『悪霊だってヘイキ!』上下巻

悪霊だってヘイキ!〈上〉 (講談社X文庫―ティーンズハート)
小野 不由美 中村 幸緒
4061986961


悪霊だってヘイキ!〈下〉 (講談社X文庫―ティーンズハート)
小野 不由美 中村 幸緒
406198697X



お借りして読了。

「十二国記」シリーズや『屍鬼』の著者の少女向けオカルトホラーシリーズの完結編。

つぶやきで「悪霊シリーズ」の話題が出て、「そういえば途中までしか読んでないわー」と言ったらとても親切な方が貸してくださいました。
わーい、これで最後まで読めるーw

喜び勇んで読み始めましたが、そういえば前巻を読んだのってえらい過去(調べてみたら1996年)。そんな昔のことをわたしの頭が覚えているはずもなく、ヒロインのことすらスッカラカンな状態であることに気がつきました。

いや、それでも十分に楽しめましたけどねw
読んでいるうちにだんだんとそういえばそうだったなと思い出してきたし、なによりそれとなく説明があるのでそれを辿っていくとだんだん外堀が埋まっていくのです。それだけで凄いと思いました。こんな大人気シリーズの完結編でそこまできちんと単独読みができるように書いてあるなんて、期待以上でした。

思い出したのはキャラクターの背景だけで、ストーリーは真っ白だったのですが、今回の話の理解にはそれほど支障は出なかったので、まあいいや。

毒舌美少年ナル率いる渋谷サイキック・リサーチの面々が、謎の廃校で陥る霊的な苦境のお話ですが、そしてひとりまたひとりとメンバーが欠けていく展開が、とってもスリリングでした。(わたしはあんまりホラーを怖がらない人なのです。スプラッターは嫌だけど怖くはない)

それに完結編ということでシリーズ全体の謎(おもにナル関連)もきっちりときれいに解かれているし、前向きだし、これからもかれらは関わりを断つことなく、楽しく生きていくよという雰囲気はシリーズ読者にとってはとても嬉しいものですよね。

残念なのはわたしがこのあとにホワイトハートで刊行された『悪夢の棲む家』を既に読んでしまったせいでシリーズ最大の謎をとっくに知ってる状態だったってことくらいです。

なんでそんなことをしたのかというと、わたしは当時X文庫は読まないひとだったけど、ホワイトハートは読むひとだったからです;

「悪霊シリーズ」と通称されるこのシリーズは当時の友人が貸してくれたものでした。
だから完結編も買わないままに、いつのまにか忘れ果ててたんですね。

今回この完結編を読めたのも他人様のおかげということで、たいへんにありがたく思っております。


ところで、この作品以前にシリーズは

悪霊がいっぱい!?
悪霊がホントにいっぱい!
悪霊がいっぱいで眠れない
悪霊はひとりぼっち
悪霊になりたくない!
悪霊とよばないで

が刊行されましたが、いずれも絶版。
密林を見るととんでもないお値段で古本が取引されていて吃驚。

マンガ版が『ゴーストハント』としていまも刊行されている模様です。

ゴーストハント(1) (講談社漫画文庫)
いなだ 詩穂 小野 不由美
4063607771


こちらは読んだことないんですが、ナルがシャープな美少年でちょっと萌えますねv

『橋ものがたり』

橋ものがたり (新潮文庫)
藤沢 周平
4101247056


[Amazon]

読了。

江戸の橋をからめてつづられる人情時代小説。短篇集。

収録作品は以下の通りです。


約束
小ぬか雨
思い違い
赤い夕日
小さな橋で
氷雨降る
殺すな
まぼろしの橋
吹く風は秋
川霧

解説 井上ひさし




男と女、親と子、過去と現在が交錯する、しみじみとした味わいの短篇集です。

一番多いのが男女の出会い、あるいは別れかな。
刃傷沙汰になるような凄絶なものから、ほのぼのとしたもの、苦い味を残しつつも情景にとけてにじんでゆくようなもの、といろいろです。

が、適度な距離感を置き、つつこみこむようなぬくもりがあるため、おおよそ読後にはしみじみとしたものが残りました。

極上の人情時代小説集だと思います。

よいなあ……と読み続けましたが、もとよりフツーの話がそれほど得意というわけではないわたしはそれが延々とつづくと、途中で「ここでなにか出てきてくれないかなあ、フツーじゃないものが」と思ってしまうので困りました。

天狗の話のように適度に異状現象が入ってくれると興味が持続するのだけど(汗。

「ドラゴンは眠らない」

あるてみすさん作「ドラゴンは眠らない」読了。

西欧近代ふう異世界ファンタジー長編。完結済み。
皮肉風味でわりとハード展開ですが、ベタベタ甘甘なロマンスも含みます。
「ドラゴンは笑わない」の続編。

『天界の城』

天界の城 (ハヤカワ文庫 JA (664))
佐藤 史生
4150306648



読了。


独自の世界を理知的な視線で熱くえがく、SFマンガ短篇集。

先日他界された佐藤史生さんの作品集です。
訃報を聞いてから衝動的に手に入れたのですが、その後なんとなく畏れ多くなり、読むまでに時間が空いてしまいました。

だけど読んでよかった。心底よかった、と思いました。

収録作品は以下の通りです。


阿呆船
馬祀祭
天界の城
羅陵王
やどり木

解説/尾之上俊彦




このなかで既読は阿呆船、馬祀祭、天界の城だと思うのですが……以前読んだ時に感じた距離感が見事になくなっていて、わたしはようやくこの方の作品をきちんと受けとめられるところまで来たのだなあと、感慨に耽りました。

初読の時にはストーリーをなぞるばかりで描かれていることの意味がほとんどわかっていなかった。
だからハードカバーでもってたのに手放したりしてしまったんだな。
ああ、なんということでしょう。もったいない~(じたばた)。

とても些細で個人的な出来事を描いているようで、じつはその世界の広がりや有り様までふくめて提示してしまう、理知的で繊細で大胆な筆さばき。

民俗学的・神話的な象徴を含んだ普遍的で大きく残酷な物語。

でありながら、その物語をみずからのものとして血を流しながら生きていく、人間たちの姿のいとおしさ。

いま読んでみると、そこかしこに「ああ、これは佐藤史生のパターンだな」と思える部分が見えてきたりして、いまさらのように溜息をついてしまう。

どの作品も、緻密に構築された気品のある物語で、なによりもSFでした。
解説の方が“SF作家佐藤史生”と書かれていますが、ほんとうにこの方はマンガ家である以前にSF作家だったんだと思いました。

そういえば、わたしはまだ佐藤史生のすべての作品を読んではいなかった。
なんで並んでいたコミックスを真面目に手に入れて来なかったかと、いまは悔やむばかりなのでした。


慎んでご冥福をお祈りいたします。

『竜の夢見る街で 3』

竜の夢見る街で (3) (完) (新書館ウィングス文庫) (新書館ウィングス文庫 154)
縞田 理理 樹 要
4403541542


[Amazon]


読了。

現代ロンドンを舞台に、孤独なドラゴンと、ドラゴンと出会ってしまった人々に起きる騒動をハートフルに描く、ローファンタジー。シリーズ完結編。

収録作品は、以下の通りです。


己が望みを誰が知る
すこやかなる時も、病める時も

あとがき




「すこやかなる時も……」は後日譚ですね。

魔法で人間の姿に変えられたドラゴン、俺様で孤独なキャスパーの、不器用なかわいらしさ(苦笑)を愛でるシリーズだったなあ……とわたしは思います。
不器用でかわいらしくて、さらに超鈍感で天然。

自分を人間の姿に変えた魔法使いケヴィンの転生を待ちこがれていたキャスパーが、あたりをつけた若者コリンは、最終的にはキャスパーの導き手だったのねーと思いました。

それをいうならば、コリンの住むアパート、アシュトン・テラスの住人達はみんな孤独で不器用な寂しがりでした。

孤独だから不器用になるのか、不器用だから孤独になってしまうのか。
自分の世界に閉じこもりがちで社会経験値の低くなってしまったかれらと、社会への橋渡し役になるのがコリンだったんだなー。

この話、ドラゴンと大魔法使いの因縁話としてだけでも成立すると思うのですが、それだけだとちょっと暗い雰囲気になりそう。すくなくとも、これほどぬくもりのある明るいお話にはならなさそう。

コリンという枠があるからこそ、コメディーやドタバタの要素が盛り込めて、お話としてもすっきりとまとまったんだろうなーと思いました。

それにキャスパーがかわいいのはやっぱりコリンの視点があるからこそ、ですよね。

その分、コリンのドラマはちょっと薄めになってしまった気がしますが、登場人物それぞれにさりげなく背景を書き添えてのラストの大団円には幸せな気持ちになりました。

とくに、キャスパーが教会に足を踏み入れたシーンが感動的だったです。

さいごまで理性を失わずにコントロールされていましたが、そこかしこに情感にみちた物語でした。

情に溺れて突っ走る話も好きですが、こういうかっちりした感じとほどほどの距離感と、遊び心と、さりげない心配りのある作品、とても好きです。

私の嗜好って分裂しているかも……(汗。


シリーズ開幕編はこちら。

竜の夢見る街で 1 (ウィングス文庫)
縞田 理理 樹 要
440354133X

『夏目友人帳 10』

夏目友人帳 10 (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592186702



読了。

あやかしが見えるせいで孤独に育ってきた少年・夏目が、しだいに人と関わるようになっていくさまを小さな事件とともに描く、連作集。シリーズ第十巻。

もう十巻かあ……時の経つのは早いものです。
夏目はもうずいぶんひととの関わりが増えてきていて、今回は昔の嫌な思い出と関係のある人物が登場したりするようにもなりました。

だんだん、指先をそっとふれるようなものから、手のひらを合わせて握手するようになるまで進化したような感慨があります。

それでも夏目はあやかしとの関わりを断たないんですよね。
あやかしへの感情移入をやめずに人間とも交流する。
夏目にとっては異界も現実も等価なんだなー。

ということは、夏目はどちらの世界にも深入りはできないのか、あるいはどちらの世界へもおなじように深入りしていくのか。どっちつかずでは世界バランス的に奇妙な気もします。

夏目が人間と関わって傷つく話がとても苦しいわたしは、どうやら人間が苦手であるなーと感じます。
のでできれば話はあやかし関係に絞って欲しい気もするけど、夏目にはどちらも捨てて欲しくないような気もするのですよね。

夏目はまだまだ成長していく若者だからね。

ニャンコ先生はあいかわらずラブリーvでした。
ニャンコ先生のフィギュアが欲しいw


夏目友人帳 (1) (花とゆめCOMICS (2842))
緑川 ゆき
4592171586

『王のしるし 下』

王のしるし(下) (岩波少年文庫)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145960


[Amazon]


読了。

ローマがブリテンを支配していた時代のスコットランドを舞台にした、剣闘士あがりの男のドラマティックな生涯を描く歴史小説。

読み終えてからずいぶん時間が経ってしまいました。すみません。

スコットランドの氏族間闘争のなかで、王として即位した身代わりの若者・フィドルスが、偽りだった役柄に感化され、同化し、生まれそなえた能力を花ひらかせていくさまと、王であるということについての意味にたどりついたかれのとる行動が、かざりのない骨太な文章でかたられていくありさまがずしんと心に響く作品でした。

初読の時は敵の女王の娘とのロマンスばかりに目が行っていたけど(笑)、今回はフィドルス自身の変化とかれを受け入れた氏族の者たちとの絆の深まりが深く印象に残りました。

フィドルスに役割を託したマーダーや、馬商人のシノック、マーダーの親友だったコノリー、だれもがそれぞれに血肉をそなえた存在として描かれています。

熱い、男たちのお話です。

のちに書かれたアーサー王を題材にしたサトクリフの作品の萌芽がここにあるようです。

スコットランドの大地で冷たい風に吹かれ、流れる水にぬれながらの戦いの情景が、脳裏にまざまざと浮かぶ描写がすばらしかった。

写真集『巨石』などを眺めながら読むとまた臨場感が湧いてきていいかもしれないなあと、思いました。

たぶんあの本の写真の数々を見たから、よけいにあの光景が浮かんでくるのだと思います。

よいお話でした。
再読してよかったです。

王のしるし(上) (岩波少年文庫)
ローズマリ・サトクリフ 猪熊 葉子
4001145952


巨石―イギリス・アイルランドの古代を歩く
山田 英春
4152087404

20100717の購入

ひさびさに発売日に書店へ足を運びました。

フルメタル・パニック!11 ずっと、スタンド・バイ・ミー(上) (富士見ファンタジア文庫)
賀東 招二 四季 童子
4829134100



以上、購入。

ついに最終巻! の上巻! です。
下巻が出るまで寝かせておくか、そんな我慢ができるのかと思案中。


下巻も密林では予約可能になってますね↓

フルメタル・パニック!12 ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)
賀東 招二
4829135530



それにしても暑かったです。
梅雨明けしてしまったんですよねえ……。

様々な困難に遭われた方にはお見舞いを申し上げます。

しかし、当地の今年の梅雨は蒸し蒸し蒸し蒸しで、各地ではいろいろと大変な状況が報道されていましたがそれほどの雨も降らず、とにかくひたすらに蒸し暑かったです。

おかげですでに夏バテ気味、そしてもう汗疹まで。
この先延々と夏がつづくのかと思うと気が遠くなりますよ……。

『嘘つきは姫君のはじまり 見習い姫の災難』

嘘つきは姫君のはじまり 見習い姫の災難 平安ロマンティック・ミステリー (コバルト文庫)
松田 志乃ぶ 四位 広猫
4086012103


[Amazon]


読了。

平安朝の貴族社会を舞台にした、少女向けロマンティックミステリシリーズ、第二巻。


いまをときめく堀川の藤原家の隠し子だった馨子姫の乳姉妹・宮子は、馨子の身代わりとして姫君を演じることになってしまった。後宮にあがるための準備期間中に、なかなか御所に戻らない桐壺の更衣の説得のために冷泉院へと向かうことになった宮子と馨子は、そこで怪異現象の噂と、桐壺の更衣の子どもたちである蛍の宮、日の宮の存在を知るが、桐壺の更衣はなかなか会ってくれない。更衣はなぜ御所に戻ろうとしないのか。




才気煥発な馨子姫とのんびり宮子のコンビネーション。
軽妙でくだけたやりとりを支えるしっかりとした物語。
出会いあり、誤解あり、陰謀あり、謎解きあり、アクションあり、人間関係ありで、ミステリ部分だけはわたしが苦手なので面倒でしたが、これだけ盛りだくさんあればいうことなしです。

するすると読める、楽しいお話でした。

個人的には検非違使とともに放免が出てきたところにおお、と思いました←部分的にマニアック。

今回のポイントは、桐壺の更衣の産みまいらせた蛍の宮と日の宮の登場でしょうね。
とくに蛍の宮は次郎君との確執ともからんで、これからも活躍してくれそうです。

あと、藤原家の人々が楽しいです。
馨子、兼通、有子姫、とすでに曲者だらけなのに、兼家、薔子姫もかなりの曲者。
さすが、摂関政治の大元締めですな。

つぎには宮子は後宮にあがっているのかな。
宮子の背の君・真幸君のライバルがどんどん増えていくのが面白いです。

いつ読めるかわからないけど楽しみにしています。


つづきはこちら。

嘘つきは姫君のはじまり 恋する後宮 平安ロマンティック・ミステリー (コバルト文庫)
松田 志乃ぶ 四位 広猫
4086012693



シリーズ開幕編はこちら。

嘘つきは姫君のはじまり ひみつの乳姉妹 平安ロマンティック・ミステリー (コバルト文庫)
松田 志乃ぶ 四位 広猫
4086011662

『西(シナル)の国の物語 ~ペルシア神話より~』

西(シナル)の国の物語~ペルシア神話より~ (フラワーコミックスアルファ)
諏訪 緑
409133315X



読了。

ペルシア神話とヘブライ神話のエピソードを元にした、ほのぼのコミックです。
テイストはほのぼのだけど、人間の感情やそれによって生まれたドラマがきちんと描かれているので読み応えがありました。


収録作品は以下の通り。


霊鳥のお気に入り
霊鳥は大いそがし 前編
霊鳥は大いそがし 後編
ヨナの受難~ヘブライ神話より~
あとがき




三話は霊鳥シームルグの二羽のヒナ、シリエルとバリエルに育てられた人間のお話です。
舞台はペルシャ付近。
エルブルズ山脈のあたり。

個性的なヒナたちと少年ザールとの親子的あいだがらに萌えw

最後の話だけヘブライ神話が出典になってますが、ペルシアとユダヤは地続きで非常に近い場所にあるので、基本設定は似通っているのだと思います。

というわけで、ペルシア神話ベースの話に出てきた霊鳥のヒナたちはこの話にも出演しています。

作者さんの作品を読むのはひさしぶりでした。
たしか、『玄奘西域記』を最後まで読まなかったか読んだかくらいのあたりからご無沙汰していた気がします。

それ以前の作品でもエジプトのネフェルティティとか、ギリシア神話とかを題材にしたものを発表されていたので、神話歴史関係がお好きな方なのかなーと推察。

「玄奘」から中国ものに完全に移ったのかと思っていましたが、そうでもなかったんですね。

この本はたいそう面白かったです。
すてきな小品のたたずまいだった。

ところで、シームルグって霊鳥だったんだ……千夜一夜ではちがったような気がするのですが。あ、怪鳥はロック(ルフ)のほうだったか? 記憶が曖昧なので信用されませんように(汗。

「KUNATO~二重殺の系譜~」

袋小路はまるさん作「KUNATO~二重殺の系譜~」読了。

現代伝奇ホラー小説長編、完結済み。

面白かったです。
サイトには伝奇推理と書いておられるのですが、この幻想のパワーは推理の枠には収まりきらないと思うのです。
わたしの読書暦の中から似た感じの商業作品をあげると、加門七海とかです。

ハードな内容なので、残酷描写などが苦手な方はご注意を。
講談社ノベルスあたりを思い浮かべるとだいたいの雰囲気がつたわるでしょうか。

20100713の購入

既に注文していたためリアル書店で歯噛みをしてしまった本が届きました。


竜の夢見る街で (3) (完) (新書館ウィングス文庫) (新書館ウィングス文庫 154)
縞田 理理 樹 要
4403541542


以上、購入。


ところで、今年も高校野球の季節になりましたね。
昨日はちょっとだけテレビで予選の試合を見ていたのですが、用事があったのでしばらく離れていたのです。
で、ちょっとケリがついたのでもう一度見てみたら、かなり時間が経っていたのにまだ同じ試合をしていた。
びっくりして眼を凝らしたら延長十三回をやっていました。すげーーー。

プロ野球は延長十二回までになってしまったので、こんなに続く試合を見るのは久しぶりで、それだけで熱が入ってしまいました。

すこし涼しい日だったのでまだよかったねえと思いつつ、サヨナラゲームを見終えました。
どれだけ続こうが、最後は負けて終わるのが残酷な気がしますが、最後まで負けないチームはひとつしかないんだものね。

勝負というのはそういうものだけど、人生は負けたことからもたくさん学ぶことがあるのです。
と、高校時代が霞みに消えそうになっている人間はしみじみ思うのでありましたよw
……トシ喰ったなあ……

『黒方の鬼 陰陽ノ都 月風譚』

陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼 (メディアワークス文庫)
渡瀬 草一郎
4048682245


[Amazon]


読了。

平安朝を舞台に陰陽師たちの活躍を描く、伝奇アクション。


平安を願って名づけられた京の時代。しかし東や西で反乱が起き、世情はいたって不穏になりつつあった。ある夜、京では誰にも知られることなく、黒方の香の香る異形がひとりの公達を呑みこんだ。いっぽう、陰陽寮の暦生・賀茂光榮は住吉兼良とともに、ときの権力者である左大臣藤原実頼を呪詛するものの調査を命ぜられる。身なりかまわぬ野性的な光榮は、実力とその存在感で行儀の悪さをかろうじて見逃されている問題児。対して住吉兼良はひややかな貴公子然としており、ふたりはたいそう折り合いが悪かった。光榮は年下の同僚・阿倍吉平とともに左大臣の身辺を探り始める。




電撃文庫で刊行された『陰陽ノ京』のつづき? というか外伝?
主役が陰陽頭である賀茂保憲の息子光榮になり、光榮の野性的なキャラクターのせいか動的な雰囲気を増しています。

そしてけして仲はよくなく、むしろ敵愾心を互いに持っているのに、なぜかツーカーの間柄である、住吉兼良との絶妙な……絶妙な、えーとなんといえばいいのだろう、共闘? 連携? による作戦遂行が面白いです。

とはいえ、それは話の後半にならないとわからないので、それ以外だと光榮の傍若無人な態度と不器用な優しさとか、アクションの切れ味とか、展開のすばやさとか、伝奇アクションものにふさわしい、娯楽作品として洗練されてきたというのか、とにかく、著者について何も知らない伝奇好きが読んでもすんなり受け入れられる作品になってるなあと感じました。

その分、当初感じていたわたしがこのシリーズが好きな理由である叙情性が薄れてしまったようなのが残念です。

この作品単品でも楽しめるようになっていますが、シリーズを読むと登場人物の背景をしることができるのでいっそう楽しめると思います。

個人的には吉平くんと貴年ちゃんのやりとりにはニマニマさせられました。
吉平君て天性のタラシだと思う……いまは子供で謙虚で真面目な姿勢ばかりが目立っているのでほとんどの人が気づきませんが、かれの個性は完成され切っているので大人になってもこのままなんじゃないかという気がしてなりません。

そしたら、中年になってもこのまんまかい、とか、そのときやっぱり中年になってる貴年ちゃんはどうなってるんだとか、どうでもいい妄想を膨らませてしまいました……。

いやいや、この話はそういうところを読む話じゃないですね。うん。


光榮の同年代の叔父で文章生・慶滋保胤を主人公としたシリーズ開幕編はこちら。

陰陽ノ京 (電撃文庫)
渡瀬 草一郎 純 珪一
4840217408

『春秋山伏記』

春秋山伏記 (新潮文庫)
藤沢 周平
4101247080


[Amazon]


読了。

江戸時代後期の庄内平野のとある村を舞台におきる事件をひとりの山伏が解決する(?)、時代小説の連作短篇集。

庄内地方の習俗と言葉がていねいにえがかれていて興味深く、大変面白かったです。

収録作品は以下の通り。


験試し
狐の足あと
火の家
安蔵の嫁
人攫い

あとがき
解説 藤田昌司



カバー裏のあらすじには「時代長編」と書いてありますが、わたしは連作短編だろうと思う。
最初の話が最後に繋がっていたりはしますが、基本的に話のひとつひとつが独立してるので。

初・藤沢周平だったのですが、この方の文章はリズムが心地いいですね。
すっと心に届いてくる。
そしてさすが手練れの作品という完成度です。
物事の多くを書きすぎない、あと少し読みたいと言うところで筆を置く、余裕と余白の多さが想像力をいい具合に刺激してくれました。

これはまた宝の山を発見したかもしれませんw

ところで、山伏というので手に取ってみた本なのですが、山伏の結婚相手は巫女と決まっているらしい。
そこで『RDG』を思い出してしまったのですが……あははw

主人公はいちおう山伏の大鷲坊ですが、多分に狂言回し的な存在でした。
それよりも庄内地方の山村の日常やらがよくわかります。
それとちょっとだけ伝奇っぽい話もありましたね。あくまでも理解不能な存在がたしかにいた、というだけの話でしたが。

かなりおおらかに性的なことが書かれているので、そういうのがお好みでない方はご注意を。

20100709の購入

通院帰りに本屋によってきました。
本屋によって目当ての本を買うことが通院のモチベーションです。
今回、体調が悪くて電車の中で発作が起きそうな不安からがちがちに緊張してたので、大変に疲れました。
本屋にたどり着いたときの安堵感ときたら(苦笑。


夏目友人帳 10 (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592186702


西(シナル)の国の物語~ペルシア神話より~ (フラワーコミックスアルファ)
諏訪 緑
409133315X



以上、購入。

二冊目がなかなかみつからないので店内をぐるぐるしてしまいました。
発売日で同じレーベルの他の新刊は平積み状態だったのに。
一軒目になかったのでけっきょく穴場書店に走りました。
さすが、穴場は違う。
ゆうゆうゲットできたので他になにかないかなーと余裕かまして見まわしてみたら、ネットで注文した本の現物と遭遇してしまいました(悲鳴。

思わず棚からつかみ取ってレジに走りたくなりましたが無駄だ無駄なんだ……。
泣く泣く店をあとにしました。


わたしを悶えさせた本はこちら。
竜の夢見る街で (3) (完) (新書館ウィングス文庫)
縞田 理理 樹 要
4403541542

『乙嫁語り 2』

乙嫁語り 2巻 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)
森 薫
4047265861



読了。

中央アジアの半遊牧民の日常生活をていねいに描いて臨場感たっぷりな、歴史(?)コミック。シリーズ第二巻。

カルルク少年のもとに嫁いだ天然姉さん女房アミルちゃんのほほえましさに、
アミルの友人となったツンデレのパリヤちゃんのいじらしさが加わって、無敵な感じになってきたマンガです。

相変わらずこまやかな画面にうっとりします。
どれだけ言葉を尽くしてもつたわらないものが、絵だと一発でわかるのよねえ。
中央アジアのひとびとの伝統的な暮らしをこんなにも雰囲気たっぷりに見られるなんて、それだけでわくわくしてしまうw

お話は一巻よりも起伏があって、アミルの実家とのいざこざやらイギリス人の研究者の登場やらで、けっこう盛りだくさんでした。

一巻の時点では正直二巻はどうしようかなーと思っていたのですが、読んでみればかなり楽しんでしまうわたしがおりました。

娘を嫁がせるために延々と準備をする布支度とか、ストーリーばかりを追った話では出せない味わいだと思います。

ところで布支度ってヨーロッパにもありませんでしたっけ?
結婚するときにお嫁さんがリネンを山ほど持参するという話をどこかで目にしたような記憶があるのですが……わたしの脳のことなので、まあ、確かではないです(汗。

つぎからはどうやらイギリス人のスミス氏のみちのりを追っていく展開になるようです。
なんだかきな臭くなりそうですな……。

第一巻はこちら。

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)
森 薫
4047260762

「渡り鳥の心臓」

塩さん作「渡り鳥の心臓」読了。

中央アジア風異世界ファンタジー短編。

わたしはこの作品が大好きです!!!

『ヴィンランド・サガ 9』

ヴィンランド・サガ(9) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063106721



読了。

中世の北ヨーロッパを舞台にひとりの少年の成長をハードな時代背景とともにえがく、歴史コミック。シリーズ第九巻。

アイスランドの自由農民の出身だったトルフィンが、父親の仇とともに戦乱のイングランドを転戦していた話が終わった前巻、このあとどうなると思ったら、なんとトルフィンは奴隷になっておりました。

このふぬけたトルフィンの姿、アシェラッドが見たら怒るだろうなあ、いや失望するか。
しかし、トルフィンは第二の父親ともいうべき存在と生きる目的を見失ったのだから、自失してもしかたないよなと思います。

相変わらず、物語世界はリアルでハード。中世北ヨーロッパの冷たい大気に汗臭い雰囲気がむんむんとしていて素敵です。

ふぬけた農奴になってもトルフィンは結構有能っぽいです。
それと、いまだに生への執着は残っているようなのが救いでした。

あらたな登場人物がつぎつぎに登場し、つぎの人生の師ではないかと思われる人物も現れて、ますますつづきが楽しみです。

トルフィンを一生懸命に探しているひとたちと出会えるのはいつの日だろうか……w


シリーズ開幕編はこちら。

ヴィンランド・サガ(1) (アフタヌーンKC)
幸村 誠
4063144232

『身代わり伯爵の結婚』

身代わり伯爵の結婚 (角川ビーンズ文庫)
清家 未森 ねぎし きょうこ
4044524025


[Amazon]


読了。


近世ヨーロッパ風異世界を舞台に、パン屋の娘が男装して兄の伯爵と入れかわっての騒動を楽しく描く、王宮ラブコメディー。シリーズ第二巻。

『身代わり伯爵の冒険』を読んでからどれくらい時間が経ったでしょうか。
ようやく二冊目を読むことができました。大人気シリーズはなかなか予約が減りませんねw

元気な天然娘ミレーユと、影のある天然リヒャルトの、食い違う会話が爆笑もの。
なんにも考えずにあっはっはと笑って楽しめる愉快なお話ってとても貴重だと思うのです。

ストーリーはきちんとしているので危なげなく、安心して笑いつづけることができます。

ああ、楽しかった!

ミレーユってパン作りに命をかけてて、お菓子に目がないわりに、作るパンがあれれなのですね。
ミレーユのパンに怯える騎士団の面々を救おうとするリヒャルトの台詞には、笑いが止まりませんでした。

なんでこんなに天然なんだ、リヒャルト!
そして言葉の意味を正面からしか受けとめないミレーユ!

ふたりの天然の、あけひろげでスケスケなのに当人たちだけがわかってない恋のやりとりが面白すぎです。

これじゃあ、まわりがふたりの関係がどうなるかを面白がらないわけがありませんw

そしてときおり訪れる胸キュンシーンがたまりませんw

表ではいい加減で無責任なミレーユの兄フレッドが、じつは暗躍する外交官であるという設定も、ミレーユの今後の運命をおおきく翻弄しそうで楽しいです。

いや、ミレーユに翻弄されるリヒャルトが楽しいんだな、この話は。うむ。

ということで続きも読みたいです。
いつ読めるかなあ……。

つづきはこちら。
身代わり伯爵の挑戦 (角川ビーンズ文庫)
清家 未森 ねぎし きょうこ
4044524033


シリーズ開幕編はこちら。
身代わり伯爵の冒険 (角川ビーンズ文庫)
清家 未森 ねぎし きょうこ
4044524017

『銃・病原菌・鉄 上 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド 倉骨 彰
4794210051


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読了。

どこかの新聞の書評欄で「ゼロ年代の一冊」とかなんとかいう企画にあがっていた本。
そういえば読みたかったのよねと思いだし、そういえば持っている人がいたよと借りて読みました。

面白かった!!
これまでの大なり小なりかなりバイアスのかかっていた人類史を、現代科学に裏打ちされた最新の資料による新たな視点に立って公正に読み解いていく、知的なスリルに満ちた一冊です。あ、下巻もあります。まだ読んでませんが。

南米の文明が旧大陸からの感染症によって滅んだことなどはもう定説と言っていいかもしれませんが、そのことが広まったのはこの本のおかげだったのでは。

最終的には現代における経済的・文明的な発展の結果つけられてしまった地域格差はどこからきたのか、ということがテーマなんですが、そのために積みあげられていく膨大な証拠に、目から鱗が落ちまくりました。

上巻の内容は以下の通りです。


日本語版への序文――東アジア・太平洋行域から見た人類史

プロローグ ニューギニア人ヤリの問いかけるもの
 ヤリの素朴な疑問
 現代世界の不均衡を生みだしたもの
 この考察への反対意見
 人種による優劣という幻想
 人類史研究における重大な欠落
 さまざまな学問成果を援用する
 本書の概略について

第一部 勝者と敗者をめぐる謎

 第1章 一万三〇〇〇年前のスタートライン
  人類の大躍進
  大型動物の絶滅
  南北アメリカ大陸での展開
  移住・順応・人口増加

 第2章 平和の民と戦う民との分かれ道
  マオリ族とモリオリ族
  ポリネシアでの自然の実験
  ポリネシアの島々の環境
  ポリネシアの島々の暮らし
  人口密度のちがいがもたらしたもの
  環境のちがいと社会の分化

 第3章 スペイン人とインカ帝国の激突
  ピサロと皇帝アタワルパ
  カハマルカの惨劇
  ピサロはなぜ勝利できたか
  銃・病原菌・鉄

第2部 食料生産にまつわる謎

 第4章 食料生産と征服戦争
  食料生産と植民
  馬の家畜化と征服戦争
  病原菌と征服戦争 

 第5章 持てるものと持たざるものの歴史
  食料生産の地域差
  食料生産の年代を推定する
  野生種と飼育栽培種
  一歩の差が大きな差へ

 第6章 農耕を始めた人と始めなかった人
  農耕民の登場
  食料生産の発祥
  時間と労力の配分
  農耕を始めた人と始めなかった人
  食料生産への移行をうながしたもの

 第7章 毒のないアーモンドのつくり方
  なぜ「栽培」を思いついたか
  排泄場は栽培実験場
  毒のあるアーモンドの栽培化
  突然変異種の選択
  栽培化された植物とされなかった植物
  食料生産システム
  オークが栽培されなかった理由
  自然淘汰と人為的な淘汰

 第8章 リンゴのせいか、インディアンのせいか
  人間の問題なのか、植物の問題なのか
  栽培化の地域差
  肥沃三日月地帯での食料生産
  八種の「起源作物」
  動植物に関する知識
  ニューギニアの食料生産
  アメリカ東部の食料生産
  食料生産と狩猟採集の関係
  食料生産の開始を遅らせたもの

 第9章 なぜシマウマは家畜にならなかったのか
  アンナ・カレーニナの原則
  大型哺乳類と小型哺乳類
  「由緒ある家畜」
  家畜化可能な哺乳類の地域差
  他の地域からの家畜の受け入れ
  家畜の初期段階としてのペット
  すみやかな家畜化
  繰り返し家畜化された動物
  家畜化に失敗した動物
  家畜化されなかった六つの理由
  地理的分布、進化、生態系

 第10章 大地の広がる方向と住民の運命
  各大陸の地理的な広がり
  食料生産の伝播の速度
  西南アジアからの食料生産の広がり
  東西方向への伝播はなぜ速かったか
  南北方向への伝播はなぜ遅かったか
  アメリカ大陸における農作物の伝播
  技術・発明の伝播

第3部 銃・病原菌・鉄の謎

 第11章 家畜がくれた死の贈り物
  動物由来の感染症
  進化の産物としての病原菌
  症状は病原菌の策略
  流行病とその周期
  集団病と人口密度
  農業・都市の勃興と集団病
  家畜と人間の共通感染症
  病原菌の巧みな適応
  旧大陸からやってきた病原菌
  新大陸特有の集団感染症がなかった理由
  ヨーロッパ人のとんでもない贈り物




多少、重複が多いものの、それも読みやすい本をめざした結果かなと思われます。
わたしのようなずぶの素人でもちゃんと理解できたのがその証拠。

これまでバラバラに勉強したり、読んだりして、断片的に覚えてきたことが、まるっと地球的にまとまって頭の中でつながった気がしました。

カンドー……。

もうこれだけ読んで満足してしまいそうなのですが、下巻もおそらくそのうちに読むと思います。


銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
ジャレド ダイアモンド 倉骨 彰
479421006X

『スフィンクス ここではない☆どこか2』

スフィンクス (flowers comicsシリーズここではない・どこか 2)
萩尾 望都
4091670393



読了。というか二度目です。


初読時の衝撃がつよくて言葉にできなかった短編連作集。
間をおいてもう一度読んだらどうにかなるかと思ったけれど甘かったです。

収録作品は以下の通り。


オイディプス メッセージⅢ
スフィンクス メッセージⅣ
海の青
青いドア
世界の終わりにたった1人で(前編)
世界の終わりにたった1人で(後編)

しまうまのQ&A




エディプス・コンプレックスの元となったギリシア神話のエピソードを元にした「オイディプス」と「スフィンクス」。

現代日本を舞台に少女のコンプレックスや家族の葛藤を描くその他の話。

どれも心の深いところにずしんとくる重さというか深みがあって、萩尾望都というマンガ家の偉大さをあらためて思い知らされました。

とくに「世界の終わりにたった1人で」は、凄いインパクトでした。
ひとりの女性画家の半生記にひとつの家族の歴史がくんずほぐれつというか。

最近、日本を舞台にした話が多くなってきましたが、それは作者様がそれだけ達観されてきたためなのかなー。
生々しい血族同士の話との距離を絶妙にたもってまとめあげ、幻想すらつれてくる作品にうーん、すごいなあとそれしか言葉が浮かんでこない。

やっぱり萩尾先生は凄いです。

ところで、わたしのこころに一番響いたのは「青いドア」中のこの台詞でした。

人の縁と
いうのは
業なんだよ

奥さんとの
縁も
業だと
思って
引き受ける
しかないね



……たしかに、そうかもしれない。


先日刊行されたムックでこの作家の歩んできた道のりを知って読むと、じつにしみじみとしてしまう言葉でした。
本を前にして拝みたくなってしまったです。


シリーズの前巻はこちら。

山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)
萩尾 望都
409167027X


インタビュー記事が充実のムックはこちら。

文藝別冊 萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母
4309977340

『胡蝶の失くし物 僕僕先生』

胡蝶の失くし物―僕僕先生
仁木 英之
4103030534


[Amazon]


読了。


やる気ナシだった若者が美少女仙人と出会って弟子入りすることになった。師弟以上恋人まではほど遠いふたりと、神馬やあやかし美女との旅の道中を描く、唐時代を舞台にした中華ファンタジー連作短編「僕僕先生」。シリーズ三作目。

一作目より二作目が、二作目よりも三作目が、と尻上がりに面白くなっていくと、わたしは感じているシリーズです。

収録作品は以下の通り。


職業凶徒 闇に囚われた者
相思双流 せっかちな女神
主従顚倒 夢に笑えば
天蚕教主 惑う殺し屋
回来走去 誰かのために流す涙
恩讐必報 失くし物、見つけた物




今回はいつもの人情味あふれるテイストに、奇っ怪な風体の暗殺者・劉欣が僕僕先生をターゲットとして送り込まれてきて、アクションやサスペンスのほうにも世界が広がって参りました。

それに、皮一枚の薄妃があいかわらずいい味出していますねー。

王弁もあいかわらず僕僕先生にからかわれ通しですが、ぐうたらな性分が愛嬌とかんじられるほど働くようになってきて、なかなか成長してきているなー感心します。

この巻のポイントは、劉欣とかれの背後関係。
そしてかれの心境変化と意外な素質でしょうか。

殺伐としたエピソードもさらりと読ませてしまう文章で、血も凍るような殺人鬼すら物語の一部として収めて語られるのが心地よい。
この作者さんの、語る対象との距離感が、今のわたしの好みにぴたりとはまってるんだなあと思います。

にしても、僕僕先生は王弁をたんに面白がって側に置いているだけなのかしら。
この僕僕先生と王弁のつかず、はなれずも、王弁としては気がもめるのもよくわかる、微妙すぎる距離感です。

読んでいる方はとっても楽しいのでこのまま微妙であって欲しいですが、ちょっと王弁が哀れにも思われてきたりしてw


シリーズは既につづきが刊行されています。
さびしい女神―僕僕先生
仁木 英之
4103030542


開幕編はこちら。
僕僕先生 (新潮文庫)
仁木 英之
4101374317