『のだめカンタービレ 23』

のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス)
406340773X



クラシックコメディーマンガの完結編。

大団円とはいかないけれど、前向きでしあわせな日常的結末。
一読後は、え、これで終わりなの、あっけない、と思ったのですが、二度読みして周到に伏線が回収されていることに気づきました。

ストーリーは反復しているのですが、反復しているようですこしずつ問題を解決して前進している。
人生って案外こんなものじゃないかなあと、むしろ現実はすこしずつ後退というのもまたぎゅんと後退して転落というのもありなので、こういうのが理想的な進み方なのかもしれないなあ……。

なにより、のだめが音楽することに他人に寄りかからない自分自身の意味を見いだしたことが大きいよね、と思った。

そして千秋先輩って、じつはのだめに最初から最後までめろめろだったんだねぇ。
ニナの言ったひとことに妙にウケてしまって、そこだけ何度も読み返してしまいました。
あと残念メール!(笑。

とてもおもしろくて笑えてためにもなるシリーズだったなあと感慨深いです。

残念といえば、在日本の脇役たちのその後がよくわからないことでしたが、どうやらかれらのエピソードがこれから連載されるそうなので楽しみにしています。

峰君なんか、いま何やってるんだろう……(微苦笑。

20091128の購入

ほぼ三週間にわたるゴロゴロ生活ですっかり体力が落ちてしまいました。
そんなわけでちょこちょこと外出して鍛え直そうという魂胆。
何か用がないと出歩きたくない性分なので、本の発売日は絶好のニンジン作戦発動日なのです。

彩雲国物語 暗き黄昏の宮 (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
4044499195


ということで以上購入。

最近タイミングが悪くて手に入れる機会を失いがちだったシリーズ。今回は荷解いたばかりの積み山状態からいちばん上をとってきました。

目的を果たして上機嫌で帰宅の途へ。
しかしたどり着くとすでにへとへとになっていた。
たかが2500歩歩いただけなのに。
どれだけヘタレてしまったのか私。
これで月曜日に遠出ができるのか私。

かなり不安になりつつ、今日は体力を温存するべきかやはり鍛えるべきか悩んでいるところです。

キャラバトン*黒馬編

響子さん@【夢紡ぎの歌】に「キャラバトン」をまわしていただいてました。なんと2006年の12月に!

いままで気づかなかった私をどうぞお許し下さい。体調が最悪だった頃だからっていくら何でもこんなにお待たせするなんて。というかそれなら今更気づくなという気もしますが、許してくださるそうなので、おわびがてら参ります。

指定キャラクターは『天空の翼』からブラウフェルド、通称黒馬ちゃんです。


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更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第四回を公開。

第三回公開部分を少々改稿しました。
文章を移動させたので改稿前の三と、今回公開の四に重複している部分があります。

『鹿男あをによし』

鹿男あをによし
万城目 学
434401314X



[Amazon]

読了。

現代の奈良を舞台にした和風学園ファンタジー。ただし主人公は男性教師。


大学院の研究室で助手との折り合いが悪くなり、“神経衰弱”とあだ名をつけられたおれは、教授の薦めで奈良の女子校に化学教師として二学期の間だけ赴任することになった。東京の東で鹿島神宮を崇める母親の元に育ったおれは奈良といえば大仏と鹿しか思い浮かばない。九月半ば、赴任して初めての担当クラス1-Aで緊張しきったおれはほんとうに女子生徒ばかり並んでいる教室に恐慌状態に陥りつつあった。そこにひとり生徒が遅刻して現れた。堀田イトという古風な名前のその生徒は、遅刻の理由はマイシカが駐禁をとられたからなどと理解不能な嘘を反抗的についた。なのに遅刻が三回たまると学年主任に呼び出されるので遅刻にしないで欲しいという。職員室で馬鹿にしていると愚痴っていたのが学年主任に聞かれてしまい、堀田は学年主任に呼び出されることになった。翌日、おれは教室の黒板に「チクリ」と書いてあるのを発見した。



ドラマ化もされた大ベストセラーです。
ふだん売れ線はあまり読まないし、ドラマもほとんど興味がないので見なかった。
なのになぜ今頃読もうと思ったかというと、寝込む前にレンタルビデオ屋で玉木宏のジャケットをみたからという……(汗。そこでDVDじゃなく本を借りるのが天の邪鬼たる私の面目躍如?

というわけで読み始めたわけですが、とたんに玉木宏は吹き飛びました。
ちがうじゃん、ぜんぜん違うじゃん。

でも面白い、いやとても面白い、ううんすごく面白い!

最後まで一気に読み切りました。
一気読みは普段しないのですが、止まらなかったんです。
読み終えたときはどーっと疲れが出て、しばらく放心状態になりましたが。

初めは神経衰弱な男が女子校で翻弄される話かと思ったのですが、たしかに男は翻弄されつづけるけど生徒たちにではなく、主な原因は鹿にあったということが序盤で判明します。

奈良の鹿。
鹿せんべいを目にするとほんとうにお辞儀して近づいてくるのだろうか。
びぃと鳴くのだろうか。
ポッキーも食べるのだろうか。

鹿と出会った主人公は混乱と不審と不安のなかで、国家の大事に関わるとんでもない出来事に巻き込まれてしまいます。

でも雰囲気はちょっとのんきな感じ。
なにしろ鹿だしなー。

同僚に案内されて奈良の名所めぐりも楽しめます。
私は一度も行ったことがないけれど、紫の夕焼けは見てみたいかも。
視覚情報が主で、触覚嗅覚はそれほど刺激されない文章でしたが、一人称なので致し方ないか。

ここだけは映像で見た方がいいかもしれないなあ、などとおもいつつ。

思わぬところで歴史を遡り、古代日本史にまで到達したときには、はれやかに笑ってしまいました。

これって本当にファンタジーだったのねw

英雄的な人物はでてこない、それぞれに個性はあれどもおおむね凡人ばかりがそれぞれの時間を生きていて、それがふとした瞬間に交錯して何かを生みだしていく。

そんなちょっと不思議でほのかなぬくもりを感じる、なかなか素敵なお話だったなあと思います。

鼠がおばちゃんなのは仕様かしら(苦笑。
狐がほとんど出てこなかったのがちょっと残念。
でも、鹿がすっとぼけていて大変にチャーミングでした。

最近の購入

なんとなく書きそびれていた購入物。

Niyaz
Niyaz
B0007W7H98


誕生日プレゼントとしてもらったiTunes Cardで購入。
ずっと聴きたかったものなのでとても嬉しい。
イランのポップミュージックグループです。たぶん(汗。
ジャンルとしてはなんだろう……エレクトロニック? トランス?
現在ヘビーローテーション中。


尾崎亜美 ベスト・コレクション
尾崎亜美
B002OKTB7C


私は中学生の頃からの尾崎亜美ファンです。
とはいうもののベストはあんまり買ってなかったんですが、いままでCD未収録だった二曲が入っているので!
その他の選曲は……提供曲ばかりだな~。私の好みの亜美さんとはちと違う。


のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス)
406340773X


そしてとうとう最終巻の一冊。
歩いて五分の病院帰りに、薬局向かいの小さな雑誌本屋にて購入。
こんな僻地の極小書店にも流通している、さすが大人気マンガでございます。

『魔女と犬 カメリア・カタルシス』

カメリア・カタルシス 魔女と犬 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198506914



[Amazon]


読了。


現代日本を舞台にした、ちょっと風変わりな青春サイコサスペンス?


進学校に通う準子は植え込みの影で転がっている若い男を見つけた。死体かと思ったが、どうやら寝ているだけのようだ。それにしてもこんなところで一晩寝込むとは、浮浪者なのだろうか。そのまま通りすぎたかったが、準子は男の寝ている植え込みに用事があってきたのだ。準子の目的だった捨て子犬は男が抱えこんでいた。しかたがない。準子は目覚めた犬井という男に、子犬を飼いたがっている知り合いに自分が飼うつもりだからと説明してあきらめさせてくれと言った。植物採集に来たという犬井はなんの疑問も持たず、準子について四辻家までついてきた。これからされることも知らないで。




『暁と黄昏の狭間』シリーズの続きが読めないので、おなじ作者さんの別シリーズを借りてみました。

面白かった!

意外な発端からどんどん意外な方向にころがっていくストーリー、謎めいた設定がどんどんあきらかになる展開、つづきが気になるというレベルではなく、あっという間に読み切ってしまいました。これはここ最近はほとんど無かったことです。

多少、小説としてこなれていない部分がありますが、それは書き慣れていないからなんでしょう。物語としての完成度はかなり高いと思います。書きたいことと書くべきことをわきまえたうえで、なにを提示していくかをきちんとコントロールしているさまがうかがえます。もともとマンガ家さんだったからでしょうか。構成に無駄がない。なのに視覚的にすっと浮かんでくる描写。文章のぎこちなさ、小説ではなくマンガの技法で書いているのではと思われるところなど、わかりにくいところはありますが、作品の作り方は心得ている方だと思いました。

読み終えてみればけっこうドロドロとしたしがらみ設定だったのですが、泥臭い湿っぽさをそれほど感じなかったのは、拉致監禁される犬井君のどこか他人事な雰囲気と、かれの雇い主の“魔女”の存在(と態度)が大きいですね。

どうしてこういうタイトルなんだと疑問だったのですが、なんだそういうことなんだと、たいそう腑に落ちました(苦笑。

お話の雰囲気的には既存の作家さんでいうと昔の図子慧さんあたりと似ているかなと思いました。

よし、つづきも借りるのだ。
お願いだから借りさせて~。

オリザ・ハーモニウス 魔女と犬 (トクマ・ノベルズ)
西魚 リツコ
4198507163

『町でうわさの天狗の子 5』

町でうわさの天狗の子 5 (フラワーコミックスアルファ)
岩本 ナオ
4091328199



読了。

現代日本の地方都市を舞台に、天狗の父親を持つ女の子のちょっと不思議風味だけどごくふつーの高校ライフを描く、ほのぼのコミック。シリーズ第五巻。

天狗の康徳坊を父親に持ち、お山では太郎坊と呼ばれる高校生の秋姫ちゃん。彼女は天狗になんかなりたくなくて、ふつうの人間生活を送りたいと願ってて、強引に高校生活を始め恋に行事にとエンジョイしています――というお話。

読んでいると秋姫ちゃんが天狗の子であることを忘れてしまいそうな、ごくごく普通の学園もの。
だけど、天狗の血筋がらみのいろいろもきちんと話に組み込まれていて、それがとっても普通に馴染んでいる。

この普通感覚がこのマンガのチャームポイントなんだろうなあと、またしても思うのでありました。

あまりにも普通なのでファンタジーとしてみるとちょっと違和感があるよなと思っていたのですが、これって天国も地獄もないひとびとの世界観に近いのかなー。
ここでは死んだ人も幽霊になってそのままへらへらと一緒に暮らしていそうな気がします。インカの祖先のミイラみたいにね。

考えてみれば人が天国を夢見るのは現実から逃れたいがためなので、ひるがえれば現実の辛さがなければ天国も地獄も意味をなさないのでは。
罪とか苦しみとかいろいろを感じなければ、人は死んで天国に行きたいとは思わない、のかもしれない。
だから死んでも生きててもおんなじ。ただ人も異形もみんな一緒に暮らしてます、てことになるのかも……しれない?

と、妙なことを考えてしまいましたが、お話はちょっと力持ちな女の子の恋愛込み日常話として楽しく読めます。

失恋後の秋姫ちゃんはだんだん幼なじみでお目付役で次郎坊の瞬くんを意識し始めて……というのがこの巻の読みどころ、かなー。

そして修行に別のお山に出かけた瞬くんの留守をつくかのように、あらたなキャラクターが登場。

三角関係は解消されたかと思ったのにまたあらたに形成されるのか。

私は三郎坊の暗躍(?)が楽しいです。
あと、秋姫ちゃんと切れて途端に出番が減ったタケルくんの素晴らしい才能にも目を瞠りました。

あの八咫烏、けっきょくストラップの意味をなしていない気が……(苦笑。

とにかく読んでてとても楽しかったです。
つづきをお待ちしています。

『夢幻紳士 回帰篇』

夢幻紳士 回帰篇
高橋 葉介
4152090790



借りて読了。

大正から昭和初期くらいの時代を舞台にした怪奇幻想譚のシリーズ。

美形の私立探偵・夢幻魔実也くんが事件にケリをつける役回り、という大枠だけが決まっていて、いろんなテイストの話が描かれてきたシリーズですが、今回のタイトルは「回帰篇」。

なんでそんなタイトルなのかと思ったら、本の投げ込み広告にいままでの名作のセルフリメイク・セルフリテイク作だと書いてありました。そういうことは本自体に書いておくべきだと思うのですが……違うのでしょうか。

しかし、読んでみても過去作品の記憶はまったく甦らなかったので、私は結局新作として読みました。ははは。

それにしても過去作品の雰囲気とか絵柄とかは覚えているので、今回のこの作品集はずいぶん作風が変わったなあと感じはしました。

昔のほうがもっと印象がシャープでクリアだった気がします。そしてエログロがきつかったような。怪奇幻想譚といっても怪奇のほうに重点があったというか、絵のインパクトで気分が悪くなったこともあったくらい悪の夢だった。

最近は幻想のほうが強くなってきて、絵も淡く翳りをおびているふう。
エログロ度も少なくなってきて、気持ち悪いのはおんなじなんですが輪郭があいまいになって抽象的になり、より夢度が高くなった。悪の夢ではなく、悪い夢になったかんじ?

以前はスプラッタホラーだったのがファンタジーホラーになったような?

でも悪夢は悪夢なのでホラーの冠が取れることはないなと思います。

線もより記号的になってきましたが、魔実也くんの表情だけはエロ度が増している……気がするなあ。

ところで、この巻では魔実也くんが探偵であることにはまったくといっていいほど触れられておりません。

かれはすでに探偵ではなく、なかば魔物の一員として描かれている気がいたします。
さすらいの半魔人・夢幻魔実也(汗。

面白かったです。

が、元の話が全然思い出せないのがなんか悔しいです。

『冬の薔薇』

冬の薔薇 (創元推理文庫)
パトリシア・A・マキリップ 原島 文世
4488520103



[Amazon]


読了。

近代欧米風な田園と森を舞台にした、生と死、夢とうつつを往還する幻想ファンタジー。


農家の次女として生まれたロイズは素足で森に通い、花や薬草を集めるのが得意な少女だ。ある日ロイズは、薔薇の茂みの影に見つけた泉の水をすくったとき、森から黄金の光がこほれおち、ひとりの若者の姿に変じるのを目にする。その後、村には森の奥の館の跡取りと名乗る人物が現れた。その名前はコルベット・リン。かれの存在は村にセンセイションを巻き起こす。なぜなら、リン家は息子が当主を殺害して行方不明になったときに絶えており、当主は死に際に自分を殺す息子を、自分とおなじように死ねと呪ったと伝えられていたからだ。ロイズはコルベットから目が離せなくなるが、コルベットが視線を交わすようになったのは春に結婚を控えたロイズの姉ローレルだった。




ふはー。なんというファンタジー度の高さ、というか深さ?
初めから終わりまで、夢とうつつ、生と死の狭間を行ったり来たりしつつ、その境目が曖昧なまま、どこを読んでいても言葉で魔法にかけられているようなそんな心地にさせられる、ひそやかで冷ややかで鮮やかで冷酷で、熱に浮かされた夢のようでもある、とにかく言葉に尽くせないほどに陶然とさせられるお話でした。

話のベースはスコットランドの民間伝承「若きタム・リンのバラッド」なのだそうですが、話の構造は重層的であちらこちらにエコーがかかって、登場人物の関係があちこちで響きあっているような、全体を魔法で織りあげたようなそんな物語世界になっています。

ロイズというヒロインの一人称が、その不思議さをまた増長しているような気がする。

二つの世界を見る目を持ち、二つの世界をかろやかに行き来していたロイズなのに、彼女のその資質そのものが苦しみをもたらすようになっていく、その過程を追いかけることによって、過去と現在が繋がり謎が解けていく。そのへんの展開がとても痛々しく、美しく、哀しかったです。

この世界では森ははっきりと異界ですね。
色鮮やかな春夏秋と冬の対照的な描写がとても印象的でした。
ここでは冬は死そのものであり、異界とこの世の違いをはっきりと証立てるもの、なのかなあと思いました。

とにかく、ファンタジー読んだぜ!!!!
という気分になれるディープな幻想譚でした。
大好きですv

ところで、この話の舞台ってアメリカな感じがするんですが、どうでしょう。
十九世紀から二十世紀初頭のアメリカ。もしくはカナダ。
イングランドやスコットランドじゃないような気がするのです。
トウモロコシとか育てているからかな……。

現代を舞台にした関連作品があるらしいので、ぜひ訳出して出版して欲しいなあと思います。

「レムリアの湊」

汐崎雪野さん作「レムリアの湊」読了。

異世界ファンタジー連作シリーズ「レンシェの鳩」第三作。完結済み。

散文詩めいたきららかな文章で描かれるロマンス小説。
今回は海洋冒険小説の趣もあり。

冒頭ですこしドキリとしましたが、中身は普段通りで安心しましたw
いや、苦手だからというわけではなく、予想してなかったのです。
対象は一般向けだと思います。

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第三回を公開。

リンクに一件追加いたしました。

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『バガボンド 4』

バガボンド(4)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286584



借りて読了。

剣豪・宮本武蔵の青年時代を卓越した画力で臨場感たっぷりに描く、時代コミック。シリーズ四冊目。

故郷と決別して向かった京都で、名門道場に殴り込みをかけた武蔵。
それをこっそり覗いていた幼なじみの又八。

ふたりの距離と境遇とは、どんどん離れていくようでいて案外似た曲線を描いているのかも、と感じた一冊でした。
自分を追い詰めていく、という一点においてね。
二人が違うのは、武蔵がおのれの意志で前向きにそれをしているのに対し、又八は自分の意志なんだけどどこまでも後ろ向きであるというところかなー。

とりありえず、この巻の中心はふたりの関係ではないのですが(苦笑。

武蔵が自分の中に芽生えた情動にとまどい不安に陥って狼狽している姿がえらいかわいい巻でしたw

はやく自分という存在のすべてを認めてしまえるようになればいいのにねえ。
それができないからこその若さであり、成長していく主人公なのですが、出会う片端から仇をつくっていくような生き方は、やっぱりどうかと思うよ私は。
まだ自分の行為がどんな影響を周囲に及ぼしているのかの想像ができないんだろうなーと思いつつ、出会う敵役の思考回路も武蔵とどっこいどっこいで。

それが少年マンガのほとんどのパターンなんだけど。男の子ってどうして戦いが好きなんだろうねえ。でも大抵のマンガが敵を倒した、やったぜ、で終わるところでこのマンガはその先を描いてくれそうな予感があるので期待しています。

おつうちゃん、結局武蔵の妄想(笑)の中にしか出てこなかったのですが、げんきにしているのかなあ。

20091118の購入

図書館本の返却に出かけたついでに本屋に入りました。

町でうわさの天狗の子 5 (フラワーコミックスアルファ)
4091328199


以上、購入。

ふと気づくと今月はこれが最初の一冊目でした。
ずっと寝込んでいて出かけるどころじゃなかったので、外出自体も久々だった。
発売日からずいぶん時間が経ってしまったので新刊を探すのも苦労でした。
見つからなかったら、このままおさらばしてもいいかなーとか後ろ向きなことを考えていたら一冊だけ棚に挿してあったのを発見。

でももう一冊の新シリーズのほうは見当たらなかったので、縁がなかったこととにしようかな。

今月はもう積極的に買いたいものはない。
でも図書館に予約をしていないので、しばらくは手元にある本でしのぐことになります。

読書ペースが落ちきっているので、何とか行けそうだと思います(汗。

『イブン・ジュバイルの旅行記』

イブン・ジュバイルの旅行記 (講談社学術文庫)
イブン・ジュバイル
4062919559


[Amazon]


読了。

十二世紀末、スペインのイスラーム王朝の書記イブン・ジュバイルが、十字軍遠征中の地中海世界を横断してのメッカへの巡礼の旅行記。

十二世紀にアンダルシア(現在のスペインの一地方)に生まれた敬虔なムスリム(イスラーム教徒)だったイブン・ジュバイルが、成りゆきとはいえ禁酒の掟をおかしたことを恥じ、王にもらった金貨を資金として向かった聖地メッカへの巡礼の旅において見聞したことをことこまかにつづった旅行記の全訳です。

原題は「旅路での出来事に関する情報覚え書き」。

西欧の十字軍遠征の時代において、当時の地中海世界の日常がどのように営まれていたかが、ムスリム側の視点で描かれている本は初めて読みました。

イブン・ジュバイルはコルドバから船で北アフリカ伝いにエジプトへたどり着いたのち、ナイル川を遡って紅海に出、アラビア半島に渡って聖地メッカでの巡礼をまんべんなくこなしたあと、砂漠を横断してバグダードへ向かい、そこからはチグリス、ユーフラテスの流れ沿いに遡り、ダマスクスへ、そこからキリスト教徒支配下にあったアッカへ至り、そこからはまた船で地中海を西進し、シチリア島を経由して故郷に帰還した模様です。

かなりの大部な道中記で、馴染みの薄いイスラーム世界の固有名詞が頻々と現れること、さらにムスリムの文章によくある神を褒め称えるフレーズが流れを寸断してしまうことなど、いろろいと読みにくかったですが、それをこらえて読み続けるとこれはかなり面白い読み物でした。

この道中、イブン・ジュバイルが記していることで印象に残っていること。

ヒジュラ暦は太陰暦であることは知ってましたが、新月を見て新たな月がはじまったことを確認していること。見えない場合は暦を計算していました。

ヒジュラ暦に西暦が併記されている。これはアンダルスに暮らしていたイブン・ジュバイルだからなのか、当時の普通なのかはわかっていない模様ですが、おかげで西暦何年の話なのかがすぐにわかってありがたい。

ムスリムの一日は日没から始まること。
ということは、日没になったら解かれる断食月の行は、まず最初にご飯を食べてから一日の終わりに向かって行われるんだなと思った。

新しい街に着くたびに水場に関する記述があること。
乾燥地帯での旅だから当然とはいえ、泉の有無や井戸のあるなし、灌漑設備についての言及が必ずあります。さらに貯水タンクをつくった人の名前がいちいちあげられている。

それと、よい水場のある町や、水が豊かで周囲に果樹園などがあるとイブン・ジュバイルの好感度がどんどんアップしていくのが面白い。

イスラームの善行といえば、サダカと呼ばれる喜捨の行為がとくに印象深かった。
先の貯水タンクもそうですが、聖地の神殿の手入れからさまざまな宿泊施設や人的金銭的な援助が、巡礼者のために用意されています。それはつまり、喜捨そのものがイスラームの義務の一つだからなのですが、だれそれが何をしたとかならず伝えられているあたり、喜捨が貴顕の一種のステータスシステムとして機能していることがわかります。

土地の為政者が公的な設備をつくるのは当然なのですが、どんな些細なことにもいちいち名前が記されて、神よ誰それを嘉したまえとつけ加えられるのを読んでいると、なんとなく芸能ゴシップニュースを見ているような気分になりました(汗。

それから、十字軍とイスラーム、具体的にはサラーフ・アッディーンとの戦争がつづいている状況下で、戦場周辺の事情が市民レベルでわかるのはとても面白かったです。

キリスト教徒とムスリムは戦争をしているのですがそれは軍人同士の話で、戦闘に巻き込まれない限り、民間人は普通に暮らしていたのですね。多生の不便はあれど。

現にイブン・ジュバイルはジェノバ人の船に乗ってアンダルシアをめざし出港します。

この船旅がまたたいへん。冬の地中海を西にむかうのは馬鹿者であるというようなことを、本人が自嘲気味に書いておりますが、出港した港に何日かかかってまた戻ってきてしまったり、嵐にあって何ヶ月も船から下りられずに過ごしたりしています。

その船にはキリスト教徒の巡礼者たちも乗っているんですよねー。

そしてかれらは難破したシチリアで王様に救われているのですが、なんとこのウィリアム王の召使いたちのほとんどが隠れムスリムであることが発覚?
イブン・ジュバイルはまたしても神に感謝を捧げるのでありました。

と、こんな調子で二年三ヶ月にわたる巡礼の旅がつづられています。

敬虔なムスリムの文章にしては宗教臭はそれほどつよくなく(たぶん)、かれの興味は水場の質、町の構造、建物の構造、施政者の信仰深さ、町の人々の態度、などに向かっています。

ちょっと物足りないのは食べ物に関する記述があんまりないことかなー。

かなりの部分を占めるメッカ滞在時の記述がかなり細かく、細かすぎていろいろと読むのが面倒だったりしましたが、それも、俺いまメッカに来てるんだぜ! みたいな気分なんだなと思うとちょっとほほえましいかも知れません。けど八ヶ月もメッカで巡礼してるのでさすがに最後のほうは飽きが来ましたが。

巡礼の手順は一度習ったことがあるのですが、それをほんとうにやっている人はどんな心地でいるのか、どんなものが見えるのか、がわかるのはやはり興味深かったです。

総じて、いろいろと興味深く、楽しく読みましたが、イスラームの基礎知識くらいはもっていないととっつきにくいだろうな。
それに原文に忠実なあまり日本語訳がこなれていないので、翻訳物が苦手な人にもあまりお勧めしません。

イブン・ジュバイル自身は知識人で文章は美文であると説明されているのが、ちと哀しかったです。アラビア語を美文で訳せる日本人なんていないような気がする(汗。

下に目次を記しておきます。


まえがき
凡例
ヒジュラ暦・西暦対応表
イブン・ジュバイルの旅程

I グラナダ~エジプト
 旅行での出来事に関する情報記録/同(五八七)年ズゥー・アルヒッジャ月/アレクサンドリアの事情とその遺跡に関する記述/アレクサンドリアの灯台/アレクサンドリアの美点/ミスルとカイロについて/アリー家の聖墓に関する記述/〔アリーの妻ファーティマの〕女系貴婦人の聖墓/前述のカラーファにある預言者の若干の教友たちの聖墓、および教友の弟子、イマーム、ウラマー、禁欲主義者、および奇跡で名をなした聖者たちの廟に関する記述/イマーム、ウラマー、禁欲主義者たちの聖墓/カイロの城砦/病院/スルターンの偉業と功績/サラーフ・アッディーンの公正さ/五七九年ムハッラム月/見過ごしていたことの補足/話を元に戻す/恥辱と侮蔑を受ける状況/われわれが目撃した極悪非道/通過した土地/サファル月/ラビーウ・アルアウワル月/世界中で最も頻繁に船の出入りのある投錨地/巡礼者の災難/アイザーブの住民/ファラオの海(紅海)の恐ろしさ

II メッカ巡礼
 ラビーウ・アルアーヒル月/ジェッダ/多数の者が巡礼者を搾取する/マグリブにしかイスラームはない/ムワッヒド朝の信者の宣教/ジェッダからメッカへ/ジュマーダー・アルウーラー月/聖モスクと古き神の館/高貴なる聖域の諸門についての記述

III 聖都メッカ
 メッカおよびその聖跡ならびに尊き情報についての記述/メッカの偉大なる聖廟と聖跡に関する記述/神が特にメッカに垂れ給もうた恩恵に関する記述/ジュマーダー・アルアーヒラ月/ジャマール・アッディーンと彼の高貴な遺跡/聖地で禁じられていること/ラジャブ・アルファルド月/ラジャブ月の小巡礼/食料供給者サルウ/ウムラへの復帰/丘のウムラ/女性のタワーフの日/ザムザムの水による神殿の洗浄/高貴なるシャアバーン月/ザムザムの水位の上昇/シャアバーン月の中日の夜/讃えられるべきラマダーン月/サイフ・アルイスラーム/ラマダーン月のタラーウィーフ/シャッワール月/シャッワール月の祭り/巡礼の祭式/ズゥー・アルカアダ月/預言者生誕モスク/ハディージャの館/イスラームの発祥地/ズゥー・アルヒッジャ月/アラファートへ登る/ラフマ山/イラクのアミールの到来/アラファートから戻ること/メッカに下りること/イラクのアミールがキスワをカアバに移す/高貴なる館におけるイラクの異国人たちの日/聖なるモスクの市場

IV メディナ~バグダード
 出発の日/五八〇のムハッラム月/神の使徒のモスクと、彼の聖なるラウダについて/バキーウ・アルガルカドとウフド山麓にある尊き廟墓/アミール、マスウードの娘ハートゥーン/大ウラマーの説教/メディナからイラクへ/クーファの市中の記述/五八〇サファル月/平安の都バグダードの記述/学問と説教の集会/カリフの館/浴場とモスクと学院(マドラサ)/東部地域の四つの門

V マウシル~アレッポ
 バグダードからマウシルへの旅/タクリートの町の記述/この世の最も華麗な光景/〔五〕八〇年ラビーウ・アルアウワル月/ナシービーンの町の記述/ドゥナイシルの町の記述/ラアス・アルアインの町の記述/ハッラーンの町の記述/マンビジュの町の記述/ブザーアの町の記述/アレッポの町の記述/ハマーの町の記述/ヒムス(ホムス)の町の記述

VI ダマスクス
 ラビーウ・アルアーヒル月/ダマスクスの町の記述/神聖な会衆モスク/会衆モスクの長さ、面積、門の数、窓の数/ダマスクスの高貴な聖廟と、讃えられるべき遺跡/ジュマーダー・アルウーラー月/異邦人の施設/東方人の奇妙な行動/レバノン山のキリスト教徒/キリスト教徒とムスリムの戦争と協力/ダマスクスとその遺跡/世界最高の景観/葬儀の手順/スルターンの善行

VII アッカ
 ジュマーダー・アルアーヒラ月(五八〇年)/驚嘆すべき話/バーニヤースの町に関する記述/アッカの町に関する記述/スールの町に関する記述/スールのフランク人の結婚式/アッカのムスリムたち/捕虜となったムスリムたち/偶然な不幸/アッカとスール/帆船にて/ラジャブ・アルファルド月

VIII シチリア~アンダルス
 聖なるシャアバーン月/北風による嵐/西からの暴風/高貴なるラマダーン月/沈没寸前の出来事/救助に来た小舟/シチリア島の町マッシーナ/シチリア島のムスリム/王ギルヤーム(ウィリアム)とその善行/白亜の城/ギルヤームの国に住むイスラーム教徒/シチリアからの出発/シチリア島の首都マディーナ(パレルモ)/アンチオキア人の教会/アトラーブンシュの町の記述/シャッワール月/ズゥー・アルカアダ月/ズゥー・アルヒッジャ月/〔五〕八一年ムハッラム月

学術文庫版あとがき



忘れてましたが、中野美代子『ザナドゥーへの道』にイブン・ジュバイルとニアミスする話が出てくるのですが、こちらにもそのエピソードにニアミスするところがありました。
勝手にニヤリw

『赤き死の訪れ』

赤き死の訪れ (創元推理文庫)
Paul Doherty
4488219039



[Amazon]


読了。

一四世紀後半のイングランド。ロンドン塔を舞台に起きる予告連続殺人を国王の検死官と托鉢修道士のコンビが捜査する、時代ミステリシリーズの第二作。

大酒飲みで豪放磊落、小柄な奥さんをこよなく愛する大男ジョン・クランストン検死官と、郊外の貧しい教会で暮らす星好きで生真面目なアセルスタン托鉢修道士。

ふたりの活躍する時代ミステリの第二弾は、舞台があのロンドン塔です。
まだ歴史的な数々の処刑逸話は生まれていなかったみたいですが、それでも十分に血塗られた経歴を重ねてきたロンドン塔。

その城主であったラルフ・ホイットン卿の死から話は始まります。

このシリーズの魅力は中世都市のリアルな日常描写だなーと思う。
今回もにおいたつように細々と徹底的にリアリティーを重視した書き込みがなされています。
中世のロンドンの下町が現代から見るとどれほど不潔で鼻が曲がりそうな街だったか、自分が歩いているような臨場感でつぶさにわかります(苦笑。

とはいうものの、この時代にはまだ不潔という概念は無かったらしいんですけどね。
病気の感染などの科学的な仕組みなど知られていなかった時代は、汚物もそれほどは嫌がられていなかったみたいです。
穢れというのは精神的な概念で物理的なそれではなかったというところでしょうか。

それでも臭いのは臭かっただろうから、それを香水などでまぎらわすなどはしていた模様ですが。

それに読んでいくうちに、高級住宅街はゴミまみれというわけではなく、きちんと掃除がゆきとどいていたことがわかってホッとしますw

と、リアルな中世都市ロンドンでいろんな居酒屋をハシゴして、ロンドン塔の内部もいろいろ観光できて(?)、貧しい教会の実態に関するルポルタージュ(?)もあり、その上でドラマティックな連続殺人を追うストーリーが展開する、まったく飽きの来ない楽しい読書でした。

十字軍関連のエピソードもあります。

しかしやはり私の興味はひとびとの日常に向かいがちですね。
教会のまわりをうろついていててアセルスタン修道士のささやかな憩いになっている猫、ボナベンチャーなんかがもっと出てきて活躍してくれるといいのに、とか思っているのでした。

シリーズはつづきが出ている模様です。

神の家の災い (創元推理文庫)
Paul Doherty
4488219047

『イオニアの風』

イオニアの風
光原 百合
4120040445



[Amazon]


読了。

ギリシア神話をベースに人と神の関係を明るめに描く古代ファンタジー小説。

『銀の犬』でケルト風ファンタジーを書かれた光原百合さんの新作は古代地中海世界が舞台。

ギリシア神話の神々が行う人間に対する賭けをトロイア戦争とオデュッセイアを軸に描いています。

第一部はスパルタの女王ヘレネとトロイアの王子パリスの不倫からギリシア諸国とトロイアの戦争になるというトロイア戦争そのもののストーリー。

第二部はオデュッセウスの息子テレマコスとパイキアの王女ナウシカアが主役で、いにしえの怪物エンケラドスを倒すための戦い。

それらを対象に、神々が人間との関わりを断つかどうかを賭けるというストーリー。

完全に伝説になぞっているわけではなく、ストーリー展開に沿った改編があちこちに散見されます。カッサンドラがいない!

文章はとてもよみやすかった。熱出しながら読んでたわけですが、苦にならなかった。分厚いハードカバーであることを忘れさせる、あかるさと軽妙さがなんともいえません。

登場人物もラノベほどではないにしろキャラクター立っていて、脳裏にうかんでくるのがアニメ絵だったりして。

神々の言葉遣いすらすこしくだけすぎかなと思われるくらい明るくて、でも違和感がないのは、これが燦々と陽光のそそぐ地中海を舞台にしているからじゃないかな、などと感じました。

そのあたり、『銀の犬』の幽玄を期待していた私は当てが外れたのですが、読み応えはたっぷり。

人間の意志は自分の選択を自分のものと自覚して運命を切りひらいていくためのものである、という首尾一貫したテーマのもとにくり広げられるストーリーにぐいぐい惹きつけられて読みました。

ただちょっとバランスが悪いかなと思いました。著者が書きたかったのはぜったいに第二部のほうだと思うしそちらのほうが分量もあるのに、第一部が戦争なんて派手なものを扱っているせいか、そちらのほうがなんとなく重たいんですよね。密度が濃いというか。

いっそ、第二部だけでまとめてしまえばいいのにと思いましたが、この前日譚がなければ全体をまとめる神々の賭けとしては弱いしなー。

イタケのオデュッセウスのエピソードが読んでいていろいろとても楽しいので、それがないとなると寂しいし。

考えてみればこの話はオデュッセウスの血筋にかかわるものたちの話でもあるのですよね。

伝説を読んだときには、戦争にかり出された後、なかなか故郷に帰れないオデュッセウスがとんでもないまぬけと見えたものですが、ここではかなりのイイオトコです。

人間たちを陰に日向に応援するヘルメス神も楽しかったし。

……と、ここで気づきました。
そうか。第二部よりも第一部のほうが主役が大人で、大人なテーマを扱っているから重く感じるんだ。

第一部が不倫のはての責任のとり方なのに、第二部が親離れと自分探しがテーマじゃ、それは拍子抜けする。対象年齢が下がってるんだもの。

というわけで第一部はラノベ風の、第二部は児童文学の香りを放つ、古代ギリシアファンタジーだったなあと、思いました。

面白かったです。

でも私は『銀の犬』のほうが好みですw

銀の犬 (ハルキ文庫)
光原 百合
4758433410

更新を延期します

本日更新を予定していた創作サイトですが、管理人体調不良に尽き無期延期します。

先週更新後に熱を出し、それ以来ずっと寝込んでいて更新作業がまったく進んでおりません。
体調がもどってから作業をし、終え次第再開いたします。

申し訳ありませんが、それまでお待ちいただければと思います。
……待ってる人がいるのかどうかわかりませんけど(汗。

『ザナドゥーへの道』

ザナドゥーへの道
中野 美代子
4791764838



[Amazon]


読了。

近代以前に東洋と関わりを持った西洋人について書かれたエッセイ風歴史小説の短篇集。

これはたいそう面白く、また興味深い本でした。
ものすごい情報量で取りあげた人物をとりまく時代と世界を描きつつ、詩的な雰囲気もあるという、希有な作品だったと思います。

西洋人が見て受けとめた東洋は、やはり西洋人の文化によって解釈されたものなので、ちょっととんでもな世界だったりするのですが、そのへんが異文化接触の際に起きるさまざまなパターンとしていろいろ面白い。

また西洋人が東洋にどんなものを求めていたかという背景には、西洋人の置かれている政治的な状況などが鏡のように反映していたんだなーということもわかります。

東洋に住まうキリスト教徒の王プレスター・ジョンの伝説は、何故こんな荒唐無稽な話ができあがったのかずっと不思議だったんだけど、今回その謎がすこし解けたような気がしました。

以下に目次を記しておきます。


1 亡国の大使 ミカエル・ボイム
2 碑文のなかの旅人 景教僧アロペン
3 敦煌蔵経洞 ポール・ペリオ
4 南海の兄弟島(レ・フレール) ギュスターヴ・ヴィオー
5 探索島(ルシェルシュ)の樹 ピーター・ディロン船長
6 異教徒たちの帝国 ギョーム・ド・ルブルク
7 月の上からペキンを見れば ミラ・チョ・チョ・ラスモ
8 肘掛け椅子(アームチェア)の風景画家 トマス・アローム
9 ザイトン双子塔 ポルデノーネのオドリコ
10 二都物語 プレスター・ジョン
11 エトナ溶岩流 石工のジューリオ
12 シカゴ自然史博物館 ベルトルト・ラウファー

関係略図





毎回感じることだけど著者の博学ぶりには賛嘆の念を禁じ得ません。
なんでこんなにいろいろ識ってるんだろう。というか、いったいどれだけの本を読んだらこれだけの知識が得られるんだろう。

その本には中国語英語はもちろん、ラテン語ギリシャ語あたりまで含まれていそうな気配がひしひししてしまう。

もちろん、異文化を学ぼうと思えば言葉から始めなければならないのは当然でして、であるから作中に出てくるベルトルト・ラウファーなんて語学の天才などが活躍するのでしょうけど。それができないのにこうして専門家がかみ砕いてくれた作品からエッセンスを味わうことができるのは大変ありがたいことだと思います。

そんな多彩な知識をもって描き出される歴史上の人物――軍人や宗教者、知識人から商人、市井の職人まで――の、とある時代のとある情景がくっきりとうかびあがる一瞬がたいそう印象的でした。

そして、西洋人が見た東洋を現代の日本的な立場からまた語ってしまうという、幾重にもかさねられていく視点の重層性が面白かったです。

知的な雰囲気に満ちた叙情性ってこういうのかなと思いましたw

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第二回。

今回は少し長めです。
次回はおそらく一週間後くらいになる予定です。

『バガボンド 3』

バガボンド(3)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286444



借りて読了。

江戸時代の初期に活躍した剣豪・宮本武蔵の生涯(?)を臨場感たっぷりに描く、時代コミック。シリーズ第三巻。

前巻でさまざまな行き違いから故郷と決別した武蔵(たけぞう)。
新免武蔵の名を捨てて、ここに宮本武蔵が誕生します。

で、何をするかというと、やはり「天下無双をめざす」んですな。
そしてそれを剣の道で実現しようというわけです。
ようするに、俺が一番強いんだ! ということを公言したいんだと思うけど、それを他人をのして証明しなければならないあたりが男の子ってヤツなんだろうな。

自分が強いことは自分がわかってりゃいいことなんじゃないかと思うのですが。
それは悟りの境地に達した引退者の意識ということなのか。

生き物の雄としては縄張り争いとか集団での地位へのこだわりとかが本能に組み込まれているのかなあ。

とにかく京の都に出て道場破りを試みる武蔵です。
相手は天下一の吉岡道場。
ここでの出来事がこの巻のすべて。で、まだ終わってない模様です。

そして武蔵を裏切って女と遁走した又八君が再登場。
かれはもうひとりの武蔵として今後もへたれっぷりを披露してくれるのかなと感じています。

血湧き肉躍る展開でした。
面白かったです。

余談。
前の感想に、リアルな絵なのにどれだけ血みどろになっても気持ち悪くならないと書きましたが、その理由はなんだろうと考えておりました。
もしかすると、線に色気が少ないからかなー。

こんなところで例としてあげていいものかどうかわかりませんが、私、手塚治虫がすごく苦手なのです。手塚マンガのグロい表現はちっともリアルじゃないのにものすごく気持ち悪い。あれって手塚マンガの線がエロいからなんじゃないかと、ふと思ったのでした。

で、井上雄彦の線にはエロさが少ないのかなと思いいたったというわけです。

ほんとにまったくの余談でした(汗。

バガボンド(4)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286584

『伯爵と妖精 白い翼を継ぐ絆』

伯爵と妖精 白い翼を継ぐ絆 (コバルト文庫 た 16-42)
谷 瑞恵 高星 麻子
4086013452



[Amazon]


読了。

ヴィクトリア朝のイギリスを舞台にした妖精博士の女の子とタラシ伯爵のファンタジックロマンス。シリーズ二十冊目。


妖精国への地図を手に入れたリディアとエドガーは、地図を読み解くための鍵を求めて日々奔走していた。そんなある日、リディアはエドガーがひそかに“レディ・K”なる人物の調査をしていたことを知る。メースフィールド公爵夫人のカントリーハウスの集まりに招かれたふたりは、そこでシルヴァンフォード公爵家の唯一の生き残りキャスリーンに出会う。キャスリーンには公爵家を継ぐ資格はないが、彼女が産む男子はシルヴァンフォード公爵家の跡取りとなる。リディアは“レディ・K”がキャスリーンであり、エドガーは本来自分が受け継ぐはずだった生家のシルヴァンフォード家に未練があるのではないかと感じる。しかもキャスリーンは婚約者がいるというのにエドガーに熱心な視線を送っているのだった。



ふーん、そうきたかーという感じの二十冊目です。
新婚さんなのにリディアの不安は尽きませんねえ。
今回はエドガーにも同情の余地がありますうえ、リディアの繊細すぎる感受性や持って回った思考回路に少々苛立たしい気持ちになったことは否定できません。
もっと強気になっていいのに……と。

だからメースフィールド公爵夫人に喝采!
ペット好きの三姉妹にも感謝!

ぐうたらなにわか家臣のフランシス、いつのまにかギャグ担当になっていて悲劇を背負った人物だということを忘れます。

レイヴンはあいかわらずレイヴンでニコのために一生懸命。
今回のニコはちょっと役立たずでしたが、そのぶん侍女のケリーちゃんがけなげに奮闘しています。対レイヴンでもw

最初から最後まで楽しみました。

が、残念だったのはファンタジー要素がどんどん物語に占める割合を低くしているところ。情景描写も減ってるし。
今回は白鳥乙女だったのですが、ほんとにただの地図のおまけみたいでちょっと哀しい……。

私にとってのこのシリーズはロマンティックファンタジーからファンタジックロマンスに変化しかけております。

面白いことには変わりないんですけどねw

ところで、まったく出番のないケルピーが堂々と登場人物紹介にのさばっているのは何故(苦笑。
レイヴンのお姉さんは、このままいなくなっちゃうわけじゃないですよねえ(汗。

『ピアノの森 12』

ピアノの森 12 (モーニングKC (1509))
一色 まこと
406372509X



借りて読了。

社会の底辺に生まれ育ったピアノの天才児・一ノ瀬海とかれをとりまく人びとの人間模様を描く、音楽コミック。

海の満を持してのコンクール出場がなぜ無名の場だったのか、が判明する第十二巻です。面白かったー!

阿字野先生の音楽的背景がこれだけ明らかになるのはおそらく初めてですね。
阿字野先生は失った自分の夢を海に託したのだと思えますが、阿字野先生のえらいところはけして海を自分の身代わりとして見たてていないところです。海には海の音楽があり、海自身の道を自分で選び取って欲しいと思っている。

ただ、それが徒になって海は阿字野先生の敵討ちに燃えちゃうんですけどねえ。
阿字野先生の師であるセロー先生も、けっこう感情的なおかただ……(汗。

そしてふたたび相まみえる雨宮君。
かれはいつのまにここまでライバル心を育てていたのでしょう。
海が雨宮君のことをライバル視するような人間だったら、雨宮君はここまで海を嫉妬しなかったんじゃないかしらんと思う。

雨宮君は海に勝ちたいんじゃなくて、海にライバル視されたいんじゃないか。
海にライバルとして認められることがイコール自分の存在証明になっちゃってるのかなあと、感じてしまいました。

その雨宮君の気持ちが痛いと感じる雨宮父の心中がやるせません。
今回このシーンが一番印象的でした……。

始まったばかりのショパンコンクール。
これからどう展開していくのか、どきどきしています。

一緒に予選に出た平田君、いいキャラしてるなあ……。
もう出番はないのか知らん(笑。

『乙嫁語り 1』

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
森 薫
4047260762



読了。

十九世紀カスピ海近くの草原を舞台に、十二歳の夫と嫁いできた二十の妻とのほほえましい日常を、遊牧生活から半定住、定住へと生活を変化させていく遊牧民の暮らしとともに描く、時代コミック。開幕編。

十九世紀の大英帝国を緻密に再現した『エマ』の作者さんの新作はシルクロードでした。

話を聞いたときは驚きでしたが、実際に目にしてみるとやっぱり、うわあすげえなー! でした。
なにこの躍動感は、馬の疾走感は、生き生きとした新妻の愛らしさは!

それにやっぱりすごい描き込み!
細かい装身具までびっしりと丁寧に描いてあるのに脱帽。でもぜんぜん画面がうるさくないのもすごい。

この方、絵を描くことに相当思い入れのある方なんだなあとしみじみしました。
好きなんだなあ。

中で大工のおじいさんが木で浮き彫りをつくってるシーンがあるのですが、そこで削り出されていく紋様には溜息が出ました。

キャリアを積み重ねていくうちに絵が記号になっていってしまうマンガ家さんは多いですが、この方は絶対にそうならないだろうなー。

絵のことばかり書いてしまいましたが、お話は小さなエピソードを積み重ねて雰囲気をつくっていく、自然ともりあがっていく展開で、これもたいそう好みでした。

ヒロインのアミルちゃんの野性的な天然さんキャラがすごく可愛い。
普段はおっとりしているのに矢を射るときの鋭い目つきとの落差がたまりませんw

年下の弟みたいな夫、カルルクくん。
まだ幼いけどなかなかいい男に成長しそうで楽しみです。

で、思ったのですが……。
もしかして『エマ』のふたりも姉さん女房だったのかも……。

しかし私はエイホン家のバルキルシュおばあさんの気っ風の良さにめろめろです。
かっこええ……。
アミルちゃんが歳を食ったらこうなりそう。
ということはバルキルシュばあちゃんはアミルみたいだったのか?(汗。

つづきを楽しみにしています。

『明治の音 西洋人が聴いた近代日本』

明治の音―西洋人が聴いた近代日本 (中公新書)
内藤 高
4121017919



[Amazon]


読了。

明治時代の変化しつつある日本を訪れた西洋人たちが、そこにあふれる音をどのように感じ受けとめていたかをかれらの著作からさぐる、異文化接触の記。

この本はたいそう興味深かったです。
明治時代の日本にやってきた西洋人たちが日本の音をどう感じたか、というのがテーマなのですが、当然として西洋の文化で形成された音感覚が日本の音にどう反応したか、異文化の接触によって起きた反応を記すことになります。

聴覚は視覚よりも保守的なのだそうで、その反応もかなり過激なものになりがちだとか。
しかしそれも個人の音への資質や経験に依るところも大きく、たんなる西洋人の反応としてひとくくりには出来ないものであることもあきらかにされます。

そして日本人をどう認識しているかもその反応には如実に反映されているのですね。

日本人に大きな距離と優越感を抱き、幼稚性を見いだす者の場合は、日本で体験する音のほとんどが騒音に聞こえ、日本文化に共感し日本人に親しみを持つものは、日本の音に格別なものを聴きとってしまう。

音に対する感受性は日本に来る前から育まれているものなので、やはり個人的な資質が大きくものを言うようなきがしました。

しかし、そんなものは持ちあわせないもののほうが圧倒的に多く、さらに日本人に大きな違和感を持つもののほうがさらに多い明治という時代において、日本人は異質である、日本の音も異質であるという見聞のほうが多くつたわり、それが西洋全体の認識を形成していったであろうことは想像に難くない……といったところでしょうか。

下に目次を記しておきます。


 はじめに

序章 幕末の音風景
 陽気な喧噪 江戸を象徴する音 西洋音楽の浸透 好意的な反応

第一章 騒音の文化――イザベラ・バードとエドワード・モース
 1 バードが悩まされた音
  二人の訪問者 バードが記述した音 宿屋のノイズ 甲高い声 母音への嫌悪 フェリックス・レガメーの場合

 2 モースに起こった変化
  好奇心を掻き立てる音 労働者たちの歌と時間 嗅ぎとった幼稚性 爽快な街中の音 音楽への反応 理解する方向へ 交差点としてのモース 日本人が演奏する西洋音楽 時代を記した貴重な耳

第二章 蝉と三味線――ピエール・ロチ
 1 「ノイズ」から「音」に変わるとき
  日本を素材にした三つの作品 無関心・失望・冷笑的トーン 『お菊さん』の音風景 小説の縦糸をなす二つの音 三味線が暗示するもの 「クリザンテュム」から「キク」へ 歌うことをやめた蝉と楽器 恋愛劇への予感 音が内的ドラマを明らかにする

 2 欧化への冷めた「耳」
  『秋の日本』 鹿鳴館での強い違和感 現実に引き戻す西洋音楽 十五年後の長崎 ジャポニスムと黄禍論の間 三味線への「身震い」 音楽の危険な力

第三章 〈共鳴〉のもつ意味――ラフカディオ・ハーン
 1 自然の音への温かい聴覚
  音に敏感だったハーン ロチとの比較 古代ギリシャ文学の影響 小動物たちの鳴き声 夜の声 夜の領分としての聴覚 幽霊としての音 「門つけの歌」 『怪談』の音 テキストに残された日本語の音

 2 芳一の耳としてのハーンの耳
  耳なし芳一 声の模倣 語る者の務め 語り手としての芳一 海から聞き取った音 荒海との呼応 虫の声は一つの波

第四章 始原の音を求めて――ポール・クローデル
 1 ものの「あー」はどこに?
  修練の場としての日本 静寂を背景にした音 ものの「あー」を知ること 動物的で文字のない音 始原の痕跡を探して

 2 伝統芸能の音楽から得たもの
  音がつくる演劇的空間 舞台空間での拡がり 空無の変貌 能における笛・打楽器・足拍子 感情・叫びの代弁者である音楽 ギリシャ悲劇のコロスへの接近 水の音のイメージ 海の不在――ハーンとの対比 水滴の音 水滴―池―内海 信仰との関連性

終章 変化する音環境
 正午の号砲 都市から地方への浸透 音の支配する空間 谷崎潤一郎の嫌悪 故郷喪失と異国憧憬 蓄音機の影響 ジャン・コクトーが感じたもの 日本原産の音へのこだわり

 あとがき
 主要参考文献



読んでいて感心したのはイザベラ・バードで、このかたはこんなに日本の音に嫌悪感を抱きつつ、よくもまあ奥の細道の踏破なんてしてのけたものだと思います。プライバシーが守れない、薄い仕切りしかない宿で睡眠もよく取れないままに。なにが彼女を駆り立てていたのか、興味があるなあ……。読んでみようかなと思いました『日本奥地紀行』。

ピエール・ロチは寡聞にして存じ上げませんでしたが、文学者がすなおに自分の体験を創作に活かしただけでも偏見を植えつける大いなる要因をつくってしまうのだなあと感慨深かったです。人間のすることだから偏りがあるのは仕方ないのでしょうけどね。また、そういう日本像のほうが西洋的にニーズが高かったから広まったのだとも言えるし。

ラフカディオ・ハーンは、やはりとても共感できる文学者だなと再確認いたしました。かれの視力が弱く聴覚に敏感であるという資質も耳なし芳一に共鳴する一因だったんだなーということもよくわかりました。

ポール・クローデルはカミーユ・クローデルがらみで外交官としてだけは知っていたのですが、信仰者で詩人で舞台演劇にもかかわりがあったということは初めて知りました。冒頭に挙げられているかれの詩にはとても惹かれた。ハーンが多神教の感覚で日本を受け入れたのに対して、かれはつねに唯一の神との関連でものを考え、突き詰めていく。その姿はとても純粋だと思いましたが、あまりにも形而上学的すぎてちょっと疲れました。

でもかれにとって日本は大切な研鑽の場になったようで、それはとても喜ばしいことだと思います。

最後は現代へとつづく音環境のことにも触れられています。

たしかに、いまは音があふれかえり、音楽もあふれかえっていて、一つの音に対する重みが昔よりかるくうすっぺらくなってしまっているなと思います。
いまでは音は共同体の共有体験ではなく、ごく個人的な閉鎖空間を作るものになりかけているような……。

レコードに針を落とす瞬間のドキドキ感ですら遠いいま、昔のひとびとがどれほどの神経を傾けて一つの音と向かいあっていたかは、想像するのが難しいですね。

でも、私はいま、そのことに興味があるんだなあとあらためて気づかされた本でした。

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第一回。
おおよそ七回から八回くらいの連載となる予定です。


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