20090730の購入

猛暑の中、新刊目指して本屋に進行。

海獣の子供 4 (IKKI COMIX)
4091884709


翼の帰る処 2上 (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-3)
4344817079


以上、無事にゲットしてきました!

荷解きされたばかりのまだ棚に並べられる前の本をぬきとってレジに運びました。
いそいそと、でもなんとなく後ろめたいのは何故?

しかし帰宅後は疲れ果て、暑さにおもわずエアコン部屋から離れられずにいたら、やはりというか必然的に体調を損なってしまいました。

まったく、ヤワだなー<自分。

『洪水前夜(あふるるみずのよせぬまに)』

洪水前夜(あふるるみずのよせぬまに) (ウィングス文庫) 雁野 航
4403540643


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読了。

古代オリエントを舞台にした、生と死と愛の壮絶な物語。同一世界を舞台にした中編と短編を収録。

高さんのところで知って、図書館で借りてみました。

面白かったです。
これを書きたいんだーという作者さんの思いが伝わってくる熱いお話でした。

かなりグロテスクなシーンがあるのでそういうのが苦手な方にはお薦めできませんが、強烈な感情と力強い幻視シーンが印象的でした。

収録されているのは以下の作品です。


洪水前夜(あふるるみずのよせぬまに)
残照、あるいはアダイアトゥムの遺言

あとがき



私の感触ではこれはファンタジーじゃなくて、SFです。
なぜというに天使が○○○だから(笑。

遺伝的な話とか、そのほかのちょっとだけ垣間見える設定が私にとってはSFなのです。

あと、私は古代オリエントはあんまり知らないんで、そこらへんにもちょっとよくわからない部分が残りました。「シュメールのたまもの」ってどういう意味? とか。

シュメールといえば謎の民族で、シュメール語はセム・ハム語族にもインド・ヨーロッパ語族にも属さないらしいです……とかいうことがなんとなく頭をよぎる程度です。

というわけで、ちょっと説明不足かなと感じる部分もままありましたが、そんなことはどうでもよいと振り捨てることのできる強い物語。

面白かったので他の話も! と思いましたが、本として出版されているのはこの一冊のみなんですね。

作者さんのサイトをみつけたので飛んでみたら、そこにブログ小説をまとめたものとかがありました。

その画面を見て個人的にびっくり! 「小説HTMLの小人さん」を使用されています!
思わぬ所でおなじみさんを発見して勝手に親近感を抱く私……。

『人狼伝説 変身と人食いの迷信について』

人狼伝説―変身と人食いの迷信について
Sabine Baring‐Gould
4409510622


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読了。

十九世紀にイギリスで刊行された、「人狼(狼人間)がヨーロッパでどのように信じられてきたかを客観的に伝えようとした」初期の頃の本。

人狼伝説研究史においては初期に書かれ、その後何度も引用されたとても重要な本だそうです。
この本に影響された小説も数限りないと推測されています。
初期の研究本であり、学術的には文章に飾りがありすぎ、構成があれもこれもと多岐にわたりさらにエキセントリックでもあるという欠点もありますが、情報の量と質にはすばらしいものがあります。

私にとっては、十九世紀における人狼伝説の受けとめられ方が肌で感じられるような本でした。

以下、目次です。


第一章 はじめに
第二章 古代人と狼憑き
第三章 北方の人狼
第四章 北欧における人狼の起源
第五章 中世の人狼
第六章 恐怖の審理室
第七章 ジャン・グルニエ
第八章 人狼と民間伝承
第九章 先天的な狼憑き
第十章 人狼神話の神話学的起源
第十一章 ド・レ元帥 I〈審理〉
第十二章 ド・レ元帥 II〈裁判〉
第十三章 ド・レ元帥 III〈判決と処刑〉
第十四章 ガリツィア地方の人狼
第十五章 特異な事例――ハイエナ人間
第十六章 説教の中の人狼

訳者あとがき
参考文献一覧



見ればわかるとは思いますが、この本の中には神話的な人狼解釈、そもそも人狼・狼憑きが具体的にはどのような人物・状況を表す言葉であったかという民俗学的なアプローチ、実際に起きた(かなり猟奇な)事件、という今から見るとバラバラな部分で成り立っています。

初めの二部はまとめてあっても違和感がありませんが、最後の現実事例はいまなら犯罪心理学や精神医学の分野に含められるものなのではないでしょうか。

しかし、著者はこの部分にもっとも大きな関心をよせている模様で、ここまで具体例を書かなくてもというようなグロテスクなところまでくわしく記してあります。そういう猟奇な出来事が苦手な方は、この部分は読まない方がよろしいかと思いました。

かくいう私も、ジル・ド・レ元帥、通称青髭公の事件の章には辟易させられました。ここの記述にはかの事件の経過は記してありますが、原因となった犯人の精神的な資質や犯罪に至る状況などはまったく書かれていません。

大昔の本に求めるものが違うとは解っていても、他の事件関連の記述も含めて、ただの俗な読み物になってしまっている気がしました。

初めの方に、人食いは人間ならばだれでも犯す可能性がある事柄と書かれているのですが、それに対するフォローがまったくないような……。

でもまあ、青髭公はともかく、ほかの犯人は理解できないでもない状況に置かれていたようなので、しぶしぶと納得することにいたします(苦笑。

その件は無視して、最初のほうの考察はなるほどとうなずける部分も多いので、読んで損をしたとは思っておりません。

最後に挙げられている妙な(笑)説教に、迷信深くあっても現実的でもある人間のたくましさを垣間見た気がしました。

余談。
「高貴な家柄のことなので」と名を伏せられている東欧の王族の話は、『ドラキュラ伝説』に記されている話ではないかなあと思いました。十九世紀にはまだタブーだったんだな……。

ドラキュラ伝説―吸血鬼のふるさとをたずねて
レイモンド・T・マクナリー ラドゥ・フロレスク 矢野 浩三郎
4047030260

『イムリ 6』

イムリ 6 (BEAM COMIX)
三宅 乱丈
4757749341



読了。

どこかの惑星を舞台に、支配民と被支配民のあいだの確執とそこに巻き込まれた少年の苛酷な運命を描く、異世界SFファンタジーコミック。シリーズ第六巻。

独特の絵柄できれい事ではない政治や権力にまつわるあれこれをシリアスハードに描く、土俗的なマジカルを感じるコミックです。

支配民族「カーマ」の一員として母なる星ルーンに降り立った少年、デュルク。軍部によるクーデターに巻き込まれてひとり放浪することになった彼は、被支配民のイムリと出会い、これまで知らなかった現実の社会に否応なく対峙させられていく……というストーリー。

この巻はとんでもない怒濤の転換期が訪れて、デュルクはさらに苛酷な状況に追い込まれてしまいます。

はー、スゴイ。読んでいて息もつけなかった……。
マンガにこんな圧倒的な臨場感を感じるのは久しぶりのことのような気がするなあ。
言葉に頼らない画面のみの迫力でほとんどすべてのシーンを押しきってしまうところ、並々ならぬ筆力であるなあと感嘆しました。

説明がほとんどないのでわかりにくいと感じることもありますが、この魔術的な描写の奔流のまえにはそんなことどうでもいい、と言ってしまいそうになります。

我に返ると理性的にはあんまり理解していない自分がいて苦笑するのですが、その場に立ち会ったものの得る空気感というか、みなぎっていたパワーは確かに受けとった。

デュルクの絶望や孤独や衝撃、ラルド覚者の苦悶、それぞれが心に刺さるように響いてくるのが苦しいほどでした。

はー、このあと話は一体どうなるのかなあ。
すごく面白いんですが、この密度とパワーが長く続くと身が持たないような気がしてきました(汗。

つづき、お待ちしています。

余談。
ルーン世界地図を見ているうちに、これって遠未来の地球なんじゃないかと思えてきた。

『蜘蛛の巣 上』

蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫)
ピーター・トレメイン 甲斐 萬里江
4488218075



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読了。


アイルランド教会とローマ教会の勢力争いが佳境に入った七世紀のアイルランドを舞台に、裁判官・弁護士の資格を持つうら若き修道女フィデルマが事件の謎に挑む、時代ミステリ。シリーズ本邦初訳作品。シリーズとしては五作目だそうです。

七世紀のアイルランド!
すでにキリスト教化されているとはいえ、ケルトです、ケルトの氏族です、上王です!
舞台萌えも甚だしくとびついた時代ミステリです。

作家さんはピーター・トレメイン。学者で専門はアイルランド史。ホラー短編集『アイルランド幻想』の作者でもあります。
したがって時代考証には信頼が置けるはず。
期待に違わず、アイルランドの中世がことこまかに文章化されていて、それだけで私はうっ(感動)……となりました。

当時の社会的なあれこれ。風習や日常の生活つまり風俗。さらにアイルランド教会の元で整備されてきた法制度。アイルランド独自の社会観を浮かびあがらせるために比較対象として示される、サクソンやローマ教会の常識。
アイルランドの族長が住まう砦の模様も、絵画的なまでに緻密に書き込まれています。

いやー、これ一冊持ってればかなりディープにケルト気分にひたれますね。

もちろん、ミステリなので事件は起こります。
事件によってあぶり出されてくる人間の暗部の描き方にも手抜きはない模様。
ここではかなり物騒でもあったらしい当時の社会情勢なども描かれてゆきそうな気配です。

とても楽しめました。
ヒロイン以外は……(苦笑。

なんでも出来て美人で身分も自尊心も高く、身分序列をないがしろにされることに我慢ができない高飛車な王女様には、ちょっともうつきあいたくない気がするのですが、まだ下巻があるのですよねえ……。事件ももちろん、解決していないし。うーん……。

ツンツンの王女様が好みの方にはお薦めかも知れません。
もしかして、作者のトレメイン氏がそうなのか?(汗。

それと、訳文がものすごく古めかしいというか重くて、これは訳者さんの持ち味なんだろうけど、そこらへんもちょっと私の好みと合わなかったです。読みにくいほどではないのですが。

『蟲師 6』

蟲師 (6) (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063143813



読了。

少し昔(明治から昭和初期?)の日本を舞台に、“蟲”という独特の存在と人界のあいだを取り持つ蟲師ギンコの活躍を静かに描く、民俗学的なファンタジー連作。シリーズ第六巻。

アニメの再放送で熱が再燃した『蟲師』。
途中まで買ってあった分を読み終えてとうとう新規購入分にまで到達してしまいました。
アニメは『蟲師』の世界の瞬間に没頭できる感じでとても好きです。
一方、原作の漫画は、アニメにはない描線の揺れやモノクロでのみ表現される夢幻の空気感が素朴で、しかもとても芳醇。
どちらも味わい深い、心にしみいるものがたり。
とても幸福な出会いをした作品だなと思います。

ここまでひとつも感想を書いてこなかったのは、この世界に言葉はいらない、私の陳腐な文章で汚したくないというのと、いっそ語りたくない、この感覚は自分だけのものにしておきたいという欲からでした。

以前に読んだとき、まだリアルタイムで新刊を手に入れていたときよりも深く物語世界に入り込めたような心地になったのは、このあいた時間の間に私自身がいろいろと知識を得たりして、この世界を受け入れる体勢がようやく整ったということなんだろう。

というわけで、一話一話の感想は書きません。
人界と異界の出会いによってうまれる非情で哀しい、けれどこころにぬくもりがほのかな灯火のようにともる物語が好きな方にはつよくおすすめできる作品です。

で、六巻を読んでしまったので七巻を購入してしまったのさ。
八巻を手に入れたくなるのも、時間の問題という気がひしひしと(汗。

蟲師 (1) アフタヌーンKC (255)
漆原 友紀
4063142558


蟲師 (2) アフタヌーンKC (284)
漆原 友紀
4063142841


蟲師 (3) (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063143120


蟲師 (4) (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063143325


蟲師 (5) (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063143619

『影の皇子 タザリア王国物語』

影の皇子 (電撃文庫―タザリア王国物語 (1287))
スズキ ヒサシ
4840234868



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読了。

中世~近世ヨーロッパ風異世界を舞台に、孤児の少年がとあるきっかけにより王家の中に連れ込まれ、さまざまな苦労を味わいつつも成長していく姿を描く、異世界陰謀ロマン。シリーズ開幕編。

ネットで見かけて気になっていたシリーズ、ようやく借りてみました。
冒頭、すこし入り込みにくいなあと感じましたが、厚みある世界描写、複雑な人間関係、身分差による屈辱感とそれをこえて培われる情の通い合い。さらに陰謀の顛末まで、ラノベレーベルにはめずらしい細部まで書き込まれた文章で描かれる、少年ジグリットのシリアスハードな運命にどんどんひきこまれていきました。

ストーリーはそんなに込み入っていないのですが、書き込みによる臨場感がすばらしくて先読みを許さない。

王宮においてほぼ孤立無援のジグリットが、自分の力で前進してゆく過程、それにより味方を得、あるいは敵を作っていく顛末。すべてにおいて緊張感が途切れません。

キャラクターノベルとは言いがたいですが、登場人物はそれぞれの持ち場でそれぞれの役割を十二分に果たしている印象。

とくにジグリットをつねに虐待する皇女リネアだけは別格でキャラ立ちしています。
こういうのって、ヤンデレというらしいですね。私にはヤンツンとしか読めませんでしたが(苦笑。

残念なのは、文章がときどきひどく読みにくいこと。冒頭の入りにくさはすでに書きましたが、あとは常套句や慣用句にあれ? と思うような勘違いが散見されます。全体的に重々しい雰囲気のなかでこうした間違いがあるとよけいにがっくりしてしまいます。
格調高くいこうとするあまり、無理をしているのでしょうか。

ラノベを読んでいるとこういう「がっかり」がけっこうあるのですが、そういえば最近はふつーの文芸書でもそういうのが見つかったりするので、油断できません。

言葉を扱うひとには言葉そのものの持つ意味に敏感になってほしいなあと、自戒を込めて思うのでありました。

しかしお話そのものはたいそう面白かったのでつづきも読みたいと思います。

黒狼の騎士―タザリア王国物語〈2〉 (電撃文庫)
スズキ ヒサシ
4840236070

『犬夜叉 39』

犬夜叉 (39) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
409126669X



読了。

戦国時代へトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションロマンコミック。シリーズ第三十九巻。

この巻には、

鋼牙くんの妖狼族のお宝のエピソードと、妖刀・奪鬼のエピソード開幕編が収録されています。

なんて力の抜けた説明(苦笑。

力がぬけてしまうのは、このエピソードがストーリー全体にどれほど重要なものなのかがいまいち不明だからのような気がします。
ありていにいえば、このエピソードがなくても話が成り立つのではないかという疑問が生じている。

奈落は出演しないし、白童子もそう。
魍魎丸は腕しか出てこない。
ということで緊張感がないわけです。

この作者さんのことなのでただの寄り道ではなく新たな展開への助走だとは思うのですが、なんだかだらけてしまうのも仕方ないような。

もやもやな気分のまま、続きが届くのを待っています。
最近予約数が増えてるんで、こんどはしばらく読めないかも……。

犬夜叉 (40) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091266703

20090723の購入

予約変更願いなどが来たせいで遅れに遅れた定期検診に行ってきました。

ついでに本屋などを襲撃。

蟲師 (7) アフタヌーンKC (404)
漆原 友紀
4063144046


今月は予定以外の本は買うまいと決意していたのはどこへ行ったのやら。
たがが外れたついでにマウスまで購入してしまいました。

Microsoft Compact Optical Mouse 500 マスカット グリーン U81-00038
B001AYW2R4


これまではタブレット付属のマウスを使用していたのですが、使い方が荒いので(マウスではなく)タブレットが壊れそうな気がして不安になりまして。

Macに触り始めてから随分経つけれど、ようやくマウス使いに慣れてきた模様です。ずーっとタブレットのペンで操作していたので。マウスはホイールの便利さに目覚めてから手放せなくなってしまいました。私にはトラックボールの方があっている気もするけど、トラックボールはお値段が張るので……(汗。

ということで散財してしまいました。
月末まで、もう財布のひもは緩めないぞと心に誓います!

『テメレア戦記 I 気高き王家の翼』

テメレア戦記〈1〉気高き王家の翼
Naomi Novik 那波 かおり
4863325967



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読了。

ドラゴンによる空軍の存在する十九世紀を舞台に、戦乱のヨーロッパで英国海軍のキャプテンだった男と彼が担い手となった若きドラゴンの活躍を描く、歴史改変ファンタジー。

ドラゴンです。話すドラゴンです。賢いドラゴンです。可愛いです。
というドラゴンのたくさん出てくる戦争ファンタジーです。

冒頭から、もしかしてこれって海洋冒険モノですかというような雰囲気で始まった物語。
オーブリー物ばりの海戦が描かれた後に主人公の英国海軍キャプテン・ローレンスは、拿捕したフランス船の積み荷が希少なドラゴンの卵であることに狂喜し、次に愕然とします。ドラゴンの卵は孵化を間近に控えていたのです。

ドラゴンは孵化と同時にみずからの意志でひとりの人間を担い手として選びます。
もし、その選択がなされなかった場合、ドラゴンは制御できない存在となり、無価値となってしまいます。

しかし、ローレンスの船は空軍関係者から遠く離れた海上にあり、とうぶん陸地にはたどり着けそうもない。
そんなこんなでローレンスはドラゴンに選ばれてしまうのです。

すでに海軍でキャリアを築いてきたローレンスにとってはまさに青天の霹靂でした。しかしドラゴンを見捨てることはできず、かれは新天地に旅立つ事を決意せざるを得なくなるのでありました。

……というようなお話です。

意外だったのは、これが少年の成長物ではなかったこと。
海軍から一転して、訳のわからない空軍に投げ込まれた男の戸惑い、不安、それでも自分はすでにひとかどの物であったというプライドが交錯するローレンスの心理が楽しいです。

空軍のよくいえば柔軟な、わるくいえばまだ組織が確立されていないゆるゆるな雰囲気も良い感じです。

さらにもっとも興奮させられるのは、ドラゴンによる空戦のシーンです。
この話に出てくるドラゴンは、種によって用途を使い分けられています。
伝令用、偵察用といろいろいる中で、おもに戦闘用として使用されるドラゴンは桁外れに大きいらしいです。

なにしろ、ドラゴンに乗るのは独りではありません。
まるで一艘の戦艦のように、舵取り役の担い手の他に副キャプテンやら伝令兵やら爆撃兵やら医療兵やらがクルーとしてわんさと乗り込んでいるのです。

読みながら「こんなに乗せて、ドラゴンの機動性はどうなるのだろう?」とかなり不安でしたが、おそらく、この世界のドラゴンは馬ではなく飛行機に近い存在として設定されているんでしょう。

その他にもドラゴンの設定には生き物として疑問符がつくようないろいろがありまして、その部分がちょっとひっかかりましたが、お話は人間ドラマあり、ドラゴンドラマあり、戦闘あり、陰謀ありの盛りだくさんでたいそう面白かったです。

訳者あとがきにもありましたが、ジャック・オーブリー物と「パーンの竜騎士」を足して割ったような味わいでした。

ドラゴンの設定には他にもまだ違和感がいろいろとあるのですが、これだけ楽しんだのだから文句は言うまいと思います。

……とか書きながらも、中国産のドラゴンがもっとも優れているなどという件を読んだりするとやっぱりキリスト教が関係しているんじゃなどと考えてしまったりして、なのに聖職者がまったく出てこないことになんとなく居心地悪さを感じてしまうんですが。十九世紀の欧米物なのに不思議だなーと。

シリーズはすでに二巻が出ている模様です。

テメレア戦記II 翡翠の玉座
ナオミ・ノヴィク 那波 かおり
4863321147

『秋の牢獄』

秋の牢獄
恒川 光太郎
4048738054



[Amazon]


読了。

うつろいゆく日常の間隙にある異常な空間に囚われた人びと描く、ホラー短編集。

ここまで読んできたこの作家さんの私のイメージは、端正なのにどこか輪郭の曖昧なもや~とした雰囲気の文章で、民俗学的な異常な事態と人の悪意を描くひとというところでしょうか。

しかしこの短編集はすこし趣が違っていました。
民俗学的などこか懐かしい雰囲気がちょっと薄くなったような気がする。
意表を衝く展開は今までの通り。あざやかな着地も素晴らしい。
ですが、私としては前作の“穏”みたいなどこかが出てくる方が好きだなーと思う。
所詮私はファンタジー読みなのですね(苦笑。

収録作品は以下の通り。


秋の牢獄
神家没落
幻は夜に成長する



表題作の「秋の牢獄」はSFネタといってもいいような気がする。
ネタバレになるので書けませんが、読んでいてすぐに某アニメを思い出しました。

「神家没落」は舞台が日本に限定されている理由がよくわからなくてそこがちと不満。

「幻は夜に成長する」はたいへんな黒ストーリー。でもこれが一番ファンタジーぽかったと感じました。

ファンタジーか否かで作品を計るのは止めようよ、自分、とここまで書いて思いました(汗。

物の怪ものにはよくある善意の行き違いという話は一個もなくて、強烈に印象づけられるのが悪意であるのがとくに特徴的だと思います。

ときにイヤーな気分になるのは確かなのですがそれでも面白いと思える、のでまだ他の作品も読みます

『ピアノの森 5』

ピアノの森―The perfect world of KAI (5) (モーニングKC (1437))
一色 まこと
4063724379



借りて読了。

野放図な天才ピアノ少年・一ノ瀬海の(たぶん)ピアノ人生を描く音楽マンガ。シリーズ第五巻。

とうとう始まった初めてのコンクール。
阿字野先生との取引で出場することになった海ですが、おなじ出場者の真剣であるがゆえに不安という感情に振りまわされる姿に触れ、自分を省みていろいろ感じとる、という雰囲気で話が展開します。

すでに自分のスタイルを持っている海くんですが、まだまだ子供だし不安定。振りまわされていた課題曲をどこまで自分のものにして演奏できるかが読みどころです。

森のピアノのイメージシーンが素晴らしかった。

察するところ、海くんは感性のプレイヤーですね。
たぶんのだめとおんなじタイプなのではなかろうか。

そして阿字野先生はすでに海くんが日本の音楽教育の場では埋もれてしまうことが解っている。

よき理解者でもある指導者を得た海くんの今後は、やっぱりけっこう波乱の予感がします。

おもしろかったー。
つづきもそのうち借りたいと思います。

『復讐の誓い クロニクル千古の闇5』

復讐の誓い (クロニクル千古の闇 5)
酒井 駒子 Michelle Paver さくま ゆみこ
4566024156



[Amazon]


読了。

石器時代のヨーロッパを舞台に、宿命を負わされた少年の成長を描く古代ファンタジー。シリーズ第五巻。

厳しい自然のなかでシリアスハードな展開をみせる、リアルな雰囲気たっぷりの古代ファンタジーの最新刊です。

今回のトラクは親友を自分の過失をきっかけに殺されることになり、復讐の誓いを立てて猪突猛進することになります。仇は魂喰らいのひとり、オーク族の魔導師シアジ。

怒りで誰の助言も受け付けなくなったトラクに、なんとか理性を取り戻させようと奮闘するレンが、とてもつらそうで可哀想なお話でした。

いままで極寒の雪平原、北の海、とうつしてきた舞台は、今度は深い森へと移動。
開けた森にすんでいたワタリガラス族とは異なり、閉鎖的で余所者を歓迎しない人びとは、シアジの歪んだ罠にかかり内部抗争を始めています。

もっとも深い絆で結ばれていたウルフとの関係も微妙になり、父親とも感じるワタリガラス族の族長フィン=ケディンやレンの気遣いを無視し、感情のままに突っ走るトラク。

この話ははじめてかれが加害者になるかも知れない危機を描いたものなのかなー、と思いました。

そういえば、トラクもだいぶ大人になってておそらく思春期に入ってきたのですね。
直接の事件のきっかけとなった出来事も、それを示唆していたんだろう。
感情の起伏が激しくなり、攻撃的になるのも無理はないか。

にしてもふりまわされるレンにしてみれば理不尽このうえない展開でした。
私だったらトラクなんか見捨てて帰ります。
それをしないということは、レンはトラクを大切な人物と認識しているんだよなー。

深い森の中に分け入ったことでトラクの母親のことがあきらかになり、このシリーズも終盤にさしかかったことが感じられました。

ラストはほのぼのとしてあたたかい、こうなればいいなあという未来を象徴している素敵なシーンでした。

今回印象的だったのは、森の木々。
すべてが繋がっていてとてつもなく永いスパンで生きている、木々の感性です。
この本はここを読んだだけで元が取れたなあと思いました。
……って図書館本なんですけどね(汗。

あとがきを読むとこの次で完結なのかなーという雰囲気。
最後の魂喰らいとの対決が待ち望まれます。

『高校球児ザワさん 1』

高校球児 ザワさん 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
三島 衛里子
4091825370



借りて読了。

高校野球部の唯一の女子部員・都沢理紗を周囲の人びとの視点から描く、日常短編マンガ。シリーズ第一巻。

ヒロインの自己肖像はまったく明かされぬまま、彼女に接する機会を持った不特定な人物の先入観や思い入れや誤解、ひとりよがりを、ユーモアを交えて描くマンガです。

このマンガのキモは、たぶんザワさんの造形。
自分をあまり表に出さず、でも殻に閉じこもっているわけでもない、普段はふつーの女子高生よりだらけているくらいだけど、野球にかけては誰よりも真摯でストイック。
そして派手さはないし鍛錬の成果でがっちりとしてますが、あきらかに美少女。

ザワさんは日常のなかにまぎれこんだ小さな非日常なんだと思います。

おなじ野球部の部員たちも、彼女のことを無意識のどこかで神聖視しているんじゃないかと思うなー。

下手をすると覗きみたいな話になってしまいそうなマンガですが、ザワさんの存在感の清冽さがそこを救ってるんじゃないかと。

あくまでも他者の視点で見るザワさんを描くことで、彼女の神秘性はいや増すのですね。

まるで「本日のザワさん」を報告しあっているような雰囲気だなーと感じました。

面白かったです。

ところで、この本、フツーのマンガ単行本のサイズとちょっと違います。
なんでだろ、と思ったら掲載誌が『ビッグコミックスピリッツ』(たぶん)。
そういえば『わさび』とかも他と違う規格で出てたよなー。しかも作品によって規格が違うという手間のかかりそうな規格。
そういう枠の連載なのでしょうか。

『高校球児ザワさん』は二巻がもうじき出る模様です。

高校球児 ザワさん 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
三島 衛里子
4091826695

『琵琶法師 〈異界〉を語る人びと』

琵琶法師―“異界”を語る人びと (岩波新書)
兵藤 裕己
4004311845



[Amazon]


読了。

中世から近世、近代にかけて日本各地を放浪していた琵琶法師の、歴史と存在を民俗学の立場から解き明かそうとする。
最後の琵琶法師の語りを収めたDVD付録付き。

旅芸人つながりでゆきついた琵琶法師の本です。
これは大当たり! でした。

琵琶法師の日本での起源から隆盛期、そして衰亡しつつもしぶとく生き残ってきた近代までのあゆみが、その社会的な存在理由からかれらの芸のありかた、アイデンティティーまで、具体的にわかりやすくたいへんに面白かったです。

琵琶法師といえば「平家物語」ですが、その「平家」の成立過程・流行の理由などは目から鱗。

なにしろ私、恥ずかしいことですが日本史に疎いので、「平家物語」も中学か高校のときに冒頭を暗唱させられたことしか知りません。

でもこの本の冒頭でとりあげられている「耳なし芳一」にはトラウマレベルの衝撃的な記憶を持ってるので、もうすんなりとその世界に入り込むことができました。

そっかー。
芳一が起居していたお寺って、平家を弔っている寺だったのね……。
それに体中にお経を書かれるところがとても気味悪かった理由もなんとなくわかった気がする……。

「平家物語」はタイトルからしてわかるように滅び去った平氏の鎮魂歌だったそうで、それは滅ぼされたものの恨みを恐れる当時の人びとの恐怖と不安の念から生み出されたものらしい。当時は戦乱で社会が乱れた上に大地震も重なって、人心がかなり不安定だったようなのです。で、清盛は死して竜王となり大地を揺るがしたという通説が流布したらしい。

この竜王伝説というのが、まさに民俗学的なファンタジー。

それと、壇ノ浦で沈んでいった安徳帝と建礼門院が、父性を知らない琵琶法師たちに深い共感を得たという話もそうかー、とうなずけました。

さらに成立過程では平家鎮魂をメインにしていたはずの「平家」が、時代を下るに従い源氏系の王朝成立伝説となって琵琶法師も権力者に取り込まれていき、しだいに野を放浪する琵琶法師が減っていった、という件には、江戸時代モノにはなぜ琵琶法師の姿が見当たらないのかという私の疑問にわざわざ答えて貰ったような心地でした。

しかし、琵琶法師もすっかりいなくなったわけではなく、西日本・九州ではほそぼそとながら生きながらえていて、それがもともと琵琶法師の職能だった祭祀を司る役割を拠り所としていたからである、という話も興味深かったです。

というわけで、以下に目次。


序章 二人の琵琶法師
 「耳なし芳一の話」/芳一話の系譜/耳と異界/モノ語りの担い手/最後の琵琶法師/現代の芳一/ハーンと芳一

第一章 琵琶法師はどこから来たか――平安期の記録から
 大陸の琵琶法師/二つの伝来ルート/盲僧の六柱琵琶/サワリという仕掛け/平安貴族による記録/『新猿楽記』の「琵琶法師」/「地神経」読誦の記録/地神の由来/四季の土用と「地神経」/霊威はげしい王子神/地母神の信仰/東アジアでのひろがり/物語の母型

第二章 平家物語のはじまり――怨霊と動乱の時代
 怨霊のうわさ/竜王と平家の怨霊/安徳天皇の鎮魂/竜王の眷属/『法華経』の竜女/大懺法院の建立/『徒然草』の伝承/語り物と平家物語/語り手としての有王/琵琶法師と聖の接点/編まれてゆく物語/巫覡としての聖/モノの語りの文体/匿名的な〈声〉/「視点」のない語り/モノ語りとテクスト

第三章 語り手とはだれか――琵琶法師という存在
 身体の刻印/「内裏へは五躰不具の者入らざる……」/穢れと聖性/柳田国男の「一目小僧」/干死と怨霊/境界をまつる蝉丸/宿神と異形の王子/「悪」が支える聖性/「伊勢平氏はすが目なりけり」/母と子の神/竜女と韋提希夫人/弁才天の信仰/モノ語りする主体

第四章 権力のなかの芸能民――鎌倉から室町期へ
 寺社がはたした役割/座の形成と村上源氏中院流/当道座以前の数派/一方派と東の市/覚一本の成立/当道座の成立と本文の相伝/「平家」の流行と南北朝の政治史/「室町殿」への正本の進上/将軍家と当道座/村上源氏から清和源氏へ/将軍家の起源神話

第五章 消えゆく琵琶法師――近世以降のすがた
 応仁の乱以後/徳川政権との結びつき/地神盲僧への締め付け/「脱賤民化」のための支配構造/諸職諸道とのつながり/三味線・浄瑠璃の台頭/東北の奥浄瑠璃/西日本の座頭・盲僧/近代に残った琵琶法師/「あぜかけ姫」の伝承/機織り淵の伝説/「俊徳丸」の伝承/アルトー版の「耳なし芳一」/おわりに――琵琶法師とはなにか

「俊徳丸」DVDについて
「俊徳丸」全七段・梗概

あとがき



ところで、付録のDVDに収録されている最後の琵琶法師のかた。
どうやらつい最近まで……といっても1990年代くらいですが、ご存命だったらしいです。
かなりのご高齢で演目もご自宅で撮影されたとおぼしき日常的背景のなかですが、その語りの迫力はすばらしいものがありました。若き日のお姿を拝んでみたかったです。熱烈に。

熊本におられたということなのでもしやと母に尋ねてみましたが、「えー、そうなの?」という応えがあっけらかんと返ってきて残念でした。

ヨーロッパの旅芸人資料をあさりつつ、少ないなあと思っていたのですが、日本の資料ならたくさんあるじゃん。真実のヨーロッパを書きたいわけじゃないんだし、予備知識としてならいくらでも役に立ちそうだ、とおもったので、しばらくこの辺を追いかけてみようかなー。

『とめはねっ! 鈴里高校書道部 5』

とめはねっ! 5 (ヤングサンデーコミックス)
河合 克敏
4091514294



借りて読了。

大変に珍しい高校書道部マンガ。シリーズの第五巻。

キャラクターの個性がはっきりしているうえ、およそ動きのない書道をテーマにして蘊蓄とともにノウハウや意外性を楽しめる、たいへんに安定して楽しめるマンガです。

書道の話は毎回新鮮ですが、主役のぼんやりユカリくんと強いヒロイン結希ちゃんのまだほとんど何にもはじまっていない恋話も、かたつむりさながらの遅々とした歩みでも徐々に前進はしている模様。

それに今回は、冒頭から当然な顔してのさばっていた先輩たちの過去話が、とっても楽しかったです。

舞台が湘南ということでゆかりあるバンドのナンバーが出てきたり、花火大会のエピソードもおかしかったなあ。

個人的には部長の双子の妹がスタジアムに野球観戦に行っていたというネタ(?)にひとりで食いついてました。相手チームのファンだったらがっかりだな(苦笑。

淡々と日常の高校生ライフが描かれているため結末がまったく読めませんが、あらたなイケメンキャラ(かなり愉快そう)の登場に期待しているワタクシです。

……もしかして彼も結希ちゃんのファンになるのか……?

『結晶物語 1』

結晶物語 (1) (新書館ウィングス文庫―Wings novel)
前田 栄
4403540872


[Amazon]


読了。

あやかしの父親のために質屋を営む半妖の少年・凍雨と、かれに振りまわされる人間の若者・黄龍を中心に描かれる、お伽噺をベースにした短編連作。シリーズ第一巻。

一度読んでみたかった作家さんの、もっともてっとりばやく届きそうだったシリーズ。
どんな話だかまったく知らずに読みました。

収録作品は以下の通り。


幸福な人魚
竜神の花嫁

あとがき



主役の凍雨はようするに半妖の少年で、齢は百を超えるものの精神的にはまだ外見相応の子供。時間を糧として生きる父親のために骨董などを集めているうちに質屋を営むことになってしまったという。

黄龍は国籍も家族もわからないはぐれもので、愛する妹の遺品を凍雨ににぎられているために使い走りをさせられている、いまもまったく堅気でない若者。

凍雨の営む質屋には人間とあやかしの両方が客として訪れて、それから事件に巻き込まれることもしばしば――。

という感じの枠組みで、よく知られたお伽噺をテーマにした再話が語られます。

それなりに面白かったです。
が、私には元となるエピソードの文化的背景のつながりのうすさが気になりまして、なんとなくもやもやとしてしまい、結局解決されずに終わったので、読後感がいまいちでした。

人魚姫がいかにもキリスト教ベースの話だったのに(とくにあやかしには魂がない云々あたり)、そのつぎの話が竜宮城って……。この飛躍に私の頑迷な頭はついて行けなかったです。

私には魂と魄の関係がまだよくわからないから、そのせいかもしれないと思います。

それと、枠組みの説明がすこし煩雑で遠回りだったので、物語の前提を呑みこむのにひといき時間がかかりました。

凍雨の父親・白夜と母親の関係がとおまわしに描かれる所などは、なんとなく好きだなーと感じます。

短編って長さの関係でどうしても説明部分が多くなるわけですが、私は説明部分を読むのが苦手なのでそういうところがちょっと面倒だったのかな。

むー。つづきを読むかどうかは保留します。

『百鬼夜行抄 18』

百鬼夜行抄 18 (ソノラマコミックス 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
今 市子
4022131381



読了。

あやかしを視る能力を濃く受け継いだ少年律とその一族たちを中心に、この世とあの世のあわいをうごめく者たちと人間との関わりを日常的に描く、ほのぼのしたり背筋が寒かったりするコミック。シリーズ第十八巻。

もう十八巻なんですねー。
しかも、この時期に新刊が出るのはいささか異例のような気がします。

さらに、いままでだらだらと続いてきたのに、今になって律の自己紹介が出てきたりするのは、もしかして掲載誌の出版社が変わったからでしょうか。

そういえばこの巻はいつになく飯嶋家が前面に出てくる話が多かったです。
一族話が好きな私にとっては嬉しかったw

とくに律のお母さんの絹さんが主役の話は初めてですよね。彼女、やっぱりなんにも見えないわけではなかったんですね。おばあちゃんの豪快な(?)血筋はだれも受け継がなかったのでしょうか。

それから律と司ちゃんが絡む話も久しぶりか。
そのわりに、おなじエピソードではないけれど一冊の中で司ちゃんと律が同学年になっていたりするのは、時系列が前後しているのだろうか……。

巻末の律が大変な事件に巻き込まれる話では、ふたりの関係がすこーしだけ進展したような感じでフフフでした。
けど、この話も律視点ではなく、だいぶ読み手と話の距離が遠いです。
連載開始当初は陰々滅々とした律によりそっていましたが、律が吹っ切れてからはずっとこんなかんじですね。

収録作品は以下の通り。


雨戸仙人
見知らぬ妹
三人法師
一陽来復



事件と読み手の距離はほどよいと感じるときもあれば、物足りないと感じるときもあります。
多分、律が事件の真ん中にいるときにじれったくなるんだろう。

あと、「一陽来復」はかなり入り組んだお話で理解するのに時間がかかりました。
登場する妖女三人集はむかしでてきた正妻になる代わりに家に福を招く方々ですよね、たしか。
だけど八重ちゃんの小豆粥がなつかしいって……???

それから、全体的に律の絵柄がさわやかーになったような気がしました。
前髪が短くなったからでしょうか。

ところで青嵐は今後も無駄飯ぐらいとして居候し続けるのでしょうかね(苦笑。

『はじまりのうたをさがす旅 赤い風のソングライン』

はじまりのうたをさがす旅 赤い風のソングライン
川端 裕人
4163226206



[Amazon]


読了。

現代日本からオーストラリアへ。行方不明だった曾祖父の軌跡を辿った先に見えてきたものは。アボリジニの歴史や現実と世界情勢を絡めた社会派冒険小説。

主人公は社会に出たばかりの青年、隼人。ミュージシャンを志しているけれどまだ芽は出ず、社会の経験を持ったほうがいいかとサラリーマン勤めをしているが、このまま音楽が趣味で終わるのかと焦りを感じているところ。
そんなかれの元に曾祖父の遺言を伝える使者がオーストラリアからやってきた。
戦前、出稼ぎにオーストラリアへ渡ったまま戻ってこなかった曾祖父ワジマ・ヨウ。
かれは遺産をとあるゲームの勝者に残したという。隼人にはそのゲームに参加する資格があるというのだ。
使者はリサという名の若い女性。なんと、国際的にも名が売れ出したアボリジニの血の混じったシンガーで、やはりワジマ・ヨウの曾孫だという。乱暴だが流暢な日本語を操る彼女の存在と、父親の言葉をうけて、隼人はオーストラリアへ旅立つ決意をする。



アボリジニのソングラインについての本を読みたいと思っていたところで、ふと思い出したので借りてみた。なんで小説なのかというと、そのとき借りられるのがこれしかなかったからです……。さまざまな資料を基にして書かれているらしいので、それほど間違ってはいなかろうと踏みまして。

けっこう面白かったです。

すごくと言い切れないのは、私の好みとはちとずれていたからですが、前半の主人公たちがチームを組んで曾祖父の足跡を辿っていく旅のところはファンタジーにもなりそうな題材で、あともうすこし突きぬけてくれればとじれながらもかなり楽しみました。

後半はミステリ仕立てのサスペンスになって、私にとってはなんだか別の作品のようでした。
いや、ストーリー的には一貫しているんですけどねー。個人的な興味だったものがいきなり社会的視点に立たされたもので、とまどってしまったのかも。

いずれにしろ、これはアボリジニーの過去と現在の話であり、そこに日本がどう関わってきたかの話でもあるのだなーと思います。
その象徴が主人公の曾祖父なんですね。

全体的にいろんなものが詰め込まれていて、ちょっと話が窮屈な感じだったのと、文章が絵画的かつ説明的なのが印象に残りました。

私の感じたもどかしさは、音楽を題材にしているにもかかわらず、視覚的に入ってきてしまう情報にあるような気がします。音楽用語などふんだんに使われているのですが専門的な言葉は私にはわからないし、文章から音を体感するより解説されていると感じる部分が多くて、あ、だからファンタジーになりきれないと思ったのかもしれないですね。というか、この話はファンタジーじゃないから。そういう事を求める話じゃないから。なんにでもファンタジーを求めてしまう自分がアホなのですよ。おバカだ。

というわけで、それなりに楽しんで、あらたなお勉強をしたなあという気持ちになれた本でした。

これはもう、この本の種本ともなっているブルース・チャトウィンの『ソングライン』を読まねばなりますまい。

それから、この本はじきに文庫版が出る模様です。文庫ではタイトルがすこし変わってます。「うた」が「歌」になってる。

はじまりの歌をさがす旅
川端 裕人
4043748035


余談。

この作者さんの小説を読むのは初めてなんですが、文章はほぼ毎日拝見しています。
じつはブログ読者なのです。某スポーツ雑誌のエッセイがきっかけです。私個人としてはエッセイのほうが好みかも。Macユーザーなのもポイントです。超個人的な親近感(笑。

『青い城』

青い城 (角川文庫)
L.M.モンゴメリ 谷口 由美子
4042179096



[Amazon]


読了。


20世紀初頭に書かれた『赤毛のアン』の著者のウィットとユーモアにあふれるロマンス小説。


ヴァランシー・スターリングは二十九歳。何事にも堅苦しく常識にとらわれたうえに唯我独尊のスターリング一族にあって、彼女は不器量で要領の悪い大人しく身体の弱いオールドミスだった。ある日、ヴァランシーは頻発する胸の痛みに耐えかねて一族のかかりつけではない医師の診察を受けた。そこで彼女に下ったのは余命幾ばくもないだろうという診断。絶望にうちひしがれたヴァランシーは、これからは他人の顔色をうかがわず、自分のしたいことをしようと決意する。まず彼女がしたのは、のんだくれで評判の悪い大工の娘の看病に家政婦として赴くことだった。



わがままで自己中心的な一族、とくに母親に虐げられて日々を忍従して費やしてきたヴァランシーの開き直りと、とるにたりないと侮ってきた小娘の常識外の反乱に混乱し慌てふためく一族の姿が痛快な、コメディーロマンス。

さすがに古い話なので台詞回しなどはかなり時代がかっていますが、登場人物たちの性格やそれにまつわるエピソード描写には皮肉の効いたユーモアが満載で、よみながら可笑しさ楽しさを満喫できます。

それから、カナダの美しい自然を描く絵画的な文章が美しい。
ミスタウィス湖の四季に移りゆく光景は、『赤毛のアン』のアヴォンリーに負けず劣らずです。

冒頭、ヴァランシーの不幸な境遇がこれでもかこれでもかと愚痴まみれでつづられるところはちょっと難儀でしたが、彼女が意を決して医師の診察を受けるあたりからどんどん面白くなっていきます。

それに、忘れちゃいけない、ヴァランシーの恋のお相手バーニィ・スネイスの謎めいた存在感。
尾ひれのついた噂がさらに雪だるま式に膨れあがったような案配で、とんでもない悪漢と見下されているかれの意外な素顔があらわになるごとに、ヴァランシーの心が揺さぶられる様がなんとも憎いです。

そして意外な展開と伏線が回収されて、最後はまあるくハッピーエンド。

安心して楽しめる乙女小説だと思います。

ところで、私この本以前に読んでました。篠崎書林の本で。
なんか覚えのあるタイトルだなあとは思っていたのですが、あとがきを読んで読了データベースを当たったら出てきましたとさ。
読んでいて既読感がほとんど甦ってこなかったのがかなり不覚だと思います。

おかげでまた存分に楽しめたので、ま、いーか。

イヤホン購入

いまさらですが、イヤホンを新調しました。
といっても、言葉でいうほどたいそうなものではありません。

Panasonic ステレオインサイドホン ピンク RP-HJS150-P
B001T9OBD8



じつは、入院する前に買ったイヤホンがちょっと前から悲惨なことになってました。
左用の線のカバーが途中で何故か折れ切れて剥がれかけ、中から覗いた銅線が所々断線。

よって左から聞こえる音がなんだか小さく遠くなって、右側からの音ばかりが目立っていた。

それでも慢性金欠状態の私は、イヤホン買うなら本のほうがいい、という心根の持ち主でもあり、音にもまったく……てほどでもないけどうるさくないから、ま、いーか、と放置していたのでした。

今回購入したのは、テレビの買い換えのために電器店に行ったついでです。
手続きで待たされてる間に、そういえばと思いついて売り場に行った。

たくさん並んでいるなかから、以前から耳が小さくて難儀していたので小さい人向けイヤーピースがあるのと、コードがからまって時々首締められそうになってたので短め60センチのものということで、こういう選択になりました。(それから低価格!)

使用するためにイヤーピースをつけ替えるのにちょっと苦労しましたが、そのあとは、「ええっ。これ、何?」と思うほどクリアーに聞こえて、今までのイヤホンがいかほど耳に密着していなかったか、さらに左の断線がどれほど音質に響いていたかが実感されました。

音質そのものはたいしたことないと思うんですけどね。
とくに低音はまったく迫力なし。試しに聴いてみた「inner universe」のずずんすずんずずんずずんという響きがほとんど聞こえない。私、あそこのずしずし来る重たい響きが大好きなんですけど(汗。

でも、低価格だからなー、こんなものでしょう。
寝る前には静かな曲を聴くのがつねなので、たいして影響はないと思います。
そうなんです、私iPodを持ち歩かないんです。もっぱら寝る前リスニング用なんです。

変なヤツだといわれます。

『ルチア』

ルチア―クラシカルロマン (ルルル文庫)
華宮 らら
4094520902



[Amazon]


読了。

第一次世界大戦後の地中海風異世界を舞台に、軍部によってクーデターの起きた王国の王女の戦いを描く、少女向け異世界歴史冒険ロマン小説。

あちこちで評判がよいようなので借りてみました。

おお、これは面白いです。
たしかに恋愛成分はかぎりなくゼロに近いですが、歴史の波に巻き込まれながらもひとりの少女がけなげに奮闘するさまをリアリティをもって劇的に描かれています。

一冊のなかできちんと構成された物語展開。
強者と弱者の立場の違いや、政治的信念の違い。
さらには強国の狭間でそれぞれの利害関係にふりまわされる小国の悲哀。などなど。

物語として嘘っぽくない、しっかりと地に足の着いたお話で、王道ながら意表を衝いた展開もありで、一息に読んでしまいました。

読んでいて、なんとなーく国や人物のモデルが見えるかなーと感じるところもありましたが、異世界もののいいところはテーマを抜き出して描くことができるところで、この話はその利点を最大限に生かしていると感じました。

現実のヨーロッパを舞台にしようとしたら、もっと複雑怪奇なしがらみを書かねばならないし、それはこの分量ではとてもまとめきれるものではないし、そもそもそんな話は王道としてまとめられるものではないし、でも書かなければご都合主義のお伽噺になってしまいますからねー。

唯一の甘い要素はというと、それはヒロインを除く登場人物のほとんどが若くて美形な男性であるというところか。でもそれは少女向けのお約束ということで。敵ボスは美形じゃないからよしとします。

魔法もラブもないけれど、シリアスで劇的な物語を読みたい人にお勧めです。

クラシカルロマンってどういうものかと思ったけど、たしかにこれはそうとしか呼びようがないかも知れません。
冒険小説なんて書いたら、誤解を受けるかもです。でも、イサク・ディーネセンの少女たちの話が冒険ものなら、これも冒険だと思います。冒険ロマン……でも誤解を受けるかなー。ロマンスではなく、ロマンなんですが。

どうやらクラシカルロマンはつづき? が出ている模様です。
薔薇の戴冠 クラシカルロマン (ルルル文庫)
華宮 らら
4094521208

『夏目友人帳 8』

夏目友人帳 8 (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592186680



読了。

あやかしが見えるために孤独だった少年が、あたたかな人びとに受け入れられて次第に自分の居場所を確かにしてゆく、ハートフルな日常伝奇ファンタジー。シリーズ第八巻。

線の細い絵柄で、ほのぼのとしてどこかさびしく切ないストーリーを描く、とっても繊細なシリーズの最新刊。

今回はニャンコ先生が前巻のつづきであまり活躍できず、そのかわり夏目少年の学校生活がクローズアップされた感があります。

あやかしに感情移入しすぎていた夏目が、人との関わりも大切なのだとあらためて認識する展開ですね。

だから今回はより人間寄りのストーリー。

あやかしが人と区別できないほどはっきり見えてしまう夏目とはほど遠いけれど、いないはずのものに対する感受性を持つという関係で関わりを持った友人が、表の世界の友人ともつながりをもち、夏目の日常がひとつにつながってくというシーンが、夏目にとってはとても不思議で感慨深く、不慣れな体験であるらしい、というあたりの描写がとても新鮮でした。

ここに登場するのはとっても繊細で傷つきやすいひとびと。
自分の行為が他人に傷をつけることに怯えて、一歩踏み出すことに躊躇ってしまう夏目が筆頭ですが、とにかく、ものすごく傷つくことを恐れていて、その度合いは私なぞから見ると度が過ぎるように感じるほどなのですが、これって今の若い人たちにはとても共感できることなのかなー。

子供の数が減って人付き合いが濃密になったために、よけいに大ざっぱで適度な距離のある関わりというのが難しいのかも知れないなーと思いました。

とにかく、夏目も少しずつ勇気を持って対人関係を築こうという気になってきたようなので、すこしホッとする巻でした。

文化祭とかのイベントも楽しかった。
全体的に明るい読後感が残って気持ちがよかったです。

個人的に気になったのは、ニャンコ先生がまっしろになってたところですか。
模様の輪郭線はあるのに、最後までトーンなしでした。
あやかし払いの矢が当たったからかな?
この次の巻には復活しているでしょうか。
ちょっと心配です。

『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ 4』

封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈4〉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ
4094520910


[Amazon]


読了。

千年の時を生きる二人の鬼と陰陽道の闇の部分を司る本家の当主となった少女の、暗躍する勢力との戦いを描く、昭和の初めを舞台にした伝奇アクションシリーズ。「鵺子ドリ鳴イタ」の第四巻。

ものすごーく間を置いてしまいましたがようやく続きが読めました。

やっぱりこのシリーズは好きだ。
さりげない人物描写も切れのよいアクションも好きだけど、なによりも文章が好き。
飾り気はなくさらりとしているようなのに、どこか湿度があってでも透明でシャープ。

人ならぬものと、現実と異界の狭間で葛藤しながら戦い続けるひとびとを描くのにまさにふさわしい文章だと思います。

ヒロイン桐子の未来の○である武見くんが、ふらふらと釣りに出かける夜の川端のシーンがとても好きです。
全編ここで展開してくれてもいいよと思うくらい。
そうでないからこそ、このシーンがひきたつのだとわかってはいるのですが。

この巻では、とうとうやってきた桐子と乙夜の対決シーンと、鵺の不気味だけれど哀れな存在が印象的でした。

それと桐子と二人の鬼の、信頼し合いつつ絶対に埋まらない距離を自覚した厳しい関係。
それを知った武見君が桐子への認識を改めるところ。

挙げ出すときりがないのでこのへんで。
つまりそれだけ私はこのシリーズが好きだということです。

さいごにこれだけ。神島の東京屋敷の管理者宇和野さんがかわいい!
いい歳のおっさんに可愛いも何もないだろうとは思うのですが、鳩が豆鉄砲喰らったような顔がラヴリーでした。

ところで、私はこのエピソードはこの巻で終わりなんだと勝手に思っておりました。
しかし、まだ続いてました。
つづきはまだ出ていない模様です。
なんということだ……!

『犬夜叉 38』

犬夜叉 (38) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091266681



読了。

戦国時代へトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉と仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションロマコメコミック。シリーズ第三十八巻。

前巻の心配が当たってしまいました。
この巻は、とにかく神楽につきます。

奈落から造反した白童子たちと奈落の間で翻弄されたあげくの、神楽本人もうすうす予想していただろう結末でした。

自由を求めてあがいた末の絶望の中で、おもいもかけない光景を目にしたあとの神楽の表情に、思わず泣きそうになりました。

うわーん、なんて盛り上げ方なんだ!
ずるいよ、すごいよ、高橋留美子!

高橋留美子って、絵の線はあんまり丁寧じゃないんですが、とにかく雰囲気を醸し出すのが上手いですよね。
いつもはギャグの人なんだけど、情感の表現もとてもうまくて。
柔らかくはないけど硬質でもない微妙に生物的な描線が、妙に魅力的に感じる瞬間です。
『めぞん一刻』は後半泣けるシーンが続出して困りましたが、神楽のこれはそれに匹敵するかも。

しかし、話はまだ終わらないんですよね……。あたりまえだ、神楽は主役じゃないんだから(汗。

神楽編のつづきには、とうとう奈落の滅ぼし方が明らかに!
それもかなりの代償をともなうものであるということが判明して、その場の犬夜叉の動揺を誘います。

なんで犬夜叉だけなのか、そんなのは情報源が誰なのかを考えるとわかりますな。

これでまた三角関係の緊張が復活、となるのでしょうか。
どきどき。

珊瑚ちゃんと琥珀くん姉弟の行方も気になりますが、赤子と一緒だった神無の動向も気になります。
御霊丸とまだ一緒なのかしら?
つづきを借ります。

犬夜叉 (39) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
409126669X

20090706の購入

図書館本の返却のついでに寄った本屋で購入。

百鬼夜行抄 18 (ソノラマコミックス 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
今 市子
4022131381


こっちはとうとうリアルで発見できなかったのでネットで注文してたもの。
イムリ 6 (BEAM COMIX)
三宅 乱丈
4757749341



雨の途切れ目を狙って出かけたんですが、帰りにはまんまと降られてしまいました。
折りたたみ傘は持ってましたができれば開きたくないと途中まで我慢していた。
けど、雨脚を強くなっていくのと図書館の本を持ってることに気づいてあきらめました。

自宅まで500メートルもなかったのに。

『聖者は薔薇にささやいて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

聖者は薔薇にささやいて (コバルト文庫 あ 16-26 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー)
青木 祐子
4086013142



[Amazon]


読了。

ヴィクトリア朝イングランドを舞台に、仕立屋の少女と公爵の跡取り息子の恋をこまやかに描く、少女向け時代ロマンス。シリーズ十六冊目。

この巻はタイトルに「恋ドレ」が入ってないのでおや、と思っていたら、やっぱり番外編でした。

でもこの番外編はたいへんに素晴らしかった。
なにしろヒロインがパメラちゃんなんですから!

いつもクリスのことを見守っているパメラちゃんですが、彼女だってまだ十七歳。
まだまだ大人ではありません。
そんな彼女の過去を知る男性がとつぜん現れて……というお話。

本編の『恋のドレスと舞踏会の青』の裏話なのかな。

クリスのことも自分のことも、吹っ切れているようでいろいろと悩めるお年頃なんだと感じさせてくれる、作者さんらしく繊細な心理描写と話運びにひきこまれる中編でした。

パメラちゃんはすてきに強い女の子ですね。
そして彼女を守る二人の騎士(苦笑)たちイアン先生とアントニーがまた楽しい。
かれらは文字通り騎士のごとく貴婦人パメラちゃんを崇めていて、まるで触れてはいけない大切な宝物のように扱ってます。
このふたりがいるかぎり、パメラちゃんは大丈夫、ちゃんとひとりで立ちなおれます。ひとりで……ってところがパメラちゃんらしいなあ(苦笑。

それにくらべてシャーロックの独占欲・所有欲の強いこと。
これでもまだ精一杯セーブしてるんだとかれの心理描写でわかるのですが、いやはや、まるで拘束具のように縛ってきそうでいやんな感じです。
この時代の感覚ではコレが普通で、現代でもこういう意識の男性はけっこういるとは思いますが、ヒロインの相手役としてはどうなのか。

でも、クリスが弱々しげだからこういう男が寄ってくるんだよなあ……たぶん。
クリスは何とかしてシャーロックを尻に敷く方法を見つけたほうがいいと思います。
パメラちゃんがいなくなったらとても困ると思う、うん。

今回は表題作の中編の他に挿画のあきさんによる短いマンガも収録されています。
このマンガが相当楽しかったです。
マンガもレベルが高い。お買い得な一冊だったと思います。


聖者は薔薇にささやいて
まんが 黄昏の冷たい水
まんが シャーリーとアイスクリーム工場
まんが パメラ・オースティンの薔薇色の人生。
午後のクッションと小さな賭け
~卒業前夜~

あとがき



ところで、シリーズはもうつづきが来月に出るそうです。
タイトルにはあれが入ってますので本編ですね。
ふふ、楽しみ楽しみ。

『雷の季節の終わりに』

雷の季節の終わりに
恒川 光太郎
4048737414



[Amazon]


読了。

民俗学的要素を濃厚に持つ現代ファンタジーホラー。

『夜市』で第十二回日本ホラー小説大賞を受賞しデビューした作家の、受賞後第一長編。


社会とは隔絶した場所、穏。
冬と春の間の長い雷の季節にたったひとりの姉を失った少年は、ひとりの少女との出会いをきっかけに孤独から遠離る。
ただ、人ならぬ存在“風わいわい”に憑かれているという事実は秘めたままだった――。



『夜市』がたいそう面白かったので借りてみました。
テイストは素朴なのに謎めいているという不思議な感じ。
日本だろうと思えるのだけどどこかが違っている、穏という場所を舞台に、古い言い伝えや素朴な信仰やら自然現象や超自然現象とともに生きている人びとの生活の中で、肉親のいない孤独な少年の生い立ちが日常的に描かれていきます。

物の怪や何やらがでてくる漫画作品などが思い浮かぶ風景ですが、この作家の明らかにことなるところは、人間の悪意がかなり露骨に描かれるところかな。
むしろ物の怪のほうにどこか愛嬌があって、ネーミングもかわいい。

前二作とおなじような、もしかしたらおんなじかもしれない(というのは私が忘れてるからですスミマセン)異界を舞台にして、その異界をたんなる憧憬の場所としては描いていないあたりが、この作者に新鮮な印象を受ける理由かとも思います。

でも、異界というものはそもそもそういうところだったのではないか。

異界を描いてそこに憧れをもつとファンタジー。
畏れと恐怖をもつとホラー。
になるのかなあ、と感じました。

にしてもこの恐怖の正体がじつは……というところが一番怖いんですけどね。

今回も意外な展開がひきつづき面白く読めましたが、ところどころアレ? と感じるような部分がありました。

この作家さん、長編よりも短編のほうが向いているのではないでしょうか。

おんなじような性格のおんなじような役割の人物が二人、もともとはひとりにするつもりが展開のせいで分裂したような印象で出てきたりしてちょっと興が削がれました。
構成的にもちょっと残念なところがありました。

でもその辺は今後に期待ということにして、他の作品も読んでみたいと思います。

20090703の購入

散歩ついでに本屋へ出張。

夏目友人帳 8 (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592186680



以上、購入。

今回はさすがに放浪することなく一軒目で買えました。

ついでに液晶テレビを物色するために電器屋にも行ってきました。
うちは狭いのでそんなに大きなサイズは置けないしいらないのですが、世間的な売れ筋は32型みたいでなんとなく困った気持ち。
買うならはやいところ買った方がいいみたいなので、しばらくこれにかかりきりになりそうな予感です。

丸投げしてくれた家族が恨めしい。

『羊のうた 7』

羊のうた (第7巻) (バーズコミックス)
冬目 景
4344801989



借りて読了。

家系に伝わる奇病に冒された姉弟の孤独と葛藤、周囲の人びとのもどかしさせつなさを叙情的に描く、心理サスペンスコミック。シリーズ完結編。

死を間近にした千砂にどんどん近づいていく一砂、それを歯がゆく見守るしかない人びとの葛藤とともに、ふたりの母親の死の秘密があきらかになる――。

雰囲気たっぷりだった作品にふさわしい、壮絶にして耽美テイストあふれるラストだったと思います。
若いときに読んでいたら多分かなり浸っただろうなー。
そして、エピローグはいらないと感じたと思う。
そうです、若い頃の私は悲劇好きだったのです……(苦笑。

しかしもう若くはない私はこのラストに孤独に酔っぱらう子供っぽさ、を見てしまうのですね。遺憾なことに。


えーと、ここから多少のネタバレを含みますのでたたみます。

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