきは姫君のはじまり―見習い姫の災難 平安ロマンティック・ミステリー (コバルト文庫)
松田 志乃ぶ
4086012103


「鬼喰み-たまはみ-」

八仙花さん作「鬼喰み-たまはみ-」、閑話「白鷺の蛍火に溺る」まで読了。

現代和風ファンタジー。
第三話「萌兆―きざし―」がとても好きです。
ダウンロード版で読みました。

『マーベラス・ツインズ 2 地下宮殿の秘密』

マーベラス・ツインズ (2)地下宮殿の秘密 (GAME CITY文庫 こ 2-2) (GAMECITY文庫)
古 龍 川合 章子
4775806564



[Amazon]


読了。

天才的に頭の回転がよい嘘つき少年主人公の奇想天外な冒険を描く、中国近世を舞台にしたピカレスク冒険小説=武侠小説、シリーズ第二巻。

原題『絶代双驕』、『マーベラス・ツインズ』の二冊目です。

ツインズのひとりは主人公の小魚児、もうひとりは多分、小魚児を自分の手で殺すという使命を帯びている花無缼。ともに十四歳の少年だろうと思います。

第一巻では小魚児が花無缼に絶体絶命の瀬戸際まで追い込まれたところまででした。

第二巻は、ふたたび小魚児はひとりとなって、波乱に次ぐ波乱の冒険が描かれます。

今回登場する敵は、崖の途中で袋小路に陥っていた二人の男と、怪しげな色気姐さんと、出逢ったものすべてと賭けをしなければ気が済まない親父、そして一見立派な大人物。

お話は窮地に追い込まれた小魚児が自慢の機知で難を脱するというエピソードの連続ですが、敵として立ちはだかるのがどいつもこいつも一筋縄ではいかないキャラクターばかりで、その奇態な行動を読むだけで面白い。

私的に一番インパクトが強かったのは「十大悪人」のひとり軒轅三光。
無類の賭博好き、と字にするだけなら可愛いものですが、賭けるものが非常に恐ろしいのです。登場時に「手指が二本しかない」と書いてあったのの意味がこういうこととは、ひー。

こんな化け物じみた敵相手に怯みもせず笑いを浮かべながら堂々と対決する小魚児の活躍は、正直言って卑怯で小賢しいその場限りの言い逃れみたいなものばかりなのですが、生まれ持った愛嬌が強力な武器となって救っている、という感じ。

まだ十四歳という年齢のおかげもあるだろうと思います。

いまはまだゆるせるけどこのまま大人になったらどうしようもないのではと、他人事ながら危ぶんでいたところ、巻末で今後の方向が示唆されたのですこし安心しました。

さて、三年後の小魚児の姿やいかに。
というところでつづきを予約しよう。

マーベラス・ツインズ (3)双子の運命 (GAME CITY文庫 こ 2-3) (GAMECITY文庫)
川合 章子
4775806572


接続障害?(追記あり)

2009年2月23日10時04分現在、本サイトへの接続が不可能となっている模様です。
私の環境だけかも知れませんが、念のためにお知らせをしておきます。


いまのところサイトの更新はほとんどしていない状況なのであまり影響はないのではとも思いますが、もしかして創作関係めあてでいらした方がおいででしたら申し訳ありません。




2009年2月23日13時20分現在、復旧した模様です。

あー、よかった。
移転しなきゃいけないかと思って焦ってしまいました。

でもなんとなく不安だから準備はしておいたほうがいいかもしれない。

『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』

RDG レッドデータガール はじめてのお使い (銀のさじ)
荻原 規子
4048738496


[Amazon]


いただいて読了。

祖父が宮司を務める神社で暮らす引っ込み思案の中学三年生の少女が、自分の特異性と宿命に直面する、現代ファンタジー……なのかな。シリーズ開幕編。

レッドデータガール、というタイトルに「絶滅危惧種少女ってなに?」と疑問を抱いた私は内容を読んで、あーそういうことなのかと納得しました。

お山の神社で祖父と暮らし、交通手段がないために毎日運転指月の自家用車で送り迎えをされ、しめ縄と陰口をたたかれるような長い三つ編みお下げの髪型をつづける、何の取り柄もないばかりか超人見知りで引っ込み思案の中学生、鈴原泉水子が主人公。ここらへんでもうかなり「絶滅危惧種」っぽいですが。

高校進学を前にして、そういえばもうすぐ自分もお山を離れるのだから普通の生活ができるようになるのだ……と気づいた時から物語が急展開を始めます。

はじまりの雰囲気はなんとなく『町でうわさの天狗の子』っぽいかなーと思ったのですが、その後のほのぼのとはほど遠い展開にあっけにとられました。親にかってに進路をきめられるというあたりとかちょっと樹なつみ『花咲ける青少年』ぽいかも(花婿探しはないけど)。

突然やってきた父の親友相良雪政にとんでもない進路予定を聞かされるは、かれが連れてきた息子の深行にとことん目の敵にされるわで、毎日が悲惨な状況に陥った泉水子はなんとか現状を打破しようとついに自分とっては途方もないと思われる行動を取る決意をします。

読んでいて、なんとなくそうなんだろうなーと推測したとおり、このあたりから泉水子は特別な少女であることを周囲に露呈してゆきます。

平凡であるはずで平凡であろうとする彼女が、平凡であるための努力をすればするほど平凡さが剥がれ落ちていくという展開に、うーむと思ってしまうのは多分私だけだとは思うけど。

思春期には、たしかにこういう話は心に響くんだよなー。

で、とにかく今回は開幕編なので、泉水子が自分の特別さとその意味を知る話。

父親の決定で泉水子と運命をともにすることになった深行くんが、その任務に納得するまでの話でもあります。

このふたりの最初の関係があまりにもひどいので、途中なんどもハラハラしてしまいました。ハードに敵対しているふたりがなにかしらの信頼関係を築きあげるまでのお話でもあるな。話的にはこのあたりが一番面白かったです。
こういうのもツンデレにはいるのだろうか。

というわけでストーリーは大変楽しく読めました。

ただ、やっぱり荻原作品、ちょっと油断したとたんに足もとをすくう罠が(苦笑。
この話の根本的な設定で私はまたしても違和感を覚えてしまいました。

うーん、この展開でそうだったら、それは私のルールではファンタジーではなくSFなのだけど。
でも、お山の清浄な空気とか泉水子の○○○とかの存在はファンタジーだしなあ。
もしかして『風神秘抄』の世界と似た設定なのかな。あるいは繋がっているのかも。
相良雪政みたいな存在もそういえば出てきたような気もするし。

まー、深く悩むのは止めておきます。まだつづきもあるらしいことだし。

ところで、個人的なことですが。
陰謀の元締めみたいに出てくる相良雪政氏。
相良、相良といわれるとどうしても私の脳裏には相良軍曹が登場するので非常に困りました。性格が全然違うんですけど……条件反射みたいです(汗。

風神秘抄
荻原 規子
4198620164


『オペラ・メモーリア 祝祭の思い出』

オペラ・メモーリア―祝祭の思い出 (角川ビーンズ文庫)
栗原 ちひろ
4044514070



[Amazon]


いただいて読了。


硬質で華麗な文章によって描かれる、美しく壮大な異世界ファンタジーシリーズの番外短編集。

「オペラ・シリーズ」は完結編まで読み終えてしまいましたが、本来は最終巻の前に刊行されたのがこの番外編集。

カナギ、ソラ、ミリアンのデフォルト状態と思われる三人旅のエピソードと、お尋ね者を追いかける銭形警部的なひとかと思いきや意外な存在感と活躍を果たしたギスラン・バシュラール監査官の思い出三部作が収録されています。


オペラ・スピラーレ 亡国の螺旋
オペラ・リトゥラット 懐かしい肖像
オペラ・プロメッサ ずっとあなたを待っている
オペラ・メモーリア 砂金の思い出
オペラ・メモーリア 錬鉄の思い出
オペラ・メモーリア 祝祭の思い出
オペラ・スィーミレ 最高の隣人

あとがき



シリーズの途中で読んだら今までの復習としてそなえられたのだと思うのですが、あとで読んだ私にはただただ懐かしいという思いと、そうだったんだーという納得の思いの一冊となりました。

本シリーズを細切れに読んでいたので気づかなかった、いろんなディテールに気づかされたりもした。

バシュラールさん三部作は、かれが何故詩人さんを目の敵のするのかの所以がわかるお話。
過去にこんなことがあったのではそれも当然だよなー。しみじみと同情いたします。

でも詩人さんに悪気はないのですよね。
悪気がないからといって許せるような所業ではないが(苦笑。

私はミリアンののほほんと天然で、なおかつ動物的に鋭いところが楽しみでした。
この三人の漫才はたいそう楽しかったです。

とくに最後の「オペラ・スィーミレ」でのやりとりは笑った。本気で笑った。声に出して。

作者さんは新シリーズをふたつも出されているのにいまだ手を出していないのは、予約が混んでいるからという理由もありますが、私自身がこの三人の雰囲気にまだ浸っていたいからなのかもしれないと、ちと思ったりした一冊でした。

シリーズ開幕編はこちら。
オペラ・エテルニタ 世界は永遠を歌う (角川ビーンズ文庫)
栗原ちひろ
4044514011


『スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee』

スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8)
冲方 丁 はいむら きよたか
4829118970


[Amazon]


借りて読了。

近未来のウィーンを舞台にサイボーグ少女《焱の妖精(フォイエルスプライト)》達がテロ組織と戦う、SFアクション小説。開幕編。


 蒼い空を翔ける三色のライン。
 紫の少女――鳳/アゲハ。
 蒼の少女――乙/ツバメ。
 黄の少女――雛/ヒビナ。

 機械化された身体を持ち、最新の官給品として、敵を貫く弾丸(バレット)。《焱の妖精(フォイエルスプライト)》たち。



正直言って非常にとっつきにくかったお話ですが、読み終えるとけっこう心がゆさぶられたような、妙な気分の読後感が残りました。

殺伐とした現実によって回復困難な傷を負った少女達。
彼女たちは失われた身体を機械化=武器化によって補われ、その代償として社会機構を脅かす敵対組織との戦闘に投入される。
心に負った傷は癒されないまま、なおも危険な前線へと赴かされる彼女たちの苛酷な日々はいつまで続くのか――。

作者は話の見てくれにたいそう趣向を凝らしたデコレーションを施しているため、これだけのことを読みとるのに丸々一冊費やしてしまいました。

ここまで技巧を凝らした話に魂は入っているのだろうか。疑問に思いつつ読みましたが、どうやら杞憂だった模様。

基本的には『マルドゥック・スクランブル』の路線で、さらに過激に、さらにわかりやすく、キャッチーな方向をめざしているんだろうなーという感触を得ました。

しかし私にはどうしても「わかりやすい」とは思えなかった。
この数式みたいな文章、読んでてぜんぜん脳裏に映像が浮かばないんだもの(汗。
かっこいいとは思うけど。

ところで、このスプライト達は義体化はしてるけど電脳化はしてないみたいです。
いきなり「転送を開封」して変身しちゃうあたりは、仮面ライダーのノリではないかと私などには思われたり。
昆虫の羽根を模倣した翼も、そんなイメージを増幅させます。

敵方の人間の脳を利用した兵器については、マキャフリイの『歌う船』とか山田ミネコの『最終戦争』とかを思い出したり。

いずれにしろ、先達のアイデアが非常に殺伐とした方法で使用されている(仮面ライダーは戦ってるけど改造したのは敵だ)ところが現代的にリアルで、そんなふうに感じてしまう現代に生きていると感じることこそが私を暗い気分にさせるのでした。

少女達の戦いの行く末はどうなるのでしょうか。
希望が見いだされることに期待したいです。


ところで、このシリーズには同世界を舞台にした並行シリーズがある模様です。
そのタイトルは『オイレンシュピーゲル』。

オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1)
冲方 丁 白亜 右月
4044729018


あのティル・オイレンシュピーゲルからとったタイトルなんだろうなー。
とするとこちらは悪側の物語だろうか。

機会があれば読んでみたいです。

『ロビン 風の都の師弟 1』

ロビン~風の都の師弟~ 1 (Flex Comix フレア)
中山 星香
4797352884




読了。


魔法使いの弟子ロビン少年が主人公の、異世界ファンタジーマンガ。シリーズ開幕編。

中山星香を読むのも久しぶりです。
ずっとファンだったのですが何故か『妖精国の騎士』から離れてしまいました。
一巻から買ってなかったので予感がしたのかも。ものすごーい長編になりそうな予感が(苦笑。あんまり長いと自腹では購入しきれないので。

それで途中までは借りて読んでいたのですが、それもうやむやになって今に至ります。

今回はタイトルからアルディア国のアーサー・ロビン七世のエピソードを期待して購入しました。
読んでみたら『妖精国の騎士』の後日譚でした。
でも、読んでいてとくに支障はなかったです。
たしかに『妖精国』の基本的登場人物は知らないと理解が難しいかも知れませんが、わたしとしては『はるかなる光の国へ』との繋がりをつよく感じました。

絵柄もなんとなく昔の線の柔らかさが戻ってきているような気がしたし、違和感なく読めてよかったです。

とてつもない力を秘めた若者が、困難の中で師に導かれ才能を発揮する物語、といえば、やっぱりアーサー・ロビン七世のストーリーを思い出すんだけど、この話の主人公はそのアーサー・ロビンの一世になるのではないかと踏んでいます。

『妖精国』でお気に入りだったファラント君が元気で登場してくれたのが嬉しかったーv
ローラントとシェンドラ姫の家族に出会えたのも嬉しいですが、こちらは雲行きが怪しめですね。

ローゼリィとアーサーが主人公のロビンを見いだす物語は、こちらに収録されている模様。
見つけたら読んでみたいです。

妖精国の騎士Ballad (プリンセスコミックス)
中山 星香
4253193552



こちらはローゼリィとアーサーがタマネギ村をめざすきっかけが含まれている後日譚。
はるかなる光の国へ (秋田文庫)
中山 星香
4253175600



こちらは七代目アーサー・ロビンの物語。
空の迷宮 (1) (秋田文庫)
中山 星香
4253175538


空の迷宮 (2) (秋田文庫)
中山 星香
4253175546


『群青学舎 4』

群青学舎 四巻 (BEAM COMIX)
入江 亜季
4757746946



読了。

いろんなテイストの短篇(連作あり)をまとめたコミックシリーズの最終巻。

これで完結なのかー。
短編集なのでどこで終わっても支障はないのだけど、このクオリティの高い短編集がもう読めないのかと思うとかなり寂しい気持ちです。

この巻はわりと日常的でほのぼの風味のお話が多かったかな。
登場人物との距離感のある品があって繊細な描写はいままでどおりですが、絵柄がちと派手になって迫力が増したような。

もともと体格のいい人物を描くひとだなーと思っていたのが、これもさらに増して、人物の骨格や筋肉など肉体の立派さになんか圧倒されます。

とくに「七色」シリーズのお母さん。すごいです、お母さん。美人でグラマラスであでやかな上に豪快なお母さん。いつまでも若く美しいお母さん!

はー、私ったらホントにお母さんに参ってしまったようです(苦笑。

しかしこの息子達の嫁さんは大変だろうな。それともみんな豪快な女の子を見つけてくるのかな。そうかもしれないな。うん、たぶんそうだろう。

どの話も読み応えがあり、密度の高い作品集だったので、読むのにけっこう時間がかかりましたが、その時間もたいそう楽しく満足なものとなりました。

冒頭に『コダマの谷』の登場人物が出張していたり、巻末にはこれまでの話の後日譚があったりと、サービス満点の完結編。

作者さんは『乱と灰色の世界』という作品を隔月漫画誌『フェローズ!』にて連載中とのことです。

コダマの谷 王立大学騒乱劇 (ビームコミックス)
入江 亜季
4757729197


『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち 6』

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈6〉Blood Party! (電撃文庫)
壁井 ユカコ
404867529X


[Amazon]


読了。

古い洋館アパートに住む住人達のちょっと不思議な日々を描くシリーズ、完結編。

恋愛もの、家族もの、幽霊もの、サイコものといろいろなテイストが楽しめて、文章も雰囲気もとても好みだった「鳥籠荘」もこれで読み納め。

この巻には、後日譚とパラレルワールドな吸血鬼ものが収録されてます。

以下、目次。


第1話 猫はお断り~山田さんちの加地くんの悶々とした日々~
第2話 カモメのジョナサン

<Epilogue SIDE-I> 変わらないもの
<Epilogue SIDE-II> ロンドンガール、帰還

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち in Another World Blood Party! ~眼鏡と吸血鬼~



どの話も面白かったのですが、本筋ストーリーはほぼ前巻で終了しているため、なんとなーくおまけ感が漂う一冊でした。

「ロンドンガール、帰還」を前の巻にくっつけて完結、としたほうがすっきりしたんじゃないかと個人的には思います。

山田さんちの家族事情はとってもたのしく、かつ可愛かったし(加地くん、大変そう)、ジョナサンのその後もいろんな意味で(アレのもとがここなのか)興味と感慨が深かったけど、途中に挟んだために全体的に間延びしてしまったような。

作者によるパラレル二次創作(?)、「Blood Party!」はうーむ……。

住人達のその後をキズナちゃんのコメント付で描いた口絵がとってもよかったです。

これをみて私はあらためて思いました。
着ぐるみパパ、ラヴ!

シリーズの始まりはこちら。

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈1〉
壁井 ユカコ
4840236054


『将国のアルタイル 3』

将国のアルタイル 3 (3) (シリウスコミックス)
カトウ コトノ
4063731480



いただいて読了。


地中海文化圏近世風異世界戦乱コミックのシリーズ三巻目。

えーとのっけからなんですが、二巻までの私の感想は抹殺してください。
もうこの国のベースはなにとか年代はいつとか勝手に推理するの止めます。
墓穴掘りまくり……(大汗。

というわけで(ととりつくろいつつ)、犬鷲の将軍だった少年軍人謹慎処分中のマフムート君、社会体験の旅のつづきです。面白かったです。

由緒正しい港湾都市ポイニキアに滞在中、バルトライン帝国の艦船が迫る。
ついうっかり公式訪問してしまったマフムート君はポイニキア絶体絶命の危機に立ち会うことになる……。

というお話。

ポイニキアには実在した新旧のいろんな都市国家が反映されているなあ……とおもいますが、クライマックスの攻防戦で思い出すのはやはり金角湾を挟んでのコンスタンティノープルの戦い。おっと、もう歴史を重ねるのは止めるんだったっけ。

とはいうもののストーリー的に歴史のいいとこ取りだなあと思う展開が目白押しで、やっぱり歴史は面白いよなあ、読むところを読めば、という想いを新たにするのでした。

肝心の主人公マフムート君ですが、またまたまだまだ未熟な自分を見いだして落ちこみつつも前進しています。

これでよく将軍になれたよなと感じるところなきにしもあらずですが、物語を語る上での視点の位置としてはまず中心をみせて周辺に移動する、この方法がわかりやすいのは確か。

そして個性的なキャラクター。
前線に立つのをよしとする軍人達に対して、自分ひとり遠く離れた快適な机上で権謀術数を巡らせるバルトラインのルイ大臣が特異な存在感を放ってます。なんといっても目つきが悪すぎです(苦笑。

目つきが悪いといえば、このマンガ、みんな普段の目つきは悪いです。
腹に一物ある輩ばかりだからだろうか(苦笑。

毎回重傷を負っているにもかかわらずいつの間にか回復している、めげないマフムート君はこれからワタクシ待望の海の都ヴェネディックへと向かう模様です。

三月に四巻が出るとかでないとか。

『犬夜叉 23』

犬夜叉 (23) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256430



読了。

女子中学生日暮かごめが戦国時代へトリップし、半妖の少年犬夜叉や仲間達とともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇冒険アクションロマンスコミック。シリーズ二十三巻。

この巻には、

神楽が殺生丸の連れている人間の少女・りんちゃんをさらい、奈落のもとに殺生丸をおびき寄せるエピソードと、

四魂の玉の気配を求めていたかごめちゃん達が琥珀くんを発見、かれがりんちゃんを連れているところを眼にするエピソード、

奈落の結界を鉄砕牙で斬った犬夜叉が、奈落と殺生丸の対峙する場に出くわすエピソード、

城を捨てて行方をくらました奈落の思惑をみなで計りかねているエピソード、

祓い屋のおばあさんにひっぱりこまれて鬼の首城にみんなで関わることになるエピソードの途中まで、

が収録されています。


実際は最後の話だけが独立していてあとは続き物(苦笑。まとめるのが面倒だったので分かち書きにしてみた。
そんなこんなでかなり話がからみあっている一大エピソードです。
様々な伏線といろんな憶測を生むような展開の後、殺生丸、犬夜叉、奈落がめずらしく一堂に会しました。

が、知られぬが花とばかりにひとりが逃げ出してしまうのでちと肩透かしか。

今後は奈落の変貌に焦点が当たっていくんですかね。
この調子だとどうしたって奈落の運命がストーリーの中心だからな。

神楽は奈落から自由になる時と場所を狙っているようだし、奈落に操られている琥珀くんの将来はあいかわらず心配だし、桔梗さんは奈落との決着をつけるために生きているようなものだし、弥勒様の風穴も奈落がつけたものだし。

と考えているとまるで奈落が主役みたいですね(苦笑。
じっさい、この巻でもっとも存在感があったのは奈落でした。

あとはりんちゃんが純真に殺生丸に心を預けているさまがとてもかわいくて、このふたりの関係がかなり気になります……。
殺生丸はりんちゃんをどうするつもりなんだろう。

つづきを待ちます。

犬夜叉 (24) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256449


『ドラゴンと愚者』

ドラゴンと愚者 (ハヤカワ文庫FT)
Patricia Briggs 月岡 小穂
4150204462


[Amazon]


いただいて読了。

代々ドラゴンの守護者を名乗っていたヒューログ一族。現ヒューログ城主である父親からの虐待を逃れるため愚かなふりをしていた主人公ワードウィックが父の死をきっかけに変わっていく、骨太な異世界ファンタジー。

かなり面白かった。
最初は文体に苦労させられてなかなか進まなかったんです。
会話が多いのはいいのだけどリズムかなにかが私の感覚に合わないらしく、あちらこちらで躓いちゃって。

でも、物語の中に踏み込むにつれてそれはだんだん解消されていきました。
物語世界の精緻な設定や、主人公ワードウィックの生い立ちによって生まれた特異な性格。さらにそれぞれ個性的な登場人物達。緊密なストーリー展開。

ワードウィックが療養所に幽閉される運命から逃れるために戦功を立てようと始めた旅が、隣国の陰謀のど真ん中へと到達してからは、さらに目が離せなくなりました。

虐待されて傷ついたものがどのようにして生きのびていくか、がワードウィックのテーマですが、何故虐待はなされたのかという理由は物語の謎の中に埋め込まれていました。とても説得力があったと思います。

それから、ワードウィックと同様、深く傷ついている少年オレグの存在が物語の大きな魅力でした。

抑圧からの解放と過去に受けた大きな傷からの回復、というじつにファンタジー的なテーマに真正面から取り組んだお話だったなと思います。


 ヒューログとはドラゴンのこと。



冒頭に置かれたこの一文が深い感慨とともによみがえる読後でした。

だからこそ、ワードウィックの台詞のあとの体言止めがなければなーと残念に思います。

続編があるらしいですがこれできっちりと完結しているので別に読まなくても……と感じました。

こちらは同著者のアーバン・ファンタジー。
裏切りの月に抱かれて (ハヤカワ文庫FT)
Patricia Briggs 原島 文世
4150204667

『将国のアルタイル 2』

将国のアルタイル 2 (2) (シリウスコミックス)
カトウ コトノ
4063731308



いただいて読了。


近世地中海沿岸風異世界を舞台にした架空戦記マンガ。シリーズ第二巻。

国境を接した二つの帝国の軋轢から生まれるさまざまな出来事を少年将軍マフムートを主人公に描く、政治的駆け引きと陰謀、暗躍、戦闘、戦争などなどの物語です。

オスマン・トルコっぽいトルキエ帝国。
ハプスブルグ朝っぽいバルトライン帝国。

一巻を読んだあとで二巻を読んでさらにいろいろと考えたあげく、下敷きになっているのは小アジアで勃興した頃ではなくおそらくオスマン・トルコの最盛期、東欧の中心ウィーンまで肉薄した時代なのではなかろうかというところにたどり着きました。というわけで一巻の感想は忘れてください(苦笑。

犬鷲使いの少年将軍マフムートは一巻の事件の責任を問われて降格。千人隊長になったうえに無期限の謹慎処分を受けます。
自分の視野の狭さ、至らなさを実感したマフムートは世の中を見聞する旅に出ることに。

これでトルキエ帝国の実態が読者にもわかるのねーと、マフムート君の不幸はそっちのけで
よろこぶ私でした。

いろんな都市との商業的・文化的な交流のようす、庶民の生活など、ひとびとの日常にふれるストーリー展開は私の大好きなものです。

中で前回「出てこないの?」と呟いていたヴェネツィアっぽい「海の都(ヴェネディック)」の名前を発見、ふっと笑ってしまいました。

しかし帝国を統べる皇帝陛下はいまだにご登場なさいませんね。
もしかして皇帝はいないのだろうか。ゴンドールみたいに摂政公がいるとか(まさか)。

今回はマフムートがバルトライン帝国側の工作員と接触、戦闘になるシーンが見所でした。
犬鷲を使ってのアクション、見応えがありますね。
猛禽類がこんなに人慣れするものだろうかという疑問は残りますが、マンガだからま、いーか。

マフムート君の経験値アップの旅はまだ続く模様。つづきが楽しみです。

将国のアルタイル 3 (3) (シリウスコミックス)
カトウ コトノ
4063731480


20090214の購入

春一番の吹いた季節外れにあたたかな日に出かけました。

群青学舎 四巻 (BEAM COMIX)
入江 亜季
4757746946


ぼくらの先生!
はやみね かおる
4062149915


以上、購入。

私の本命はもちろん『群青学舎』でしてもう一冊は姪が読みたいというので買い与えたもの。

姪はどうもとても現実的な趣味を持っているようでなかなかファンタジーに手をつけてくれません。それでも本には興味を持ってもらいたいので本人の趣味を尊重しています。寂しいけど。

それにしても、暖かいというより暑い一日でした。
現在出ている中でいちばんの薄着で出かけたのに暑くて暑くて、帰宅した時にはぐったり。
あとで聞いたら、二十五度ぐらいまで上がっていたらしいです気温。
それではもう春を通りこして初夏だよ……疲れるはずだ。

『茨文字の魔法』

茨文字の魔法 (創元推理文庫)
Patricia A. Mckillip 原島 文世
448852009X


[Amazon]


読了。

魔法の力に満ち満ちた異世界ファンタジー。


 その魔法は茨のような文字で書かれた本を眼にしたときから始まった。
孤児の司書の娘ネペンテスが茨文字の解読をするうちに王国は得体の知れない危機に瀕することになる――。




ものすごく面白かった!
さすがマキリップ、やっぱりマキリップ、これがマキリップ! といいたくなるような素晴らしい物語でした。

すみからすみまで不思議な力が横溢していて、ささやかな出来事ですらなにかの意味を含んでいる。非常に幻想性の高い描写にうっとりと浸ってじっくりと読みました。ああ、幸せだった。終わりが近くなるにつれてだんだん寂しくなってしまった。どんなお話もいつかは終わりが来るのですが、なんだかこのままずっと続いてもらいたいような心地だったので。

マキリップの描写は文章そのものに魔法の力があるみたいだと感じていましたが、今回はまさに文字そのものが魔法であるというお話。
文字って読めないものの方が魔力があるような気がするなー、と常々思っていたので題材的にも興味深かったし、ネペンテスが文字を解読している時の感覚の描き方がまた素晴らしかったです。

お話は図書館に住む司書の娘ネペンテスを中心に、図書館のあるレイン十二邦の若き女王テッサラ、そして茨文字をつくり本を書き記したと思われる伝説の王の腹心であり魔術師のケインの物語として、それぞれに展開してゆきますが、この三筋のお話がしだいにひとつに収束していく様も見事でした。

結末もまたとても魔法的で、なおかつとても人間的。

女王の後見役のヴィヴェイの、何でもわかっていたはずなのに何にも把握できていないと気づいた時の途方に暮れたような態度が、なんとも人間的だったのが印象的でしたね。

この本を読めてたいそう幸せだったと思います。

こちらはマキリップの短編集です。

ホアズブレスの龍追い人 (創元推理文庫)
Patricia A. Mckillip 大友 香奈子
4488520081

四本連続

某家族宅でアニメを見てきました。

「RIDEBACK」のつづきと、「攻殻機動隊 SAC」のつづきを二本です。
そのまえに家で「続・夏目友人帳」を見ていたので一日に四本も。
面白かったけどやっぱりちょっと疲れました(汗。

奇しくも四本中三本がメカっぽいSFですね。
意外に思われるかもしれませんが、私は子どもの頃からロボットアニメ大好きでこういう作品がけっこう好きなのです。

「RIDEBACK」は画のレベルが全体的に高くて、見ていておお! という驚きがあるのが好きです。いまのところ特別に落ちたと感じる回もなく、このまま突っ走って欲しいなとおもいます。原作とはずいぶん違う展開らしく、そのぶん原作を知る人によるネタバレもあまりされてないので見ていて純粋に楽しいです。

「攻殻」はいったいどこまで見たのか私にはよくわからなくなってますが、タチコマ君達の今後がちと不安になってます。
みんなで「赤い靴」を歌いながらラボに連れていかれた姿は可愛かったですが。
それから、キャラクター達の年齢を勝手に推測するのがマイブームです←?

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 06 [DVD]
士郎正宗, 田中敦子, 阪脩, 下村一
B00008Z6JV


攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 07 [DVD]
士郎正宗, 田中敦子, 阪脩, 下村一
B00009KM0Q


『中東・北アフリカの音を聴く 民族音楽学者のフィールドノート』

中東・北アフリカの音を聴く (地球音楽出会い旅)
水野 信男
4903238199


[Amazon]


読了。

民俗音楽学者である著者が、中東・北アフリカの音楽の歴史と現状を自身のフィールドワークの体験とともに記す。エッセイ付の入門解説書みたいな本。

すごく興味深い本でした。
歴史的に西洋音楽と密接に接触しながらも独自の音楽文化を築いてきた、中東・北アフリカの伝統に、なるほどーと思いました。

以前、音楽民族叢書というシリーズを読みましたが、あれよりもずっと一般向けでわかりやすく、しかも俯瞰した視点を持つ記述だったのがよかったです。

音楽を専門にしている方らしく、音に関する描写には感心させられる部分が多々ありました。そのかわりときどき顔を覗かせる専門用語にとまどいました。旋法とか微分音とかいわれても? なんですよ私には(汗。

読んでいるうちにこのあたりの音階は一オクターブ七音ではなくて二十四音くらいある、ということが判明して、ああなるほど1/4音とか3/4音とかあるから微分音なのねと理解できましたが。だから弦楽器はともかく、ピアノでは弾けないのだそうな。

時代による変遷も地域ごとの記述に述べられていて、歴史的な背景とつながって変化していった過程がよくわかり、ここでもなるほどーでした。

民族楽器の写真もふんだんに載っていて、たいそう親切な本でした。

参考に目次を載せておきます。


第1章 沙漠の音風景――エジプト

 1サーキアを追って
   ナイル川グリーンベルト サーキア サーキアその後
 2自然の音、都市の音
   水の音 都市の喧噪
 3シナイ半島を歩く
   沙漠と海のあいだに 風の音、動物の声 歌と器楽 自作の楽器で得意曲をうたう ダッヒーヤ

第2章 アザーンとコーラン朗唱――エジプト、モロッコほか

 1アザーン
   ムアッジン アザーン アザーン定句 多様な旋律 ウマイア・モスクのアザーン
 2コーラン朗唱
   イスラームの根本聖典 声にだしてとなえる 開扉の章 どこでもつねにアラビア語で コーラン聴体験

第3章 神秘主義教団の歌舞――チュニジア、トルコ

 1イスラームと音楽
   音楽論争 スーフィー
 2ジクル
   ジクルとは? シャージリー教団のジクル
 3スーフィーの歌舞
   メヴレヴィー教団の旋舞 「踊るデルヴィーシュ」 ネイ
 4タンヌーラ
   宗教儀礼から民族舞踊へ

第4章 東方教会の聖歌――エジプトほか

 1東方の諸教会
   「東方教会」の概念 東地中海地域の東方教会
 2南シナイの聖カトリーナ修道院
   要塞型修道院 クリスマス・ミサ
 3コブト教会
   コブト聖歌との出会い エジプトのキリスト教徒 コブト音楽の形態と性格 コブト学院とモフタハ師 コブト語 ナークース

第5章 ユダヤ音楽――イスラエルほか

 1カンティレーション(旧約朗唱)
   創世記冒頭 ジェルバ島のユダヤ教会
 2シナゴーグ聖歌
   ピユート シェマ コル・ニドレイ
 3ハシディーム(敬虔派)の音楽
   ユダヤ讃歌 ニグン
 4カイロ・ゲニザ
   カイロ・ゲニザ
 5ディアスポラと音楽
   ディアスポラの歴史 イエメンのユダヤ人 現代イスラエル
 6エルサレムの音風景
   鐘とアザーンと祈りの声と
 7中東・北アフリカ音楽とユダヤ人
   越境するユダヤ人音楽家

第6章 民衆がはぐくみ、つむぎだす響き――エジプト、イラク、モロッコほか

 1フォークロア
   ジャマー・エルフナー広場
 2カシーダ
   「詩の民」
 3民衆の歌
   ムハンマダーウィーとアブーディーヤ
 4吟遊詩人
   アブーザイディヤー スース地方のラーイス
 5ペンタトニック圏
   中東・北アフリカ各地にあるペンタトニック圏
 6民族舞踊
   ダブカ ベルベル人の踊
 7民族楽器
   弦鳴楽器 気鳴楽器 膜鳴楽器と体鳴楽器 楽器名称の混乱 ブリコラージュ
 8アラビア半島の音楽
   湾岸諸国 真珠採り作業歌 サウジアラビアとイエメン
 9モロッコとセネガル
   グナーワ グリオとコラ

第7章 アラブの古典音楽――イラク、エジプト

 1アラビアンナイト
   物語のアラベスク アラビアンナイトの音楽
 2バグダードの宮廷音楽
   ギリシャ古典注釈派の活躍 イラキ・マカーム
 3アラブの古典音楽
   古典音楽の成立 古典音楽の楽器 楽器の製作 古代エジプトの楽器 マカーマート イーカーアート タクシーム

第8章 アンダルス音楽――スペイン、マグリブ

 1アンダルス音楽の系譜
   ジルヤーブ 中世スペイン マグリブへ
 2アンダルス音楽巡礼
   チュニジア訪問 アルジェリアからモロッコへ
 3アンダルス音楽のかたち
   ヌーバの伝承 ヌーバの楽器 ヌーバのかたち 音楽のアラベスク 演奏される機会・場

第9章 近代音楽への道のり――エジプト、レバノン

 1カイロ会議一九三二
   カイロ会議のあらまし カイロ会議の成果と課題
 2西洋音楽の導入
   カイロ・オペラ座 音楽院の現状
 3アラブ近代歌謡の誕生
   カイロの実験 ウンム・クルスームとムハンマド・アブド・アルワッハーブ サバーフ・ファフリー
 4アラブ・ポップ
   ベイルート ファイルーズとラハバーニ兄弟
 5西洋音楽にみるオリエンタリズム
   音楽のオリエンタリズム アジアをとりこんだ洋楽作品

第10章 地中海の島々の音楽――マルタほか

 1シチリア
   パレルモ散策 ジューズハープ マリオネット シチリアーナ オペラ
 2サルデーニャ
   ラウネッダス 民俗楽団「アトビオス」
 3マルタ
   ヴァレッタのカーニヴァル 楽器製作家訪問 ナフラ民俗合奏団

あとがき




書いていて気づいたんですが、イスラーム圏の歴史についての事前知識があるとないとでは内容の理解に差が出てくるかもしれません。
けっこう親切に解説してあるけれど、テーマが音楽なのでやはり限界というものが。

それから、導入部を除いた著者の個人的な体験談はなくてもよかったような。

あとはやっぱり、音楽は聴いてみないと本当のところはわからないってことにつきますね。
コブト教会の音楽だけは聴いたことがあるのですが、あとは全然想像がつきません。

この本をみつけたのはアマゾンだったんだけど(何故か推薦された)、その関連でこのようなCDもお薦めされました。

これ聴いてみたいです。

マグレブ音楽紀行 第1集~アラブ・アンダルース音楽歴史物語 (2CD)
オムニバス
B0013HDHTA


それから中で触れられていたウンム・クルスームとかアラブ・ポップのファイルーズとかも聴いてみたいなー。

iTunesStoreにないかしら。

アラブ歌謡の貴婦人
ウム・クルスーム
B0016P8SOI


エルサレム・イン・マイ・ハート
ファイルーズ
B000R9TMNK


20090212の購入

ひさしぶりに純粋に遊びに出かけた。ついでに大きな本屋にゆく。

ロビン~風の都の師弟~ 1 (Flex Comix フレア)
中山 星香
4797352884



以上、購入。

ネットでタイトルだけみて「アーサー・ロビン七世の話だったらいいなあv」と期待していたのですがどうやら違って、『妖精国の騎士』の後日譚みたいです。

遊びの方は妹と二人、いただいたタダ券で映画を見たのですが、これがもう大外れで(苦笑。時間帯制限がある上で消去法で選択したタイトルだからしようがないのですが。

文句を言いながらお昼にスープパスタを食べたら口腔内火傷を負って泣きっ面に蜂でした。

「青い眼」

土岐さん作「青い眼」読了。

昔話風語り口の幻想掌編。心にひやりとさせられる感触と対象との距離感が好みです。
素晴らしい。

『彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる』

彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣
4044499179



[Amazon]


いただいて読了。

女の子が官吏として頑張る中華風異世界ファンタジー。シリーズ……えーと十七冊目か?

先王によって叩きつぶされた貴族派の逆襲、さらに!
という感じで、どんどん追い詰められてます王さまたち。

ひとりで駆けずり回る秀麗ちゃんの健気さに涙。スパルタ御史台長官であり敵方である葵皇毅様も部下として認めた成長をみせながらも、運命には逆らえないのでしょうか。

お話としてかなりクライマックスに近づいているなーという展開つづきで、今回は息つく間がありませんでした。
いままであちらこちらに忍ばせてきた伏線(それもずいぶんと曖昧な書き方だった)を、ものすごいスピードで回収中。

いままではもっときちんとほのめかしておいた方があとの衝撃も大きいんじゃないかと思えたところもあったのですが、この巻を読んで作者さんが描きたかったのは別のところだったのかなーと感じました。

それとは別に回収されていく伏線のおかげでいままで何とも思わなかったところに疑問が生じたりしましたが(苦笑。

ほのめかし文章の多い小説なので、読み返してみれば案外簡単に理由がわかったりするのかもしれませんね。

とストーリー的には俄然もりあがってきました。

そしてキャラクター的にはどんどん株が上がる人がいればどんどん下がっていく人がいる。

貴族派の方々は敵ながらお見事。
もうとにもかくにも鬼長官葵皇毅さまがすてきです。クールなのに時々お茶目なことをしつつ威厳だけは損なわない。ハードボイルドだ。
秀麗ちゃんの天敵、セーガ君はとんだセクハラ野郎ですが今回はけっこういい役をもらってた。かわいげもあった。

しかしセーガ君のかわいげを引きだしたのは燕青。
燕青、相変わらずかっこいいなあ。イイ男だなあ。しかも大人だなあ。
今回の私的もっともいいシーンは燕青の登場シーンだったです。

それにくらべて王様派は……。
いえ、王様はお子様ながら着実に成長してくれていて頑張ってるなと思いましたが、あとの二人。とくに藍のひと。出てるだけみたいで哀しいです。

というわけで、あとどれくらい続くのかわかりませんが、この複雑に絡み合った話にどういうふうに収拾をつけるのか、興味津々というところです。

最後には彩八仙が集結したり、するのかなー?
わくわく。

『将国のアルタイル 1』

将国のアルタイル 1 (1) (シリウスコミックス)
カトウ コトノ
406373112X



いただいて読了。

十五世紀くらいの小アジアっぽい異世界を舞台にした、陰謀戦記コミックの開幕編。

うわー、このマンガは凄く好み!

まず、絵を見ているだけで笑み崩れてしまいそうです。
細やかで美しいうえに、これはトルコです。
どうみてもモデルがオスマン・トルコなんだ。絵だけじゃなく、トルキエ帝国の社会そのものが。

オスマン・トルコ風異世界ものマンガなんて初めて見たよ。
異世界設定なのがちと哀しいけど、本物のトルコを舞台にしたらとんでもないことになりそうだとは思うので、仕方がない。トルコ風だってだけで私は十分に嬉しい。

それからキャラクターがよい。
デウシルメ制でめきめきと頭角を現した少年将軍とは、私のかつての妄想そのままだ(苦笑)けど、それだけじゃない、戦うことしか考えない戦争屋ではなく政治家としての視点をもった志の高い主人公マフムートの存在感がすばらしい。
かれをとりまくライバルや支援者もきちんと個性的に描かれている。

さらに、国内外で敵対する相手とのかけひき、陰謀、推理、暗躍等々の政治的ないろいろがストーリーのメインとなっているところ。

主人公マフムートくんの国・トルキエ帝国は先に書いたようにモデルがトルコ。
敵方のバルトライン帝国は、おそらくビザンチン帝国とそこからさらに西の国々を折衷したような雰囲気。
しかも、地図の雰囲気的にトルコ帝国がキリスト教圏に領土を拡張していった時代がモデルなのではないかと思われ、このあたりも私的にはドキドキなのであります。

なんかものすごくひとり勝手に期待を膨らませている可能性も否定できませんが、一巻を読んだところでの感想なのでご容赦を。

個人的に残念だった点は、あらイスラームは出てこないのねというところと、イスタンブル、じゃないコンスタンティノープルがないってこと――地勢が違うんだからしょうがないけど――と、ヴェネツィア商人の出る幕がないようなってところ、それからアラバの民の設定についてかな。

そのあたりは個人的なこだわりであって異世界なこの物語にはまったく関係のないことですので、皆様はスルーして読んでくださいませ。

私としては、このつぎは帝国には不可欠の皇帝陛下のお姿を見てみたいです。

さあ、二巻を読むぞー。

将国のアルタイル 2 (2) (シリウスコミックス)
カトウ コトノ
4063731308

『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 1』

封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈1〉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ
4094520082


[Amazon]


読了。


平安時代から陰陽道の影の部分を受け継いできた「本家」とその当主に仕えてきた千年を生きる鬼達の活躍を描く、伝奇シリーズ。新章開幕編。

あー、楽しかった!

お久しぶりーの「封殺鬼シリーズ」です。
キャンバス文庫からルルル文庫にうつって、再登場。
物語の舞台は時代を遡り昭和初期、前シリーズで貫禄の元当主を演じておられた桐子様、十四歳のみぎりのお話です。

なにしろ十四歳、ですよ!
当主の威厳を保とうと懸命にふるまってますが、まだまだ子ども。
たしかに本家のなかでは図抜けた才能をお持ちのようですが、当主になったいきさつに暗い影があり、周囲からは敬遠されている、可哀想なんだけど可哀想がったりしたら殺してやる! とか言い出しそうな、そんなツンツンお嬢さんです。

きゃー。
か、わ、い、い!v

そして二人の鬼達。
千年も生きてるのでこちらはほとんど性格変わりません。
雷電=土師高遠=志島弓生のべっぴんさんぶりと冷静沈着ぶりも、
酒呑童子=鬼同丸=戸倉聖の愛嬌たっぷりの騒がしさとお節介ぶりも、
以前の姿(?)そのまんまで、年下の美少女にそれぞれの方法でお仕えしています。

いや、だからさ、聖に子ども扱いされてプンプンしまくる桐子ちゃんが可愛くてしようがない。
聖が出てくるとほんとに場が和むなー。

ストーリー的にはこれから未曾有の戦へ突入せんとする直前の不穏さ不安さを、調子っぱずれの空回り的な浮かれ気分で忘れようとしているきな臭い時代を背景に、食人鬼が出没していたり、得体の知れない新興宗教から挑戦状を受けとったり、軍人がいきなり突入してきたりと、かなり物騒な事件の多発する展開なんですが。

聖が出てくるだけでお笑いになる(笑。

あらたな登場人物、本家の傍流に生まれた不思議なぐうたら青年武見志郎くんの活躍も楽しみです。
もしかしてかれは未来の……かも、とか勝手に想像して楽しんでます。

この章は世間的には完結しているみたいですが、図書館の予約件数が減るのを待っていた私はこれがスタート。

できればサクサクと借りてすばやく読みきりたいものです。

つづきはこちら。
封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈2〉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ
4094520279


『マーベラス・ツインズ 1 謎の宝の地図』

マーベラス・ツインズ (1)謎の宝の地図 [GAMECITY文庫] (GAMECITY文庫)
古 龍 川合 章子
4775806416



[Amazon]


読了。


近世くらいの中国を舞台に、主人公を始めとした人間離れした登場人物達の陰謀や駆け引きを活劇がらみで描く、痛快な武侠小説。シリーズ開幕編。

私にとってはお初の武侠小説です。
武侠小説とは、中国の近世を舞台にして中国人が書いた娯楽小説のことだそうです。

生まれ育った悪人達の巣から人間世界(笑)にやってきた主人公・小魚児。
世間知らずの彼を待ち受けているのはどんな運命か?
はたまた彼を受け入れた世間はどんな運命に出逢うのか?

というふうな感じで始まる、日本でなら伝奇アクション小説と呼ばれそうな体裁の小説です。

主人公は愛嬌のある強い不良。
そしてほんとにお前は人間か! と問い詰めたくなるような化け物的な敵キャラ。
さらに激烈な個性を持つ美少女がこれまた満載。

その敵キャラを小魚児は天才的な口のうまさで口八丁手八丁でころがしていくのです。
こんの悪ガキャー!! と地団駄踏みたくなります。本当に(苦笑。

これってヨーロッパ中世から近世にかけて活躍したアンチヒーローであるティル・オイレンシュピーゲルにポジションが似ているような。

でも小魚児は顔に大きな傷があるだけで容姿はかなりいいらしいです。
そして武術にもかなり長けているらしい。

というわけでじつに少年向けだなーというお話ですね。
強い敵とのバトルと女の子(主人公が少年だから同年代なのかも。歳くったら大人の女性になるのかも)。
すべてがこれノリ。イキの良さで突っ走るストーリー。

話的にはだいたい同じパターンの繰り返しなんですが、単調にならないのはすぐにバトルにならずに相手との駆け引きが入るおかげだと思います。

あと、小魚児にカモにされたのに不本意ながらぞっこんになってしまう鉄心蘭の反応がかわいい。

彼女だけがまともな感性の持ち主なので、彼女の視点から入ればもっと話に馴染みやすかったのではないかと思われます。

はじめのうちは、かなり淡泊な描写に少しひいていたのですが、読み進むにつれてどんどん面白くなってきました。

たぶんね、小魚児はひとりでいるところを読んでもおもしろくないキャラなんです。
少年らしい愛嬌、翻弄された相手の感情を描いてこそのキャラクター。
だから冒頭、広い沙漠にぽつんとたたずむ小魚児の姿を読んだだけでは、まったく興を覚えなかったのだろうなと推測。

そして描写がうすいので話が躍動しているほうが断然面白い。

あと、私が好感を持つのは質感的にドロドロヌルヌルズルズルベタベタしていないところ。
どんなにおどろしい敵キャラがでて、血が流れたり腕が飛んだりしても、湿り気が少ないのでからりとした清潔感(?)があります。
これって中国ものだからかな、それとも翻訳物だから?

日本の伝奇ものはわりとジメジメ湿度が高いので、美しい描写がないものだとどんどん汚くなって、それがいいのだと思われる方ももちろんいるとは思うんだけど、私は生理的にあんまり好きじゃないので。

それからストーリーも進むにつれて小魚児の身の上が徐々に明らかになってくると、そのことが今後のシリーズ的な展開に深く関わってきそうだなと感じるし、するとこのやんちゃな話は人情ドラマになる可能性もあるのかもと期待が膨らみます。

というわけで、武侠小説、おもしろいではないですか。

たしかに『三国志』の国の娯楽小説だなあと思います。荒唐無稽のレベルが違う(苦笑。
ストーリーが荒唐無稽のためにあるような感じ。副タイトルの「謎の宝の地図」の存在を忘れてしまうこともしばしばです。

描写が少ないので、私は映画『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』あたりを思い浮かべながら読んでますが、じっさいはどうなんだろう。

とにかく中国ものは私的に脳内映像のストック素材が少ないので挿画がたよりです。描いてらっしゃるかたがそうとうお上手なのでこちらも楽しみにしています。

つづきを予約しなくちゃー。

マーベラス・ツインズ (2)地下宮殿の秘密 (GAME CITY文庫 こ 2-2) (GAMECITY文庫)
古 龍 川合 章子
4775806564

20090207の購入

用事があって出かけたら電撃文庫の新刊に出会えました。

鳥籠荘の今日も眠たい住人たち〈6〉Blood Party! (電撃文庫)
壁井 ユカコ
404867529X


以上、購入。

正規の発売日は十日でネットだと六日とかいう本の場合、近所の本屋でいつ入荷するのかがさっぱり読めません。
二日くらいの時差だと正規でやってくることの方が多いのだけど、四日もあるとなー。
それでうかうかしていると買い逃すのです。

今回はラッキーだった。

用事というのは取り寄せ注文していた炊飯器の部品を受け取りに行くことです。
炊飯器の蒸気抜きの蓋のパッキンがイカレて、ずっと浮いた状態で炊いていたのです。
ずっと……もう数ヶ月くらい。
このままでも良さそうな気がしたけども(苦笑。

『犬夜叉 22』

犬夜叉 (22) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256422



読了。


女子中学生の日暮かごめが戦国時代へトリップ。半妖の少年犬夜叉と出会い、彼や仲間達とともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇冒険アクションロマンス。シリーズ二十二巻。

この巻には、

奈落が自分のベースとなった野盗・鬼蜘蛛を分離させて作った分身である無双をめぐっての、犬夜叉と奈落たちの対決、付属神楽の葛藤のエピソードと、

奈落が鉄砕牙の必殺技が効かなくなるほどの結界を張れるようになったことが判明。鉄砕牙を強くするためはより強い結界を張る妖怪・百鬼蝙蝠を斬ることだと知った犬夜叉が、出かけた先で人間に虐げられる半妖の少女と出会うエピソード、

が収録されています。

おお、めずらしく話に区切りがついたところで終わってる!

ふたつのエピソードともかなりの紙幅を費やしているだけに、読み応えのある話になっています。

半妖であるが故の弱点をみずからを強化するための機会としてどんどん化け物じみていく(というかもともと化け物なんだけれども)奈落には茫然とさせられました。

それでもまだ鬼蜘蛛をふるい落とすことができないという弱みがあるのが救い。
鬼蜘蛛がいないと奈落は存在することができないらしいので。
おそらく、鬼蜘蛛の妄執がたくさんの妖怪をひとつにつなぎとめる役割を果たしているのでしょう。
だから鬼蜘蛛の持つ桔梗へのこだわりも捨てられない。
奈落は自分の弱みを許せないけれども、存在ができなくなることのほうが恐ろしいようです。
いったん持ってしまった個の自覚に執着しているのですね。

ということは奈落を滅ぼすには鬼蜘蛛を消滅させるか、救済するかのどちらかを果たさなければならないわけだ。
どちらも難儀なことだなーと思います。

いっぽう、犬夜叉のほうは半妖としての自分を受け入れつつある模様。
百鬼蝙蝠の血を受け継ぐ紫織ちゃんの境遇に自分を重ねてすなおに同情する姿に、心の余裕が感じられました。

紫織ちゃんのお母さんの言葉、


半妖だからって
妖怪に
劣ってる
わけじゃないし、

人間に
劣ってる
わけじゃ
ないってこと…



を聞いている犬夜叉の表情がかわいかったです。

赤く染まった鉄砕牙の刃に犬夜叉の成長を見たような。

つづきが来るのを待ってます~。

犬夜叉 (23) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091256430