『王の書は星を歌う ワンデルリアの女神』

王の書は星を歌う―ワンデルリアの女神 (コバルト文庫)
彩本 和希
4086013134



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読了。

プトレマイオス朝エジプトを中心とした地中海世界を彷彿とさせる異世界を舞台に、いにしえの大王の残した古文書を読み解く能力を持った少女の運命を描く、戦乱ファンタジー。


高い文明を誇るエレオカリス王国の古都、湾岸都市のワンデルリア。レスティリアは世界一の蔵書を誇る王都ワンデルリアの図書館で、ワンデルリウス文書の唯一の解読者として窮屈ではあるが平穏な生活を送っていた。捜書の旅からようやく帰還した幼なじみの捜書官バラノスを迎えた夜、ワンデルリアは隣国ソラヌム王国海軍の急襲を受ける。レスティリアの父親代わりの図書館長の命により、レスティリアはバラノスを隊長とする護衛とともにワンデルリアを脱出する。



異能を持ち、あたえられた役割をまっとうすることのみに懸命だった少女が、広い世界で様々な体験をし、異なる価値観に触れ、みずからの力で道を選択しようとするまでに成長する物語。

たいへんによくまとまったお話で、なおかつ読みやすく、するりと最後まで読めました。
少女を軸としたお話としては、たぶんこれでいいのだと思います。

ただ、舞台とか歴史とか人物とかの設定が、史実に酷似しているので、それがすぐに透けて見えてしまうあたり、ちょっと損をしているなあと感じました。

損をしているというか、うーん、もうすこし、下地が見えないようにお化粧をしてくれてもよかったのではというか。でもこの分量でそこまで求めるのは酷かとも思うし。

読みながら脳内のほかの引き出しから情報を補完してしまう自分というやつに、どんどん嫌気がさしてしまう読書でありました。それをさせない密度が、私は欲しかったのでしょう。多分無い物ねだりです。

レスティリアの持つ異能。大王の文書を読み解く能力が、意外な方向に展開するあたりは、ほほうと感心し、面白いなあと思いました。

なんとなくシャーマンのトランス状態にも似ているなとも思いましたが……。
『クロニクル千古の闇』思い出した。

そんな状態を作り出す文字って、いったいどうやって書くんだろうという、あさっての方向への好奇心が首をもたげましたが、たぶんストーリーには関係ないから出てこないよね。

どうやらシリーズ化してて次巻がある模様ですが、次を読むかどうかは運次第です。
コバルトは予約待ちがすごいからなかなか巡ってこないんです。

そういえば、これってもしかして三角関係ものかもしれない。
お子様すぎてヒロインではキュンキュンはできませんでした。
バラノス視点だとすごくキュンキュンするのではなかろうか。今考えてみると。

とりあえず、私はローマ軍団萌え!
じゃないや、アキレギア軍団萌え?

20091030の購入

新刊発売日なので本屋に出かけました。

伯爵と妖精 白い翼を継ぐ絆 (コバルト文庫 た 16-42)
谷 瑞恵
4086013452


蟲師 10 (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063145379


発売日にも入手できないことがある(だいたいはまだ来ていないが、たまにもう来ちゃったがある+入荷が少ない。ゆえに油断のならない)近所の本屋ですが、今回は無事にゲット。
ついでに『蟲師』の完結編もゲット。

まだ十月なのにすでに十一月分に食い込んでいる本代に悩んでいます(汗。

『蟲師 9』

蟲師 9 (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063144887



読了。

まだ完全に西欧化されない古き日本の風景のなかで、生と死のあわいに存在する蟲と人との関わりをさまざまな形で描いていく、昔話風幻想コミック。シリーズ第九巻。

というわけで、『蟲師』九巻です。
以前に感想を書いたときにも数巻まとめてでしたが、やっぱり今回もこうなりました。
やはり私にはこの世界を上手くつたえる言葉がないです。

とにかく、好き。
たたずまいも雰囲気も空気感も、しっとりとしていて雑然として生命力にあふれた自然描写や、そこに暮らす謙虚な人びとの姿も大好きです。

この世界に住むひとには自然界への不思議が畏れと敬いとあこがれとして深く根づいています。
それが蟲への対処の仕方となって現れているんだろうなー。

蟲と人間のはざまに生きるギンコは、両方のバランスをとりながら、自分のバランスもとって生きているひと。

巻末のエピソードは、ギンコがそのいま在る生き方を獲得するお話でした。

蟲をよせる特異な体質に絶望しているギンコを拾った蟲師スグロの、最後の言葉はこころにしみいります。


忘れるな

この世に
居てはならない
場所など
誰にも無い



これで残りあと一冊まで来てしまいました。
十巻もはやく手に入れよう。
最近近所の本屋で見かけなくなってきました。やばい(汗。


蟲師 (7) アフタヌーンKC (404)
漆原 友紀
4063144046


蟲師 8 (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063144429

20091028の購入

“取り寄せ注文”していた本がようやくやってきました。

冬の薔薇 (創元推理文庫)
パトリシア・A・マキリップ 原島 文世
4488520103


以上、購入。

それにしても創元推理文庫が近所の本屋に入らなくなる日が来るなんて。
ずっと買いつづけてきたのにそれはないよ、という気持ちです。
大規模書店に出かける機会もどんどんなくなってきているし、これからはほとんどネットで注文するしかないのでしょうか。

暗澹としてきました。

「まだ見ぬ君に」

苳子さん作「まだ見ぬ君に」読了。

異世界恋愛ファンタジー、長編。
どきどきしながら読んでいた連載が完結されましたv

オリキャラ「実は」バトン

オリキャラ「実は」バトンを回していただきました。
バトンに答えるのも久しぶりです。
ちょっと恥ずかしいのとネタバレ気味なのでたたんでおきます。

続きを読む »

『マチュピチュ 天空の聖殿』

カラー版 マチュピチュ―天空の聖殿 (中公新書)
高野 潤
412102012X



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読了。

1973年からペルーやボリビアをはじめとしたアンデスやアマゾン地方に毎年通い続けている写真家による、たくさんのマチュピチュ写真とマチュピチュに関わる歴史や発掘に関する文章。

この本の目玉は何といっても大量のカラー写真です。
様々な角度からの遠景、内部に入り込んでのこれまた様々なディテール。
それはもういろいろな角度からいろいろな表情を持ったマチュピチュの表情を拝むことができます。

さらにマチュピチュ周辺の村落やインカ道の様子、ひとびとの生活風景。

写真を見ているだけでマチュピチュにほんの少しでも降り立ったような、そんな気持ちにさせてもらえる写真集です。

新書なのでサイズは小さいですが、その分お値段も手頃。

ちょっと興味があるという初心者から、いつもマチュピチュを手元に置きたいのという方まで、幅広いマチュピチュファンの欲望(?)に応えてくれる、素敵な新書だと思います。

文章のほうは、著者は専門家の方ではないためかちょっと遠回しというか奥歯に物の挟まったような雰囲気が私には感じられ、それでいてけっこう断定的なところもあって、あんまり読みやすくはなかったのですが、私は人より文章の好き嫌いが激しいみたいなのであまり参考にはなさらないよう。

内容は最新の研究からの興味深いことがいろいろと書かれていました。

とにかく、写真が素晴らしい。
それだけでこの本は素晴らしいと思う!

『犬夜叉 43』

犬夜叉 (43) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091273238



読了。

戦国時代へトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションコミック。シリーズ第四十三巻。

この巻は、奈落の思惑に踊らされている犬夜叉と魍魎丸との戦いと、それに巻き込まれた金禍銀禍の兄弟の運命とがおもな内容。

はた迷惑な兄弟げんかをしていた金禍と銀禍きょうだいのエピソードは、どうやら犬夜叉と殺生丸の関係への布石であった模様。

殺生丸様の犬夜叉へのお言葉がキツイです!(笑。

このところ、犬夜叉の鉄砕牙がいろんな属性をくっつけたり、殺生丸の天生牙が生まれ変わったりと、どことなくドラマよりもヒーローの成長とアクション重視な展開で、私としてはちょっとだらけ気味なんですが、これはこれで正統派少年マンガのあり方のひとつなのかなーなどと考えたりもして。

でも、作者さんはそういう話を書くのがあんまりお得意ではない……のかな?

はたして犬夜叉は竜鱗の鉄砕牙を使いこなせるようになるのでしょうか。

そして次巻へつづく。

ところで。
この話の結末ってどんなんかなーとか最近考えるのですが。
かごめちゃんと桔梗の関係は明らかになるのですよね、たぶん。

犬夜叉 (44) (少年サンデーコミックス)
4091200885

『ピアノの森 11』

ピアノの森 11 (モーニングKC (1483))
一色 まこと
4063724832



借りて読了。

社会の底辺に生まれたピアノの天才児・一ノ瀬海の成長と、かれを取りまく人びとの人間模様を描く音楽コミック。シリーズ第十一巻。

ピアノの響きの美しさと現実の泥臭さのコントラストが強烈なマンガですが、この巻はわりとそこがおとなしめだった気がします。

理由は、視点が海のピアノに恋しつづけてきた女の子、便所姫こと丸山誉子ちゃんに据えられていたからかなと思います。

海の音に憧れて、海のようにピアノを弾きたい、海とおなじ所に再び立ちたい、海のピアノをもう一度聴きたい、そんな一途な想いを抱いて懸命にピアノに励んできた誉子ちゃん。

そして海のようなピアニストを育てたいと願う誉子ちゃんの師・司馬先生。

すこしでも海のようにと思う二人が見て見ぬふりをしてきた現実は、とても辛いものでした。

でも、ひとを挫折から救ってくれるのもまた夢なんだなーと思うラストにじんと来ました。

ところで、海は東京に住んでるのですよね?
なんでこんなに遠いところのコンクールに出てるんでしょう?
阿字野先生の思惑が知りたいですw

ところで、私最近、阿字野もどきの佐賀センセイの暗躍が楽しいです。かれって音楽界のナビゲーターで海の立ち位置を明確にする役割なので、笑うところじゃないんだと思うのですが、やっぱりなんとなく可笑しいのです。阿字野もどきの容姿がそうさせるのかも。

『聖☆おにいさん 4』

聖☆おにいさん 4 (モーニングKC)
中村 光
4063728420



読了。

イエスとブッダ、世界的な宗教の開祖二人が休暇を取って日本で暮らしているという、奇想天外な設定で描かれる、珍妙な日常的非日常ライフ。シリーズ第四巻。

楽しかった~。
 
相変わらずの笑いクオリティでくすくす笑いながら読めました。

日本のサブカルチャーに馴染んでいるかに見えつつ、そこはやはり超人的な力を有する聖人たち、思考回路も行動も小市民的な日常に埋没するには個性的すぎるのですね。

ふたりの常識外れな超人ぶりと日常のギャップが可笑しすぎます。

それにふたりのおつきのものたちもやはり人ではないので、人間界にあっては非常識そのものなんですな。

今回いちばん可笑しかったのは、ネットゲームする天使たちかなあ。
でもお焚き上げ入校する梵天様も捨てがたいわ。

ネタをもっとあじわうために手塚治虫『ブッダ』を読みたいなーとか思い始めている私です。

でもお盆の野菜は日本独自のものなんじゃないかしらん、そうでもないのかしらん。

仏教も伝搬した土地によっていろいろと変化しているらしい、ということを先日お勉強したのでそんなことも考えました。が、よく思い出してみたらそれってすでに高校の世界史でやってたことじゃないか?

閑話休題。

つづきをお待ちしています。
一冊がもう少し厚いといいのになw

『鉄のエルフ 1 炎が鍛えた闇』

鉄のエルフ 1炎が鍛えた闇 (ハヤカワ文庫FT)
クリス・エヴァンズ
4150204926



[Amazon]


読了。

ナポレオン戦争時のイギリスを彷彿とさせる異世界を舞台にいにしえの魔法が甦る、軍隊ファンタジー。開幕編。


エルフと人間、エルフキナの住む世界は、ひとしれず〈影の女王〉の脅威にさらされていた。
エルフでありながら狼樫との絆を結べずに故郷を離れ、人間の帝国カラルの軍隊に身を投じたコノワは、みずからに負の刻印を与えた〈影の女王〉の陰謀を阻止したために追放され、かれが隊長だった〈鉄のエルフ隊〉は解散させられた。辺境の森で髭虎(ベンガー)のジアのみを友として孤独に暮らしていたコノワだったが、ある日、とうに絶滅したはずの獣人・怪猩(ラッケ)に襲われる。命からがら怪猩を倒したコノワは捕らわれていた若い女性を救うことになった。彼女はエルフよりひとに近いエルフキナ種族のヴィジーナ。コノワの軍復帰命令を携えてやってきたのだった。



近代ふうの異世界――植民地主義による帝国と植民地の関係をも含む――を舞台にした、かなり変わり種のファンタジーです。

モデルは大英帝国とインドかなあと思います。作者がインスピレーションを受けた作家にキプリングが含まれているから。

近代の世界情勢はすでに各国を単独で語るというわけにはいかなくなっているので、それを下敷きに話を書こうとするとそうとうにさまざまな知識が要求されるのではなかろうか。資料もたくさんあるわけですし。

異世界にしてしまえば宗主国と植民地と単純化した図式で話が進められるので、楽と言えば楽かもしれません。でも、ファンタジーを軸にする場合は、やっぱりそれなりの苦労がついてくるだろうなとも思います。

まず、馴染みがない世界なので読み手に理解させるのに手間暇がかかります。現に私もこの話の舞台を把握するのにかなり時間がかかりました。ナポレオン時代の予備知識というと、私の場合はホーンブロワーしかないわけです。しかもあれは海戦もので植民地なんてほとんど出てこないしね……(汗。

世界情勢よりも大事なファンタジー的な軸もなかなか見えてこず、ぼんやりしたまま読んでいたのもいけなかったかな。

絶滅したはずのいにしえの化け物たちが復活して暴れまくる展開も、近代戦で使用武器がマスケット銃だったりサーベルだったりするし、化け物たちもかなり独特なので
、雰囲気に慣れるのに時間がかかりました。

そのためようやくなんとなくわかってきたかなーというところで終わり。
まだ、なにもかもが始まったばかり、という感じです。

いまのところ、特徴的なのは雰囲気がかなり泥臭く、軍隊的である、というところかな。
ファンタジー的な要素は幻想的というより魔的で不吉な感じです。

エルフなのに森が大嫌いで鉄に触れても何ともない、生い立ちのせいでかなりひねくれた感じのヒーロー、コノワ氏は、まだどんな野郎だか私にはよくわかりません(汗。

エルフでもないのに鉄のエルフ隊に組み込まれてしまった、ドワーフの古参兵イムトが出てくるところが楽しみです。

それとベンガーのジア!
髭虎という漢字が当ててありますが、どう考えてもベンガルトラですよね。
でもベンガルトラって人に馴れるのかな。いや、ここ異世界だし、コノワは人じゃないし。だからいいのです(?)。

余談。

トールサイズになったハヤカワ文庫を初めて読みました。
字が大きく、字間も行間もそれにあわせて広がっていて、全体的にページが白っぽい印象です。

これ、ふつーに昼間に読んでる分にはなんともないんですが、寝る前に眼鏡を外して読んでると印象が非常に散漫になっていけません。私、超近眼なのでたぶんページをものすごく近づけて見てるんだと思う。すると視野が狭いので把握できる字の量も減るんだと思う。すると……というわけです。気がついたのですが訳文の漢字の量もけっこう少ないんですよね。

だからなのか、読み始めるとすぐに寝ちゃって全然進まなくて困りました。

でも字がたくさん詰まってると眠くならないかというとそれもまた違うんですよね……。字も漢字もたくさん詰まってるけど読んでると寝ちゃう本で未だに読みつづけてるのがあるし。


鉄のエルフ〈2〉赤い星 (ハヤカワ文庫FT)
Chris Evans
4150204934

20091023の購入

散歩がてら新刊を買いに本屋に行って参りました。

聖☆おにいさん 4 (モーニングKC)
中村 光
4063728420



以上、購入。

ついでに本屋に入らないと事前に知ったため、ネットで「取り寄せ」注文をしてしまった本があることをご報告。

冬の薔薇 (創元推理文庫) (創元推理文庫 F マ 9-4)
パトリシア・A・マキリップ原島 文世
4488520103


ちょうど予約が無くなったタイミングだったためにお取り寄せになっちゃったみたいなんですが、いまはアマゾンにもbk1にも在庫ありです。

でも注文したのはe-honで「取り寄せ注文」はキャンセルできないのですよね。どれだけ待たされるのかしら(涙。

リアル本屋ではもう探しませんでした。
もしかして見つけてしまっても買えないんだし(涙。

『マギの魔法使い エメラルドは逃亡中!』

マギの魔法使い―エメラルドは逃亡中! (角川ビーンズ文庫)
瑞山 いつき
4044497117



[Amazon]


読了。

世界の支配者であり調停者であるウィザードの存在する異世界で、次代のウィザードを選出する役割を与えられた若き白魔女の災難つづきの冒険を描く、異世界ファンタジーシリーズ開幕編。


偉大な白魔女の曾祖母を失って十日後、白魔女見習いのエメラルドは突然誘拐されて飛行船の船内で目覚めた。彼女をさらったのはカルロス率いるとある組織。どうやらエメラルドの持つ《宝石》とやらが目当てらしい。ところが飛行船は攻撃を受け、エメラルドはそれまで見たこともなかったパラシュートというもので中空に飛び出すことになった。カルロスのつけた従者のトトとともになんとか無事に地上に降り立ったエメラルドは、見渡す限りの畑の中でウォレスとなのる不思議な若者と出会う。




『オズの魔法使い』の人物関係を下敷きにした設定に、逆ハーレムの要素を盛り込み、リアリストな若き白魔女の冒険をジェットコースター並みのスピード展開で描いていくお話です。

展開が速いうえに登場人物が多くて、それもきちんとキャラだった人びとばかりなので、ストーリーの流れの中でいろいろすばやく呑みこまねばならない事が多く、ついていくのがけっこう大変でした。

この展開の速さ、キャラクターの主張っぷり、じつにラノベだなーとしみじみした。
ヒロインに共感して読むのではなく、ストーリーの疾走感を味わうべき作品なんでしょう。

事情を呑みこむまでがたいへんで、後はめくるめくように話が進み、あれっと思ったときにはもう終わってました。

男性キャラがそれぞれにフェロモンを発しているところばかりが印象的だったなー。逆ハーレムだからか。そうなのか。

私としてはこの世界での魔法のありかたとか白魔女の設定とかが興味深かったです。
もうすこし生活感があったり世界に広がりがあったりするともっと嬉しかった、と思う私はこの本のよい読者ではなかったです。

「楽園の霧」

汐崎雪野さん作「楽園の霧」読了。

異世界ロマン中編。完結済み。
「レンシェの鳩」シリーズの二作目。

まるで散文詩のようなたたずまいの美しい愛憎劇。

『バガボンド 2』

バガボンド(2)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286207



借りて読了。

のちに剣豪となる宮本武蔵の青年時代を描く歴史コミック。シリーズ第二巻。

読んだだけで満足、お腹一杯、ごちそうさまでした。
となる本がたまにあるものですが、この本はまさにそれ。

画面にも圧倒されますが、武蔵の生い立ちが見え隠れする故郷での出来事は鬼気迫る迫力を持って展開されてて、はぁー、溜息とともに読み終えました。

このマンガ、中に入り込みやすいのが好きなところだけど、このシビアーさに終始浸かっていると正直疲れますな。

それだけ深いところまで感じることができる描写がすごいんだよなーと思うんだけど。

でもそんな苦しい苦しいと読み続けながらも、ふつーこの状況でこれだけ長期間過ごしたら死ぬんじゃないの、とか思ってる私もいるわけですが(汗。

今回の圧巻は武蔵に非情な試練を課す沢庵坊と、なによりもその試練の意味をわけもわからず耐えきってしまう武蔵の無尽蔵の体力でした。

ものすごく頑健な身体のもちぬしなんですねえ、武蔵って。

感心するところが間違っているような気がしますが、面白かったです。

今思い出したけど、おつうちゃんは可愛いですねw

つづきも借りて読みまーす。

『バガボンド 1』

バガボンド(1)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286193



借りて読了。

とっても有名な江戸時代の剣豪宮本武蔵の生を、圧倒的な画力で描きだすマンガ。開幕編。

先日、公共放送の番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』でとりあげられていたので興味を持ち、持ってるひとに借りて読みました。

すげえなあ!
のっけからお下品でもうしわけありませんが、この方、絵のうまさが半端でないです。
人間の身体を立体的に質感量感を持って描き出しているところもすごいけど、その人間たちの動き、スピード感、マンガの画面として、ワンカットとして、つながるシーンとして、とにかく画面の迫力が圧倒的です。すんばらしい。

それに説明を一切廃して描写のみで話を進めているところも、私が好ましいと感じるところであります。

物語の中にいきなり神視点で「この時代はなんとかかんとか」とか「かれはなんとかなのであった」と解説されると興ざめするんです。私の場合。

たしかに解説があると時代背景がわかりやすいんですが、せっかく入り込んでいた世界からいきなり現実に連れ戻されるの、つまんないと思うのが私です。

だから、こういう直接話法というか、登場人物とおんなじ視点でいまなら目線というのかも知れないけど、その他の情報なんていらなくて、ひたすらその状況を追いかけていく、という描き方大好きです。

のめり込んで読めますし、実際にそうして読みました。

ものすごく、殺伐としてますけどね(汗。

話は関ヶ原の合戦の直後で落ち武者狩りがさかんに行われている今日この頃、という時点からはじまるし、主人公がなにしろ剣豪になる男ですから、暴力シーンがとても多くて、その暴力もまさに生きるか死ぬかの刹那で行われるきれいも汚いも関係あるか、てな感じなので、血みどろが苦手な人にはちょっと注意が必要かも。

でもここまでリアリティのある絵で描かれると、不思議とそれがホラーに感じないんですよね。説得力があるというか。そうだよね、これが現実だよね、と納得するというか。

無意味でない、という感じでしょうか。

この殺伐感は『ヴィンランド・サガ』とタメ張るなー。でも雰囲気はかなり違う。
それは『ヴィンランド・サガ』が歴史の流れを前提に描かれているのに対して、こちらはあくまでも武蔵個人の物語だからなのかーと、まだ一巻しか読んでいないのにえらそうに推測していますが、このひとは。

天下が決したばかりの混乱期、治安最悪な日本の庶民たちの暮らしが描かれているところも興味深いです。

二巻もすでに借りてあります。
すみやかに読みたいと思います。

『犬夜叉 42』

犬夜叉 (42) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
409127322X



読了。

戦国時代にタイムトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションコミック。シリーズ第四十二巻。

この巻は、

竜鱗の鉄砕牙を使いこなせずにいる犬夜叉。
奈落に対する防御を固めようとする魍魎丸。
魍魎丸に神楽を愚弄された殺生丸。

の三人のドラマが絡み合って進みます。

魍魎丸っていつのまにか奈落から離反していたんですね。
琥珀くんが桔梗とともにいるのは四魂の玉の欠片を奈落を滅するために使って欲しいという希望からでした。琥珀くんの絶望が哀しい。
みんなを守るために傷つきながら竜鱗の鉄砕牙を使いつづける犬夜叉は、ずいぶん格好良くなってきたものだと思います。

しかし、この巻のクライマックスはやっぱり殺生丸様ですな!
プライドを傷つけられ、闘鬼刃(だったっけ、忘れてしまった;)をも失った殺生丸の手元に残された天生牙。
その戦う役には立たないと思われていた天生牙の秘密が、殺生丸の変化によってあらわれるくだり、しびれました。

それに私、じつは殺生丸の腰巾着の邪見が大好きなんです。
邪見のひとり漫才とりんちゃんの天然という、殺生丸の側で勝手にくり広げられるやりとりがおかしくてたまりません。

今回は殺生丸の代わりにくしゃみをしてさしあげたシーンに大笑いしましたw

私はもしかしてりんちゃんが神楽の役割を果たすはずだったのではと、邪推をしているのですが、このふたりの和みキャラがいなくなるのはとっても哀しいので生き残ってくれて嬉しいです。

物語はたいそうスローなテンポですが、着実に収束に向かっている……と願っております。

つづき、はやく借りられるといいなあ……。

犬夜叉 (43) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091273238

『文車館来訪記』

文車館来訪記 (KCデラックス)
冬目 景
406334956X



借りて読了。

多分大正時代の日本が舞台。浅草?の裏通りの細い路地をぬけたところにあるもうひとつの“町”にあるちょっと変わった写真館とそこに集うひとならぬ者たちを描く、ノスタルジーあふれる短編連作コミック。

現実のとなりにある異界。
ひとの世界から逃げ出してきた主人の営む写真館。
そこで撮られた写真に映りだす思い出。
それはひとならぬ者たちにまつわる、愛おしくも哀しいエピソード。

なんだか最近の私の読書傾向のど真ん中を行くような作品でありました(汗。

冬目景の作品はじわじわと雰囲気で攻めてくるものが多いですが、これもまさしく。
一編ごとのページ数は少ない(だいたい八ページくらい?)のにきわめて印象的な部分を切り取ってつくられた話ばかりで、鮮烈なイメージとそれがすでに過去のものであるという距離感がないまぜで、とてもいいなあと感じる作品集でした。

しかも、連載作品はオールカラー。
最後につけ加えられた一編だけがモノクロですが、どちらも冬目景ならではのあじわいがあり、冬目景入門には最適な一冊ではなかったかと思います。

ちなみに私は最後の猫の話が一番好きです。
ひと形よりも猫のまんまのほうがより好きです。
さらに正確に言うと、猫のからだのしなやかな感じがつたわる絵が好きです。

『あかんべえ 下』

あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
4101369305



[Amazon]


借りて読了。

江戸時代、新規開店したばかりでお化け騒動に見舞われた料理屋の一人娘が、お化けさんたちと事件を捜査する、時代ミステリ。下巻。

上巻にひきつづいてさっくり読みました。
お化けが出てくるけど怖くはなくて、むしろ厄介なのは生きている人間である、というスタンスは変わらず。

雰囲気はヒロインのおりんちゃんが十二であるところからもきているのか、ほのぼのと日常的で、メインはお化けたちが何故ここにいるのか、お化けが見えるひとと見えない人がいるのは何故なのか、そしてどうしておりんちゃんはすべてのお化けが見えるのか、という謎をとくミステリ的な側面のほうが大きくなっていきます。

最後の謎は読み手にはすでにわかってると思うんですが……。まあ、おりんちゃんには謎なんでしょうね。

あいかわらず、ふね屋のお化けさんたちがいい味出してます。
玄之介さんとおみつさんが出てくるだけでわくわくする。
だけど、作者さんはストーリーを優先して必要以上にかれらを登場させてくれません。
これが話運びの達人の術なんだとは思うのですが、なんか焦らされてる気分になりました(苦笑。

あとは、なかなか登場しない差配の孫兵衛さんがとても気になるし、孫兵衛店で暮らすヒネ勝こと勝次郎くんとおりんちゃんのやりとりはほほえましいし、お隣の貧乏旗本長坂様のざっくばらんなおひとなりとかも楽しかったです。

そして、事件の性質上、話が解決するときにはなにが待っているかは知ってはいても、最後のシーンにはことの終わった安堵感とともにせつない寂しさがありました。

でも、後味がよかったのはこのラストのおかげだと思われます。

そういえば、日本の時代小説でお化けが出てくるものはたいていは伝奇ものと呼ばれるわけですが、この話は伝奇ものにつきものの湿度とおどろおどろしさがまったくなくて、そういえばこういうラストを迎える伝奇ものっていうのもあんまり無いような気がします。

むしろ、このテイストは私の馴染んだファンタジーのものだなー。

とか考えて解説を読んだら、菊池秀行氏がまさにそのとおりのことを書いておられました。むむ。

とてもシビアな出来事を題材にしているのですが、それを平静にあたたかな視点で描いている、もしかしたら児童書としても通用するんではないかと思えるような品の良さをもった、時代ファンタジーでした。

私としてはもうすこし情景描写がほしかったなあと思うのですが、ストーリーテリングの手練れの手腕を堪能させていただいた、という気持ちです。

20091015の購入

出るのは知ってたんですがずっと迷っていた森薫さんの新刊をゲットしてきました。


乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
森 薫
4047260762



理由はこちらをみたから。

コミックナタリー-“描き込み魔”森薫、新作「乙嫁語り」の制作過程をお届け

民族衣装にノックアウトを喰らったのです。
しばらく外側を眺めて楽しもう……。

『ちょっと江戸まで 2』

ちょっと江戸まで 2 (花とゆめCOMICS)
津田 雅美
4592186222



借りて読了。

二十一世紀も江戸時代がつづいているパラレル日本を舞台にした、男前少女のお江戸ライフマンガ。第二巻。

ゆるゆるまったりほわわんな、なんちゃって時代マンガのつづきです。

そうびちゃんのお江戸ライフはセレブな友人(?)のおかげもあって順調に行動範囲が広がってるようす。

そのセレブ友人ミシェル=水戸家の若様のぶっとびキャラがらみの騒ぎもまた楽しい。

ページ数のわりにストーリーが進みませんが、これはキャラクターのフェロモンをむんむんと漂わせる大ゴマが多いからか。

キャラクターはとにかく魅力的で、見ているだけでフフフと思えます。

肩肘張らずに時代物の雰囲気を楽しむにはとてもいいマンガだと思うw

というか、最近はNHKの時代物だってけっこうくだけてきていて(さすがに現代まで江戸時代というのはないけど)、見ているとこれって特撮ヒーローものそっくりだよ展開が! というのもあるので、こんな乙女な時代物があってもいいと思う! 私です。

あ、そもそも特撮ヒーローものが時代劇の構成を引き継いでいるのか!


そして、さりげなく人情味の漂う風情もまたよいです。
そうびちゃんのラテン系お父上のお胤がおもわぬところで名を成していたりするエピソードなんか、なんかじわっときますよね。

フェロモンむんむんな歌舞伎役者の艶也さんにくらっときちゃうそうびちゃんも可愛かったw

そういえば歌舞伎役者は家柄がものをいう、というのは身分制の時代では当然かと思います。現代ならいくらでも仕事を変えられますが、親の職業を引き継ぐしかない場合、やはりそれなりの成果を上げてきた家柄が幅をきかせるのは致し方ないことですよね。

だから、艶也の生い立ちがまるきり解らない、というのはこの舞台ではかなり特別なことのはず。それをやってのけたお父上、ただのラテン系じゃなかったということですな。

そのほか、こんな江戸時代がつづいていたら横浜なんかいまだに“苫屋の煙 ちらりほらりとたてりしところ”なんだろうなーとか、ということはやっぱりハーゲンダッツは長崎から入ってきたんだろうなとか、そんな阿呆なことをいろいろと妄想してしまいました。

楽しかったですw

『あかんべえ 上』

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)
宮部 みゆき
4101369291



[Amazon]


借りて読了。

江戸時代、両親が深川で料理屋ふね屋を始めた十二の少女おりんは、新しい住まいで死にかけるほどの病に罹った。そのとき見た不思議な夢の中で、おりんは賽の河原でみた水たまりの水を舐めた。無事に病の癒えたおりんだったが、それから普通の人の見えないもの、お化けを見るようになった。おりんの住む屋敷には亡者の因縁がふかくからみついており、それはふね屋の商売に大きく影を落とすことになるのだった。



ひさしぶりの宮部みゆきは、やっぱり時代物です。

やっぱりというのは、最近の私はヘタレなので社会派ミステリがほとんど読めなくなっているからです。

今回のお話は料理屋が舞台。なので食べ物の話がたくさん出てきて、けっこう楽しいです。
それがどんな品物なのか、あんまり想像がつかない食生活の貧しい私ですが、それでも食べ物の話は元気になります。

それから、この話のチャームポイントはおりんちゃんの知り合う、ふね屋に憑いてるお化けさんたち。

生前はさぞかしな遊び人だったろうと思われるお侍の玄之助さん。
艶やかなたぶん芸者のおみつ姐さん。
深い苦しみと怒りにかられて暴走する哀れなおどろ髪。
指圧の達人・笑い坊。
そしておりんちゃんに会うたび、あかんべえをする少女お梅。

引っ越してきたばかりで友達がいないおりんちゃんにとって、玄之助やおみつは親しい友人、相談役。
そこまではいかずともほかのお化けさんたちもとても気になる存在。

それでもお化けさんたちは開店したばかりの料理屋にトラブルばかりをもたらします。

かれらの存在がふね屋の商売に支障を来すのを黙ってみているわけにも行かず、おりんちゃんはひとりで奮闘する……。

というお話。

じつに安定した筆力で、過不足なく、するりと話にひきこまれてしまいました。
これぞ大衆小説という感じ。

料理屋関係のいろいろや、登場人物にまつわる因縁話、ふね屋の建てられた場所に関する酸鼻な過去話。複雑な要素と登場人物をさらりと描いて、読ませます。

あんまりするする読めるので、私としてはもう少しなにかをと思ったりしますが、これはこういうさらりとしたところが持ち味のお話なんでしょう。

お化けが出てきますがまったくこわくなく、むしろ、人間たちのほうの因縁のほうが面倒くさくて恐ろしい、というお話でもあります。

さて、これからおりんちゃんとふね屋はどうなるのでしょうか。

読んでいて一番切ないなあと思ったのは、大事件が起きた翌日、だれも起きてこない台所でおりんちゃんがお腹を空かせているところ。

冷蔵庫も電子レンジもないところで独りで生きていくためには、生活力が今より数倍必要だったんだろうなーとしみじみいたしました。

これから下巻へと参ります。

あかんべえ〈下〉 (新潮文庫)
4101369305

『ちょっと江戸まで 1』

ちょっと江戸まで 1 (花とゆめCOMICS)
津田 雅美
4592186214



借りて読了。

平成二十年、西暦2008年まで江戸時代がつづいている、というパラレル日本を舞台にした少女マンガ。

先代がラテン系で方々に庶子をつくりまくった桜井家の当代は、父親の残した弟妹の面倒をすべてみてそれぞれに身を振らせていた。そして最後に見つかったのが箱根の宿で働いていた少年のような少女そうび。当主の命で迎えに行った腹心の神谷は、そうびが若の幼少時代にそっくりであることに感動し、江戸へと連れ帰った。こうして感情表現の下手な男前の少女の、江戸での暮らしが始まった。



かわいい~vvv と頬ずりしたくなるようなほのぼのマンガです。
まったりスローテンポな展開と、愛らしいキャラクターたち。
ちょっとヘンな江戸時代の設定と相まって、ゆるゆるほわほわと楽しみました。

凛としたハンサムでストイックな、旗本で江戸町奉行の若き桜井家当主、貴晄さまがかっこいい!
兄上様そっくりの妹なのに男前のそうびちゃんがかわいくてかっこいいw

兄上のお側づきの神谷どのはいいお兄さん……というかいいおじさんだし、その妻・小梅さんときたらまるでペコちゃんだしw

水戸家の若様ミシェルと助さん格さんもとい、水戸廸聖ちゃんと佐々と安積の組み合わせもとっても楽しいです。

現代までつづいている江戸時代、というわりには技術がローテクですが、このまったり感は捨てがたい。たぶんまったり度では『おじゃる丸』をうわまわっていると私は思う。

最近、時代物が受けているのかなあ……。
けっこう多いですよね、なんちゃって時代物。
昨日、姪っ子が見ていたドラマも幕末へスリップしちゃう話だったみたいだし。
日本史好きが増えているからでしょうか。

ああ……こんなん読んでると『銀魂』の原作をとっても読みたくなるよう……。
懸命にアニメで踏みとどまっているのにぃ。

『カラクリ荘の異人たち ~もしくは賽河原町奇談~』

カラクリ荘の異人たち~もしくは賽河原町奇談~ (GA文庫 し 3-1)
霜島 ケイ ミギー
4797342986



[Amazon]


読了。

少年が住むことになった父親の友人の下宿。そこはひとならぬものが行き交う異界との接点にあった。恐怖を感じなくなった少年と一風変わった住人達との、あやかし頻出の超日常をあかるく描く、現代ファンタジー。

『封殺鬼』シリーズの作者さんの、ほのぼの物騒な日常ストーリーです。
いいなあ、この雰囲気。

もともと簡潔でいてどこかしっとりとした文章を書かれる作家さんで、私は大好きな方なのですが、今回のお話は日常に隠れている生と死のあわいをあつかって明るく、なおかつ哀しく、しみじみとした味わいの佳品に仕上がっています。

描かれているのは『封殺鬼』のスケール感はもたない小市民的な日常なんですが、誕生したときから死に向かって旅をしているのだ、ということは術者であろうが凡人であろうが誰でもおなじ。

主人公の太一君は母親との関係で心に深い傷を負った少年。
たぶんそのせいでかれは生へのエネルギーが減少し、死の方向にかなり近づいているのだと思われます。

そのことに無自覚だったかれが、異界とふれあうことで生の哀しさとすばらしさを感じ、麻痺していた感情をすこしずつでも取り戻していく。

これはファンタジーの常道。というか正しいファンタジーのひとつのあり方ではないかと私には思われるのですが、そんな小難しいことは置いておいて。

登場人物の賑やかさがとっても楽しいです。
老若男女取りそろえ、生者も死者もあやかしもなにもかもがごたまぜで、どれかが軽んじられることがない。

生も死も等価にあつかわれて、でもきちんと分けられた世界。

そんな賽河原町の存在そのものが愛おしいようなここちになる、楽しい一冊でした。

続編もあるようなので機会が巡ってきたら読んでみたいと思います。

カラクリ荘の異人たち 2 ~お月さんいくつ、十三ななつ~ (GA文庫)
霜島 ケイ ミギー
479734914X


封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈1〉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ
4094520082

『運命の騎士』

運命の騎士 (岩波少年文庫)
Rosemary Sutcliff
4001145944



[Amazon]


読了。

十一世紀末のイギリスを舞台に、騎士のもとに送られた犬飼の少年の成長を堅実な文章で情感豊かに描く歴史小説。


サクソン人の母とブリトン人の父の間に生まれたランダルは、物心つく頃には両親を失いアランデル城の犬飼の下で暴力を受けながら暮らしていた。ある日、ランダルは帰還した城主ド・ベレームの馬にイチジクを落としてしまう失敗を犯す。ランダルは鞭打ちの刑に処せられるところだったが、城主の楽人エルルアンがランダルの身柄を賭けてチェスの勝負を挑んだ。果たしてエルルアンは勝利し、ランダルは楽人のもとで働くことになった。生まれて初めての平穏な日々がしばらくつづいた。ところが、ランダルが城主と何者かの密談を盗み聞いた翌日、楽人はランダルを老騎士エベラードのもとに送ると言い出した。




犬飼のもとで暴力にさらされ暮らしていた少年が、居場所と友人を得て成長し、そこを故郷とも思い愛するようになるさまと、時代の波に翻弄されるひとびとを淡々と、けれど丁寧に描いた作品。

一文一文を噛みしめるように読みました。
サトクリフの文章はどれも臨場感が素晴らしいのですが、この作品はほんとうに情景描写がすぐれていて、十一世紀イングランド南部の自然とひとびとの暮らしが、匂いや温度、湿度までをともなって触れられるように思えるほどに鮮やかでした。

少年ランダルの感受性がひろいあげるそれらの光景と、ランダル自身の心情がからみあい、補いあい、より広く深みのある情感を醸し出していて、読みながら泣きたくなるような気持ちになることしばしば。

日本人は四季の風情に心を読み込んできましたが、それと通ずる物がここにはあると思います。

物語は「ローマン・ブリテン四部作」に比べれば地味で起伏も少ないかも知れませんが、少年の孤独が友情によって癒されていく過程、周囲のひとびととの関係、人間として自立していく過程を、とても丁寧にでも余剰は微塵もなく距離を置いて描き、なおかつしみじみとした余韻が場面ごとに残る描写が深く印象に残ります。

何よりも、孤独な少年に歓びを教えあたえてくれる、ディーンの荘園の存在感がとっても素晴らしい。

ランダルに歓びを教えてくれた、幸福の象徴であるとともに、守らなければならない故郷となったディーン。

友とともに濃密な少年時代を過ごした思い出深いディーン。

世紀末の不安やノルマン人王家の内乱を背景に少年の友情と成長とを描く作者の筆は、つねに故郷への思いに満ちあふれていて、なのにどこか寂しげです。

それはディーンがランダルにとっていつかは失われるかも知れない、夢の楽園でもあったから、なのかなーと読み終えて思いました。

物語は苛酷な経過を経て結末へと向かいますが、それは何かを得るためには何かを失う覚悟と勇気が必要なのだという、メッセージなのかも知れません。

ハードカバーで読んだものの再読でしたが、こんなに深みのあるお話だったかと目から鱗が落ちまくりでした。ダメだなあ。何を読んでいたんだ、昔の自分。

どの文章も読み飛ばせずにじっくりと進んでいたらずいぶん終えるのに時間がかかってしまいましたが、そうする価値のある本だったと断言いたします。

ランダルとべービスの友情はもちろんですが、べービスの祖父・騎士エベラードやその友人の爺様たち、忠実な犬たち、べービスの養母アンクレットなどなど、脇役たちの存在感も見逃せません。敵役のド・クーシーですら生き生きしています。

中世の騎士物語にリアリティーを感じたい方にはぜひ読んでいただきたい作品です。

そういえば、この時代に王位争いをしている兄弟って、『ヴィンランド・サガ』のクヌートの子孫なんですよね……。

ノルマンの商人(たぶんヴァイキング?)が運んできたダマスクの鍛冶師の剣とかに時代の風を感じたりもできて、ディテールを読み込むのも楽しかったです。

20091009の購入

図書館予約本を受けとりがてら本屋に行って参りました。

蟲師 9 (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063144887


以上、購入。

いやー、先日もうじき本屋ストックが切れるかもなんて予想していたら現実になっちゃいまして、行きつけ本屋のほとんどから『蟲師』既刊が消え失せてて焦りました。一軒だけ残ってたので慌ててゲット。

まだ十巻が残ってるんだけど一度には無理。お願いこの次まで残ってて……。

そんなわけで財布には余裕がないのですが、見つけておもわずつかんでしまった本が一冊。
ようやく文庫化なりましたよ、この本も!!

泣き虫弱虫諸葛孔明 第1部 (文春文庫 さ 34-3)
酒見賢一
4167773082


つかんでみたけどえーっと……と棚に戻しましたよ。無念。
ですが、すぐ隣に宮城谷昌光『三国志』という店内レイアウトに思わず吹きそうになりました。

まだお読みになっておらずお財布に余裕のある方には、ぜひ、とお薦めいたします。
あ、でも三国志の英雄たちはつねにクールで格好良くなければと思われる方は読まない方が無難かも(汗。

『角獣の書 暁と黄昏の狭間III』

暁と黄昏の狭間〈3〉角獣の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198507848



[Amazon]


読了。

生命の力を源とする魔術がおこなわれる世界を舞台に、社会に翻弄されつつ地道に自分の道を見いだそうとする少女の運命を描く、異世界戦乱ファンタジー。シリーズ第三巻。


小国ドムオイの貧しい鍛冶職人の少女セフル・アルゴーは、とある出来事によって生命の力ワンを見ることができるようになり、魔術大国オラの学院で学んでいた。しかし鍛冶職人になりたいという希望が断ち切れず、恩人であるドムオイ近衛騎士のギルダン・レイの消息を求めて神獣の国アミランテへをめざし旅立った。



数奇な運命に翻弄される少女セフルの人生これ災難といった趣のストーリー展開。
セフルはみずから求めて困難に飛び込んでいるつもりはないんですが、多少世間知らずな部分があり、見通しが甘いのは確かです。

しかし、これでもかと出会う落とし穴は、必ずしも彼女のひきよせたものとばかりも言えない気が……。

戦乱の最中の世情不安な社会では治安も悪化しているから、無防備なセフルみたいな子は餌食になりやすいんだろうな、きっと。

というわけで世知辛い世の中で簡単に罠にはまってしまうセフルは、またしてもにっちもさっちもいかない状況に陥ってます。

しかも今回のお仲間は人間じゃなくて、お猿です。

おかげで神獣の神官を王と崇めるアミランテの中枢に入り込むことにもなるんですが……。

アミランテは帯河のほとりの要衝にあり、帯河の利権を手に入れたい大国オラとリヴォ、一触即発の狭間でゆれ動いているところです。

ところがアミランテの王様はものすごく信心深い御方ですべてを神頼みにして祈りつづけるのみ。
家臣たちは表向きオラに臣従を誓いつつも、じつはリヴォとの裏取引を画策する人物がいたりと不穏な空気。

国と国との駆け引き、国内での権力争い、王と王妃の微妙な関係、様々な要素をまきこみつつ、いっきに開幕するリヴォとオラの決戦のようすがスゴイ迫力です。

生命魔術を駆使するオラの飛空船団とリヴォの海軍の激突、もすごいんですが、そのあとにもっとすごい展開が。

これをいうと完全にネタバレになるので書けませんが、いやーびっくりした。

このシリーズで私の好きなところは、リアルな異世界描写に生命魔術というしくみががっちりと絡み合い、異世界を異世界たらしめる要素として有機的に機能しているところです。

さらにそれが光と闇の二元論ではなく、もっと多様で多岐な面を有する生命の、ひいては世界の力をもとにしているところ。

その世界を崇めるという素朴な信仰から、しだいに力をひとのために利用するようになり、しまいには世界そのものをおのが力として利用しようとする勢力を生み出すに至っているというふうな背景も描いているところ。

様々な要素を含んだ密度の濃いお話でありながら、一冊ずつ確かに完結しているところ。

と、いろいろありますが、一番のツボは、登場人物が生身の肉体を持っていて、異世界でその人生を悩み苦しんで生きているところ、なんだろうなーと思います。

セフルはこれから念願の鍛冶職人になれるのか、ギルダン・レイが今後めざすものは、と興味が尽きません。

うん、やっぱり面白いです、このシリーズ。

この巻だけ図書館になかったため、読みたくてつい買ってしまうくらい、私は好きです。

さあ、これでつづきが予約できますw


暁と黄昏の狭間〈4〉甲蛇の書 (トクマ・ノベルズEdge)
4198508046

『犬夜叉 41』

犬夜叉 (41) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091273211



読了。

戦国時代へタイムトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションコミック。シリーズ第四十一巻。

ふー、ひさしぶりの『犬夜叉』です。
アニメで完結編が放送されると決まったあたりから予約数がぐんぐん増えて、なかなかつづきが借りられなくなりました。おかげで前巻の話を思い出すのが一苦労。

この巻は、鉄砕牙の新しい能力・竜鱗の鉄砕牙を使いこなせない犬夜叉と、冥王獣の甲羅を手に入れた魍魎丸との戦いを、もうひとりの奈落の手下・白夜が見物している、という構図で進みます。

白夜と奈落の関係が思い出せなかったり、魍魎丸が何をしようとしているのかを忘れていたり、まあ、いろいろしましたが、気にしなくても読めるところがけっこうすごい。

あと、殺生丸がいまは亡き神楽の話に反応するあたりは、やや、と思いました。そういえばそんな話もあったよな……。

ところで桔梗と琥珀くんはいつからどうして行動を共にしているんでしたっけ?(汗。

桔梗といえば、このおかた神出鬼没であちらこちらを旅しておられて、巫女なのにいいのか? と少し疑問だったのですが、日本にはかつて歩き巫女と呼ばれるひとびとがいたらしいということを知りました。

そういえば、舞台は戦国時代だから中世の終わりから近世のはじめあたり。
非人や異形の者がまだそれほど蔑まれずにあちこちを移動できていた時代なんでした。

『犬夜叉』に出てくる妖怪たちはじつはその異形の者をあらわしているのかもとふと思ってみたり。

貴族と武士と農業を営む者以外はみんな非人の世の中なのだから、そういう意味では弥勒様や珊瑚ちゃんも異形なのですよね。

もちろん、未来人のかごめちゃんは極めつけの異形です(笑。

お話は停滞気味ですが、あと十冊余り、できるだけ間をおかずに読みたいものです。
でないとアニメに追いつかれてしまう。

ずっと見ている再放送のほうは、完結編が始まるまでに終わらなかったしな……(汗。

犬夜叉 (42) (少年サンデーコミックス)
409127322X

20091004の購入

暁と黄昏の狭間〈3〉角獣の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198507848


Mother Earth
Within Temptation
B000TZ8Q9I



以上、購入。

二巻まで借りて読んでいた「暁と黄昏の時間」ですが図書館に三巻だけない、というか途中で消えた(おそらく盗難にあった)ので読めずにいました。
ずーっと悩んでいたのですが、やっぱり読みたいという気持ちが勝り買ってしまいました。

ああ、これでようやく続きが読めるー!

でも多分四巻は借りて読みますが(汗。

『裏切りの月に抱かれて』

裏切りの月に抱かれて (ハヤカワ文庫FT)
Patricia Briggs
4150204667



[Amazon]


読了。

妖精や人狼、吸血鬼などが生きている現代アメリカを舞台に、コヨーテに変化する能力を持ったヒロインの活躍を描くアーバンファンタジー。


アメリカのトライシティーズで中古車修理業を営むマーシィは、じつはネイティヴアメリカンの父親から受け継いだコヨーテに変化できる“ウォーカー”だ。ある日、彼女の元に人狼になりたての少年が着の身着のままの姿で雇ってくれないかと訪れる。人狼はとても危険だがマーシィは生い立ちのおかげでそのあつかいに多少慣れていた。マックと名乗った少年をアルバイトとして雇ったマーシィは、マックを追ってやってきた、余所者の人狼たちとのトラブルに巻き込まれることになる。



これはものすごく、面白かったです!

タイトルがロマンス物みたいな雰囲気なんでちょっとおそるおそる読んだのですが、ロマンスもあるけどメインは柔軟でしたたかでなおかつ支配されることを嫌うヒロイン・マーセデスが、人狼たちの抗争に巻き込まれるというサスペンス。

科学技術の進歩で隠れきれなくなったフェイと呼ばれる妖精たちが、自分たちの存在を公然化した現代アメリカで、人狼たちもカミングアウトの機会を狙っている、そんな時期。

トライシティーズにあらわれた謎の人狼組織とかれらによる頭目宅襲撃に端を発する謎だらけの事件を追いかけて、人狼やグレムリン、吸血鬼、それからもちろん人間も入り乱れての、大活躍をするストーリーは、テンポがよくぐいぐいと引き込まれます。

登場するキャラクターの属性だけでない個性がバラエティー豊かでとても楽しいし、マーシィの日常生活感にあふれた描写はアメリカミステリを読み慣れた身には親しみやすいし、太い骨に熱い肉をまとった人狼の重要人物(?)たちの存在感は生身の温かさのうえ色気も漂わせていてなんともいえないムンムンさです。

そういえば、人狼って肉食系以外の何者でもないですな(苦笑。

そんなトライシティーズ人狼のアルファ(頭目)である軍人系俺様タイプのアダムと、北米の人狼全体を統括する大ボスの息子・頭脳系癒しタイプのサム、ふたりの人狼の、味方ながらもいろんな意味でのせめぎ合いの間に挟まれて困惑しながら、アダムの娘ジェシィの救出に尽力するマーシィの姿がとても好ましかったです。

ヒロインは三十代ですこし薹がたってるかなと思いましたが、相手が不老の人狼だとただの小娘としか言いようがなかったり(苦笑。

「現代ロマンティック・ファンタジイ」と銘打ってありますが、この形容、読み終えるとあながち間違っていないような気がします。

ですが、読み始める前にこれをみると、かなりの確立で誤解しそう。

なんといって紹介すればいいのかなあ……とっても悩んでしまいましたが、よい文句が浮かんできません。

ファンタジー要素よりも異形変身要素のほうの印象が強い、限りなく現実に近い女性向けサスペンスといったら通じるかなあ……。

ともあれ、現実的な考え方をする女性が等身大の活躍をする、ちょっと現実から離れたお話を読みたい方にはかなりおすすめ。

人狼好きには超絶おすすめの逸品です。