『戦う司書と絶望の魔王』

戦う司書と絶望の魔王 BOOK9 (集英社スーパーダッシュ文庫)
山形 石雄 前嶋 重機
4086304945


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読了。

時間の神々がつかさどる世界を舞台に、死者の記憶である本を守る武装司書たちと神溺教団の戦いを描く、SFファンタジーシリーズ、第九巻。

ものすごくひさしぶりに読んだ「戦う司書」シリーズです。
八巻を読んだあとでシリーズがアニメ化されたために図書館の予約待ち数が跳ねあがり、手を出しかねていたというのが真相です。

おかげでこれまでの出来事を思い出すのに手間取ってしまいましたが、まあそれはいつもの仕様ということで。

たしか前巻では終章の獣が総攻撃を仕掛けてきてたいへんなことになりました、という話だったような気がします。

その大変な状況を受けての九巻は、武装司書と神溺教団の起源以前、世界はいかにして今のようになり、バントーラ図書館長ルルタ=クーザンクーナはいかにして今の地位に就いたか、というあたかも神話のつづきのような過去があきらかになる展開でした。

いや、神話のつづきのよう、じゃなくて本当に神話のつづきですよ、これは!

あいかわらず現実感の薄い、理屈っぽい骨格のみの文章が、この展開にはぴったりときました。

それと、死者が本になるという奇天烈な設定で、司書が戦うというみょうちきりんな話なのに、前提となるルルタの過去はごくまじめに悲劇の英雄譚だったのでちょっとびっくり。

一個人の悲劇が一世界の存亡に直結するスケールの大きさと、神々の非人間的で機械的なまでの超越性が、無機質な雰囲気とみょうに合うなあと思いました。

意外に普通だったルルタの悲劇がなぜこんなへんな世界を作りあげたかというと、人が死んだら本になる、という設定が大きいんだなあ。
この大前提はゆるぎなく初めから存在していて、そこには疑問の余地すら感じられない。
ほかの部分は思考実験ふうでSFっぽいのに、この部分だけ理屈がないのでSFと言い切れない気がする、ほんとうに妙な設定だよなあ。

それでルルタのおかげでヘンになった世界を打破するためにいろいろと試行錯誤がくりかえされ、そのはてについに、とうとう、ふたたび終末が目の前まで迫っているというところに、つまりこの本の冒頭まで時間が進んだところでこの巻はおわりです。

途中から登場するハミュッツ=メセタの生い立ちが酷いですねw
彼女のあのひどく歪んだ性格はこうして形成されたんだなーと、たいへんに納得いたしました。
このようにさりげなく非人道的なことを書いてしまう部分も、なんとなくSFっぽい気がするんですが、それは私のSFに対する偏見でしょうか(汗。

うーむ。
なんといっていいのかよくわからないけれど、私が面白がっていることはたしかな本であります。


つづきはとうとう完結編。すみやかに読みたいけど、どうだろう。

戦う司書と世界の力 BOOK10 (集英社スーパーダッシュ文庫)
山形 石雄 前嶋 重機
4086305275


こちらは開幕編。

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)
山形 石雄 前嶋 重機
4086302578

『中世の非人と遊女』

中世の非人と遊女 (講談社学術文庫)
網野 善彦
4061596942


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読了。


日本の中世における非人や遊女といった“身分外”とされてきた者たちを職能者と位置づけて、かれらの実態を考察しようとする。雑誌などに掲載された文章をまとめたもの。

著者の論考は、学校で習った歴史とはちがう視点でながめてみる面白さと、実際にその場にいたらこうだろうなということを感じさせてくれるリアリティーが楽しくてときおり読んでいます。

この本は著者が鬼籍に入られる直前の刊行ということで、それまでにあちらこちらに発表されたものの寄せ集めという感が強く、重複もかなりありましたが、あらたに読む部分もあり、それはそれで面白かったです。

一番興味をひいたのは、検非違使と非人たちの関係かなー。
職能をもって天皇に奉仕するかれらがいつのまにか検非違使の管轄に入っていて、遊女のあがりが検非違使に入っていたりしたという。これっていまでいうなら警察が売春の元締めになってるみたいな感じなのかしらん。

それから宮中の女房は遊女とほぼイコールであるとか。
遊女のステータスがそれほど高かったということなのでしょうね。
遊女が女房になったり、その逆になったりが、それほど珍しいことではなかったといわれると、へええっ! と思います。

学会では賛否両論ある網野説のようですが、私には現代にまでつながる歴史のながれとしてとても腑に落ちる部分が多いです。

ヨーロッパではキリスト教が女性の地位低下に大きな影響があり、日本では仏教がその役目を果たしたとか。

仏教って日本の政権を取ったりはしなかったけど、広く根深く日本人の意識に影響を及ぼしているんですね。

なるほどー。

以下は目次です。


序章
第一節 聖と俗の境で
第二節 女たちの中世

第Ⅰ部 中世の「非人」

第一章 中世身分制の一考察――中世前期の非人を中心に――
 一 研究の現状
 二 非人集団の形成
 三 鎌倉時代の非人
 四 中世後期の問題に関連して
 五 むすび
 付論一 非人に関する一史料
 付論二 非人と塩売
 付論三 清目・河原人の給田

第二章 古代・中世の悲田院をめぐって

第三章 中世の「非人」をめぐる二、三の問題
 はじめに
 一 犬神人・河原者・放免
 二 童名と童形
 三 『一遍聖絵』の非人と童形の人々
 むすび
 付論四 勧進法師と甲乙人

第四章 検非違使の所領
 付論五 横井 清著『中世民衆の生活文化』をめぐって
 付論六 三浦圭一著『中世民衆生活史の研究』について

第Ⅱ部 中世の女性と遊女

第一章 中世の女性
 一 宣教師の見た日本の女性
 二 納戸・土倉の管理者としての女性
 三 旅する女性たち

第二章 遊女と非人・河原者
 はじめに
 一 清目・犬神人・馬借
 二 女性の社会的地位
 三 遊女と女房
 むすび

第三章 中世における女性の旅

終章
 一 文明史的な転換
 二 博打について
 三 「文明化」の影

あとがき
初出誌一覧

解説 山本幸司




童名と童形という異形の姿についての論は、これまでも幾度か目にしてきましたが、これをみるたびに私の頭には殺生丸とか鬼同丸とか百鬼丸が頭に浮かびます。

あやかしの名前が童名なのは、やはりそれが人ならぬものであるから、なんだろうなー。
それは今のフィクションの世界にも受け継がれているのですねえと、勝手にしみじみとしてしまうのでした。

『聖☆おにいさん 5』

聖☆おにいさん(5) (モーニングKC)
中村 光
4063729060



読了。

キリスト教の始祖イエスと仏教の始祖ブッダが、東京は立川の安アパートでバカンスをとっている、という設定でくりひろげられるおバカコメディーマンガ。第五巻。

世界二大宗教の伝説と現代日本の庶民文化をくっつけた、可笑しくて楽しくてキュートなシリーズ。
今回は双方の弟子たちが登場し、その雰囲気の違いのコントラストの強烈さが楽しかったです。

いままで係累として天使ばかりが登場していたイエスですが、ちゃんとお弟子もいたんですよね。
この弟子たちが「パネエっす!」連発の体育系というかガテン系なのには意表を衝かれました。
登場したときに一瞬ジェイムズ君かと思って焦ったあの人物は、やっぱりジェイムズ君とは違いましたが変人なことには変わりなかったです。

いっぽう、ブッダの弟子たちの生真面目視野狭窄一本槍な風情もなかなかに笑えました。

人間界の脇役たちもキャラが立ってきましたね。

今回の私の一番のお気に入りは、消防団に入った回。
ブッダにあやされる竜神がとてもラブリーv

宗教ネタはちゃんとお勉強をしたらもっと可笑しいんだろうなあと思いつつ、不勉強な私でもあはははと笑える楽しいマンガです。

ああ、面白かった~!!

この本の私の唯一の不満は、本の厚みです。
手に取ったときに「薄っ」と思いました。


聖☆おにいさん(1) (モーニングKC)
中村 光
4063726622

20100524の購入

たいへん久しぶりに大都会へ通院に。
いろんなことがあってヘロヘロになった帰り道、唯一のお楽しみとして本屋に突撃しました。


聖☆おにいさん(5) (モーニングKC)
中村 光
4063729060


晏子〈第3巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444234



以上、購入。

おかげで帰りの電車では楽しいひとときが過ごせました。

一夜明けて。

電車が遅れたせいで余裕を見た時間が吐き出され、遅れると焦りながらかぎりなく走るのに近い歩きでホームを長々と突っ切ることになり、その結果脚が張ってます。なのにバスも遅れたのですぐには乗れなかったんだよね;

『隣の病い』

隣の病い (ちくま学芸文庫)
中井 久夫
4480092668


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読了。

現在は神戸大学名誉教授である著者の、精神科医として過ごした日々の折々に書いた短文やエッセイを集めた『精神科医がものを書くとき』(広栄社・全二巻)に収録された作品をもとに編み直したものの後編。前編はおなじちくま文庫から出ている『精神科医がものを書くとき』。

繊細な感覚によって選び出された言葉を駆使した、穏やかな文章と知的で冷静な分析が魅力的なエッセイ集。

なかにはアンケートへの回答や、事典のためにかかれた文章もあります。
専門家のために書かれた文章も多く、かなりの部分で私の手には余る内容でした。
にもかかわらず、最後まで読み通せたのは、わたしにとってはこの方の書かれる文章の魅力がとても大きいからだろうと思われます。

以下、目次をあげておきます。




時間精神医学の試み
共時性などのこと
精神医療改善の一計
サリヴァンの統合失調症論
隣の病い
基底欠損〔英〕basic fault 〔独〕Grundstörung
ある臨床心理室の回顧から――故・細木照敏先生を偲びつつ
難症論
風景構成法(landscape montage technique)
フェレンツィの死と再生
オランダの精神科医たち
コラージュ私見
神戸大学医学部附属病院 第二病棟「清明寮」の開設について
牛込・晴和病院にて
芸術療法学会の二十五年
統合失調症の病因研究に関する私見
「統合失調症」についての問いに答える
清明寮の庭




引き返せない道――冷戦最終期の予想
「頑張れ」と「グッド・ラック」
一九九〇年の世界を考える
外国語が話せるということ
「疎開体験」に寄せて――佐竹調査官への手紙から
ムンク展覧会に寄せて
冷戦の終わりに思う
ハンガリーの旅
クラス会に出る
日本人がダメなのは成功のときである
霧の中の英国経験論
私の死生観――“私の消滅”を様々にイメージ
昆虫についてのアンケートに答えて
阪神大震災後四ヶ月
災害と危険介入
ウィーンの色、日本の色
幼児の寸景――戦前のタクシーの記憶




私の中のリズム――『現代ギリシャ詩選』を編んで
ギリシャ悲劇と私
詩の音読可能な翻訳について
現代ギリシャ詩人の肖像

あとがき

解説 「内地留学」の思い出から 藤川洋子




三部構成の第一部は精神医療に関する文章。
この部分は基礎知識がないと理解できないでしょう、私はほとんど理解できませんでした。
とりあえず統合失調症というのは過去に分裂病と呼ばれていたものであることは知っていますが、それだけではねえ……。

それでも時間精神学のところで中途覚醒は二時間おきが多いとかいうのは実感として納得できましたし、難症論についてもなるほどなーとこれまた実感つきで腑に落ちました。私も含めて我が一家は病んでいる構成員が多いので、なんとなくそうかーと思うところが多いのです。

第二部は国際関係に関する文章と阪神大震災に関する文章が集められています。

前者は世界がひとつになってからの近代からの戦争についての文章や、著者自身の渡航、学会や留学生を通じての体験談など。

後者は、阪神大震災に関する文章。

著者は震災後の神戸におかれた「こころのケアセンター」の中心人物として大変な尽力をされた方です。
その体験にもとづいての言葉には、実体験の重みとそれを今後にどうやって活かすかについての深い洞察が含まれています。

そして第三部は、言葉そのものと現代ギリシャ詩に関する文章。
音読可能に詩を翻訳するのってものすごく大変というか不可能に近いのではないかと私には思われますが、そこまでこだわって訳そうと努力するのは言葉の響きへの感受性が高いからなのかなあと感じました。

そして私は著者の文章のまさにこういう部分に惹かれているのだな。

内容はハードルが高かったですが、すこし背伸びをしてアカデミックになった気分になり、いろいろと個人的なお得感もあった、素敵な本でした。


分冊されたもう一冊はこちらです。

精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)
中井 久夫
4480092048

『晏子 2』

晏子〈第2巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444226


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読了。


古代中国春秋時代の斉において活躍した晏子親子を中心に、国同士の策略や戦いを描く歴史小説。シリーズ第二巻。


ついに斉の悲願・萊国の併呑へと乗り出す決断をした霊公の命により、遠征軍の将軍となった晏弱。かれは霊公にわずか五千の兵でこの大事業を成し遂げると宣言する。大胆な発言の裏には、斉の中枢にいる内通者の存在があった。かつて斉の大夫だった智将・王湫のもとに結束し、斉を迎え撃つ萊に対し、晏弱のとった作戦とは。




第二巻は、おもに萊との戦いを通して晏弱の功績を描き出し、さらに斉国内の権力争いと大国晋との対決が決定的になっていく様が晏弱の息子・晏瑛の成長とともに描かれていく、というふうに進みます。

晏弱の萊国遠征は知略の数々に胸躍る展開です。
これは戦記物ならではの楽しさかな。
もとからの視点が俯瞰的なので、地上で展開されていく攻防とはある程度距離があるはずなのですが、淡々とつづく言葉のうちからあふれる熱いものに心を揺さぶられてしまうという、なんとも素敵な文章。

晏子の周りの人びとの会話とともにおりおりにあらわれる情景がとても印象に残ります。

古代中国の舞台を詳細に描いているわけではないし、生活感があったりするわけでもない。むしろ伝聞に近いような書き方なのに、どうしてこんなにその場の風を感じるのかなー。不思議です。

そして、たいへんに格調高い。

この格調高さはサトクリフに似ている気がするけど、どこまでも主人公に寄り添ってるサトクリフとは描き方が正反対ですね。

だからかな、読んでいるとき、サトクリフは伝説もしくはファンタジーの気分になるけど、宮城谷昌光は神話もしくは伝説の気分になります。

この違いはすごく微妙なのでわたしには説明できない(汗。
あえていうならば、この巻のラスト近く、晏弱のライバル?だった崔杼のシーンにそれを強く感じました。

とにかく、ものすごく面白いです。
つづきが読みたいです、切実に。
(つまり手元にない)


晏子〈第3巻〉 (新潮文庫)
4101444234

『ロビン 風の都の師弟 2』

ロビン~風の都の師弟~ 2 (Flex Comix フレア)
中山 星香
4797359684



読了。

異世界ファンタジーコミック。のちに大魔法使いとなる初代アーサー・ロビンの物語。シリーズ第二巻。

『妖精国の騎士』の後日譚なので多少なりともそちらの知識がないとわからない部分があるかもしれません。
でも、途中までしか読んでいない私でも理解できるので十五巻くらいまで読んでいれば大丈夫なのではと思われます。

前作からひきつづいての登場人物は、アルトディアスの双子の片割れローラント、その妃になったシェンドラ姫、魔法使いの長になったファラント、何処の出身か忘れましたが(オイ;)シリル・オギニアン、あたり?


時代は戦乱の時代をようやく脱したところ。
三剣のひとふりの所有者ローラントが治める、いまだ不安定なアルトディアスで起きる事件に、魔法使い見習いで王女たちの世話係になったロビンが、巻き込まれたり謎解きを手伝ったりと活躍するお話です。

ローラントとシェンドラの間にうまれた幼い双子の姫たちがかわいいv
それにふりまわされるロビンが楽しいw

ロビンといえばファラントとの師弟関係がものすごくツボです。

思い出してみると、作者さんの描かれる魔法使いの師弟関係はいつも楽しかったですねえ。
七代目アーサー・ロビンと(ごめんなさいまたも名前を失念)とか、ローリィとエアリアンとかv

今回のロビンとファラントはとくに後者のイメージと似ているような気がします。
ロビンのほうが穏やかですが、それは後の子孫にも受け継がれているのかなあと妄想してみたり。

それからシェンドラ姫が年を重ねてなおツンデレしているのが……いいのかわるいのか(苦笑。
彼女は他人の前では自分をさらけ出せないので、王妃なんていう公的な立場がないほうが幸せになれるんだろうなと思います。

彼女に非があるとはいえ娘たちが夫にばかりなつく姿にはイラッとするだろうなあ……。
いま、ちょっとヘスター@『氷上都市の秘宝』を連想しました……。

ところで、この話、どれくらいつづくんだろう。
また大長編になったり……しないですよね? ね?

そういえば、紫堂恭子さんの『聖なる花嫁の反乱』が移籍するのはこのレーベルなんだ、ということに遅まきながら気づきました。
フレックスコミックス、レーベル名を覚えてなかったです、申し訳ないです。

開幕編はこちら。

ロビン~風の都の師弟~ 1 (Flex Comix フレア)
4797352884

『巣立ち お鳥見女房』

巣立ち お鳥見女房
諸田 玲子
4104235113



[Amazon]


読了。


江戸時代、将軍家の御鷹狩りのためにつとめる御鳥見役の一家の来し方行く末を、現当主の奥方・珠世さんの視点で情豊かにたおやかに描く、時代家族小説。シリーズ五冊目。


おひとよしの貧乏御家人の一家を切り盛りする、四十代主婦視点の日常的な時代小説も、今回は大きな節目。

ふたりの息子がとうとう結婚。

次男は他家の養子となって家を出ていき、長男の嫁があらたに家族として加わります。

ふたつの結婚式前後の嬉しいけれど少し寂しい、微妙な心理状態がこまやかに描かれていて嬉しかったです。

とくに、息子たちがすなおに珠世さんに思いをうち明けるシーンがよかったなあ。
ふたりともひねくれず親思いに育っていて、こんな息子たちがいていいなあ、でも珠世さんだからこんなふうに育てられたんだろうなあと感じました。

そして、あらたな家族、つまり長男久太郎の妻となった鷹姫さまこと恵以どのは、予想に違わぬ大活躍。

珠世さんのお父上・久右衛門とのいきさつが、ごっつうおもしろうございましたw

以前居候していた源太夫の一家もあいかわらず行き来があり、こちらは子どもたちの成長がとても楽しくて。

御鳥見役の裏のおつとめ関連はすっかりなりをひそめましたが、この日常的な雰囲気が私はとても好きです。

流しのしゃぼん玉売りの藤助さんも変わらずに登場しますが、季節とともにやってくるかれは流れゆくときを象徴するかのようですね。

いまのところこの本がシリーズの最新刊の模様です。
しみじみと感慨深いラストシーンを迎えましたが、シリーズはまだ、つづくのですよね?
今後の矢島家の展開を楽しみにしています。


シリーズ開幕編はこちら。

お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194238

『鋼の錬金術師 25』

鋼の錬金術師 25 (ガンガンコミックス)
荒川 弘
475752840X



借りて読了。


死者を甦らせようとして禁断を侵したために、肉体の一部と弟の体を失った少年錬金術師を主人公に、世界を支配しようとするホムンクルスと人類の戦いを描く、アクションファンタジーコミック。シリーズ第二十五巻。

硬質で力強い描線で描き出される骨太な画面。スピード感あふれるアクションシーン。魅力的なキャラクター。それらを周到に構成されたストーリーに集約させて圧巻の物語も、クライマックスにさしかかってきた模様です。

いや、一巻丸ごとクライマックスの途中、というかんじですね。
息をする暇もない怒濤展開の連続です。

どのシーンにも重みがありますが、今回の一番の山はアルフォンスのシーンでしょう。

大きく荘厳な扉のある白い空間。
あそこはたぶん生と死の狭間。あるいは境界。

今回はこの扉を幾人かが見ますが、アルフォンスほどここに思い入れのある人物はいなかったと思う。

あっというまに過ぎてしまったけど、あのシーンは深く心に残りました。
アルはもう一度あそこで自分と再会できるのだろうか。


ところで、この物語世界では、生と死の間には白い空間=空白しかないのでしょうか。
そういえば、この世界には神様がいないような。
宗教というものの存在もあまり感じないような。
しいていうなら錬金術がそうなのかしら。
うーむ。

雑誌連載ではまさにストーリーが最終回を迎えようとしているところのようです。
ということは、次巻で完結?

どうかみなが幸せな結末を迎えられますようにと祈らずにはいられません。
不可能っぽいけれど(苦笑。

20100514の購入

文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母
4309977340



以上、購入。

現在むさぼり読んでおります。

『おおきく振りかぶって 14』

おおきく振りかぶって(14) (アフタヌーンKC)
ひぐち アサ
4063106667


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借りて読了。

心理描写のこまやかさと日常感覚のリアルさが楽しい、高校野球マンガ。シリーズ第十四巻。

夏の甲子園予選、埼玉大会の五回戦、対美丞大狭山戦の完結編です。

前巻でなにが起こったかをかなり忘れて読み始めたりしたので、ちょっと?な感じでしたが、なんとか入りこむことができました。

そか、美丞は阿部君を標的にしてきたんでしたね。
そして、西浦は窮地に追い込まれた。

この日常の中で体験できうる限りの非日常における緊張感。
これが若者にはものすごくよい体験になるのだなあと、しみじみする展開でした。
たったの一試合、それも数イニングかのなかで、かれらの成長していく姿がまぶしかったです。

とくにレンレン。
あれだけ無自覚に阿部君に寄りかかっていたレンレンの変化には大きく目を瞠りました。
ビビリなのは変わらずですが、阿部君も深い教訓を得たことだし、このバッテリーはこれから成長しますね。

ゲーム展開的にもリアリティーを損なうことのない結末で、ああよかったと思いました。

にしても、いやなのは美丞のコーチ、中沢呂佳くんです。
自分ばかりでなく本来みちびくべき選手たちの未来を傷つける、そんな行為になにがかれを駆り立てるのでしょう。

かれがこれからどんなことになっても自業自得ですが、かれを信頼しているたくさんの人びとが傷つくことになるだろうと思うと、悔しくてなりません。

このエピソードはこの話にどうしても必要なものなのかなあ……ものすごく気分が悪いので早く決着して欲しいです。

ところで来月にははやくも次巻が出る模様。
なにかの理由により単行本化がせき止められていたようですが、これで自然な流れになってくれればいいなと思います。

20100512の購入

久しぶりに予約本を受け取りに行きました。


ロビン~風の都の師弟~ 2 (Flex Comix フレア)
中山 星香
4797359684


晏子〈第2巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444226


以上、ついでに購入。

『ロビン』は迷っていたのですが現物を見たらやはり。
で、一冊買ってしまったのでどうしようかなと思ったのですが、現物を見たらつづきが読みたくなってやはり。

こうしていったんはずれたタガは締め直すのがたいへんなのでした。

『ちはやふる』1~8

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)
末次 由紀
4063192393



借りて既刊を一気に読了。

評判の青春友情かるたマンガです。
借りたという知り合いに読む? と聞かれて、わざわざ読みにいってきました。
一巻から一気に二時間近く読みつづけました。

……面白かった!

なんて熱い少女マンガなんだろう。
ていうか、このストレートな展開、むしろ少年マンガより熱血していないか。

競技かるたという一般的には知名度の低い分野で懸命に努力する少女少年たちの、一途で懸命な姿がとても印象的です。
専門的なことを踏まえつつ素人にもわかりやすい話運びで、強くなりたいという純粋な思い、仲間たちとのチームワーク、試練にぶちあたるたびにのりこえていくハードル飛び展開。

根性論こそ無いものの、スポーツものといっても過言ではない気がします。
しかも、色気がほぼナシ!
ヒロイン自覚なしの三角関係が成り立っているのに、それらしき描写がほんとうにかすかにあらわれる程度。
だからこそ、印象は鮮烈なのですが、ストーリーに深く絡んでくるのはまだまだ先の模様。

むしろ、次から次へとあらわれるライバルたちのキャラ立ちのほうが強い。
一六歳のクイーンなんて、まるで京都のあやかしです(苦笑。

ストーリー展開は似ているけどれっきとした少年マンガの『とめはね!』のほうがもっとラブ度が高かったように思いますw

やっぱりこれってスポーツマンガなんじゃないでしょうか。
いや、断言してしまいます。
これは熱血スポーツマンガです。

というわけで、嘘偽りなくほんとうに一息に読んでしまいました。
ぐいぐいとひきこまれ、あっという間でした。

あの熱い余韻がいまだに心に残っています。

しかし、あまりにのめりこんで余裕なく読んだので、キャラクターの名前をほとんど覚える暇がありませんでした(驚。

ヒロインは千早。
彼女にかるたの世界を見せてくれたメガネ君。
彼女が好きで、かるたにはまることになったまつげ君(教えてもらったところによると太一君)。

高校で仲間になる、肉まん君、机君、かなちゃん。

小学生のときからの師匠。

他校のライバル。
そしてクイーンに名人(ふたりともかなりの変人)。

そのほかにも存在感あふれるキャラがたくさん記憶に残っているのに、固有名詞だけスコン!

われながらこのいい加減な記憶力をどうにかしたいと思います。
でも集中を切らさず二時間あまり読み続けたなんて、近来まれにみることなんですよ、私には。

というわけで、青春に熱くなってみたい(ラブ成分にはあまり期待せず)かたにお薦めです。

つづきが楽しみ!


ちはやふる (2) (Be・Loveコミックス)
4063192458

ちはやふる (3) (Be・Loveコミックス)
4063192520

ちはやふる (4) (Be・Loveコミックス)
4063192598

ちはやふる 5 (Be・Loveコミックス)
4063192660

ちはやふる 6 (Be・Loveコミックス)
4063192717

ちはやふる 7 (Be・Loveコミックス)
4063192768

ちはやふる(8) (BELOVEKC)
4063192822

『氷上都市の秘宝』

氷上都市の秘宝 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723039


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読了。

文明崩壊後、都市が機動要塞化して食い合う未来。時代の不穏とはよそに平穏に育った娘を主人公にした、SF冒険小説シリーズの三冊目。



氷上都市アンカレジがヴィンランドに不時着してから生まれたレン・ナッツワーシーは十五歳。変わらない毎日に飽き飽きし、顔に傷のある母親ヘスターとは何かと衝突する日々を過ごしていた。そんなおり、盗賊集団〈ロストボーイ〉の一員がレンの前にあらわれ、アンカレジに代々つたわる一冊の本を手に入れて欲しいと言う。この要望に迷ったレンだったが、母親と喧嘩したはずみにアンカレジの図書室から〈ブリキの本〉を盗みだし、〈ロストボーイ〉のガーグルに本を渡す変わりに自分を連れていって欲しいと取引を持ちかける。ちょうどその時、娘の異変に気づいたトムとヘスターがその場に駆けつけた。




『移動都市』で開幕したシリーズは、第二作『掠奪都市の黄金』から十数年後が舞台です。
主人公はトムとヘスターの娘。
彼女のやらかしたちょっとしたおいたがとんでもない事態への幕開けとなります。

レンは外界を知らずに育って平和な日常に不満を持つ十五歳の好奇心盛り。
この話から始まったと思って読むならば、彼女の無知ゆえの無謀はあまり気にしなかったかもしれませんが、これまでシリーズにつきあってきた身からするとなんておバカなとしかおもえず、冒頭は読んでいてかなりイライラさせられました。

そんななかで最も共感できたのがヘスター。
歳喰ってもこのシリーズのヒロインはヘスターだと思う。

ヘスターはレンを愛していますが、同時に憎んでもいます。
この母子って、トムを巡るライバルなんですね。
父親が魅力的だとそういう母子関係になることもあるのか。
私には想像のつかない関係ですが、ともあれ、ヘスターはアンカレジでも人びとに馴染まず、孤独なまま、心を許したのはトムだけの模様です。
そんな状況で、トムの愛情を無条件にさらってしまう娘は、やはり苛立たしい存在なのかもしれません。

そのヘスターの感情を無意識に受けとっているのか、レンもヘスターに辛辣です。
しかも周囲がヘスターとの間におく隔てを疑問もなく受け入れてしまってる。

自分の娘でも、いや自分の娘だからこそ、このしうちには許しがたいものがあるのだろうなあ。

そんなヘスターの心情などまったく知らずに、勝手に冒険して勝手に危険に陥り、トムを危険にさらしてなおトムの心を離さないレンの姿に、子供ゆえの身勝手と傲慢を感じてしまい、なかなか感情移入できませんでした。

レンが両親と離れて、冷静になってきたところでようやく普通に読めるようになってきた。

ちょうど、前作でトンズラしたニムロッド・ペニーロイヤルがリゾート都市ブライトンの市長として再登場を遂げたあたりでしょうか。


ガーグルが〈ブリキの本〉を欲しがった理由はなんなのか。
よみがえらされたストーカー・シュライクと反移動都市同盟〈グリーンストーム〉内部における陰謀。
ブライトン市長ペテン師ニムロッド・ペニーロイヤルの活躍(?)。

物語は、外界の現状を目の当たりにしたレン視点でおもに進んでいきます。

はなやかなリゾート都市ブライトンの描写は圧巻。
微に入り細を穿つ、まるで映画を見ているようなこまやかなディテールがあいかわらずすごいです。

そしてこんなに色彩豊かであざやかな世界なのに、起きていることはぜんぜん爽やかじゃなく、抑圧的だったり凄惨だったり、それも無造作にそうなところがまたすごい。

レンを追いかけるトムとヘスターがメインに来るシーンはそれが加速するようで、ヘスターの感情がマイナスに振れていくのとあいまってどんどん非情展開に。

だれか助けて、救ってと祈りながら読んでましたが、ぎゃあ、こんなところで次巻につづく!?

そんな~と悲鳴をあげたまま巻を置きました。
できるだけ早く、つづきの完結編を刊行していただきたいです。


個人的にはストーカー・シュライクにたいへん期待しております。
あと、ペニーロイヤルの奥さんは楽しくて好きでしたw

開幕編はこちら。
移動都市 (創元SF文庫)
フィリップ・リーヴ 安野 玲
4488723012

『晏子 1』

晏子〈第1巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444218


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読了。

古代中国春秋時代を舞台に、太公望の興した斉の国に亡命した晏子親子の活躍を描く、歴史小説。



春秋時代末期。中原は晋と楚の二大超大国の対立がつづいていた。かつて中原に覇を唱えた斉は、晋の使者・郤克の異形を君主の生母が嘲笑したために恨みを買った。郤克は晋の主催する君主の集まりである会同への出席か、開戦か、を迫って立ち去った。戦は困るが会同に赴けば郤克率いる晋軍に攻撃されるかもしれない。対処に困った頃王は国の三分の一の軍事力を分かち持つ高固を正使とし、高固は目をかけてきた宋からの亡命者・晏弱を副使として出立するが……




久々に読んだ宮城谷作品。
面白かったです。

多くの国がその存亡をかけて相争い、駆け引きをし、欺きあい、そして戦う、戦乱の春秋時代。
先の見えない混沌の時代において輝きを放ちはじめるすがしい目をした人物の姿を描くのに抜群の冴えを見せる著者の選んだ人物は、晏子親子。

いままでの主人公たちと同じく、ひとつの信念から揺らがず、武をよくしながら智謀に秀でた、懐の深い人物です。

第一巻では、その晏子の父親側である晏弱が斉の国において次第に存在感を増していく様が描かれています。

大国晋の重臣を嘲笑して恨みを買ってしまった斉を救うために命を賭して敵地に赴く冒頭から一気に物語にひきこまれました。

骨太でありながら端正なたたずまいの文章。
叙情的な光景から違和感なく移行する歴史的解説。
人と人との対峙を描いて高まる緊張感。
一転して俯瞰しながらもスピード感を感じる戦闘シーン。

じつに質の高い小説であるなあと、溜息が出ます。

個人的に、頃王の生母・簫同叔子の描かれ方には不満がないでもなかったのですが(いったい彼女は賢いのか軽はずみなのか。いずれにしろ少しは反省しろと言いたい)、後で登場した頃王の妃・声孟子がおバカすぎて開いた口がふさがらなくなったので、もういいや。

だいたいにおいて、女性の描き方に?なのはいつものことなので、もう割り切って読みたいと思います。

亡命先から帰還した高貴な陰謀家・崔杼との対決の予感にすでにドキドキです。
息子・晏瓔の成長もはやく読みたい!

しかしまだ二巻は手元にない。
予定外に読んでしまったので買うのに踏ん切りが必要です(汗。


晏子〈第2巻〉 (新潮文庫)
宮城谷 昌光
4101444226

『中世を道から読む』

中世を道から読む (講談社現代新書)
齋藤 慎一
4062880407


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読了。


中世日本の街道事情を古文書より読み解く歴史入門書。

中世とありますが、ここではおおよそ鎌倉時代から戦国時代までのことのようです。
わたしには日本の中世と近世の時代区分がよくわかっていないんですが、そうなんだっけ?

というような日本史しらずでも、中世の日本で旅をする、あるいは行軍するのがいかにたいへんであったか。

地図のない時代において自然の中に切りひらかれた道を案内するもの、とくに増水する川を渡るための手段や渡河地点の情報がどれほど大切であったか。

政治的な関係による交通遮断や戦時の街道封鎖による不自由。

道行きが困難であることが日常であったため、政治的な事情の言い訳にも活用された「路次不自由」という言葉がたいそう新鮮でした。

さらに街道の整備状況やらそれを受け持っていた人びとの実情、関所のやくわりやなにやかやという、政治権力を上から見たのではない日常レベルの道事情が理解できて、かなり興味深かったです。

鎌倉時代の話は関東地方の例が多く、地元を参照しながら想像できたのでさらに面白くなりました。

個人的には鎌倉街道要図に近所の地名が出てきてびっくり。
あそこって結構古くからひらけていた場所だったのね、しらなかった~。てっきり戦後にベッドタウンとして開発されたのだと思っていたのです。無知は怖い(汗。


目次は以下の通りです。


第一章 路次不自由
 1 古文書は語る
 2 戦国人の時空間
 3 政治・軍事・自然

第二章 川を渡り、峠を越える
 1 越すに越されぬ利根の流れよ
 2 舟橋を架ける
 3 峠の鬼、そして地蔵

第三章 道は誰のものか
 1 越境可能な存在
 2 通行を左右するもの
 3 道路を管理する人びと

第四章 すべての道は鎌倉に通ず?
 1 メインルートは上道
 2 河川交通と陸上交通の結びつき
 3 鎌倉の地位低下、江戸の台頭

むすびに

あとがき

主な参考文献
略年表




大自然の中、手探りで旅をしていた時代の感覚がすこしだけ味わえたような気のする本でした。
中世の道の本をもうすこし読んでみようかな。

「旅の終わりの空へ」

深海いわしさん作「旅の終わりの空へ」読了。

異世界SFファンタジー中編、完結済み。

どことなく宮崎アニメの雰囲気がする、語り口は優しいけど厳しい物語でした。

『伯爵と妖精 愛しい人へ十二夜の祈りを』

伯爵と妖精 愛しき人へ十二夜の祈りを (コバルト文庫) (伯爵と妖精シリーズ)
谷 瑞恵 高星 麻子
4086014025


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読了。

ヴィクトリア時代のイギリス周辺を舞台に、妖精博士の女の子とタラシ伯爵の恋を描くロマンティックファンタジー。シリーズ二十一冊目。

今回は短篇集です。
時系列的には「誓いのキス」のあとから「魔都に誘われた」の前まででしょうか。

目次はこんな風です。


遠き日のシルヴァンフォードにて
 日だまりの小悪魔
 ミニアチュールの恋人
 約束がかなうときまで

アシェンバート伯爵夫妻のあまい日常
 おかえり、花が香る間に
 かわいい愛玩動物(ペット)にご用心
 指ぬき(シンブル)は純血の誓い

遠き日のシルヴァンフォードを離れて
 愛しき人へ十二夜の祈りを

あとがき




タイトルを見ているとわかりますが、全体的にエドガーの過去が前面に出ている構成です。
エドガーはおじいさん似なのかとか、エドガーに叔父さんがいてよかったなとか、ポールったらほんとうに子供の頃からずっとお人好しねとか、それに比べてエドガーは子供の頃からやっぱり悪魔だったのねとか、いろいろわかってなるほどねでした。

現在形の話ではあいかわらずニコとレイヴンとケリーちゃんが楽しかったですv

このつぎは本編に戻るそうな。

『RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧』

RDG2 レッドデータガール はじめてのお化粧 (カドカワ銀のさじシリーズ)
荻原 規子
4048739522


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いただいて読了。


山奥で大切に育てられた少女が、自分の巫女体質や周囲の与えるさだめを知らされ、現状と向かいあいつつ、すこしずつ成長していく様を描く、現代ファンタジーシリーズ第二巻。


山伏たちが切り札として大切に守り育ててきた憑坐だった鈴原泉水子は、みずからの置かれた状況や自分の力を受け入れるため、東京の鳳城学園に入学する。すでに転入していた山伏修行中の相良深行と再会し、あらためてかれの如才なさと頭の良さ、自分に対する冷淡さに気づいた泉水子は落ち込むが、寮で同室となった印象的な少女・宗田真響とその弟・真夏と親しくなり、なんとか新しい環境になじめそうだと感じていた。しかし、新学期が始まったとたん、泉水子はクラスにどうしてもきちんと見ることのできない、いるだけで恐ろしいと感じる存在が混じっていることに気づいて恐慌に陥る。




泉水子のために保護者たちが薦めた学校は、ふつうの学校ではありませんでした!

一気に読んでしまいました。
面白かったです。

長く豊かな髪を三つ編みにしておさげにした泉水子は、自分がその髪型でいなければならない理由を知って、もっといろんなことを知らなければと決心。

勇気をかき集めてようやく東京までやってきましたが、当然いろんな出来事に見舞われます。

この学校、どこかがへんなのです。

中等部から高等部への選抜はかなり厳しいらしいのに、高等部からの転入組には無試験で入る人間がけっこういるらしい。
そもそも泉水子本人がそうやって入学した訳なのですが、その理由はなんなのか。

さらに、学校内での勢力争いが熾烈であるもよう。
先に転入していた深行の判断からすると、この学校は何かの意図を持って生徒を集めているらしい。
そして、かれらは泉水子たちのようになんらかの異能を持っている可能性がある。

というわけで、泉水子は新たな生活を送る上にさらにやっかいないろいろにも対処しなければならなくなります。

その過程で、あらたな登場人物とあらたな交友が生まれて、泉水子もすこしずつ、意識的にも無意識的にも変化していきます。

立派な成長小説ですねえ。

ストーリーはだんだん伝奇もののような様相を呈してきていて、山伏だけじゃなく陰陽師や忍者、ついには歌舞伎役者までご登場。

かれらのすべてが歴史的に日本中を放浪してきた非人・異形であることに私は大いに惹かれます。

しかし、人類の滅亡とか未来からのなにかがどうとかいう話に、これらの伝統的な遊行者たちがどうかかわるのかは不明です。というか、これがでてくるたびに違和感に襲われます。

この話、いったいどうなっていくんだろう……?
ちと不安……。

泉水子の話としては、あいかわらずツンツンな深行くんとの関係が楽しかったです。

この巻、なんか雰囲気的に馴染みがあるなあと思ったら、同著者の『西の善き魔女』の第二巻にそっくり、なのでした。

あちらを読んだ時にはいきなりの女子校展開に吃驚仰天したのですが、今回は舞台が現代日本だし、腐女子は出てこないし女装もない(女子校じゃないからね;)ので、それほど驚きはしませんでした。生徒たちが影でいろんな勢力に別れて腹の探り合いをしていたり、敵対したり、とっても忙しいなあ。まあ、そこが面白かったんですけどね。

もうすぐ第三巻が出るらしいと聞いて、あわてて読みましたが、つづきがとても気になります。

泉水子と深行くんの最後のシーンがすごく楽しかったですw


追記。
あとで思い出しました、ないのは女装じゃなくて性別詐称です。
すみません(汗。

こちらは開幕編。

RDG レッドデータガール はじめてのお使い (銀のさじ)
荻原 規子
4048738496

『狐狸の恋 お鳥見女房』

狐狸の恋―お鳥見女房 (新潮文庫)
諸田 玲子
4101194289


[Amazon]


読了。


江戸時代、将軍家の鷹狩りのためにつとめる御鳥見役をうけつぐ一家の、悲喜こもごも、ときに事件ありの日常を、女性視点でたおやかに現実的に描く、時代小説シリーズ。第四巻。

ますます面白くなって参りました、お鳥見女房シリーズです。
珠世さんに感化されてわたしもすっかり子どもたち見守りモードになりました。

この巻では、長男久太郎と次男久之助の恋模様が、ちょっと距離を置いた母親視点から描かれます。
現場に立ち会ったり、問いただしたりはできないので、ちょっと、いやかなりもどかしいところがありますが、決める部分はズバリと描写があり、たまった鬱憤をスカッと晴らすことができます。

それから珠世さんのお父上の過去とのからみ、嫁いだ次女君江にも嫁としての試練が、矢島家のかつての居候・源太夫の次男源次郎のうっくつ、等々、平穏に見えてけっこう波乱つづきの一冊でした。

なかで異色なのは表題作の「狐狸の恋」でしょうか。
久之助の恋がらみで描かれるひとつの出来事なのですが、この話だけが生々しくどろっとしていて、たぶん描き方がけっこう直接的だからだと思うのですが、私はこういう話はあんまり好みではないなあ。
死と絡めるくらい幻想的なら読めるのですが、このシリーズには幻想風味はないですから。

考えてみればこの作者さん、もともとそういう泥沼めいた恋愛物がお得意なのですよね。
このシリーズがほのぼのしているせいで忘れておりましたが。

ということは、昔からのファンの人はそういうものがあったほうが好きなのかもなー。
作者さんも一冊にひとつくらいは入れたいのかも。

そういう話がシリーズのメインに来ることはなさそうなので、これからは黙って素通りすることにします。

シリーズのつづきは単行本では出ているようです。

今の私の興味は、鷹姫さまが矢島家にどんな混乱をもちこんでくれるのか。
(混乱と決めつけていいのか;)
とても楽しみですv


巣立ち お鳥見女房
諸田 玲子
4104235113