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ごく個人的な2009年ベスト

2009年に読んだ中から個人的に面白かった&好きな本です。2009年に読んだというだけで、刊行されたのは違う年のものも多いです。というかほとんど違います。順番はたぶん読んだ順で他に意味はありません。

ちなみに2009年に読んだ本は167冊でした。


・須賀しのぶ『アンゲルゼ』全四巻。コバルト文庫。

肉体的にも精神的にも極限に追い込まれていく少年少女たちの壮絶な青春SF小説。
「流血女神伝」といいこのシリーズといい、作者さんの情け容赦のないリアル&ヘビーなジェットコースター展開には毎回悲鳴をあげさせられっぱなしです。

シンプルに言えば少年少女の成人通過儀礼小説ということなんでしょうけど、ここまで重たくシビアな現実を突きつけられないと、現代の精神には響かないのかなあとか考えさせられてしまいますが、ほんとうに面白い小説はそんなことは忘れさせてくれる。

物語世界の現実のつらさ深刻さと登場人物の痛みと哀しみが相乗効果でのしかかってきて、息も絶え絶えな感じで読み切りました。

重量級のお話でした。そしてこのハードなお話にいうのも何ですが、とてもよい青春小説を読んだと思いました。
青少年だけじゃなく大人たちもきちんと描かれている青春小説です。

お金があったら補完本(本編に入りきらなかった分を作者さんが私的に刊行されている)を買うのになあ……。


アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭 (コバルト文庫) アンゲルゼ―最後の夏 (コバルト文庫) アンゲルゼ―ひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫) アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)


・パトリシア・A・マキリップ『茨文字の魔法』。創元推理文庫。

今年も東京創元社さんからマキリップの本が複数刊行されました。マキリップ好きとしてはこのままどんどん出してください、と声を大にしてお願いしたいところ。
そんななかでも一番面白かったのがこれ。
落ち着いた地味な雰囲気の滑り出しながら、気がつくとあれよあれよとどんどん予想外の所に連れていかれてしまう、じつにファンタジーらしいすっ飛びかたをする、魔法成分に満ち満ちた物語です。
やっぱりマキリップはいい! 最高にいい!
これもまた私の大好きな一冊になりました。

茨文字の魔法 (創元推理文庫)


・ケイト・コンスタブル『トレマリスの歌術師』全三巻。ポプラ社。

歌術という歌による魔法の力を描き出した異世界ファンタジー。
これも基本は少女の成長譚で、さらに世界と人との調和を歌いあげる物語です。

シビアな展開、個性的な登場人物たちそれぞれの事情と関係性、巨悪との戦い等々が、物語世界の独特さとそれをさりげなく描き出す描写。

異世界ファンタジー読みにはうっとりできるシーン続出の、たまらないシリーズでした。
とくに歌術による魔法の発現シーンには毎回ゾクゾクしてました。

第一巻が翻訳者浅羽莢子さんの最後の仕事となったことも印象深いです。

トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手 トレマリスの歌術師〈2〉水のない海 トレマリスの歌術師〈3〉第十の力


・菅野雪虫『天山の巫女ソニン』全五巻。講談社。

朝鮮半島っぽい異世界で、巫女として落ちこぼれた少女が偶然に王子の側仕えとなり、社会のありようや国同士の関わりなどに触れて成長していく物語。

文章はやさしく穏やかで児童書だなあと感じますが、とても深く重く現実的なことを扱ったお話です。『彩雲国物語』にちょっと似ているかもと思っていましたが、上橋菜穂子さんの作品と通じるところもあるかなあと今思いつきました。

児童書なのでラブ度はほぼ皆無ですが、物語優先と思っていた話のなかでキャラクターがだんだん立ちあがり個性を発揮してきたりするのを読むのは楽しかったです。そのあたりを楽しめるのは大人の読み手だと思うのですw


天山の巫女ソニン 1 金の燕 天山の巫女ソニン  2  海の孔雀 天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星 天山の巫女ソニン(4) 夢の白鷺 天山の巫女ソニン(5) 大地の翼


・フィリップ・リーヴ『アーサー王ここに眠る』。東京創元社。

アーサー王ここに眠る (創元ブックランド)


魔法使いも英雄もいない現実、でもひとびとの心のなかでそれは生み出されていく。とある語り手の言葉によって。

英雄アーサー王という存在がどのようにして人々の心に植えつけられていったのかを、現実と夢の狭間に描き出す、とても個性的で不思議で魔的な物語でした。

悲惨な現実を生きているからこそ夢や理想を見ていたいというひとの心と、それを巧みに利用する吟遊詩人の言葉の力の相乗効果。

そういう点からみれば、これは言葉のもつ力の物語だったかもしれません。

理想を求める吟遊詩人の夢を実現化する言葉は、汚い現実よりもひとびとに受け入れられやすかったのだろうなあとか、いろいろと考えさせられた小説でした。

このアーサーと吟遊詩人の関係って今で言えば芸能人と広報係みたいなものかもしれない……とかいうと、それこそ夢ががたがたと壊れますね、はい、もう言いません(汗。

とはいえ、その汚い現実があるからこそ、夢はひときわ輝くのですよね。


・冲方丁『スプライトシュピーゲル』富士見ファンタジア文庫。『オイレンシュピーゲル』角川スニーカー文庫。

近未来のウィーンを舞台にしたSFバイオレンスアクションシリーズ。

テロ事件の解決に当たる公安と警察二つの組織。そこに所属する機械化義肢により武装化した少女たちの、孤独と痛み、辛い過去と厳しい現実を、マシンガンの掃射のように叩き出される言葉で描く、熱くて深くて緻密で複雑なのに疾走している、ふたつでひとつのシリーズです。

いかにもなライトノベルキャラクターが、ものすごく個性の強い文章による猛スピード展開で動きだすので、最初はなかなかなじめなくて混乱しましたが、これが慣れるとだんだん心地よくなって、癖になってきちゃったのです。

そしていかにもと思われたキャラクターたちが次第に輪郭だけじゃない、厚みを持った人物として感じられだしたら、もう、やられたと思うしかありません。

物語世界の背景は、悲惨な近未来です。
そこにあるのは大国間の勢力争いの影響で大量に生み出された失敗国家の数々とそこから流れ出す難民たち、そして社会からはじき出されて惑う貧困層。

その中でももっとも力なく弱い存在である少女たちがこの物語の主役であることには、ラノベ的だけではない意味があると私には思われます。

彼女たちをとりまくさまざまな人々のクールな描写、どんどん複雑化、錯綜化して、規模を拡大していく事件とその背後にある謎の組織。

ストーリーだけなら奇想天外ですが、この作品にはそれをリアルと感じさせるだけの膨大な情報と細部がてんこもりです。

いや、とにかく、面白いのです。
ちょっとというかかなり血みどろ(バイオレンス)ですが、とても面白い。
最先端のアクションビルドゥングスロマンを読んでいる気分のいっぽうで、最近は読みながら『サイボーグ009』を思い出しちゃったりするんですよ、なんでだろう?

現在は『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』ふたつのシリーズが合流する完結編『テスタメントシュピーゲル』が刊行開始されています。

スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8) スプライトシュピーゲル II Seven Angels Coming (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9) スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10) スプライトシュピーゲルIV  テンペスト (富士見ファンタジア文庫)

オイレンシュピーゲル壱 Black&Red&White (1)(角川スニーカー文庫 200-1) オイレンシュピーゲル弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!(2) (角川スニーカー文庫 200-2) オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder (3) (角川スニーカー文庫 200-3) オイレンシュピーゲル肆  Wag The Dog (角川スニーカー文庫)



・西魚リツコ「暁と黄昏の狭間」シリーズ全六巻。徳間ノベルスedge。

マンガ家だった作者さんの、西欧風でもなくアジア風でもない、独特な世界を舞台にした異世界ファンタジー。

このシリーズはなんとなく読み始めたのですが、巻を追うごとに面白くなっていきまして、最後には壮大で重厚なエピックファンタジー作品になりました。

私は、ストイックな話運び、ストイックな登場人物描写、どこからどこまでも物語進行のために奉仕する描写でこれだけの物語世界を描き出す、作品的にシビアでタイトなところに痺れました。

いまはキャラクター小説が盛んですが、物語世界そのものを描こうとする小説はファンタジーには在っていいと思うのです。ファンタジーだからこそ、かな。

後半の阿鼻叫喚、驚天動地の展開にはなんどもたまげました。
驚きの連続の物語というのも、読んでいて楽しいものです。この楽しさにはもれなく悲鳴が着いてきました(苦笑。

まだ荒削りなところはあるけれども、それをさしひいても読後にものすごい物語を読んだという感慨に耽ってしまう本は、そうゴロゴロと転がってはいないものだと思うのです。

暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書 (トクマ・ノベルズedge) 暁と黄昏の狭間〈2〉薬王樹の書 (トクマ・ノベルズEdge) 暁と黄昏の狭間〈3〉角獣の書 (トクマ・ノベルズEdge) 暁と黄昏の狭間〈4〉甲蛇の書 (トクマ・ノベルズEdge) 暁と黄昏の狭間〈5〉月虎の書 (トクマ・ノベルズEdge) 暁と黄昏の狭間VI 鳳船の書 (トクマ・ノベルズEdge)



・アーシュラ・K・ル=グウィン『ラウィーニア』。河出書房新社。

個人的ベストのなかでももっともベストだったのは、たぶんこの本です。
ギリシア叙事詩『アエネーイス』を元にした古代ファンタジー。
リアリティーある現実と夢とが等価で交錯し、ときに現在と過去と未来もが入れかわる、夢の中で見た世界のようでいて血なまぐさくもあるという、両極端の雰囲気を併せ持った格調高い作品でした。

さすがル=グウィン。
と、感想にも書いたっけ。

語り手がいるのに物語の枠をほとんど感じさせない臨場感にあふれる描写と、それを可能にする穏やかで技巧を意識させない文章がかなり好きです。

語り手の人生に、夢の中で丸ごと触れているような心地になりました。
読後感もしみじみとしていて、いいなあー、と思える本でした。

ラウィーニア



……語りすぎて疲れました。
年ベストでこんなに語ったのは初めてかも。
それだけ面白い作品揃いだったということで、2009年、私の読書生活は大変に幸せだったということなんでしょう。

2010年もあたらしい面白い本に出会えるといいなあ。

以下はその他の印象に残った本です。

ロビン・マッキンリイ『サンシャイン&ヴァンパイア』、ジャスティーン・ラーバレスティア『あたしと魔女の扉』『あたしをとらえた光』『あたしのなかの魔法』、シャンナ・スウェンドソン「(株)魔法製作所」シリーズ、初野晴『1/2の騎士』、ローズマリ・サトクリフ『辺境のオオカミ』『運命の騎士』、ジョゼフ・ディレイニー『魔使いの戦い』、恒川光太郎『夜市』『草祭』、妹尾ゆふ子『翼の帰る処2 鏡の中の空』、パトリシア・ブリッグズ『裏切りの月に抱かれて』、中野美代子『ザナドゥーへの道』、万城目学『鹿男あをによし』、クラーク・アシュトン・スミス『ゾティーク幻妖怪異譚』、ヴォンダ・N・マッキンタイア『夢の蛇』、谷瑞恵『伯爵と妖精』シリーズ。




ごく個人的な年間ベスト一覧
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『ピアノの森 14』

ピアノの森 14 (モーニングKC)
一色 まこと
406372610X



借りて読了。


恵まれない環境に生まれ育ったピアノの天才児・一ノ瀬海とかれをとりまく人びととのさまざまな人間模様を描く、音楽コミック。シリーズ第十四巻。


次第に海の物語ではなく、海と彼らとピアノの物語となってきた『ピアノの森』です。
海のこれからがどうなるという一点集中のストーリーではなく、海と出会ったそれぞれの運命を見まもるような、群像劇になってきたかなあという感じ。

物語はショパンコンクールの本選が始まったところ。
個性的な人物が個性的なピアノ演奏とともにつぎつぎに登場してきました。

前巻で阿字野先生の再来かと疑うような演奏をしたパン・ウェイだけでなく、華やかな存在感を放つポーランドの二十五歳とか、双子の韓国人とか、まだまだ現れそうな勢い……。

でもやはり別格の存在感を放つのは雨宮君。
海という傷が痛くて痛くてたまらないといったようにピアノを弾いている雨宮君。けれどそれがいまの雨宮君そのもの。海のいないかれは成り立たないというくらい存在そのものに海を刻みこんでしまったかれは、このさきも海を受け入れない限り苦しみつづけていくんだろうなあと思わざるを得ないシーンでした。

ああ、痛いよ。
でもその痛みが、昇華されさらに高みに到達させる原動力となりうるのが芸術なんですねえ。

テクニックはもちろん大事だけれど、それ以上のものをあらわして人をうごかすのは、やはり魂の底からの叫びなんだなあ。

芸術というものはどうしようもなくやむにやまれずに生まれるものなんだなあと、あらためてしみじみと感じてしまいました。

平穏無事に人生を送りたい人、送れる人がするものではないというような気が最近しています。
古代からの芸人の系譜を思うとほんとうにそう思う。

なんでこんなことを考えているのかなー、私は(苦笑。

ショパンコンクールはまだまだつづきます。
というか、コンクールが終わるときがこの話の終わるとき……なのだろうか。

ピアノの森 15 (モーニングKC)
一色 まこと
4063726754

『月虎の書 暁と黄昏の狭間V』

暁と黄昏の狭間〈5〉月虎の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
4198508089


[Amazon]


いただいて読了。


地に足の着いた物語世界とハードでスリリングな展開でぐいぐい読ませる、シリアスで重厚な異世界ファンタジー。シリーズ第五巻。



世界を巡る生命の力ワンとその力を操る魔呪師ジーヴァの存在する世界は、人間がワンを利己的に操り消費しつづけたために調和がみだれ始めている。その最先鋒である組織ヘン=ジャックの暗躍によって運命を大きく狂わされたドムオイの鍛冶屋の娘セフルは、騎士ギルダン・レイとともに敵国リヴォの参謀総長ケリード・ゼメスタンによってリヴォの都リアナへと連行された。表向きは賓客として遇されるふたりだったが、ヘン=ジャックへの憎悪を募らせるギルダン・レイはかれらと通じていたケリードとリヴォに対する復讐を企てようとする。一方セフルはかつてドムオイを危機に陥れたオラの密偵イリエス・カザン伯爵夫人の姿をみつけ、不安を募らせる。




なんなんでしょう、この情け容赦のない怒濤の展開!
「流血女神伝」なみかもしれない、いやキャラサービスがまったくないストイックさで、さらに容赦なしかもしれない。

すでにドキドキワクワクを通りこし、ハラハラビクビクしながら読んでました。
とくに後半は次の局面が現れる度に阿鼻叫喚。
もうページを繰る手が止まりません。

だれが最後まで生き残るのか、不安で不安でしようがないなんて。
なんという厳しい物語なのか。
登場人物の誰にも甘えを許さず、作者自身も脇目もふらずに目的地に向かって一直線、という一冊でした。

この内容ならばあと100ページ多くても私は読むと思います。
なのに本当に必要な部分だけを書いて、すこし駆け足気味かと思われるところもありましたが、この分量にまとめてしまうところがすごい。

ギルダン・レイ卿が火の神ソーンの憎悪と共鳴するあまり次第に視野狭窄に陥っていくあたりの展開は、まさに悲劇によって暗黒面に墜ちていく騎士。

その原因と行き着く果てをうすうす悟りながら、愛する人を見まもることしかできないセフルの、もどかしさと無念と無力感。

さらには災いを振りまくサド女のように見えてじつは……だったカザンさんとか、いままで一方的に悪役としてしか出てこなかったヘン=ジャックの実情とか、いろいろと興味深いエピソードがてんこもりでした。

ひー、このあといったいどうなるんだ~~!

期待の叫びを心のなかで叫びつつ、続きの完結編を読みたいと思います。

そういえば、ギルダン=レイ卿。
大胆行為に走っておきながらなんの心情吐露も説明もしてないとは……言葉を惜しむにもほどがあります。

責任感でだと思ってるセフルが哀れなり……。


暁と黄昏の狭間VI 鳳船の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
4198508402

『鋼の錬金術師 24』

鋼の錬金術師 24 (ガンガンコミックス)
荒川 弘
475752742X



借りて読了。


近代的な科学技術とともに錬金術の発達した異世界で、禁忌を犯したために悲劇に見舞われた兄弟錬金術師と、かれらをとりまく人々の、異なる価値観を持つ巨大な存在との戦いを描く、アクションファンタジー。シリーズ第二十四巻。


終章に入ってから何巻になるのでしょうか。

ずっとテンションの高い展開つづきで、うおーと心の中で叫びながら読み続けているわけですが、肝心のストーリーをほとんど忘れ切っちゃってるというのは読み手としてどうなのかと、深く深く反省する巻でした。

肉体的にも精神的にもつぎからぎへと戦って戦って戦い続けているキャラクターたちは、絶対に戦いそのものの意味とか行為によって自分が何を求めているのかとか、忘れてないだろうというか忘れるはずがないと思うのに、私と来たらなんか傍観者みたいにぼーっと今この瞬間、目の前で起きている事柄にしか集中できていないんですよね~。

やはりこういう大作は既刊をかたわらに置いて読むべきであるとつくづく感じてしまいました。

キング・ブラッドレイが現れたとき、その場の人々の驚きがぜんぜん理解できなかったもんな……(汗。

でもアームストロング姉弟の活躍を読むのは楽しいし、エルリック兄弟のとーちゃんのシーンはぞくぞくしたし、キング・ブラッドレイと強欲くん+リンの対決シーンはわくわくしたし、老兵の活躍には目頭が熱くなりました。

これだけ楽しいのに基本線を理解できないなんて、なんてもどかしいんだろう。
自業自得なので致し方ありませんがね……。

ちょっと気になったこと。
途中から絵の密度が下がったような気がした。
密度が下がったんじゃなくて、線がほそくなったのかなと見直してみて思いました。
ペン先を変えたとかいうような理由ならいいのですが、手を酷使してのことだったらと、外野なのに心配してしまいます。
力強い線も、このマンガを形作る大きな要素だと思うので。

つづきをお待ちしています。

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第九回を公開。
この連載はこれで完結です。
短い間ですが、おつきあい下さった方々、どうもありがとうございます。


本格的な連載再開にはまだまだ時間がかかりそう……。

『甲蛇の書 暁と黄昏の狭間IV』

暁と黄昏の狭間〈4〉甲蛇の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
4198508046



[Amazon]


いただいて読了。


泥臭い臨場感と感傷抜きの展開で読ませる、壮大なスケールの異世界ファンタジー。シリーズ第四巻。



ワンと呼ばれる七つの力の存在する世界。小国ドムオイの鍛冶職人の娘セフルは、若き騎士ギルダン・レイとともに無法の地『赤い平原』を旅していた。神を畏れぬ組織ヘン=ジャックに狙われつつ、耐魔力を持つ鉄器をつくるという部族を求めての旅である。リヴォ軍のケリードの追っ手アザポーに追いつかれたかれらは、アザポーの一族コータダ族の虜となった。セフルたちの味方としてふるまうアザポーだったが、疾風船を操るヘン=ジャックを恐れ憎むコータダ族は、セフルとギルダン=レイを鳥人の呪いをうけたものとして扱う。




図書館の本が行方不明となりずっと続きが読めなかったもの。響子さんからいただいてようやく読めました。

面白かった!

余分な枝葉のない、かつ必要十分なだけのディテールはそなえた、豊穣を推測させうるだけの深みを持った物語世界で展開される、骨太な物語です。

表向き、孤独な少女セフルと、悲劇の運命を背負った騎士ギルダン・レイの、放浪と遍歴と恋の物語です。

でも、まずなんといっても神と人間、つまり世界と人間の関係を模索する物語だなあと感じる。

それは大国の争いの間隙を縫って暗躍する魔術師の組織ヘン=ジャックに象徴されてます。

セフルとギルダン・レイは人々の争いや戦いに巻き込まれ、翻弄されていくのだけど、かれらの本当の敵はじつはヘン=ジャックの仕掛ける罠であり、かれらは神という存在の象徴する世界の一員として、世界をみずからのものとして管理し利用しようとするヘン=ジャックと対抗する役割を担わされているわけですね。

世界の支配者として頂点に立とうとする人間。
いっぽうで、世界の一部であることを認識し、世界の中で調和をとろうとする人間。

どちらの姿勢を選択するか。

これっていま切実に問われている問題そのものなんじゃないかと、ふと思う。


そんな堅苦しいことを考えずとも、ヒロインとヒーローがたいそう困難な状況に陥りつづける陰謀と冒険と力強い幻想力のファンタジーとして楽しむことができるお話なんですが、ほんとうに情け容赦なく苛酷なので、疲れた心で読むのは止めたほうがいいかもしれません(汗。

でもこの苛酷さと人間くささとストイックな雰囲気は一度はまるとやみつきになります。

描写も展開も人間関係もエピソードも、ときに腐乱臭や汚泥臭や汗臭さがただよったりしますが、基本的にとてもストイックだと思う。

骨太の引き締まった肉体と途方もない魔力に満ちた異世界ファンタジー。

そういうものが好きな方にはおすすめです。

つづきもすみやかに読みたいと思います。

暁と黄昏の狭間〈5〉月虎の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
4198508089

『flat』1、2

flat (1) (BLADE COMICS)
青桐 ナツ
4861275334



借りて読了。


超マイペース男子高校生と超受け身幼児の交流を描く、ほのぼの日常マンガ。

ちょっとした行為や態度、言葉によってさまざまに変化する人間関係をたんたんと描いて、こういうことあるよねーとか、こんなふうにふるまいたいなあとか、共感しつつ、ちょっといいなあこういう関係、と思ったりするマンガ……だと思う。

なにげない日常風景をおもしろく書ける人って、人物観察力が高いひとなんだろうなー。
私にはまったくない能力なので、それだけで尊敬してしまう作風です。

それは以前に読んだ『娚の一生』も同様なんですけれど、あちらのほうがすこしドラマ成分が多かったような気がする。

こちらはほんとうに日常的。
だから登場人物の人間性に共感できるかどうかがさらに問題となるわけです、私の場合。

この作品も、じつは読み始めたときには「なんだこの自分勝手なド阿呆は!」とイライラしてました。幼児を預かってるのに無責任にもほどがある。そんな息子の性格を把握しているはずの母親までが無責任に見える。そして、幼児のけなげさ加減にもどんびき。これ、ちょっとドリーム入ってるんじゃないの。幼児にドリーム被せるなんて、そんなのひどい。

ありえないという次元じゃなくて、許せないって感じでした(苦笑。

でもまあ、『娚の一生』とおんなじで慣れてくるとだんだん許せるようになってくるんですな、何故でしょう。
リアルな人間関係も、相手のひととなりを知らずに好き嫌いしちゃいけないということでしょうか。

二巻になって、幼児=秋くんに子供の友達ができてからさらに受け入れやすくなりました。

たぶん、この主人公、いままでなら脇役で主人公を振りまわしてたタイプなんだと思うのです。
それを主役に据えてるんだから、ちょっと冒険的な話なんだと思う。

主役視点じゃなくてちょっと距離をとって描いてあるエピソードが読みやすいのもそのせいかと。

しかし、私ってつくづくと天然マイペースなゴーイングマイウェイ、マイワールド人間が苦手なんだなー。
私生活で振りまわされてる分、余計に腹が立つのかも知れない……。


flat 2 (BLADE COMICS)
青桐 ナツ
4861276284

オリキャラ名前バトン

冬木洋子さんから「オリキャラ名前バトン」をまわしていただきました。

自分でも新たな発見をしたバトンでした。
ただ自分を把握していなかっただけのことかも知れませんが。


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更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第八回を公開。


勝手に年末進行で頑張っています。年内完結が目標。

『テスタメントシュピーゲル 1』

テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)
冲方 丁 島田 フミカネ
4044729093



[Amazon]


借りて読了。


近未来の国際都市ウィーン=ミリオポリスを舞台に、機械化義肢によって武装化した〈特甲児童〉たちがみずからの都市と自由と人生のためにテロリストと戦う、アクションSFミステリ。『スプライトシュピーゲル』『オイレンシュピーゲル』を統合するシリーズ完結編開幕。


西暦2016年。MPB(ミリオポリス憲兵大隊)所属の特甲児童、猋(ケルベルス)遊撃小隊の隊長・涼月は、接続官の少年吹雪とともに休日を過ごしていたところ、MSS(ミリオポリス公安機動隊)所属の特甲児童で過去の事件で知り合った“あたくし様”こと焱(スプライト)要撃小隊隊長・鳳が少年とふたりでいるところに出くわした。少年・冬真と吹雪が意気投合したためなりゆきで行動することになった四人は、思いもかけない楽しい時を過ごすが、涼月と吹雪への任務の呼び出しに再会を約して別れた。涼月を待っていたのは〈ローデシア〉を名乗る集団がミリオポリスに仕掛けたロケット燃料を応用したAP爆弾だった。爆弾の無力化にむけて出動する猋。だが、敵による情報汚染。過去の事件でも遭遇した謎の狙撃手。つぎつぎに襲いかかる敵の妨害に分断されてしまった小隊の視界を警告の黄色が染め上げる。夕霧の脳裏に浮かびあがる、ある数字の羅列。そのとき地下にあった本物のAP爆弾が爆発した。




うはー……すごかった……。

これまでの事件の複雑な構造と関係性、物語展開の吸引力、アクションシーンの疾走感と破壊的なエネルギー。
登場人物たちがそれぞれに背負った過去と現在の日常、フクザツで意味深ででもシンプルなやりとり。情熱、こころざし、使命感、自己犠牲を、からりとでも熱く語る台詞としぐさ。

すみからすみまで細かいところまで練り込まれた、とても重層的で密度の濃い、どこをとっても熱い血の滴るような、渾身の完結編、スタートでした。

スプライトとオイレン、ふたつのシリーズが合流し、二つの小隊が追いかけてきた事件がすべてひとつながりに見えてくる瞬間。
特甲児童たちは事件を追いかけているのではなく、かれらが事件そのものだったとわかる瞬間。

背筋のぞくりとするような感覚を覚えました。
あまりにも非情で痛ましい、殺伐とした展開。
泣きながら悲惨な過去と立ち向かいつづける彼女たちの姿が、せつなくていとおしくて。

そしてまた、敵味方のわからない不安と緊張。
何が善で何が悪なのか。
誰が善で誰が悪なのか。
あるいは善が善をなすために悪を呑むことも、あるのかもしれない。

だからといってそれは許されるのか。
けれど信念に基づいて行動するひとの眼に曇りはなく。

希望はあるのだと、つかむことができるのだと、主張している。

そして事件によって破壊された人生だって、あたらしく始められるのだと。
望みを持って努力すればと。

あまりにも苛酷で悲惨な事件の連続で、特甲児童たちに襲いかかる試練はメガトン級ですが、このシリーズ、根っこの所では青少年が疑問を抱いていたみずからの生を肯定するためのお話なんだなあと思われました。

でもって、そのために動員されている知識の量が半端でなくものすごく、この国際的なパワーゲームの感覚や人権意識の感覚は、著者のそだってきた環境がものを言っているのかなあなどとぼんやり思ってみたりした。

読み応え、ずしり。
なのにこの疾走感と酩酊感。

まさに最後のライトノベルに相応しい幕開けだと思います。

血反吐を吐くような展開つづきで息も絶え絶えで読み切りましたが、もうすぐにでも続きが読みたいです。

なにしろ、終わりのところで「こんなところで切るな!」と心の中で叫びましたからねえ。
妖精の小隊長はいったいどうなっちゃってるのー、夕霧はいったい誰とお話ししているのー、白露君はなんでそんなものを飲みたがるようになってしまったのー、と疑問は尽きません。

とにかく、はやくつづきをっ!


余談。

吹雪君たち接続官が〈コーラス〉と呼ばれるのは、少年合唱団から来ているのだろうかとふと思った。

ヘルガさんの過去の因縁関係って、『カオスレギオン』とちょっと似ていないかなー、やっぱり似てないかも。でもなんとなく似ているような。

『七姫幻想』

七姫幻想
森谷 明子
4575235407



[Amazon]


読了。


古代から近世まで、七夕の七姫をモチーフに織女の系譜につらなる女たちと男たちの物語を落ち着いた文章でつづる、連作短篇集。

とても面白かったです。
最初はファンタジーだと思ったのですがそれは最初の一編だけで、あとはほとんどがミステリ。
でもって、男と女の恋愛模様が、それぞれの時代背景にそったエピソードで描かれていきます。

たぶん、物語の主要な登場人物はみなひとつの血族に属しているのだと思う。

時代が下るに従って、時を紡ぎ、時代を織りなし、神とつうじる水の巫女の記憶も能力も薄れていきますが、糸を紡ぎ織りつづける女という、じつに普遍的なファンタジー要素が最後まで折り込まれていて、一本筋が通ったというか、ひとつの太い糸でつながれている、在る系譜のひとびとの年代記としても読めるなあと思いました。

収録タイトルは以下の通りです。


ささがにの泉
秋去衣
薫物合
朝顔斎王
梶葉襲
百子淵
糸織草子




「ささがに」って何? と思ったら蜘蛛のことでした。

ことほどさように日本の知識に暗い私。翻訳物ばかり読んでたから、ここで取りあげられている時代もその背景もうすらぼんやりとしか推測できないのですが、明言されないながらそこかしこに「あの時代かな?」と推理できる要素が奥ゆかしく記されていて、歴史ものではなく時代ものっぽい雰囲気なのも好みでした。

舞台は当初の古代から次第に時代を下っていくのですが、平安朝が舞台の話が多かったような気がします。

神話伝説時代から古代、平安朝ときて、中世があいまいなまま近世に進んでしまったような。
舞台が奈良と京都を中心としているので、武士があまりでてこないところがそう感じさせたのかな。
いきなり江戸時代の話になったときには、あれっと思いました。

「ささがにの泉」がファンタジーだったのは、神話伝説の時代が舞台だったからかも。
私としてはこのテイストがつづくのかと期待してたんですが、見事に裏切られましたな。

読んでいちばん爽やかだったのは「朝顔斎王」。ヒロインが生臭いことから切りはなされている元斎王だったからか。

反対に「梶葉襲」はミステリ要素がもっとも高い話。話の完成度も高い気がしますが、かなり陰険で後味が悪かった。どちらも後宮がらみの話なのだけど、外から見たのと内部関係者の話ではドロドロ度が違います。

このへんの平安京を舞台にした話はおんなじ名前のことなる人物が幾度も登場するのが因縁みたいでぞくぞくしました。

日本史に対する無知をあらためて実感したので、これからは和物も読もうと思います。
やはりフィクションから入るのがお手軽ですよね……お堅いものは下地をつくってからにしようっと。

ところでこの本はすでに文庫化されていました。

七姫幻想 (双葉文庫)
森谷 明子
4575512540


図書館にはなかったんですが……(汗。

『犬夜叉 44』

犬夜叉 (44) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091200885



読了。


戦国時代にトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションコミック。シリーズ第四十四巻。

とっても久しぶりの犬夜叉です。
久々すぎて前巻のお話を忘れ果ててましたよ。危ない危ない。

犬夜叉は竜鱗の鉄砕牙をつかいこなすために妖霊大聖なるじーちゃんに弟子入りしたところでした。
それで盗まれた妖霊大聖の肝を探すことになったと。ついでに鉄砕牙は鎖で封印されたと。

……いかん、思い出せない。

しかし、思い出せないまま強引に読んでもそれほど支障はなかったです。
犬夜叉と竜鱗の鉄砕牙の話は表の話で、裏でつづいているのは奈落とその心臓である赤子の暗闘なので。

鉄砕牙の話が終わったのちにつづく妖狼族のエピソードでそのことが表面化します。
……ようやくのことに。

なんか、この所読んでる犬夜叉って、もはや犬夜叉たちと奈落の話ではなくて、奈落のなかのさまざまな人格の葛藤の話であるような気がしてきました。

かぞえきれない妖怪を取り込んでみずからをつくりあげた奈落は、もはやひとつの人格では統合しきれないのかも。

数々の現れては消える分身たちの姿にそんなことを考えてしまったり。

それを奈落の内心をまったく書かずに犬夜叉たちの視点で話を進めていくので、緊迫感がすこしばかり欠けてしまうのかも、しれない。

それにしても、最近なかなか続きが読めません。
ここまできたら一気にラストまで進みたいのにー。

地団駄踏み踏み悶えながら、つづきを予約いたします。

犬夜叉 (45) (少年サンデーコミックス)
4091203507

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第七回を公開。

『娚の一生 2』

娚の一生 2 (フラワーコミックスアルファ)
西 炯子
4091326382



借りて読了。


祖母の死をきっかけに五十一歳独身大学教授と同居する羽目に陥った、三十代半ばキャリア女子の微妙な女心を日常のなかで描く、ほのぼのシリアスラブストーリー。シリーズ第二巻。

ほんのちょっとしたエピソードで心のひだを描くのが上手いなーと、思います。
一巻の感想で、なにか否定的なことを書いている印象を持たれたかも知れませんが、このマンガ自体はとても完成度が高く、面白い、と思ってます。
ただ、私の共感できるシチュエーションでない、というだけ。

この巻では、一巻で中年と初老の間の年齢の男としての幻想度のとても高かったカイエダ氏の過去が垣間見える展開で、それはそれでドリーム度も増したような気がするけれども(汗)、とりあえずキャラクター存在としてのリアリティーはちょっと上がったかなあと思います。

この年齢になって子供の時の過去を持ちだされるのはどうかな、という気がしないでもないんですけれどもねえ……。

とりあえず、帯と合わせて五百万の和服を無造作に買ってくれちゃうあたり、ヒロインに対してかなり本気なのかなあと思わされます。しかもそのことをまったくいわないあたりはかっこええかも。

器としては大きいですよね。
懐も深い。

そういう人物が未だに独身のまま生きている現代日本の日常、というのが信じられない私をどこまでひきこんでくれるかがすこし楽しみになってきました。

とはいえ、既刊はここまで。
つづきを借りるかどうかは提供元次第でございます。

『夢の蛇』

夢の蛇 (1983年) (サンリオSF文庫)
ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子
B000J7AJSM


[Amazon]


読了。


核戦争によって文明が滅んだのちの地球を舞台に、治療師としてひとり各地を放浪する女性の旅を描く、叙情的冒険SFファンタジー。



スネークは女性治療師。その技は多くを三匹の蛇を駆使することによって効果を上げる。滅多に治療師の赴かない砂漠の集落を訪れたスネークは、子供の治療中に治療師の術を恐れるひとびとによって夢の蛇〈草〉を殺されてしまった。夢の蛇は数が少ない貴重な蛇だ。あずけてくれた師たちの期待に背いたと感じ、夢の蛇を失った自分の治療師としての資格に危機を覚えたスネークは、代わりの夢の蛇を求めてさらなる旅に出る。




ああ、面白かった。

実は再読です。読んだのは二十年以上前。まだ読書技術と読書視野が拡張されておらず、ただひたすら文章を追いかけるだけだった頃に読んで、ああ、この本はとても好きだと感じた記憶だけが残っていた、そういう本でした。

そんな本を今もまだ面白いと思えるのか、すこし不安でしたが杞憂に終わりました。
やっぱり、とっても面白かった。ただ、初読の衝撃はなかったけれど、それは私がこういう本を読み慣れてしまったからだとおもわれます。

舞台は核戦争後の地球。
ひどひとは小集団ごとに切りはなされて、それぞれに孤立していきのびています。

ただひとつ、中央と呼ばれる都市のみがかつての文明の遺産で食いつなぎ、どうやら異星人との交信を独占している模様。

主人公のスネークが〈治療師〉として駆使するのは、必死で受け継ぎ残してきた医療技術と、蛇の毒素から抗体を作りそれによって病を癒すすべ。

なかでも夢の蛇は麻酔作用と幻覚作用のある毒を持った小さな蛇で、繁殖がほとんど不可能なため、クローン技術によってわずかに手に入れることのできる希少な蛇である、ということになっています。

そのため治療師の数は少なく、各地をくまなく訪れることはできず、その治療法を知らぬ人には恐れられ、嫌われる。

というような状況で、この話は始まります。

描写主体の、スネークの見て感じたことをなぞるような文章は、SFというよりファンタジーに近い雰囲気。

誤解によって生まれた悲劇のかたわらで出会ってしまった男と女のものがたりを背景に、蛇を失った治療師の陥る困難と中央からきた女性との出会いと別れ、スネークをつけねらう謎の強盗、一見裕福で幸せそうな集落の影に隠された傷つけられた心の叫びとその救出、などなど、起伏の大きいエピソードがつぎつぎにでも淡々と、つづられていきます。

以前読んだときの記憶は、砂漠を旅してたということしか残ってませんでしたが、実際は砂漠だけでなく山間の町や、治療師の養成所、中央の高い壁、さらに壊れたドームなんかも出てきます。それらのすべてを私は忘れ去っていたわけですね、それで私はこの話のどこを好きだと思ったのか……(汗。

それはたぶん、スネーク視点であらわれ次第にあきらかになっていく物語世界の状況、孤立したが故にユニークな風俗をもつ人々の暮らし、生活感漂うこまやかな描写、情感豊かな風景描写、などなどだったのだと思われます。

そして今の私もそういう部分に最も惹かれているわけで、やっぱり私の好みはずっと一貫しているのかなあと呆れるような安心するような気持ちになりました。

さらにおそらくかつては読み飛ばしていただろう、物語世界全体の設定にも、今回はかなりの興味をかきたてられました。

最後まで謎の残る設定ですが、そのすべてがわからないままな感じを世界の拡がりと感じてしまうのが、ファンタジー読みとしての私なのかもしれないと思いました。

というわけで、二度読んでも面白い本ですと保証いたします。

しかしサンリオSF文庫はもうない。
ハヤカワSF文庫から復刊されていた本もたぶん絶版なのです。

こんな素敵な本なのになんということだ……。

夢の蛇 (ハヤカワ文庫SF)
ヴォンダ・N・マッキンタイア 友枝 康子
4150107807

『娚の一生 1』

娚の一生 1 (フラワーコミックスアルファ)
西 炯子
4091322697



借りて読了。


一流企業に勤めている三十代半ばバリバリキャリアな、でも恋には失敗つづきの未婚の女の子が、祖母の死をきっかけに奇妙な五十一歳独身大学教授と同居することになる、日常恋愛コミック? シリーズ開幕編。

タイトルは「おとこのいっしょう」と読みます。
一読して思ったのは「テレビドラマになりそうな話だなー」。
そして「問題は五十一歳独身大学教授のキャスティングだなー」。

とっても地に足の着いた日常マンガで、三十半ばの女子(この言葉いったい何歳まで使えるんだろう。私のイメージではせいぜい十代までなんですが;)のリアルな生態を描いているのに、恋のお相手のドリーム入りまくりな存在感が不思議な感じの話です。

こういうリアリティー在る世界で登場人物ひとりがドリームって話、面白く読めたけどどうにも「ナイナイナイナイ、こんなひと!」という意識がぬぐえないので、私はこのマンガの読者層からかなり外れているのだと思います……。

問題のカイエダ教授。
ドラマにしたらキャスティングに苦労しそうだと思ったのと、いないでしょうこんな男と思った理由は同一なのでありまして。

登場人物が非実在であるより、舞台そのものが非実在であるほうが私の好みなんだから仕方がないですね、こればかりは。
というか、舞台が異世界だったり歴史ものだったり時代物であるほうがドリームな登場人物を許容する範囲が広いような気がするのだ。これは私だけかも知れない。

というわけで面白かったんですが私にはあんまり共感ができてないようだというのが正確なところかなあ。
他人の生活をのぞき見ているという視点から楽しんでいたような気がする。悪趣味なことだ(汗。

ところで、西炯子の作品を読んだのは相当久しぶりです。
こんな可愛い絵でこんな男女恋愛話を描く人になっていたのかとちょっと驚きました。
年の差カップルだけどね!(あ、これもまた……笑)

なんとなく、松苗あけみを思い出してしまったです。
そういえば松苗あけみはどうしているのかなー。

二巻も借りてるのですみやかに読みます。

娚の一生 2 (フラワーコミックスアルファ)
4091326382

『バガボンド 6』

バガボンド(6)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286851



借りて読了。

江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵の若き日を描く、時代コミック。シリーズ第六巻。

胤舜との勝負によってこころに刻まれた恐怖と戦う武蔵。
いっぽうそのころ又八は……。

という感じの第六巻でした。

武蔵はひたすら自分の道を邁進していますが、おなじ場所をめざしていたはずが早々に脱落してしまった又八の迷走は留まるところをしりません。

かれの不幸は武蔵という別次元の人物のそばに生まれ育ったということかな。
自分と決定的に資質の違う人物をライバルと認識してしまったところから、かれの人生はゆがんでしまったのかなと思います。

武蔵と道を違えてからも武蔵の後を追いかけてしまう又八のすがたには憐れがただよいます。
あまりにもヘタレで時々腹が立ちますが、じっさい、いいことなんかひとっつもしてくれないので時々嫌気も差しますが、凡人のすることってこんなふうに上手くいかないことのほうが多いよね、と同情も誘う。

もう武蔵のことはあきらめて、ばあちゃんのいる村に帰ればいいのに。
自分の道を見つければいいのに。
武蔵への未練が断ちきれないんだな……。
まるで武蔵に恋をしているみたいですねえ。

又八って、どこまで墜ちていくんだろう。というか、すでにそうなることが決定みたいに書いてしまいましたが、このまま墜ちていくばかりなのかな。

友を見捨ててヒモになったところですでに人生の脱落者になったと思っていたのに、どれだけ人の道を外れていくのか。
それはそれで興味深い気もするけど、あんまり醜態ばかりさらされるのも哀しい気がします。

又八君の話はちょっとずつにして、武蔵メインで進行してくれた方が私の気は楽だなと思いました。

しかし、また何故にそんな人物の名前なんか騙るのだ、又八!

こんな危なっかしい男、やっぱりスルーするわけにはいきませんねえ……はぁ(苦笑。

『第七官界彷徨』

第七官界彷徨 (河出文庫)
尾崎 翠
4309409717



[Amazon]


読了。

1931年に執筆された“忘れられた作家”尾崎翠が再発見される契機になった作品。

なんとなく周囲で話題にのぼっていたのと、タイトルに覚えがあったので借りてみました。

五官と第六感を越えた第七官にひびくような詩を書きたいと望む、田舎から都会に出てきた女の子が、兄と従兄弟の三人の男所帯で炊事係をする。かなり変わった登場人物たちの日常を淡々とユーモア混じりに描いていく中編。

戦前に書かれたことが信じられないくらい、すんなりと読める作品でした。
ちょっと昔の文学系少女マンガ、いまならそこらへんにふつうの小説として売られていてもおかしくないような、非日常的日常小説。

登場人物の奇天烈さが当人たちのおおまじめっぷりににじみでるおかしさが、そこはかとないもの哀しさとともに印象に残る、奇妙なお話でした。

そこかしこに見うけられる奇天烈な言動をくすくすと笑ってしまいながら読みました。

これを戦前に読んだら、私はどんな反応をしたかしらん。
戦前には生まれていないのでそんなことを想像しても無意味なのですが、そんなことをおもってしまうくらい現代的な作品でした。

とはいえ、またほかの作品を読みたいとおもうほど私の好みずどんではなかったけど。

ところで、タイトルに覚えがあったのは、谷山浩子さんの曲に「第七官界彷徨」というのがあったから。
どうやらこの作品をもとに浩子さんは音楽劇なるものをしてらしたみたいです。
アルバムにも収録されています。


月光シアター
谷山浩子
B0006ZJD0W


収録曲を見ると、なるほど……とうなずけるものが。


1. 空の駅
2. ありふれた恋の歌
3. ねむの花咲けばジャックはせつない
4. 片恋の唄
5. 道草をくったジャック
6. 第七官界彷徨~intermission
7. パラソル天動説
8. 雨の国・雨の舟
9. ハートのジャックがパイとった
10. ウサギ穴
11. 公爵夫人の子守唄
12. ハートのジャックが有罪であることの証拠の歌
13. アトカタモナイノ国
14. きみの時計がここにあるよ



私は予備知識なしで聴いていたので、すべて不思議の国のアリス関係の曲なのかと思ってました。
アリスでも音楽劇をつくってらしてそちら関連の曲も収録されているようなのですが、どうもよくわからないなと思っていたのは『第七官界彷徨』関連だったようです。「ねむの花咲けばジャックはせつない」とか。

もしこの本がお気に召して谷山浩子さんに興味があったら、聴いてみてもいいかもしれません。

『ラウィーニア』

ラウィーニア
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
4309205283



[Amazon]


読了。


ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』を元に、古代イタリアで戦の原因となった王の娘ラウィーニアの生涯を描く、古代ファンタジー。


イタリアのラティウムの王女ラウィーニアは、幼い頃より母親アマータに虐待されて育った。欲しかった息子を生んですぐに亡くした母親は哀しみの狂気のなかで生きつづけていたのだ。妻の狂気と向き合おうとしない父王だったが、ラウィーニアのことは慈しんでくれた。ラウィーニアは一族の聖地アルブネアに父親と詣で、儀式ののちに兆しを受け、読み解く父の姿を目にしていた。ラウィーニアが年頃になった頃、母親は甥であるルトゥリア王トゥルヌスの求婚を受け入れるようにラウィーニアに圧力をかけ始めた。ラウィーニアに求婚するものはほかにもおり、それは次第に争いに発展しそうになっていた。ラウィーニアは従兄弟のトゥルヌスが自分を獲得するに値するモノとしてのみ認識していることを知っていた。ラウィーニアは、聖地アルブネアで過ごした夜に、後世に彼女の生きた時代を詩につくっているという死に際の詩人と邂逅する。詩人はトロイア戦争によって故郷を失った武将アエネーアスとラウィーニアの結びつきについて語り始めた。




面白かった!
夢のような回想のような、幻想的な構成でありながらも、細部はとてもリアルで地に足がついていて、人間くさい。
まさにル=グウィン、さすがル=グウィン、と唸らせる素晴らしい物語でした。

欧米ではラテン語はもう必須教養ではなくなっているのですね。
偉大な過去の遺産も、読まれなければ受け継いでいくことはできない。
というわけで、『アエネーイス』も幾度も英語による翻訳が試みられてきた模様です。

しかし散文の翻訳だって原文の持つ味わいを伝えるのは至難の業。
まして韻文は、言葉の響きそのものが抜き去りがたく作品に結びついている。言葉の持つ韻律、響き、抑揚までをそのままべつの言語で再現することは不可能だといっても過言ではないでしょう。

作者は、ウェルギリウスの『アエネーイス』をなんとか英語に写し取りたいと願いましたが、それを自身のできうる最高の形式――小説の形式に落とし込むことで試みたのだそうです。

『アエネーイス』ではほとんど存在感のないラウィーニアをヒロインに据えたこの作品は、『アエネーイス』未読の私にはそれとくらべることは不可能ですが、この作品単独で読んでも十分に読み応えのある、格調高いファンタジーになっていると思います。

ギリシア神話や伝説に頻繁に出てくる神々の存在を、信仰するひとびとを描くことによって背景にしたことも、余計な干渉でごちゃごちゃしがちなストーリーをすっきりとさせ、ひとの物語を際だたせることになってると思う。つい先日読んだトロイア戦争を題材にしたファンタジーは神と人の物語でしたが、これはあくまでも神威を身近にしながらもみずからの意志をもつ人間の物語だなあと思いました。

ラウィーニアの出会う詩人の存在は、彼女がこれからもつづいていく歴史の一員であるとともに、詩人によってつくられた存在であることも匂わせて、とても刺激的でなおかつファンタジー的。

この大枠がなければ、話はただの歴史ファンタジーになっているよね……。

ラウィーニアは母親に虐待されつつも正しいこと、善きことを求める現実的でしっかり者の娘。
若く美しく粗暴で権高いトゥルヌスは、愛されすぎて大人になれないわがまま息子。

登場人物はみなそれぞれに個性と血肉をそなえた人々でしたが、なんといってもアエネーアス。
若い頃から一族郎党を率いて苦難の放浪をしてきたアエネーアスの、思慮深くひかえめながら経験豊かで懐の深い男ぶりがたいそう格好良かったですv

四十男で、やもめで、子持ちなんですが、ラウィーニアが好きになる気持ちはよーくわかる。
もしかすると、作者の理想の男性でもあるのかもーw はっ、これもかなりの年の差カップルですな。最近多いな、年の差カップル。もしかすると時代は年の差にあるのかも。

閑話休題。
読み終えたときにしみじみとしてしまう余韻は、やはりル=グウィンだなーと思いました。
堪能堪能。
お腹いっぱいすみずみまであじわいました。

ファンタジー読みには超おすすめです。

『バガボンド 5』

バガボンド(5)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
406328672X



借りて読了。


江戸時代初期に生きた剣豪宮本武蔵の若き日を描く、時代コミック。シリーズ第五巻。


すげー。すげーよ、このマンガ!

のっけからお下品でスミマセン。
丁寧語では受けた衝撃が伝わらないような気がして、つい。

ストーリーラインを辿れば強くなりたい、自分がどれくらい強いのか知りたい、という欲求に突き動かされた若者が、強敵と次々に相まみえ、挑み、戦うというありふれたお話なのに、このど迫力。

それは武蔵の強さへの希求がおのれの存在すべてをかけた血を吐くような問いかけだからなのかなと思いました。

そして武蔵に相対する敵方も、やはり自分の強さのみを頼みとして生きている人々。

戦が終わった時代になおも強さのみをもとめるこの人たちは、生きる意味を求める手段として、戦いを選んだ人々なのでしょう。

もっと生産的な人生を送れないものかなと現実的な私は思ってしまうわけですが、そのほかの道に目を向けられないひとびとというのはじつは不器用なのかもしれないですな。

文化の洗礼を受けず、社会化されず、時代の流れにも乗れず、ただひたすら強さを求めて獣のように(とはいえ獣はこんなに強さを求めたりはしないですが)生きていく男たち。

その不器用な人々のなかでも武芸を生業として派閥を持つ者たちは、それなりに世渡りを始めているといえなくもないけれど、武蔵のような愚直な生き方にまだ未練があるのでしょうねえ。

たとえば宝蔵院胤舜も、その手のひとなのだろうと思います。

そしてこのマンガの迫力とは、自分自身の存在意義を命をかけて問い続ける武蔵と、かれの在りようにひきこまれるかのごとく命のやりとりをしてしまう武芸者たち、かれらの戦いがそれぞれの生の激突である、というところからきているのかなあ、などと思ってみたり。

そんなことを考えずとも、戦闘シーンは本気で血反吐をはくような臨場感たっぷりで、この画面を見ているだけでもうわーと感嘆してしまいます。

この感嘆がどこまでどんなふうにつづいていくのか、興味津々で続きも読むことにいたします。


バガボンド(6)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063286851

『ピアノの森 13』

ピアノの森 13 (モーニングKC (1554))
一色 まこと
4063725545



借りて読了。


社会の底辺に生まれ育ったピアノの天才児・一ノ瀬海とかれを巡る人々の音楽コミック。シリーズ第十三冊目。

前巻から始まったショパンコンクール編。
物語世界ではその前からけっこう時間が経っていたことが判明しました。

なんか唐突……。

海はひそかに整形外科に通っているし、しかも阿字野先生との師弟関係はショパンコンクールで切れるなどと、いったいどういうことですか(汗。

読み手の動揺をよそに、物語はショパンコンクールの予選へと進んでいきます。

そこで海には驚愕のライバル、パン・ウェイが出現。
そのライバルの音楽的なことで驚愕した海ですが、ライバルのほうはどうやら阿字野先生がらみで海のことを意識している様子。

この話は海の物語であるだけでなく、阿字野先生の物語でもあるのかもしれない……と思わされる展開でした。
この話がおわるとき、読み手はいったいどこへと運ばれていくのだろう。
若干の不安とともに興味の尽きないお話です。

余談。

パン・ウェイが海を女だと思いこむ原因となったプログラムの写真ですが。
証明写真で髪がなびいている理由のほうが私は知りたいぞ(笑。

ピアノの森 14 (モーニングKC)
406372610X

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第六回を公開。

『Landreaall 15』

Landreaall 15 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
おがき ちか
4758054614



借りて読了。


会話が楽しい異世界群像ファンタジーコミック。シリーズ十五巻です。

そうか、夏休みだったのか……!

DXとイオンちゃんが故郷のエカリープに帰還したのは夏休みという理由があったことにここで初めて気づきました。
もしかしてスピンドルが襲来したときはもう学期を終えていたのだったのだろうか……あいかわらず記憶喪失な私です、ううう。

でもこの世界ってちょっと季節感が薄いですよね。そもそも気候が温暖でなおかつ夏も暑くならないのかも。そんな所があったら私が移住したいくらいですが。

というわけで、夏休み、ちょっとだけ変化したお互いを感じつつ、それぞれに生活を楽しむ兄妹にとんでもない客が! というところで終わったのが前巻。

この巻は、現在と過去と未来の交錯する展開で、夏休みでインターバルなのかと予想したのは油断であったといたく反省させられました。

新登場の玉階、クウェンティンはアンちゃんがちょっとかすむくらいの変わり者(苦笑。
かれの語る過去の話、そしてかれの望みはDXの父親リゲインの過去、ひいてはアトルニア王国の過去とも関わって、不穏な予感をもたらします。

でもすみません。どうしてとーちゃんこんな名前なの。みるたび反射的に吹き出してしまいます。にじゅうよじかんたたかえますかが頭の中で鳴り出してしまいます。名前出さないでください、失礼だけど(汗。

もしかして、深刻な話に笑いを添えたいという意図であるならば、十分に達していると思います……。

これからお話は国の体制の変革へ、そこまでいかなくてもその方向へとすこしでも進んでいくのでしょうか。

クウェンティンがDXを評して言った台詞がたいへんに印象的でした。


あなたは
――

夢見がちな
騎士見習い
ではない

王冠と笏が
魔法の道具で
ないことを
知っている

他人を
支配するのが
嫌い…

そして
いつも
自由でいたい

そんなところ
かな…



ところで、夏休みの友達エピソードとして披露されたDXの過去も、規模は小さいながらもDXと言う人格をつくった大切なお話として心に強く残るものでした。

DXの自称友人たち(笑)ライナスとルーディーを交えたDXたちのやりとりに笑いころげるDX母の気持ちがよーくわかりますw

つづきも楽しみにしています。

『Landreaall 14』

Landreaall (14) (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
おがき ちか
4758054142



借りて読了。


現在は学園にかよう王位継承者候補を中心にした異世界群像劇ファンタジー。シリーズ第十四巻。

十三巻を読んだのはいつだっけ? な状態で読んだ十四巻です。いや、こういうこともあろうかと十三巻も一緒に借りてきましたんです。そしてみごとに十三巻の内容を忘れきっていたことが判明してわははな感じだったのですが、十四巻を読んでみたら十二巻の内容も忘れきっていたことに気づいたという、どうしようもない記憶喪失な自分を確認したという……。

つまり、DXとリドのほうの話をきれいさっぱりと、だったのでした。

この巻は、おそらく同時進行していたらしいアカデミーの危機編とリドの故郷の危機編の後片付け、みたいな巻だったのですが、おかげでイオンちゃんの落ち込み理由はわかったのにDXのほうがハレ~?

まあ、いいや。この巻はこの巻で楽しかったんで。

キャラクターひとりひとりに物語があって、それぞれに人生を歩んでいるなーということが感じられるのがこのシリーズの楽しみでしょうか。

それはそのまま、話全体のイメージがちょっとばらけてしまうという要因になっているかなとも思うけど、とりあえず読んでいて面白いことは確かです。

設定が小出しなのは、話を徐々に大きくしていこうという意図があるのかなとか考えてみたりして。
というか、私、玉階という存在の意味がいまいちわかっていないようです(汗。
それとメイアンディア嬢って何者だったっけ?(大汗。


アカデミーのみんなが一番辛かったときに「DXがいれば」と考えてしまったシーンが十三巻にありましたが。
この巻のミムトン・ワーム襲来エピソードを読むと、たしかに……と思いますね。
DXみたいな人物はどうやったら育てられるのか、私はそれが知りたいです(笑。

ところで、ティ・ティとトリクシーの激変ぶりを、アカデミーのみんながスルーしきっているのにちょっとびっくり。絵的にはほとんど別人だと思うんですけど。

個人的には、やっぱりイオンちゃんが可愛いw
それから六甲の出番が少ない……。

このつづきはすでに刊行されています。

Landreaall 15 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)
4758054614

『ゾティーク幻妖怪異譚』

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)
クラーク・アシュトン・スミス 大瀧啓裕
448854102X



[Amazon]


読了。

科学文明の滅びた地球にある大陸ゾティークを舞台にした退廃的・魔術的・東洋趣味的な怪異幻想短編集。

ラヴクラフトなどと同時代にパルプ・マガジンで活躍したクラーク・アシュトン・スミスの、怪奇幻想譚集です。

詩人でもあった著者の絢爛豪華な筆で描き出される、腐乱死体のような世界の魔術的な出来事に魅せられました。

異形の魔神たち、降霊術師、呪術師、死体置き場管理人、退廃しきった王などなど、登場人物も末期的(苦笑。

平凡な一個人の日常とはかけ離れた、あらゆる意味で魔的で負の雰囲気が漂う、終末的な雰囲気は、まるで腐り落ちた果実が爛れていくかのよう。

前向きさなど欠片もない未来の終末神話の世界で生きる、伝説の人物の冒険譚、という感じで読みました。

物語はそのまんまのひたすら怪異と出会う恐怖のお話、怪異と出会って数奇な運命にたどり着くお話、登場人物そのものが怪異となる話、幽霊譚、とヴァラエティーに富んでいますが、そうじて皮肉に満ちていて、暗いながらも滑稽譚であることが多いような。

絢爛豪華なのに無駄の少ない文章が、作品の色合いを濃く染め上げているのが印象的でした。

以下、収録作品です。



ゾティーク
降霊術師の帝国
拷問者の帝国
死体安置所の神
暗黒の魔像
エウウォラン王の航海
地下納骨所に巣を張るもの
墓の落とし子
ウルアの妖術
クセートゥラ
最後の象形文字
ナートの降霊術
プトゥームの黒人の大修道院長
イラロタの死
アドムファの庭園
蟹の支配者
モルテュッラ

 言葉の魔術を駆使する吟遊詩人 大瀧啓裕




余談。

読み終えるのにえらい時間がかかってしまった。
いったい何ヶ月抱えていたんだろう……と調べてみたら、読み始めたのは九月の六日でした(汗。

時間がかかった理由は、ずばり、訳文が体質に合わなかったからです。
意を尽くして最上の結果をと熱意たっぷりに訳してあるのは感じるのですが、私にはどうもすっと馴染んでこない文章だった。頭の中でいちいち文意を推理しつつ読んでいるので手間がかかり、そのうち睡魔に大敗を喫するというくり返し。
読みながら寝てしまうとどこまで読んだかも曖昧で、また冒頭から読み返したりと非効率このうえない読書でした。

それでも読み続けたのは面白かったからなのですが。

おそらく、私の頭が物事を理解する順番が、訳者の方の順番とことごとく異なっているんだと思う。

おなじクラーク・アシュトン・スミスの『イルーニュの巨人』はこんなに苦労をした覚えがないので。

その翻訳者の方が解説で「文体を楽しむには高度な技術が必要」であると書いておられるのを読んで、うはーと思ってしまいました。
きっと私にはその技術が欠けているのね(汗。

でも本の解説で別の本の翻訳を批判するのはどうでしょう。
タイトルや作者を明示していないから、知らない読み手には何のことだかわかりません。


イルーニュの巨人 (創元推理文庫)
4488541011

更新情報

創作サイトを更新しました。
『天空の翼』短編「銀の鈴ふる」第五回を公開。

『乱と灰色の世界 1』

乱と灰色の世界 1巻 (BEAM COMIX)
入江 亜季
4047261459



読了。

ぶかぶかスニーカーを履くとグラマー美女に変身する、じつは八歳の女の子魔女・乱と、その家族たちのマジカルな日常を描くマンガ。シリーズ、開幕編。

短編集『群青学舎』の作者さんの、はじめての長編連載。といっても連作短編形式です。

まずもって絵の色っぽさに呆然とします。
以前からどんどん線がエロくなってきてるなあと感じてたのですが、なんなの、このむんむんな感じ。
乱の変身後の姿が色っぽすぎる。『不思議なメルモ』みたいだよー、と古すぎる例えでスミマセン。

美女バージョンの乱も色っぽいけど、登場人物の子供以外がみんなフェロモンむんむん。
とーちゃんとにーちゃんはちょっと劇画調の男っぽさ。まるで堅気じゃありません、ひい。

展開されている話は女の子のちょっとした魔法がらみの冒険なんですが、この雰囲気……けして隠微ではなくあっけらかんと明るいのですが、とにかく色っぽくてちょっとめまいが(汗。

そんなわけでじつは危ない橋を渡ってたりする乱が無邪気に相手の男を翻弄したり、魔女のお母様が常識外れの礼儀を果たそうとしたり、クラスのいじめっ子(ものすごく目つきが悪いがこれはあとで変化するのか)がとても乱を意識していたり、狼に変身するにーちゃんがお母様の実家の女性たちにもてもてだったり、とーちゃんは誰かの到来を恐れてカラスになって逃げちゃったりする、そんなお話です。

面白いんだけど、私、この色気にかなり当てられてます……ついていけないかも(汗。

『魔女と犬 オリザ・ハーモニウス』

オリザ・ハーモニウス 魔女と犬 (トクマ・ノベルズ)
西魚 リツコ
4198507163



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読了。

高校生の生活をゆるがす事件を魔女が解決する、ちょっとゆがんだ日常SFサスペンスミステリ?


毛利舞子は高校二年生。暗くなった田舎道を自転車で自宅へ向かう途中で飛び出してきた犬と衝突しそうになった。犬に誘導されてたどり着いた家の田んぼで、なぎ倒された稲の上に倒れている若い男を発見する。一瞬死体かと思ったがどうやら寝ているだけのようだ。だが男はちっとも起きない。まとわりつく犬を見捨てるに忍びず、舞子は男を納屋につれていくことにした。さいわい家族は姉の腹の子が男の子だった祝いで飲み会をしている。翌日、気がついた男に頼まれて生物部部室に顔を出した舞子は、部長にミステリーサークル出現のニュースを聞かされる。




前作が面白かったのですぐさま借りてきた生物SFミステリの二冊目。

拉致監禁から始まった前作と比べると幾分地味な始まりですが、今回の事件もかなり根が深く深刻なものでした。
なのにテンポよくすらすらと、しかもあかるく進んでいくストーリー。
この距離のとり方、いいなあと思います。
現実的で理不尽に満ちた狭い世の中でもがく登場人物を描きながらも、ぜんぜんベタベタしない、からりとした雰囲気。
ハッピーエンドじゃないけど、確実に成長する子どもたちがよかったです。

魔女の天水令子さんのぶっとびぶりが爽快。
犬の、ある意味植物人間な犬井白人くんは、その体質異常ぶりに拍車がかかってます。おもしろーいw
前作からひきつづいての出演は犬のシロと猫のクロス。さりげなく活躍して私のハートを鷲づかみです。

とっても面白かったのですが、どうやらつづきは出ていない模様。
残念です。

これでまた『暁と黄昏の狭間』に戻ってしまいました。
図書館は無くなった本はもう購入してくれないんだろうなー(涙。

暁と黄昏の狭間〈1〉竜魚の書 (トクマ・ノベルズedge)
西魚 リツコ D-SUZUKI
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『彩雲国物語 暗き黄昏の宮』

彩雲国物語 暗き黄昏の宮 (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
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読了。


女の子が立派な官吏になりたいと頑張る、中華風異世界を舞台にしたロマンティック陰謀ファンタジー。シリーズ……何冊目ですか?(汗。

つねにはりつめた雰囲気を漂わせているこのシリーズ、今回はさらに弓をきりきりとひきしぼるような展開で、読んでいるとなんだかこちらまで緊張してくる始末。

監察御史として貴陽を離れた秀麗ちゃんが行方不明となり、そこから王様とその側近につぎからつぎへとあきらかになった陰謀の根深いこと周到なこと。これで一冊ぶん吹き飛んでしまいそうな勢いでした。

王には失敗が許されないと認識する厳しい一派は、王の決断に甘さはけして許されない、これくらいで失脚するならば王に値する器ではない、さっさと去ね。くらいの勢いなんでしょうねえ。

すべておのれのまいた種だとわかる程度には聡明な王様の、すっかりへこたれてしまった姿には憐れみすら覚えます。たしかに王様の責任なんですが、うまれてからずっと放置されていたかれにいままで誰がそのことを教えてきたでしょうか。かれは今、ようやく王であることの意味する重たい責任に初めてめざめておののいている、そんな気がします。

王様を見まもってきた年上の人々は、みんなスパルタ式だったんだなあと今更ながらに感じています。
自分の地位は自分で守るか自分で勝ち取れ、なスタンスですよね。劉輝の人格に深い傷があることを心得ながら王位に就けた霄太師をはじめ、いろいろとかってな思惑ありすぎです。この話の登場人物たちは(苦笑。

で王様が黄昏れている間、危機に陥っていた秀麗ちゃんは、はじめこそボロボロでしたがやはり根っからのしっかりものであるなあ……。

それにしても、具体的な事実ははっきり言わないのにいろいろと察している十三姫とか、出番はほとんど無いのに今回のヒーロー役をはってしまった蘇芳くんとか、メインキャラにならないほうが賢いままでいられるような気がします、この話。

王様は最初からヘタレでしたが、最近の藍楸瑛くんのわがままだだっこぶりにはちょっと呆れる……クールな女好きだった過去の姿はいずこへ(苦笑。

いままで思わせぶりにいろいろと匂わせてきた事柄が次第にはっきりとしてきて、だんだん話が具体的になってきたのでだいぶ読みやすくなってきました。
縹家の実態があきらかになったのはかなりスッキリした。

羽羽様と瑠花さんのつながりが最後に何かものをいうのかなあとかおぼろにかんじつつ、最終章に入ったらしい物語のつづきをお待ちしています。

『蟲師 10』

蟲師 10 (アフタヌーンKC)
漆原 友紀
4063145379



この世とあの世の狭間に存在する蟲にことよせて生と死のふしぎを描く、しみじみとしたファンタジーコミック。

ああ終わってしまった。
でもとてもよかった。しみじみとよかった。

この世界の豊穣と、人もこの世界の一部なのだという事実を、ときにおおらかにときに厳しく突きつけてくる物語群でした。

受けとったものはたくさんあるけれど、それを言葉にするとどんどん貧しくなっていきそうな予感がするのでこれ以上のことは書きません。

とにかく、よかった。
とても好きでした。

そして途中からしか見ていないアニメもぜんぶ見たくなりました。
アニメも傑作だと思うのよ。

蟲師 二十六譚 DVD Complete BOX
中野裕斗 増田俊郎
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