『恋のドレスと聖夜の求婚 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

恋のドレスと聖夜の求婚―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
408601386X


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いただいて読了。

ヴィクトリア朝イングランドを舞台に仕立屋の娘と公爵家の跡取り息子の障害多き恋を心理サスペンス風味で描く、乙女向けロマンス小説。シリーズ十九冊目。



ようやくみつけたクリスに別れの言葉を告げられ、混乱するシャーロック。懸命にクリスの真意を探ろうとするかれに、父親はかつてした取引の履行としてモアティエ公爵家令嬢コーネリアとの婚約を強く求める。しかたなく了承したシャーロックだったがもとより従うつもりはなく、コーネリアとビアードの駆け落ちの煙幕になるつもりでいた。いっぽう、クリスはリンダ・パレスがオルソープ伯爵家に身を寄せているという情報を手にし、母親に会う決意を固める。




怒濤の展開であります。

ビアードと結ばれたいのになかなか思いを貫けないコーネリアの事情。
自分の陥った悲劇から逃げ切ることなど許さないとでもいうようなモアティエ公爵ヘンリーの行為。
コーネリアを束縛する母親ドロシアの心の闇をさらに追い詰めるとある人物。
そしてクリスの行為の理由はパメラにも推測を許さない。

コーネリアの異母妹アップルのはっとするような美しさつよさの描写がさらに読み手を混乱させて、いやー、すごい心理サスペンスになってました。

クリスの態度に不安と混乱を極めつつ、なおもクリスを知ろうとするシャーロック。
そんなかれに追い打ちをかける試練の数々に、前巻ではただ笑っていた私ですがさすがに哀れをもよおしてきましたよ(苦笑。

シャーリー・パパのハクニール公爵はなんの苦労もなく人生の王道を歩みつづけてきたひとで、そこから逸れることなど想像の範囲外なんでしょうね。
シャーロックがクリスに出会わなかったら、たぶん彼のように成長していたんだろうなー。
優しいかもしれないけど、想像力と共感力が欠如していて、たいそう無神経であります。

そんなシャーリー・パパの尊大さをママが見咎めて、そのあとどうなったかがとても知りたいと思いました。いや、これからどうなるのか、かな?

シャーロックの事情はそんなんですが、この巻はコーネリアがどういう行動を取るかが最大のポイントだったと思います。

彼女がどの道を選択するのか、最後までハラハラのしどおしでした。ビアードも気が気じゃなかったろうな。かれの辛抱強さには心打たれました。ほんと、感心した。いくらツンデレ好きの相手だとはいっても、焦らすにも程があるよな……コーネリアの事情はすごくよくわかるんだけど。だからよけいにドキドキでした。

ああ、すごく面白かったけどすごくツカレタ(苦笑。

シリーズはついに終盤にさしかかってきたのかなー。
ようやく闇のドレスのひとびとが表舞台に出てきそうな気配です。
これから話がどうなるのか、目が離せなくなってきました。

きゃー、どうしよう! と意味もなく叫んでしまう読後感でした(笑。

『イデアマスター GLASS HEART』

イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)
若木 未生 藤田 貴美
4344815750



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読了。

青春バンド小説「グラスハート」の完結編。

集英社コバルト文庫ではじめられたシリーズですが、長きにわたった中断の後、出版社を移籍して完結編が発表されました。

まさか読めるなんて思わなかったので、刊行されただけで感動した。

最後なので目次を写してみたり。


海と黄金[introduction]
コゴエ ノ イロ
イデアマスター I[the overture]
イデアマスター II[the passion]
イデアマスター III[the variation]
ラッシュ
海と黄金[music remained]

あとがき




時系列的にもきちんと『熱の城』からの連続した続編です。
天才アーティスト藤谷直季率いるテン・ブランクの、現在進行形の変化と激動がこの一冊にまとめられてます。

大学生になった朱音ちゃんは、藤谷先生と坂本君の間で板挟みになった苦しみを藤谷先生への怒りで表してて。
そのあいだにテン・ブランクの音楽性はさらに先鋭的になっていくのですが、思わぬ落とし穴が待ち受けていて。
皆が不安に思っていたそのことが、とんでもないところで表面化してしまって。
テン・ブランクが壊れかけたその時に、藤谷先生には魔の誘惑のような逃げ場所が出現したりして。

これってかなりぎゅうぎゅうに凝縮した展開だったかもしれない。

時は止められない、変化しない人間はいない、だから人と人との間柄もおなじままではいられない。

どれほど居心地のよい場所でも、まったくおなじ状態で維持することはできない。
変化してしまった関係を終わらせることはできる。それもひとつの方法。

でも、おなじ痛みを感じるならば、努力して関係をつづけてみてもいいんじゃないか。
変化した人間同士で、ふたたび関係を築いてもいいんじゃないか。
その結果、あらたに得られる何かもあるかもしれないよ。

いつでもやり直しはできる。
でもやり直すためには相手に寄りかからずに自分の足で立ち、自分の意志で行動しなさいね。

てなことを感じた一冊でした。


シリーズを通していえば、これはやはり藤谷直季の回復の物語だったなと思います。
とうとう藤谷先生視点の話がでてきて、そこには藤谷先生自身の語る、グラスハート初めての回想シーンがありまして、そうだったのかと思いつつ、やっぱりねと感じた。

そして、さらに出現した櫻井ユキノ視点の話は決定的でした。

櫻井ユキノは、藤谷先生の分身。
他人を拒み、自分の殻に引きこもって、自分だけで楽になりたい心の表れ。
そして、テン・ブランクは、藤谷先生が他人を受け入れて広い世界に自分も受け入れてもらいたいという心の表れであり、決死の試みだったんじゃないか。

そして試みが挫折しかけて孤独に戻りかけたときに、あなたはひとりじゃないよ、ひとりで頑張らなくてもいいんだよといってあげられる存在を、かれがみつけられるかどうか。まわりがそのことをわからせられるかどうか。

それがこの話の最大のテーマだったんだなと思った。

わけですが。

個人的に残念だったのは、その大切な部分が朱音ちゃん視点じゃなく、藤谷直季・櫻井ユキノバージョンで表現されてしまったことでした。

この部分のおかげでこの話はとてもわかりやすくなってコンパクトになったけど、この部分が私にはとても説明的かつ解説的に読めてしまって、話に距離を感じてしまった。

これまで愚直なまでに直接話法で感情的だった文章がほのめかしていた話の骨格の部分を、突然むきだしにされてしまったような気分だったのですね。

でも、朱音ちゃん視点で押しきったらこの話は完結しないかもしれないとも思うので、致し方ないのかな。無い物ねだりなのかな。

完結した、話も前向きに終わった。期待もそれほど外れなかった。
というところで満足するべきなんだろう。
ええ、そのことではたいへんに感謝しています。

うん、完結させるってとっても大切なことですよね。
……若干身にしみる結論でした(汗。


悩む朱音ちゃんには案の定、真崎桐哉がちょっかいかけてきましたねw
桐哉じつはすごく優しい奴だったんだな。
今回の出番はすくないけれど、今回の読み返しで彼の株はワタシ的にノンストップ高となりました。
あれだけテン・ブランクのこと嫌っていたのに、つづけられるならつづけろよと言うかれの変化にうるっとしてしまった。不覚(苦笑。


またしても余談。

藤谷先生の一人称は、ぜんぜん読みにくくなかったです。
むしろ、高岡尚のほうがわかりにくかったと思う。

なぜかと考えたのですが、人間って知らない・わからない物事に関しては説明をつけようと思ったり、一生懸命見たりするので、他人のことがなかなか理解できない藤谷先生や坂本君は周囲を懸命に観察しているのではないかと思いつきました。

朱音ちゃんは社会経験値がすくないので始めのうちはいろいろ説明してくれてましたが、だんだん知ってることが多くなってそれをしなくなってしまったのではないか。

そして、高岡君は社会経験値が高いので、そんなん自明の理だろってことで目新しいことがないぶん説明する必要性を感じてくれなかったのかなーと。

そんなことをわざわざ考えてる私って、どういうヤツなんだろ(汗。

ということでこの話は完結しました。

ノベルスで再刊行がスタートしていて、そのあらたに出るバージョンには書き下ろしの短編が収録される模様ですが、私が読むことはないと思います。

でもこのシリーズは確実に私の読書暦に残るピュアなシリーズだったと思います。

GLASS HEART 「グラスハート」 (バーズノベルス)
若木 未生 藤田 貴美
4344819063

20100327の購入

図書館本を受け取りに行ったついでに本屋に寄りました。


われら濁流を遡る―バンダル・アード=ケナード (C・NOVELSファンタジア)
駒崎 優
4125011060



以上、購入。

前日いきつけのブログで23日に発売されていたことを知って、慌てて買いに走りました。
売ってた、まだ売ってたよ!
最近発売日にいっても店頭で買えないことつづきだったので、実物を眼にしただけで感動してしまいました。

文庫の新刊情報には気をつけているのですが、ノベルスはどうも気づくのが遅れがちです。
どのあたりにアンテナを張ってればいいのかわからん。
出版社をこまめにまわればいいのでしょうが、どうも面倒くさくて(汗。
ここだけ押さえておけば安泰というところがないかしら。

『恋のドレスと聖夜の迷宮 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

恋のドレスと聖夜の迷宮―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
408601355X


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いただいて読了。

ヴィクトリア朝時代のイングランドを舞台に、仕立屋の娘と公爵家の跡取りの恋の行方を描く、少女向けロマンス小説。シリーズ十八冊目。



クリスの母親と闇のドレスに関して調査していたシャーロック。手がかりとして追い詰めたかつての従僕ユベールをクリスがかばったために取り逃がしてしまい、それ以来クリスとは会わずにいた。しかし気がつくとクリスは『薔薇色』からパメラと共に姿を消してしまっていた。気持ちの整理のつかないままにクリスの行方を探し求めるシャーロックだったが。




クリスと自分の関係、クリスと自分の未来、クリスと自分の現在の隔たり、を悶々と悩みつづけながら、一生懸命にクリスの行方を捜すシャーロックがたいそう楽しかった一冊でした。

自分でも人が悪いと思うのですが、いつも冷静に取り澄まして自分は何があっても氷の貴公子さ、みたいな態度でいたシャーロックがなりふり構わず、貴族は成金と蔑む中流階級のひとびとにまで取り入ってる姿を読むと、そのおたおた加減に笑えてしまってw

それだけクリスのことが好きだったのね~とにやにやしつつ、だったら最初から大切にしなさいよ、バカね! というわけです。

これだけ内省的になったのってシャーロック的には人生初なんじゃないかしらん。

ぐるぐるとおなじ所をまわりつつも、いろんなきっかけを与えてもらって(!w)ようやく「クリスの気持ち」「クリスの生活」「クリスの未来」にたどり着いたので、まあよしとする、みたいな感じでした。

かれが一生懸命にクリスが好きなのはパメラちゃんもわかっているのですよね。
パメラちゃんによってシャーロックの魅力が語られた部分は、とても貴重なシーンだと思いました。

シャーロックの友人ビアードのクリス評も、いいなあと思った。「気づくまで、気づかない美人」。なるほど。

あと、シャーロックの従僕アントニーくんがとっても楽しいぞw
かれのすれてない感性とてらいのない感情表現に、シャーロックが不意を突かれて困るシーンが好きです。
これって天然ボケってことかな、実際、かなり仕事的にもぬけているんですが、愛嬌があるんですよね。思いやりもあるし。シャーロックに欠けている部分が具現化したような存在。

結構シビアーな人間観察と心のひだをていねいに描いていく文章とがあいまって、とても惹きつけられる展開になりました。

シャーロックが悩んでいる横で進行する、ビアードとコーネリアの恋愛も目が離せません。どちらかというと、こちらのほうが王道ロマンス物っぽいかなと思う。

前巻でシャーロックとクリスに愛想が尽きかけて、もう読むの止めようかと思ってたのですが、いただいて読んでみてこれは読んでよかった! と思いました。前巻で止めてたら不幸なままだったよ……(汗。

ようやく自分ではない他人であるクリスのことを認識したシャーロック君の今後の活躍に期待してます。

つぎもいただいているのですみやかに読むぞ~。


恋のドレスと聖夜の求婚―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
408601386X

『LOVE WAY GLASS HEART』

LOVE WAY―GLASS HEART (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 チカ
4086002094



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読了。

青春バンド小説「グラスハート」の番外短篇集。

ヒロイン朱音ちゃんの所属するテン・ブランクのリーダー藤谷直季の異母兄弟、真崎桐哉を中心にしたサイドストーリー集です。

桐哉を中心にしていますが彼視点の話はなく、周囲の見た真崎桐哉の姿が描かれているのがこの本の肝かと。

収録作品は以下の通りです。


さよならカナリア
LOVE WAY I
アンダーエデン
LOVE WAY II
アカツキに火を放て

オーヴァークローム・クロニクル

あとがき




ご覧の通り、真崎桐哉のユニット、オーヴァーサイト・サイバナイデッド・クローマティック・ブレイドフォース、通称オーヴァークロームの誕生から終焉までを追った構成になっています。

オーヴァークロームの仕掛け人、ディレクターの佐伯さんの視点から始まり、相方を務める有栖川氏の視点、ファンの女の子視点、有栖川視点とめぐって最後にまた佐伯さん視点で締めくくる。

そのあいだに周囲の人々が真崎桐哉に何を感じ、何を求め、何を受けとったかがたいそう主観的に、感受性豊かに、ときにひりひりするくらいに先鋭的に、描かれている。

なんて痛々しい話なんだろう。
と思いましたが、思春期というものはそういうものかもしれない。
皮膚を剥がされた赤裸のまま、毎日針をグサグサとさされるような気持ちで生きていくのが青春なのかもしれない。

まだ未熟だから、弱いから、自分に何ができるのかわからないから、世界にさらされると痛くてしかたがないのかも、しれない。
だからすべてに敏感になって、自分の中に閉じこもったり、過度に防御して人を傷つけたりもして、その結果自分も傷ついてしまう。

そんな人々のカリスマが、桐哉だったのかなと思いました。

佐伯さんにとって桐哉は青春の忘れ形見。
有栖川氏やファンにとっては、自分ひとりでは進めない道を切りひらいてくれる先駆者で、世界に自分をつなぎ止めてくれる命綱。

でも、桐哉自身はなにを思いなにを受けとめなにを求めていたのだろう。

それが具体的には書かれていないことが、この作品の深い余韻になっているように思いました。
藤谷先生や朱音ちゃんとの絡みで断片的に見えてくるものはあるのですけどね。

初読の時にはそこで止まっていたのですが、今回読み返してみて、桐哉の年齢が遠くなったことも手伝ってか、私には桐哉が痛々しい少年に見えるようになってて、それはこのシリーズを読み返しはじめた時から感じていたのですが、ちょっとした驚きでした。

桐哉は自分が世界と戦うための武器が歌であることを知っている。
けどその使い方をまだマスターしきっていない、全開マックスでしか使うことができない、不器用な少年だったのか。

異腹の兄においてきぼりにされて寂しくて、自分の存在を認めてもらいたくて俺様で、好意の表し方が乱暴でひねくれていて、そんな自分にかなり苛立っている少年だったんだ。

オーヴァークロームという枠の中で、他人に多大な影響を与えてきた桐哉は、自分自身もその活動や他人によっていろんなものを与えられてきたんだなと、ラストでしみじみと感じました。

もう、機械仕掛けでなくとも歌える。
生身の自分で勝負ができる。

そうなった自分を見てくれ、と言っているような気がしました。

ところで、朱音ちゃんて桐哉のファンから見るとすごく羨ましい立場なんだなとあらためて認識。
で、桐哉はなにゆえ朱音ちゃんをかまうのかと考えてみたのですが、朱音ちゃんが自分の武器を使う必要を感じずに健やかに育ってきたことへの、ひそかな憧れと嫉妬と庇護欲なのかな。

藤谷先生については、ちょっとひねくれてぐれてみたけど、やっぱりお兄ちゃんが好きなんだなと思いましたw


余談も余談。

このシリーズって回想シーンが全然無いんですよね。この間気がついたのですが。
過去に関する情報は、すべて登場人物のなにげない台詞をつなげて推理しないと出てこない。
ここには今この瞬間、つぎつぎに飛び去って過ぎていく「今現在」の出来事だけが書かれている。
時間は逃げ足が速いのです。つかまえられないのです。戻ってこないのです。


さて、既刊分を制覇しました。
これでようやく完結編を読むことができます。
うふふ。楽しみ。

イデアマスター―GLASS HEART (バーズノベルス)
若木 未生 藤田 貴美
4344815750

『毎日かあさん 6 うろうろドサ編』

毎日かあさん 6 うろうろドサ編
西原 理恵子
4620770590



借りて読了。

マンガ家西原理恵子の子育て日常を題材にしたノンフィクションほのぼのマンガ。

子供の不思議で理解不能で面白くて可愛いところが爆発している、オールカラーの新聞マンガです。

西原家の子どもたちもどんどん大きくなってきて、ついに息子さんは小学六年生。
相変わらずむちゃくちゃ楽しいけど、この「子供の楽しさ」は遠からず失われてしまうんだよなあという予感が漂ってきてちょっと寂しくなってしまう巻でもありました。

そうなのよ、子供ってどんどん子供という生き物から脱皮していってしまうのよ。
無邪気さや荒唐無稽さがどんどん少なくなっていって一人前の人間になってしまうのよ!

作者が「うちの子どもたちは成長させない~」と言ってしまう気持ち、わかります。

しかしいつまでも子供のままで一人前になってくれないとすごく困るわけで。
とてもジレンマなのですよねえ。

だからいま、この瞬間を満喫しないとなーとしみじみしてしまいました。

いや、私の子供じゃないんだけどね。
妹のなんだけどね(苦笑。

と、日常編は理屈抜きで楽しいです。

でも外国にご飯(もしくはゲテモノ)を食べに行く話はなー。
わたし、外国の話ならば旅人視点じゃない住人視点のダイレクトな物の方が好み。
テレビの紀行番組もタレント案内人でワンクッション置かれるだけで興ざめの人なので。

日常編つづきの中でちょっと目先がかわるからこれでいいのかもなーとかは思います。

個人的にはこれからの麦ちゃん5の行く末に興味津々ですw

余談。

ふと本の奥付を見たら、タイトル「毎日かあさん 6」の「6」に「シックス」とルビが振ってありました。
もしかしていままでも「ワン」「ツー」「スリー」だったりしたのでしょうか。

『お鳥見女房』

お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194238



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読了。


江戸時代に将軍家の鷹狩りの下準備をするお鳥見役の家に生まれ育った女性と、その一家の日常に起きるさまざまな出来事をおだやかに描く、時代家族小説シリーズ開幕編。

剣客物の血と肉体の飛び散る様に慣れることができず、切ったはったのない物ならば大丈夫かもーと借りてみた一冊。

主人公は既に成人した子供もいる一家のおっかさん。
家は代々お鳥見役として将軍家の鷹狩りの下準備のうらで密偵役もこなすという御家人のお家柄。

禄高もたいしてないのにつぎからつぎへと厄介ごとを背負った居候がころがりこんでくるけれど。
子どもたちの賑やかな声に四季折々の自然の情景、親子のひかえめなおもいやり、淡い恋心を織り交ぜながら、殺伐とした出来事すらもまろやかに結末を迎える。

すべてはヒロイン、珠世さんのえくぼの笑顔が象徴しています。
陽の光につつまれているようなほんのりとした気分にさせてくれるお話でした。

その分、事件の本質に向かいあわずに消極的にやり過ごしているという印象も受けてしまうのが残念でしたが。

珠世さんで丸く収めてしまうかぎり、この話はこういうふうなテイストでありつづけるんだろうなあ。
そういうところがちょっと私には微妙だったのですが、これは慣れで克服できるものかもしれないとは思う。
自然や情緒の描写はとてもたおやかで好みです。
雑司ヶ谷って江戸時代には田舎なんですね。


余談。

江戸時代の女は四十過ぎるとおばあさんになっているんだなと、あらためて認識させられてビビリました。
珠世さんの年齢は明記されていないけど、珠世さんが生まれる前に立てられた家が四十余年経ってるってことは、珠世さんどう高く年を見積もっても四十そこそこです。

それで二十三を頭に四人の子がいて、長女は嫁に行き孫を産んでいる。

そのくだりを読んで「ぎゃあ」となりました(汗。

昔の人がはやく大人になっていたわけがわかったような。
こんなタイムテーブルで人生生きていたらモラトリアムしている暇なんかない。
自分は何者かなんて惑っていたら食っていけないもの。
自分のしたいことなんて探していたら、のたれ死にだ。

寿命が延びて時間が余って、人間はなかなか覚悟がつかなくなって成長できなくなったのか……しら。

とりあえず、つづきも読んでみます。

蛍の行方―お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194254

「白と赤のガリアード」

松木響子さん作「白と赤のガリアード」読了。

エリザベス一世時代のイングランドを舞台にした魔法ファンタジー。短編。完結済み。

錬金術や宮廷のディテールの書き込みが嬉しいです。
現実と幻想が交じりあう瞬間の奇跡にうっとり。

『熱の城 GLASS HEART』

GLASS HEART 熱の城 (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 チカ
4086001160


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読了。

青春バンド小説のシリーズ八冊目。


全国ツアー後、テン・ブランクはつぎのレコーディングに入っていた。相変わらず藤谷先生はみずからの意志で多忙をきわめ、体力的な限界値ギリギリ。ギタリスト高岡尚は家庭の事情を伏せて働きつづけ。朱音は進学するかどうかで悩んでいた。そんななかで藤谷は坂本の書いた楽曲をつぎのシングルにしたいと提案する。




坂本君視点の「ストロボライツ」で始まったこの巻ですが、意外に、といっては失礼かもしれないが坂本君一人称がとてもわかりやすくてびっくりした。
感情を交えない、いや交えたくとも交えられない観察者的な文章だからでしょうか。

その後、朱音ちゃん視点に戻ったら浮き沈みが激しくて、まさしく「女の子は感情を無駄遣いしている」気分になりました。
ま、それが女の子という生き物ですがw

この巻のテン・ブランクは世間的には音無のかまえ。
けれど、内部では藤谷先生がテン・ブランクを自由にするために取ってきた仕事で不自由になってしまっているという矛盾した状況に加えて、高岡君の事情とか朱音ちゃん進学とかいろいろと葛藤中です。

バンド仲間って音楽で集っているのだけど、人間だから音楽だけでは割り切れないいろいろがある。
でも、藤谷先生の音楽はそれを忘れさせてしまう強い魔力があるのだとも思いました。
なんというか、呪いに近いような魔法。
かけられたひとがどんなに危険なことでも喜んでほいほい先生に従ってしまうような、危ない力です。

藤谷先生は自分にそんな力があることを普段は自覚しているけど、使う時は無意識なんだな。
かれが凶悪なのは、ときどきふつうの人間に戻ってみせるところですよ。
そして素直に謝ってしまうところ。
謝りながら、ほんとうは全然悪いと思っていないところ。
自分の力にとても自信があるのですねえ。
でも、ときどきは使い方に迷いが出ることがあって、そのときかたわらに同志(弟)桐哉がいたりする。

その力を失ってしまったら、かれはいったいどうなるのだろうと、ふと不安になりました。


しかし、活動休止中に朱音ちゃんは坂本君への親近感を深めているのかと思ったら、いきなり!
そのいきなりのきっかけが真崎桐哉で、やっぱりおまえなのか!

衝撃的なラストで、ええっ、このあとどうなるの!
ですがつぎの巻は番外短編オーヴァークローム編です。

そういえばこのあたりはすでにサイト開設済みで昔の感想が過去ログのどこかにあるはず。
そんなことを書きつつ、読み返す気はなかったりする。面倒がりやなのです。


LOVE WAY―GLASS HEART (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 チカ
4086002094

20100319の購入

ネットで注文していた本が届きました。

氷上都市の秘宝 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723039


以上、購入。


このところ読書ペースが落ちているのと、先月からちょこちょこと購入したりいただいたりしたので、めずらしく積ん読がたまっています。

本を手に入れた瞬間はとても幸せで「やったー!!!」となるのに、その後なかなか手にとれないのは集中力がないせいか。

とくに昼間に本が読めなくなったのが痛いです。物理的な障害はないのに集中力がないのです。

最近もっとも本を読むのにしっくりするのは布団の中なのですが。
それって一番睡魔に襲われやすい場所……(苦。

『バガボンド 12』

バガボンド(12)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063287793



借りて読了。

剣豪宮本武蔵の若き日々を描く、時代アクションコミック。シリーズ第十二巻。


……又八よ……。
溜息。

武蔵のエピソードがインターバルになると出番が回ってくる又八君ですが、かれの話は下へ下へと落ちていく話なのでどうもなあ。
始めのうちはハラハラしていたけど、あまりにも見境なく落ちていくばかりなのでちと疲れてきましたよ。
景気悪すぎ。

上昇し、どんどん精神的になっていく武蔵とバランスを取るために俗の位置にいるのが又八だとわかっているのですが、かれのせいで振りまわされる人が増えていくのがやるせない。

両極端のふたりの中間位置に立つ人物がいたらなあと、埒もないことを考えたりしました。

権叔父がそういうひとだったみたいなのに、出てきた途端にこれって哀しすぎ。

又八がもうすこし自分を客観視して冷静に行動するようなエピソードって出てこないのかな。
でもそのときは武蔵が俗にいないといけないわけで、それはありえない気がした(苦笑。

おばばに憎まれているとしったときのおつうちゃんが可哀想でしようがなかったです。

武蔵が鎖鎌のひととの対決に入ったので一息つけました。
これでしばらくは又八君ともお別れか。
又八君の人生は武蔵よりも波瀾万丈かもしれない。


バガボンド(13)(モーニングKC)
吉川 英治
4063288048

『ラピスラズリ』

ラピスラズリ
山尾 悠子
4336045224


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読了。

独特な文章で夢の中へとひきこんでゆく、絵画のような幻想小説。連作中短篇集。

幻想短篇集を読みたい、夢を見ているような気分の、と呟いた時にお薦めされて、そういえば! と思い出して借りました。

予想と期待に違わない、ディープな幻想小説でした。

収録作品は以下の通り。


銅版
閑日
竈の秋
トビアス
青金石




文章がとにかく独特。息継ぎ少なく、淡々としたリズムを刻んでゆきながら、世界を漂っていくような感じなんです。

シーンごとに視点人物は一応いるのですが、その人物の中にいながらその中に視点が留まらない。
視点人物というより、基点人物といったほうがいいような。
人物と物語世界の溶け合うその狭間に埋没しかけながら、起きる出来事を感情ぬきで克明に描き出していくような。

まるで、夢の中に迷い込んでいくような、不思議な感覚に陥ってしまう文章なのです。

その文章があつかうのが、いずことも知れない場所にある大きな館に住まう謎の冬眠者の物語。

はっきりとした説明がないままに読み手のつれてゆかれる謎めいて不思議な世界で起きる事件は、やはりはっきりとした輪郭を持たないまま、基点人物の受けとめたバラバラのシーンとして提示され、全体像がなかなかあきらかになりません。

不思議な世界に耽り、謎に思いを巡らし、ときに混乱しつつ、夢見る気分にひたる。


これはそうして楽しむ、まさしく言葉によって紡ぎだされた夢なんだなーと、うっとりしながら読みました。

いろんな謎が解けないままに残った初読。
読み返してあらたな発見をする再読。
あとはひたすら言葉に酔いしれてこの世界にどっぷりとつかり、楽しみたい。

そんなことを思ってしまった、究極の幻想小説です。
キャラクター小説や波瀾万丈の大河小説などをお求めの方にはお薦めできない、読み手を選ぶ本だと思いますが、私は大好きです。

だいたい、ふつうの本は一回読んだらもう気が済むのです。
読み返すだけで異例中の異例。
一度に三度もなんて、ありえない(笑。


山尾悠子作品集成
433604256X


歪み真珠
山尾 悠子
433605021X

『冒険者たち GLASS HEART』

冒険者たち―GLASS HEART (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 ちか
4086000016



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読了。

青春バンド小説「グラスハート」の第二部開幕編。


新たなマネージャー上山源司を迎え、全国コンサートツアーに出たテンブランク。そのあいだも藤谷は他の仕事を受け続けるが、有能な上山のおかげでバンドはスムーズに動き始めていた。ツアーは自分たちの音楽を受け入れくれる相手との出会いの場。そのことをあらためて感じ、藤谷への思いを対等なミュージシャンになることで昇華しようと決意した朱音は、学校と音楽活動の両立にがんばるが。




ここから第二部だったのね……。

以前読んでいた時に意識したのは、装画が変わっちゃったんだということで。
装画がかわるとこんなに作品そのもののイメージも変わるんだということだった。
装画ってすごく大切というか重要なんだなーと、今回も感じました。
羽海野チカさんの絵は嫌いじゃないんだけど、すごく可愛くてハートフルな印象でちょっといままでの「グラスハート」とは違うんですよね。
でも、この絵のついた「GLASS HEART」を読むと、そんな感じの話に読めてしまうから不思議です。

話はすごく順調な滑り出しでした。
以前の腹に一物マネージャーが去って、代わりにきた源司さんがとても包容力とこころざしのあるマネージャーで、バンドに重しができた感じ。

ツアーのじつに主観的にリアルな臨場感が圧倒的で、興奮が止まらない感じが素晴らしかったです。
バンドは筏で大海にのりだした冒険者たち=仲間なのですね。

朱音ちゃんはいい意味で十代の不安定をキープし、さりげなく坂本君との関係が暗示されてちょっとドキリとし、でも新幹線で出会った真崎桐哉にはなぜか見透かされている?

藤谷さんのファンで楽曲を書いてもらったアイドル日野ひびきの存在が、これからの台風の眼になるのか。

順調に走り出した話ですがやはりそのまま穏やかにことが進むはずはなかった。
朱音ちゃんの体調を気づかいつつ、次巻に進みます。


GLASS HEART 熱の城 (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 チカ
4086001160

『犬夜叉 46』

犬夜叉 (46) (少年サンデーコミックス)
高橋 留美子
4091205585



読了。

戦国時代へトリップした女子中学生日暮かごめが、半妖の少年犬夜叉や仲間たちとともに四魂の玉の欠片を求めて旅をする、伝奇アクションコミック。シリーズ第四十六巻。


とても久しぶりに読む犬夜叉です。
前巻はどういう話だったのかなかなか思い出せませんでした(汗。
たしか弥勒が風穴に大きな傷を負ってもう治らない、とかいうことになっていたような気がします。

それでクライマックスがようやくやって来るか、と期待したんでしたね。
その予想はそれほど外れてはいなかったようです。
奈落が、一度は切り捨てた鬼蜘蛛の心をとりもどしに戻ってきている!

ここ数巻、奈落の葛藤で話が終始していたのですが、それが終わったのだから違う展開が見られるはずです。

と思ったら、すぐにもやって来ましたよ、そのあらたな展開が!
ここしばらくなかったかごめちゃんがメインの話に、居住まいを正しているところです。

もう一気に最後まで読んでしまいたい!
それができないからこうしてちまちまと借りて読んでるんですけどねえ。


犬夜叉 (47) (少年サンデーコミックス)
4091206808

20100312の購入

図書館本を受け取りに行ったついでに本屋へ。

目的の本がついに捕獲できなかったため、目先をかえて(自棄になってともいう)購入。

晏子〈第1巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444218


眼をつけてより数年越し。ついに買ってしまいました。
宮城谷作品は図書館にも当然のごとく蔵されているのですが、期限にせかされて読みたくない気持ちがまさって借りることを躊躇しつづけていた。

今回は忘れ去られていた図書券を発掘したので踏ん切りがつきました。
つづきを買うのはいつになることやら。


ちなみに、眼にすることも叶わなかった新刊はこちら。

氷上都市の秘宝 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723039


ネット書店で購入します……たぶん。

「君は冬の陽に目覚め ――戦国恋話」

御桜真さん作「君は冬の陽に目覚め ――戦国恋話」読了。
日本戦国時代風異世界年代記。乙女向け。長編完結済み。

戦乱の時代に当主の家に生まれた異母兄弟の絆のお話。
若くほほえましく哀切でした。

『雪華ノ里 居眠り磐音 江戸双紙4』

雪華ノ里―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英
4575661406



[Amazon]


ゆえあって藩をぬけた若き浪人坂崎磐音の活躍を描く、時代小説シリーズ第四巻。


前巻で国表の騒ぎに一段落ついたものの、許嫁がみずから遊里に身を売ったと聞かされた磐音は、健気な奈緒殿を求めて旅に出ます。

うーーーーーん。
いったいこの巻は何を書きたかったのか。

江戸時代には日本のどのへんに遊里があって、それぞれの特色はこんなんですよーということか。

行く先々でその筋に認められどんどん高値でひき抜かれていくので、身請けに必要な金額がはねあがっていくことで、奈緒殿の価値を高めているのか。

いきずりの遊里の近辺での騒ぎに巻き込まれさせて磐音さんに無理矢理チャンバラを演じさせようというのか。

事件とチャンバラシーンばかりでドラマがないので、読んでいてわくわくするところがなかった。

旅のはじめに出会った居合いの達人が最後に登場した時はちょっと期待したのに、けっきょくこんなふうに終わっちゃうのかー。

ようやく江戸に戻ってきたけれども、このつづきはたぶん読まないです。
私には剣客ものは合わないのかもなー、と思ったので。
そういえば池波正太郎の『剣客商売』も途中でやめてしまったんでした。
気がつくのが遅いです……鈍くさいやつ。

このつぎは町人ものにトライしてみよう。

『バガボンド 11』

バガボンド(11)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063287637



借りて読了。

剣豪宮本武蔵の若き日を描く、時代アクションコミック。シリーズ第十一巻。

あいかわらずの画力で精神的な局面まで描き出す、迫力の「男の戦い」マンガです。

眠る柳生石舟斎と対峙する武蔵は、あいての大きさとおのれの卑小を知る。
客観的に自己を認識したってことかな、これって。
石舟斎という人物の偉大さを認識できたことが、自己認識にも繋がったということか。

私が考えていたのは、石舟斎って、このときお幾つなんでしょうかということだったりしたわけですが。
一見老いているようでいて、よくよくみてみると皺はあるけどたるみはどこにもないんですよね。肌にもなんとなくハリがあるし。

「人間五十年」の時代だから五十くらいなのかなひょっとして。とか。

自己認識に至った武蔵はそれからもちろん自己を鍛錬するための旅に戻ります。
かれには他人を思いやる余裕はあれども世話をする余裕はないので、おつうちゃんと弟子はおいてきぼりということに。

他人事だとしようがないなですむけど、置いていかれたほうはたまりませんねえ。

おつうちゃんが気丈にふるまうのがけなげであります。

いっぽう、ふたたびの又八くん。
登場するたびにヘタレ度が上昇しております。
母親と会ったら村に戻ればいいのに、母親ともども武蔵に取り憑かれてるんだなこれは。

武蔵と違って又八はどこまでもおのれを知らない、知りたくない人間で、知ることに不安とか恐怖を抱いているのかもしれないと思いますが、かあちゃんまで一緒になって煽ってどうするよ。
ふりまわされてる叔父さんがたいへんに可哀想です。

そんな物語には鎖鎌の達人が登場、というところで次巻へとつづく。

バガボンド(12)(モーニングKC)
井上 雄彦 吉川 英治
4063287793

『魔法使いの娘 8』

魔法使いの娘 (8) (WINGS COMICS)
那州 雪絵
4403619592



借りて読了。


日本一の陰陽師に育てられた娘が父親がらみでオカルトな事件に遭遇するあやかし人情マンガ、シリーズ完結編。

パパが自分の両親を殺したという事実を知った初音ちゃんと、初音ちゃんが知ったという事実を知ったパパとの、「最後の対決」というこれ以上ないクライマックスの完結編です。

パパはどうして初音ちゃんの両親を殺してしまったのか、どうして初音ちゃんをひきとったのか、どうしてきちんと修行させてこなかったのか。

それらの疑問は思いがけないほど危険なパパとの対決のサスペンスフルな展開の中でひとつひとつ解明されていきます。

パパとの対決はそこらのあやかしとのものより、ずっとハードで容赦なしです。
パパと初音ちゃんの父親との過去を垣間見た初音ちゃんと読者は、鈴の木無山の人間的な欠落を目の当たりにして呆然。

絶望的な気分に陥ったところで今度は思わぬ助っ人が現れて吃驚仰天。

いやー、初音ちゃんのお父上ってかっこいいなあ!
あ、バラしてしまった。

この巻、手も足も出ないと思われた無山の罠の中で、人間として弱くていいかげんでずるいパパを初音ちゃんが読み解くところが一番の醍醐味だなと思いました。

無威さんやジュニアさんの過去がわかって、ふたりの人格もようやくつかめたし←オイ。

兵吾がかつて初音ちゃんを殺そうとしたことは私がすっかり忘れてましたが、いや、たぶん忘れていても問題ないです……と思いたい。

忘れていたといえば、シリーズ的にこれまでのひとつひとつの話はほとんど忘れていたのです。
というか、まだ思い出せないので忘れているといったほうが正しい。

忘れたなかで個人的に一番気になるのは、小弥太ってどういう性質のあやかしだったんだっけ? ということだったりします。うーん。思い出しても意味はない気もするけれど。

ということで、鈴の木無山という名のあやかし捕獲の話はこれで完結。
濃密な人間関係の話が作者特有の乾いた描線で描かれるとあまりドロドロしないので読みやすかった。

こういう題材ならもうすこし叙情性が欲しいような気が個人的にはするけど、人間にポイントをしぼった話だし、これはこれでいいのだと思いました。


そして続編がすでに連載開始されている模様です。
タイトルは「魔法使いの娘ニ非ズ」。
パパを人間にする話なのかなと漠然と想像中。

『AGE/楽園の涯 グラスハートex.』

AGE 楽園の涯―グラスハートex. (コバルト文庫)
若木 未生 橋本 みつる
408614350X


[Amazon]

読了。

青春バンド小説「グラスハート」シリーズの番外短篇集。
収録作品は以下の通りです。


AGE
楽園の涯
オクターヴ 楽園の涯II
素晴らしい日々 楽園の涯III
New Song

GLASS AGE――4年後の約束
あとがき




「グラスハート」本編が朱音ちゃんの視線で藤谷兄弟を追った話であるなら、こちらの番外編は他者の眼を通して追った高岡尚の話だなと思いました。

「AGE」は著者のデビュー作で、高岡尚がギターを持つことになった経緯の話。

「楽園の天涯」シリーズは、高岡尚と藤谷直季がいかにして出会い、親交を結んだかの話を、それぞれ別の三視点で描いている。

なかに高岡くん本人視点が混じっているのですが、これ、どうよ……。まるで客観性のない、傍若無人なまでに超個人的な世界の話で、ここまでくるともう小説じゃなくて半分は詩みたいですね。いっそ爽快(苦笑。

このシリーズ、主人公は他者視点で書いてもらった方がいいような気がしました。

「New Song」は、かつて高岡君とかなり親密だったけどたぶん男女の仲にはならなかった女性の視点で現状のかれを描いた話。
この話がいちばん開放的で前向きで大人な気がしました。
ま、書かれた時系列的に、デビュー作とは十年ほどのへだたりがあるので当然ですね。

読んでいて、高岡君の高校時代の音楽の話がもろに私の青春時代と被っているので、ものすごく遠い目になりました。
ワタシ的に言えばスティングとかスティングとかスティングとか。

尾崎豊に関しては私とは年以外の接点があまりないのですが、当時通っていたレコード屋(まだレコード屋だった!)でレコードを買うとはんこを押してくれるカードにはなぜかアーティストの名前を書く欄があってですね、そこに買っていない尾崎豊の名前を書かれたことがあるなあ(書くのは店員のお仕事)。私が買ったのは尾崎亜美だ! とそれを見て心の中で叫んでいた。それくらい尾崎豊がメジャーだったということなのでしょう。

それからリッチー・ブラックモア。
弟の鳴らしている音楽であること以上には縁がないと思っていたのに、いまや「ブラックモアズナイト」を熱心に聴いている私がここにいる。

聴いてきた音楽ってひとの歴史でもあるなーと、しみじみ感じたことでした。

ところで、とばして読んだ『いくつかの太陽』で第一部が終わりだったことにいまさら気がつきました。

つぎは再開の第二部です。

冒険者たち―GLASS HEART (コバルト文庫)
若木 未生 羽海野 ちか
4086000016

『ピアノの森 16』

ピアノの森(16) (モーニング KC)
一色 まこと
4063727521



借りて読了。


社会の底辺に生まれ育ったピアノの天才・一ノ瀬海とかれをめぐるひとびとの人間模様を描く、音楽コミック。シリーズ第十六巻。

ショパンコンクールの第一次審査、ようやく終了!
前巻にひきつづいて海の演奏がつづき、固唾を呑む聴衆たちの反応と同時進行で過去の出来事を登場人物の回想形式で描く、という形式で描かれています。

シーンとしては海がピアノを弾いているだけ。
なのにここまでひきこんでしまう。
やはりすごいなーと思います。

今回は阿字野先生の回想により海とのこれまでの道のりがようやく明らかになり、とても大変だったのね~ということがようやく判明します。

そして、これだけの困難を乗り越えてきた阿字野先生がどれだけ海に賭けていたかもよくわかる。

読んでいて、この話、海は主人公という名の虚ろであって、全てをまとめるための求心点であるような気がしました。

海という人間は、たいてい他の人物の視点から描かれているんですよね。
他の人物が海に持つ感情と記憶と執着で海という人物は形づくられている。

そもそもの話の冒頭からして雨宮君がいなければ海は存在しなかったのでした。

天才である海を説得力を持って描くのには最適な方法だろうと思いますが、そうやって浮かびあがらせた人物はどこか肉体的な存在感に欠けてしまうような気がします。

そのせいか、私は、海も阿字野先生のようにとつぜんピアノ界から姿を消すようなことになってしまうのかもしれないと、漠然とした不安を感じてしまったのでした。

ショパンコンクールの行方も気になるけど、海のライバルたちのそれぞれの事情も気になるけど、この話ってハッピーエンドになるのだろうか。

心配だ……。

俺たちフィギュアスケーター

俺たちフィギュアスケーター [DVD]
B002P3CNBE



妹のリクエストで借りて見ました。
おバカ系フィギュアスケート映画w

表彰式で殴り合いの喧嘩をしたため男子シングルから永久追放を受けた二人が、フィギュアへかける情熱のあまりペア競技に進出するという設定からしてとんでもないのですが、つぎからつぎへと繰り出されるギャグ、それもシモネタ満載なのがもう、どうしようもなくおバカでたまらなく可笑しいです。

おかげですごく笑えたのに子供には見せられないよ、どうしてくれる(苦笑。

身長180センチ超の男たちが氷上でくりひろげる、スペクタクル過ぎてありえない演技も見物です。
メイキング見て、ああ、そうかこうやって撮ったのね~と思ったけど、これって冗談映画だから、ぜんぜん興を削がれたりしませんでした。

演技や採点方式にまったくリアリティーが無く(必須要素とかきっとないです。ジャンプもスパイラルもスピンもない演技もありです)、おかげで細部にこだわる必要を感じないのもグッドです。

画面のあちこちに、アメリカスケート界の有名人がちらほらと見えるのも楽しい。
私がみつけられたのは数人。
ナンシー・ケリガン、ブライアン・ボイタノ、サーシャ・コーエン、スコット・ハミルトンは本人役で出てますし、ちらっと映像だけつかわれた演技シーンには佐藤有香がいたようなw

それから主役二人が出場した冬期スポーツ選手権フィギュアスケートペア部門(モントリオール大会!)にエントリーしているなかの日本人ペアに「SUGURI」という名前を見つけました!

だからなんなの、って感じですね(苦笑。

かれらは本当に出てくるだけで、演技は披露してくれないのでちょっと残念でした。

おまけ映像に「スコット・ハミルトンへの20の質問」というのがありましたが、これもジョークばかりだったw

この映画、もし映画館に観にいってたら後悔したかと思うけど、DVDレンタルならこういうのがあってもいい。
かるくて後腐れのない、娯楽映画だと思います。

更新情報

創作サイトを更新しました。

和風異世界短編「失せ物探し」を公開。

およそ一年前にSNSの企画で書いたものに加筆修正を施したものです。
原稿用紙38枚相当。

『花芒ノ海 居眠り磐音 江戸双紙3』

花芒ノ海―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
佐伯 泰英
4575661341


[Amazon]


読了。

ゆえあって藩元を出た浪人坂崎磐音の活躍を描く、時代小説シリーズ第三巻。

なんというスピード展開。
国表での陰謀で友人を失った、しかもひとりは自分の手で殺したという話の顛末が、こんなにとんとんと進んでいいのかと思いつつ読みました。

たしかにこれだけ早く話が進めばだれるところはないけれど、ちょっとご都合主義がすぎるのではなかろうか。
歴史小説ではなく時代小説で、しかも剣客ものだからこういうのがいいのかもしれませんが、私はもう少し丁寧に書き込んで欲しかったなと思います。


湯布院に行ったところは、場所のイメージが浮かんだのでちょっと嬉しかったです。

もしかすると、このあたり、シリーズとしてはいつ打ちきりになるかわからない状態だったのでしょうか。で、展開を速くして話にケリをつけたかったのか。

というわけで、けっきょくこの陰謀話はこの巻であっさりと片がついてしまいます。
残った問題は磐音さんの許婚だった奈緒さんの行方がわからずじまいであるという点。

このあとは奈緒さんを探して放浪することになるのでしょうか。
磐音さんが江戸に戻るためにはまだ時間がかかりそうですね。

にしても、剣客ものってお約束だから仕方ないけど毎回刃傷沙汰があって、それがまたまったく容赦なしなので私としては痛くてたまりません(苦笑。

必ず相手を傷つけるか殺すかして決着つけるというの、どうにかならんものだろうかと、しょうもないことを毎回思ってしまう。
こういう解決方法、ぜったいに遺恨が残るに決まってるよーと。

そしてまた、磐音さんの剣はケリをつける時は必ず喉を切り裂きに行くので、血しぶきの飛び方がすさまじいのです。

ラストがチャンバラで終わる話などはすごく嫌な気分になるので、はやく目当ての話が来てくれないかなあと考えてしまうのでした。

こうして読んでいるので面白くないわけじゃないんだけど……。

雪華ノ里―居眠り磐音江戸双紙 (双葉文庫)
4575661406

『はなしっぱなし 上下』

はなしっぱなし 上 (九龍COMICS)
五十嵐 大介
4309728405



いただいて読了。

『海獣の子供』『魔女』の五十嵐大介の初期短篇集です。
森羅万象のすべてを感じて生きている、まるで古代人のような感性が強く繊細な画力によって表現された、すごい作品群でした。

ジャンル的には奇妙な小話系の幻想譚になるのか。
しかし、この作品群は根っこから葉の先までずぶずぶとファンタジーだなと私には思えます。

ファンタジーって世界を丸ごと感じて表現するジャンルでもあると思う。
そのなかにはむろん人間も含まれているわけで、その生と死も世界の一部であるわけで。
ひとがひととして生きて思考する限り、世界の中に自分の存在意義を見いだそうとすれば、みずからの生と死を思わないわけにはいかないものだと思うのです。

だから人が世界を感じて思うことには、生と死にかかわる物事が必然的に含まれるものなのではないか。

否応なしに世界と直面していた古代の人々はつねに森羅万象におのれの行く末を重ね見た。
それが神々の存在をうみ、神話を育てていった。

このマンガには、その神話の原点、世界と対面した時に人が感じる純粋な思いが表現されているように思うのです。

現在から見るとまだ絵柄としては完成されていないけれど、話を紡ぐための画面構成力は初めから図抜けています。
前半はまだ線に迷いや弱さがありますが、あるときから突然きっぱりとした力強さがあらわれて、世界がさらに鮮明になる。

そして最後にはすっかり五十嵐大介の世界ができあがっています。

個々の作品に関してあれこれとは書きませんが、日常にふつうに転がっている風景にこれだけの夢幻を見ることができる視力に圧倒されました。

現代に生きる人間である私たちはこうした感性をほとんど失っているのだなと思うと、寂しいです。

はなしっぱなし (下) (九竜コミックス)
五十嵐 大介
4309728413

『いくつかの太陽 グラスハート5』

いくつかの太陽―グラスハート〈5〉 (コバルト文庫)
若木 未生 橋本 みつる
4086145928


[Amazon]


読了。

青春バンド小説。シリーズ第五巻だけど六冊目(汗。


オーヴァークロームの真崎桐哉が作った曲が、藤谷先生の曲とメロディーが被っている。衝撃の事実をつきつけられた朱音は混乱して、坂本と言い合いをしてしまう。そのとき行方不明になっている藤谷先生から電話があった。スタジオでひとり留守番をしていた朱音は、訪ねてきたモデルの有貴乃に、藤谷のかつての恩師がテンブランクを潰すためのバンドを作ろうとしていると告げられる。




うっかりと途中の番外短篇集を飛ばしてしまいました。
気づいたのは読み終えてしまってから。
番外でよかった。時系列で前後するかもしれないけど、とりあえずそう思っておく。

熱いなあ!
若さゆえの視野狭窄と感情の浮き沈みの激しさにめまいがしそうですが、それでもなお、今この瞬間を必死に生きている、という熱さがこの話の醍醐味だなーと思いました。

狭い世界での濃密な関係って、ちょっとしたことが破滅につながってしまう。
そんな危うさを抱えながらも繋がっていたいと思う彼らが、いまこのとき自分たちが幸せであることを自覚している。こんなときがそう長くは続かないとどこかで気づいているのがせつないです。

まあ、どんな関係も時とともに変質していき、ずっとおんなじままで続くことはありえないのだけれども。

この瞬間を止めていたいと思えるほど幸せな時を過ごせるのが羨ましいなあと思いました。

話はどんどんテンションが高くなっていき、作者の客観性がどんどん失われていって読みにくさも増しているのだけど、それだからこそ伝わるものがあるがあるのだなあと、それがこの話の持っている熱さなんだろうなあとしみじみ感じたのでした。

若いよね。すみずみまで若さが弾けている。
と感じる私はもう若くないということだ(汗。

というわけで、つぎは飛ばしてしまった短篇集を読みます。

AGE 楽園の涯―グラスハートex. (コバルト文庫)
若木 未生 橋本 みつる
408614350X

『縛り首の丘』

縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
エッサ・デ・ケイロース E〓@7AB7@ca de Queiroz
4560071357


[Amazon]


読了。

十九世紀ポルトガルの作家エッサ・デ・ケイロースの幻想小説。
中編二作を収録。

どうして読もうと思ったのか理由を忘れましたが、とにかくチェックしたまま放って置いたのをふと思い出して借りてみました。

ポルトガル作家の作品て読むの初めてかもしれません。

収録作品は以下の通り。


大官(マンダリン)を殺せ
縛り首の丘




「大官」のほうは当時流行していた「マンダリン殺し」というモチーフをつかった奇譚。
「マンダリン殺し」というのは、「自分とは一切関わりのない国のえらい人物をボタンひとつで殺せば大金が手に入るとしたら」という、イフの話らしいです。

というわけでここには、王国内務省のしがない官吏である主人公が夢の中に出てきた男にそそのかされて中国のマンダリンを殺したら、ほんとうに大金持ちになってしまったけれども、そのあとどうなったか、という話が、えんえんと悪夢として描かれています。

当時のポルトガルの貧乏中流階級と大金持ちはどういう生活をしていたかかがわかる中盤。
思いついて中国に旅立った後に体験する異国情緒と艱難辛苦。

それらが楽しめればこのお話は面白いかもしれません。
つまり、私は楽しめなかったわけですが。
読んでいる途中で何度も意識が途切れてしまい、はやく話が進まないものかと思ったり、こんなところにいちいち紙幅をついやさんでも……と思ったりしながら読んでいたので、疲れてしまいました。

それと比べると「縛り首」のほうがずいぶん読みやすかったです。
こちらは十五世紀が舞台の騎士と貴婦人の許されぬ恋のおはなし、とおもいきや、ぜんぜん違ってた。
そういえばタイトルはこれだったよと、話の途中で思い出しました。

私にはなんの伏線もなしにいきなり話が方向転換したように感じられたのですが、キリスト教徒の読み手には自明の理だったのかなとあとで思いました。

キーワードは聖母であります。

二編読んでみて、古きよき幻想小説のたたずまいを感じました。
折り目正しい物語でした。うん。