『図書館戦争 図書館戦争シリーズ1』

図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
有川 浩 徒花 スクモ
4043898053


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借りて再読。

検閲がまかり通るようになった近未来、唯一対抗できる存在として武力化した図書館に戦闘職として就職した女の子の、仕事と恋のミリタリーコメディー。シリーズ第一巻。

文庫化したのを機にシリーズをそろえた知り合いにお借りして読みました。
一巻は既読でしたが、やっぱり面白かった。

とんでも設定を支えるディテールのリアルさがすばらしい。
メディア良化法の成立過程はありうるなと思えるし、図書館武装化はともかく図書館法は実際にある宣言から発展させたもので司書課程を学んだものにはなじみ深い物です。

ミリタリー部分も、おそらくそれが書きたいがためにこういう設定になったんだろうなと想像がつくくらい、力が入ってます。

そのうえで、かなり鈍感で熱血な女の子の成長物語プラス片思いものとしてもすごく楽しい。

全体的に若めのキャラクター配置ともあいまって、展開は少女マンガ的というかラノベ的というかなんですが、それが重ためのテーマをすんなりと読ませます。

サービス精神が旺盛すぎる事がすこし余韻を削いでいるかなと思ったりもしますが、娯楽作品としてはそれもいいのではないでしょうか。

作者さんの若さと熱意が、物語全体に熱気として噴出している感じです。熱血です。スポ根ものに近いかもw

ヒロイン・笠原郁の恋の行方はたぶんハッピーエンドでしょう。
それがわかっていてなおかつ楽しめるのが、よい娯楽作品なんだろうなと思いました。

というか、堂上教官がいつまでこの地獄に耐えられるかが読みどころなのかもと、いま思いついたw

二巻もすでに読んでいるので感想はひきつづき。

図書館内乱 図書館戦争シリーズ(2) (角川文庫)
有川 浩 徒花 スクモ
4043898061

『女王さまがおまちかね』

女王さまがおまちかね (ノベルズ・エクスプレス)
菅野雪虫 うっけ
4591124673


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読了。

現代日本の小学生たちの冒険を描きつつ、物語を受け取るものと物語を生み出すものの欲望や葛藤をさりげなく描く、日常ファンタジー。


小学校最期の夏休み。苑田ゆいは宿題の読書感想文に頭を悩ませていた。読書は大好きなのに、感想文は苦手なのだ。残り十日ほどになって図書館へ赴いたゆいは、同級生で読書嫌いの荒太とともにため息をついた。クラスでもとびぬけて優秀な少年・現と出会ったかれらは、感想文の書き方を教えてくれるという現の家に行く。現の本棚に大好きな「密林のマヤ」シリーズを見つけたゆいは、シリーズの完結編がなかなか刊行されないのは作者が女王さまとよばれる謎の存在に誘拐されたからだという都市伝説を知らされる。




『天空の巫女ソニン』の作者さんの、現代ファンタジー。というか、メルヘン?

体裁は児童書で、描きかたも児童書。

でも、ディテールはきちんとつくりこまれていて、背景もきっちりとしてます。
現代日本の一地方都市の小学生の日常が、リアルに伝わってくる、でもどろどろではなくさわやかに。

そんなリアリティーの中から、異彩を放つ都市伝説のうわさをつたってぽんとつれていかれる世界は非現実感たっぷり。だけど、心の欲望を忠実に反映する世界のすがたや、出会う人物の過去などはじつにシビア。

読んでいて、これは物語を愛するひとのためのお話だなあと思いました。

ゆいの、自分の物語に時間を忘れて没頭してしまう姿に共感するとともに、スランプに陥った作家のリアルな背景にしみじみと泣けました。こういうところに反応するのはたぶん児童ではなく大人の方だと思います。

全体的には児童むけだなと思わざるを得ませんが、手抜きはいっさいなし。
いろんなところで楽しむことが出来る佳品だと思います。

感想文テンプレートには笑いましたが、じっさいそういうことをして評価を受けてきた人の話を見たことがあるので複雑ですな。

余談。

わたしはレストラン経営のゆいのお父さんのお弁当が、ものすごくおいしそうでうらやましくて仕方なかったです。
そして、女王さまのくれる羽根ペンが猛烈に欲しい!!!


天山の巫女ソニン 1 金の燕
菅野 雪虫
4062134233

20110728の購入

予約本を受け取りついでに寄った本屋で、いままでみたことがなかったタイトルを発見したので、つい手を出しました。

はなひらく 淵国五皇子伝 (一迅社文庫 アイリス こ 03-02)
古戸 マチコ 鳴海 ゆき
4758041563


以上、購入。

未見だというのはリアル本屋でだけで、ネットではさんざん見てるんですけどね。現物の威力は恐ろしい。
それと“希少価値”というのはわたしを動かす大きな要因になっているらしいです。
ネットでずっと拝見していた作者さんなので、ちょっとドキドキ。

最近ムシムシしてて調子が悪いです。
わたしは夏がとくに蒸し暑い日本の夏がだいきらいです(涙。

『天球儀とイングランドの魔法使い』

天球儀とイングランドの魔法使い (創元推理文庫)
マリー・ルツコスキ 圷 香織
4488556035


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読了。

魔法のある十六世紀ヨーロッパを舞台に、ボヘミア生まれの十四歳の女の子が父親のために頑張る冒険ファンタジー、シリーズ二作目。



ボヘミアを統べるロドルフォ王子から時計職人の父親の眼球を取り戻したペトラは、王子に完全に眼を付けられた。父親ミカルは親族を遠方へ避難させ、ペトラたちも村から逃げることになっていた。しかし、ペトラが友人トミックの元を訪れている間に父親の店は焼き討ちに会い、かけつけたペトラも恐ろしい怪物グリストレスキに襲われてしまう。大けがをして気を失ったペトラは、目が覚めたときにはロンドンにいた。イングランドのスパイで魔法使いのジョン・ディーが彼女を助け出してくれたのだ。ペトラはディーの思惑を勘ぐって打ち解けようとはしなかったが、ディーはペトラを匿い、さまざまな訓練を施し始めた。




なにこのものすごいへそ曲がりヒロイン……。
十四歳だからちょうどそういうお年頃でもあるんだろうけど、ペトラの、必ず人の言葉の正反対を行く頑固なキャラクターに終始あきれっぱなしのお話でした(苦笑。

舞台は十六世紀のボヘミアからイングランドへ。
時はエリザベス女王の統治下で、女王陛下に使える魔法使いディーの身辺には陰謀が渦巻いています。
そんなところに故郷の統治者から追われている少女を助けてかくまって、さらにさまざまな事を教えてくれようとするディーに、ペトラはことごとく反発。あんな態度やこんな態度であからさまに反感を示します。

たしかに秘密主義だけど、それは彼女のことを慮ってのことなのになあ……。
でも鉄壁のへそ曲がりと頑固は、それはそれで読んでいて笑えます。
ペトラはこの性格でかなり損をしているし、本人もうっすらとは自覚があるのですw

一巻ではペトラの視点で物語が進みますが、今回はペトラを追いかけてとんだことに巻き込まれてしまうトミックの物語からも眼が離せません。というか、トミックはペトラみたいな性格ではないのでとても効率よく自分の道を進んでいきますよ。

一巻でペトラのパートナーを演じたロマのニールも健在。

さらにペトラは剣術指南役のキットという少年とも出会います。

なにげなく読んでましたが、これって逆ハーレム状態では!?

ひきつづき悪役をつとめるロドルフォ王子は、今回は天球儀(セレスチアル・グローブ)に夢中です。
これが、メルカトル法で有名なメルカトルがつくったものすごく便利な機能を持ったブツらしいのです。

イングランドでは実在の人物が多数出演します。

だれもが魔法の才をもつ世界で、魔法がさまざまなシーンで重要な役割を果たしてくれるのがファンタジー読みには嬉しいところ。
ペトラの特異な能力もついにあきらかになります。

それにしても、ペトラのお父さんはつくづく不幸の星の元に生まれたんだなあ……。

ペトラの言動がおかしいのと、トミックとニールの鞘当てが笑えるのと、ディーが気の毒なのと、ペトラの親友で金属製の蜘蛛アストラフィルがかわいいので、とても楽しく読みました。

つづきがとても読みたいのですが、この本が出た時点では本国でもまだ刊行されてなかったらしいです。
今はどうなってるのかな。出たのならちゃんと翻訳して出していただきたいものです。


シリーズ開幕編はこちら。
ボヘミアの不思議キャビネット (創元推理文庫)
マリー・ルツコスキ 圷 香織
4488556027

「天国への階段」

志度勇魚さん作「天国への階段」読了。

女の子の一人称で描かれる異世界ファンタジー長編。完結済み。

キャッチフレーズは“目指せてっぺん下剋上でゴー”。
女の子の成長物語であり、ミステリ風味の陰謀劇でもあり。
シリアスとコミカルが適度に混じり合って日常目線から次第に広がっていく物語がすてきです。
テーマから文章、話の広げかた、描きかたまで、すべてをわきまえて書いておられる作者さんの力量が凄いです。

『宮廷神官物語 王子の証と世継の剣』

宮廷神官物語 王子の証と世継の剣 (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトーナオ
4044491097


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読了。

朝鮮王朝風異世界ファンタジーシリーズの第六巻です。

人の心を見抜く力を持つ慧眼児・天青が、宮廷で改革をめざす王子や彼を支えるひとびととともに、保守派の陰謀に巻き込まれる、という展開が続くここ数巻。

今回も、藍晶王子は蝶衣麗人のしかけた作戦によって、謎めいた霧の島にいって世継の証となるものを受け取ってこなければならなくなります。

王子について天青、鶏冠、曹鉄らいつもの面々も旅に出かける事に。

この旅がかなり大変。王子の大冒険といってもいいくらいなのですが、そのあいだに、第一巻から仕込まれていた伏線が着々と進んでいる事にもハラハラしなければならないという、憎らしい展開です。

あいかわらず、文章は読みやすく端正で、登場人物の心の機微がさりげなく書かれていて、安心していられます。

あっというまに読めてしまいますが、けっこう心に残るシーンがあるのがいいなあ。

今回は不思議要素がいつもより増量されてて、ちょっと東洋の怪異譚みたいな雰囲気があったりするのも楽しかったです。

鶏冠と曹鉄の ! なシーンにぎょっとなったりとか。あれ、鶏冠って性別詐称とかしてないですよね? ね? ね?w

ラストで「ああ、なんということだ。やっぱりそうなるのかー!」展開がやってきたので、つづきがとっても気になります。

が、新刊にちかづくにつれて予約待ち数が飛躍的に伸びてきたので、ちょっとすぐには届きそうにないのが哀しいです。
はやく届けーと某方面に呪いを放っておきます。

宮廷神官物語 双璧の王子 (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトー ナオ
4044491100

『薔薇と茨の塔 下 エリアナンの魔女6』

エリアナンの魔女6 薔薇と茨の塔(下) (エリアナンの魔女 6)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198631476


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読了。

近世スコットランド風異世界ファンタジー三部作の完結編。


妖術師マヤは幻術の技を駆使しエリアナンと敵対する霧につつまれたアランの地を訪れた。娘のブロンウェンをつれた大捜索官レンショーが身を寄せているという情報を得たためだ。ところがそのブロンウェンは偽物だった。マヤはアランの女藩公マルグリットにある物をみせて決死の取引を持ちかける。いっぽう、木化けのリランテたちの尽力により妖精族の助力を取り付けた翼のラクラン率いる軍はティルソワレーの〈光の軍団〉をじりじりと押し返していた。ところが決戦の前夜、メガンやジョーグなど魔女術の使い手たちは不吉な胸騒ぎに苛まれる。




おわび。
これまで古代スコットランド風と書き続けてきた気がするのですが、どうやらここは近世です。
なんとなれば火縄銃が出てくる。
火縄銃は〈光の軍団〉の装備ですが、かれらはたぶん少しばかりのキリスト教徒たちの末裔なんだろなー。

ここにいたってわたしは、ようやく、物語世界全体を把握できたような気がします。
そういえば、十五、六世紀のスコットランドから脱出してって、最初の巻に書いてあった、ような(汗。

そのスコットランド(物語の中ではアルバ)から迫害を逃れてやってきた人間たちは、エリアナンの地にかってに住み着き、移民のくせに先住民を追い払って繁栄してたってことですね。

それも、毎巻の冒頭にかならず記してあるのになぜいままで素通りしてきたのだろう……わたしの阿呆。

ここで自分のために整理してみると、まずラクランの属する王家マックインはエリアナンの上王の地位にあり、それぞれの藩公に忠誠をもとめていた。

ラクランの長兄でエリアナンの前王ジャスパーが娶ったのが、海棲の妖精族フェアジーンの血を引く幻術師マヤ。フェアジーンは人間に故郷から追い払われ、虐げられた事にたいして復讐をもくろんでいる。

霧の国アランのマクフォグナンは、そもそもエリアナンの地にたどり着いたときからマックインの地位を認めていなかった。それで女藩公マルグリットはマヤと共闘することにした。さらに魔女術を否定する一神教のティルソワレーとも影で手を結んでいた。

エリアナンの先住者・妖精族にはさまざまな種族があり、霧の国アランでマルグリットと契約を結ぶ恐ろしいメスマードのように人間とは全く異なる生き物から、大きな勢力を持つフェアジーンや、高山にすむ誇り高い戦闘種族カンコーバン、高貴なる星見の天空人などのようにひとがたに近いからだと思考を持つものもいる。

……という感じでしょうか。

いつもは物語世界に身を委ねるにはそんなにいろいろと考えたりはしないし、その必要もそんなにないと思うのですが、この話の場合はなんとなくわたしが理解したいと思ったので、この巻は二回読んでみました。

すごく、面白かったです。

始まりはイサボーとイズールトの双子姉妹とその後見の魔女メガンが中心でしたが、第二部からは完全に群像劇になってますね。

この巻での読みどころはマヤとマルグリット、マヤとイサボー、つまりマヤがどのようにしてここにいたり、なにを思い、なにをしてのけるか、だったような気がします。

マヤとイサボーとのシーンでも視点はイサボーなんだけど、イサボーの行為はそれほど重要じゃないような。ヒロインなのにかわいそうに。苦労ばかりしているイサボーにはすごく同情してました。最初の能天気娘はもうどこにもいません。

煮え切らずに苦労するイサボーもそうですが、イズールトもけっこう心労が絶えません。この話に出てくる人はみな、長所と抱き合わせの欠点を持っていて、それがどうしようもなく運命を左右してしまうようなシーンが結構あり、それが話に生々しいような臨場感を与えていると感じます。

臨場感といえば、奥行きと質感のある書き割りでない世界を創出する描写がとても好きです。

緊迫感とスピード感にあふれる戦闘シーン。
たくさんの妖精族がそれぞれに活躍するシーン。
子供たちが懸命に頑張るシーン。
星見のわざの見せる幻想的なシーン。
悲壮な最期の決意。
そして転落した男の無様な姿。

雄大な英雄伝説に、市井の人々のちいさいけれど真剣な物語がからまりあう、地に足の着いた物語世界を堪能しました。

さまざまな神話伝説モチーフが巧みに織り込まれてますが、わたしの印象に残ったのはやはり変身譚。クロウタドリに変えられていたラクランを筆頭に、いくつもの悲劇がありました。ええ、こんなところにまで、と思うようなところにまで。どれだけ変化させたんだマヤよと呆れました。

この巻で三部作は完結ですが、訳者あとがきによれば本国では続きがすでに三冊出ているらしいです。

いちおうの区切りはついたけどまだ決着がついてない事はたくさんあるし、たとえばイサボーの幸せはいつくるのかとか、いろいろと気になるのでこのつづきもとても読みたいです。売れ行きからしてちと心配なんですが、心待ちにしているので刊行をお願いします。なむなむ。


シリーズ開幕編はこちら。

エリアナンの魔女1 魔女メガンの弟子(上) (エリアナンの魔女 1)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198630917

「裏切りの帝国」

千 花鶏さん作「裏切りの帝国」読了。

異世界ファンタジー長編、完結済み。

乙女向け異世界王権がらみロマンス。
政治形態の異なるいくつかの国を舞台にした基本は切ない恋愛もの。
進むにつれて人間関係と物語世界の舞台にしだいに広がりと深みが加わっていきます。

個人的には地に足の着いた番外編が好き。

『まほろ駅前多田便利軒』

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
三浦 しをん
4167761017


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借りて読了。

三浦しをん、初読みです。
第135回直木賞受賞作品だそうです。
ふだんジャンル小説ばかり読んでいる人なので、ちょっと面倒くさい読み心地でしたが、面白かったです。

面倒くさい、というのは、ふつうの現実日本が舞台になると状況説明が省かれる事が多くて、そのぶん自分で類推しなくちゃならない部分が多くなる、ということかなあ。
常識からいって「当たり前だから」と読み手に丸投げされてるのであろうその部分が、わたしには当たり前でないらしいです。

舞台となっているまほろ市が知ってる土地っぽかったので、その気後れ分が半分くらい助かりましたが、そうでなかったら読み切れなかったかも(汗。

話は、ほそぼそと便利屋を営んでいるバツイチ中年男が、高校の同級生と再会してころがりこまれ、なぜか雇うことになり、ふたりで仕事をするうちに出会ういろんな出来事を中心にして、郊外の都市で暮らす人々の現在を描いていく、連作短編のような体裁です。

読んでいて、あーー、これ、マンガっぽいなーと思いました。ちょっとブンガクっぽい雰囲気の、センスの良いマンガです。
そして、マンガならたぶんこんなに読むのに苦労してないなー、とも。

つぎからつぎへと変人ぽいひとがでてきて、キャラクターとして絵が描けてしまいそうなところとか、事件が三面記事っぽいところとか、あくまで雰囲気は日常だけど、危険な部分に足を突っ込みかけた、あるいはもう突っ込んでしまってる、あやうい道を歩いているひとたちの綱渡りな人生が笑い要素をふくんで繰り広げられるあたりも、いままでマンガで読んできた物語によく似ています。

こういう話を文学が書くようになったのかー、と思いました。

適度な距離感の元に登場人物を描いていく、さらりとした文章。さりげないところにすこしずつ仕掛けが仕込まれている展開が面白かったです。

いかにもうらぶれてる主人公の多田と、盛大にドロップアウトしてるのになぜか悲壮感の無い行天の対比が印象的でした。

現代社会の問題点(高齢化・ネグレクト・DV・ドラッグ・生殖医療などなど)がてんこもりなあたりにちょっと疲れましたが、それぞれに少しの救いや希望がある結末で後味はよかったです。

ときどき、印象的な文章や台詞が眼に飛び込んでくるのに不意をつかれて、立ち止まりました。
心に波紋を残すような表現は、同時代を生きて同時代を描く作家が持つ言葉の力なんだろうなと、普段現代物を読まないわたしは感じたのでした。

『ユアン少年と小さな英雄』

暑さに浮かされながらぼんやりとテレビを見ていたら俄然はまってしまった映画です。

舞台が十九世紀のエディンバラで、主役がわんこ。
わんこが出るたびにかわええー、かわええー、と和みまくり。
エディンバラのあちこちが映るたびに、ああ行ってみたいわー、と萌えまくりでした。

十九世紀のスコットランド庶民の生活が活写されているところもツボです。

しかし、とにかくわんこ!
わんこなのです!

正直、墓地のエピソード以外は、こんなんあるかーー?と疑問を抱いてしまいますが、それもすべて愛らしいテリアの、ちょこちょこ走り回るモップのような姿ですべて許せます。

さらにラストで出てくるエディンバラ市長はクリストファー・リー御大でございます。

わんこ好きでほのぼのしたい向きにお薦めです。

密林で検索したら、DVDはタイトルが変更されてました。

ぼくとボビーの大逆転 [DVD]
ジョン・ヘンダーソン
B000T6C5B2

『クロノ×セクス×コンプレックス 2』

クロノ×セクス×コンプレックス〈2〉 (電撃文庫)
壁井 ユカコ 村上 ゆいち
4048684051


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読了。

魔法学校での青春性別入れ替わりタイムトリップSF、どたばたでテンション高め。シリーズ第二作。


時計屋の息子三村朔太郎はふつうに高校生活を始めるはずだった――入学式に出席するための登校途中で、見知らぬ少女と衝突するまでは。少女ミムラ・S・オールドマンの身体になって時間を操る時の流れから切り離されたクロックバード魔法学校に通わねばならなくなった朔太郎は、なんとかして元の世界に元のからだで戻りたいと願ったすえに、女子寮の監督組織ホーライ会に所属することになり、夢に一歩近づいた。しかし、そうなると気になるのが優等生だが不器用なオリンピアの事。そんなおり、オリンピアはある事をきっかけに女子寮で村八分状態になってしまった。行き違いからオリンピアに誤解をされまくって焦る朔太郎に、救いの手を差し伸べようとする男子生徒が現れる。彼の名はバーニー・リー。女嫌いを公言するかれはなぜかつねにウサギを追いかけていた。




三村って罪作り……。
一巻で女子寮の王子様になったミムラ・S・オールドマンは、二巻では男子寮のお姫様になっておりますよw

しかし、この学校の男子と女子の扱いの違いはどうしたものでしょう。
いくら女子生徒が男子嫌いでも、学校としての姿勢は問われないのか。
もしかして、寮内は完全自治制とかなのかな。それにしても育ち盛りの男子にこの食事は無いわ、と哀れを催しました。

今回は授業内容より生徒同士の感情的なかかわりがメイン。
ミムラとオリンピアの行き違いには思わぬ人物の意思が働いていたという。ちょっと陰謀めいた話になります。

そこに唐突に現れた、男子寮の哀れな住人バーニー。よんどころない事情からとんでもないタイムトリップを繰り返すかれが、ミムラに頻繁に関わるためにさらに事態は混迷を深めていく事に。

かれの飛びまくる時系列がはたからみると分けわからない状態で、こんな混乱した話をよくもまあきちんとまとめられるものだと感心しました。

面白いのはトリップするのは一日の中だけって縛りがあるみたいなところかな。
からだはそのままで意識だけトリップするのって、どこかで読んだような気がしますが、これはきちんと現実の時間に関わっているのがポイント。

わかってないバーニーがしでかしたことを、わかってるバーニーが取り繕おうと奮闘するあたりが面白いです。

そういえば、日常的なタイムトリップ物の醍醐味って、そういうものかも、ですね。
ちょっと榎本ナリコ『時間の歩きかた』を思い出したりしました。

で、読んでてたのしいのはやっぱり三村がミムラである事から生じた、無防備で無警戒で天然な、しかも生命的な魅力に満ちあふれた女の子がバーニーの動揺を誘うあたり。
男子の心をさんざん惑わせておきながら、本人まったく自覚なしですw

これでミムラが本来のミムラに戻ったら、みんないったいどうなるんだ? とひどく心配をしてしまいますよ……ほんと、三村よりオリンピアやバーニーのほうが心配だ。

とか思ってたら、最後にとんでもない現実が!
思いっきり三巻を待て、で終わってしまったのですんごくつづきが気になります。

いったい、何が起きたんだろう。
ずっと気になってる〈永久時間剥奪者〉の正体も、わかるといいなーと思います。

もちろん、世間ではとっくに三巻刊行済みです。
わたしが読めるのはたぶんもっと先のことですが……;

クロノ×セクス×コンプレックス〈3〉 (電撃文庫)
壁井 ユカコ 村上 ゆいち
4048700456

『宮廷神官物語 慧眼は主を試す』

宮廷神官物語 慧眼は主を試す (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトーナオ
4044491089


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読了。

不思議な力を持つ元気な少年とかれを見守る若者たちと、敵対者とのかけひきを描く、朝鮮王朝風異世界宮廷陰謀ファンタジー、シリーズ第五巻。


息子に王位を継がせたい側室・蝶衣麗人と保守派によって慧眼児の偽物とされた野生児・天青。帰郷という名の宮廷追放に処された天青は、男装の麗人・櫻嵐姫とともに旅芸人の一座にまぎれて旅をしていた。慧眼を使いこなす修行のために故郷の白虎峰を目指す天青には、命を狙う追っ手が掛かっていた。いっぽう宮廷では、改革派の藍晶王子に蝶衣麗人毒殺未遂の嫌疑がかけられ、王に叛意ありとして投獄されてしまう。




派手さは無いけれど堅実で気をそらさぬ文章、よどみない展開にさりげない遊び心がちょこちょこ垣間みられて楽しい、安心して読めるシリーズです。

主人公の元気はつらつ少年・天青のすることが天衣無縫でかわいいです。
まだまだ子供らしい彼を見守る若者たちがはらはらと心配し通しなのが、しみじみと共感できます。
まだそんな歳じゃないのに、しかも男なのに、天青を案じて憔悴しきりの鶏冠がまるでお母さんのようw
かれらの心配をよそに駆け回る天青が、それでさらに子供に見えるわけです。そこが楽しい!

宮廷の陰謀劇はどんどんエスカレートしていってます。
嫌疑をかけられるとすぐに牢獄行きなのがすごい。王族だろうとなんだろうと容赦なしですね。
そういえばチャングムでも牢屋シーンが頻繁に出てきたなー。
翻って日本の歴史ドラマにはあまり牢屋シーンてないような。このあいだ『JIN』ではみたけど、身分の高い人のそれはほとんど見た事無いですね。斬首や切腹にはなるんですが、軟禁されたのちってのが多いような。なぜだろう?

今回は白虎峰の仙女様のシーンがたいそう可笑しかったです。
しっぽが、しっぽがw
天青、かわいいなあw

というわけで、あっという間に読み切ってしまいました。
面白かった。

つづきはすぐに予約しました。
王室に伝わる三振りの剣の話がどこまでひっぱられるのか、楽しみですw


宮廷神官物語 王子の証と世継の剣 (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトーナオ
4044491097

『嵐に舞う花 クラシカルロマン』

嵐に舞う花 クラシカルロマン (ルルル文庫)
華宮 らら 石据 カチル
4094521763


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いただいて読了。

近代ヨーロッパ風異世界を舞台にした少女向け歴史ロマン。


中立国シュビーツ王国の王女メリルは王族初の女学院卒業生。勉学よりもダンスや乗馬が得意で卒業後の進路をあまり考えていなかったメリルだが、シュビーツのある西大陸は大きな戦争のただ中にあった。両親を早くに失い若くして王となった兄クリスティアンはそんなメリルにこれからは王女の自覚を持つように願い、幼なじみのダーツを護衛将官として紹介する。そんなおり、北のルッシニアがシュビーツとの国境付近に軍を侵攻させてきたという知らせが入る。極秘に前線の視察に赴いたクリスティアンが事故で大けがを負った矢先、ルッシニア大使の面会要請が届く。重臣会議の結果、メリルは国王代理として会見に臨むことになる。




戦時の中立国がどのような存在であるかをわかりやすく説明しつつ、そのなかで自分にできる精一杯の事をして平和への流れを作り出そうとする王女の奮闘がけなげな、クラシカルロマン第三弾です。

今回も美形男子は、兄上である国王陛下、幼なじみの護衛将官、ルッシニアの一見たらし侯爵、幼なじみのボアレス王国の盟主の息子ともりだくさん。

でも今回は本命がかなりはっきりと描かれてるのでやきもきは少ないですね。

それに、ヒロインが危機一髪というシーンもあまりなく、ドラマティックという点では前二作と比べると小粒かなと思われます。

ただ、戦時中の政治的なかけひき、つまり外交や諜報活動がどのようにしておこなわれるのか、中立国の利点と限界などが書かれる少女向け小説はかなり珍しく、面白いなあと思いました。

メリルは陽性のヒロインで、初心者のたどたどしさはありましたが、彼女なりにひとびとの要求を果たして成長していきます。
これからも外交関係に尽くして、そのうち女傑になっていくのかなあと思いました。


クラシカルロマンの一作目。このシリーズは一冊ずつヒロインが違いますが、物語世界が共通しています。

ルチア―クラシカルロマン (ルルル文庫)
華宮 らら 石据 カチル
4094520902

20110706の購入

病院にいく家族にくっついて出かけたついでに、本屋に寄りました。

夏目友人帳 12 (花とゆめCOMICS)
緑川 ゆき
4592193628


眠れぬ夜の奇妙な話コミックス 百鬼夜行抄20 (ソノラマコミックス)
今 市子
4022131640



以上、購入。

『夏目』はきっとたくさん入荷するだろうから発売日に行かなくても平気だろうと思ってましたが、やはり安全牌でした。
『百鬼夜行抄』はまだ発売日じゃないような気がしましたが、一店だけ置いてあるのを偶然発見してから最新刊であることをいちおう確かめた後、レジに赴きました。シリーズ物は何巻まで出ているのかわからなくなって久しいです;

偶然ですが、物の怪づくしですねw
ゆっくりと楽しみたいと思います。

『薔薇と茨の塔 上 エリアナンの魔女5』

エリアナンの魔女5 薔薇と茨の塔(上) (エリアナンの魔女 5)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198631468


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読了。

シビアでハード、かつ魔法の香りがムンムンな古代スコットランド風異世界ファンタジー、三部作の第三部上巻。


海の異形フェアジーンの妖術師マヤによって専横されていたエリアナンの玉座を奪い返した前王の弟ラクランだったが、魔女と妖精排斥を続けたマヤの政策は全土に浸透しており、ひとびとはなかなかラクランの元に下ろうとしない。さらにアランの女藩公マルグリットの手引きによる〈光の国〉ティルソワレーの侵略とフェアジーンの侵攻もつづき、ラクランの不安と怒りに危険を感じたイサボーはブロンウェンをつれてルースシャーの城を逃げ出した。そんなおり、マヤ女王と赤子の王女ブロンウェンを世継ぎとして擁立する〈大捜索官〉レンショーの反乱が起き、イサボーは裏切り者として疑われるようになる。




進めば進むほど過酷になっていくイサボーの運命にかわいそうになってしまう第五巻でした。
最初は好奇心でいっぱいの能天気な苦労知らずの娘だったのにねえ……。
彼女の味わう苦労はすべて身になっているとはいえ、容赦なくからだに刻まれていく傷の数々に、痛みを覚えずにいられません。
メガンの愛情故に無防備に育ったのがイサボーの悲惨の始まりだったのでしょうが、でも、はじめからビシバシ鍛えられて警戒心たっぷりだったら、馬のラサールとここまで接近できたかわからないし、マヤと親しくなったりもしなかっただろうし、するとプロンウェンにここまで思い入れる事もなかっただろう。ということはすべては物語上の必要性ということなのか。

それにしてもここまでヒロインに厳しい物語も珍しいような気がする。
はっきりいって、これが児童書枠で出ているのが不思議です。

それはそれとして、物語は、これって本当にスコットランド風なんだなあとしみじみするようなモチーフや小道具がたっぷりと仕込まれていて、もしかして作者さんは自分のスコットランド神話・伝説をつくりあげたかったのではなかろうかと思ってしまうくらいに徹底しています。

迫害を逃れてたどり着いた別の星にスコットランドの異形がたくさん暮らしてましたなんて、古代スコットランド人の精神世界をそのまま再現したいが故につくった設定としか思えない。

すごく緻密に設定してあるようなのにあまり親切とはいえないそれぞれの氏族の描かれかたからして、わかるひとが読めばすぐわかる元ネタがあるのだろうな。

スコットランドにはあまり詳しくないわたしもときにあれと思うので、ファンタジー初心者には不向きな話なのではなかろうか。

そんなマニアックな話をいきなりどんとシリーズ刊行してしまう出版社。すごい。というか、売れてるのでしょうか。心配です。

とはいえ、そんな魔法と伝説の香りがむんむんと濃厚なお話を、わたしが気に入らぬはずがないのでありまして。

イサボーの転落人生? も含めて、この話のただよわせる雰囲気には病み付きになりそうです。
この巻で初めてあきらかになるイズールトの育ったカンコーバンの暮らしにもわくわくしたし、木成りリランテの立ち会う夏至の祭りの美しさは感涙物でした。

それにしても、残り一冊でこの話まとまるんでしょうか? 本当に?

イサボーの真の力と、ティルソワレーを引き入れる女藩公マルグリットの真意だけはあきらかにしてほしいです。
なんだか信用していない書き方になってしまいましたが、翻訳は井辻朱美さんなのでその点では信頼しきっております。

最終巻は世間的には刊行済みです。
はやく図書館に入れ~!!!

エリアナンの魔女6 薔薇と茨の塔(下) (エリアナンの魔女 6)
ケイト・フォーサイス 井辻朱美
4198631476

『GOSICKs IV 冬のサクリファイス』

GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス‐ (角川文庫)
桜庭 一樹
404428119X


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借りて読了。

1940年代前半ヨーロッパの小国ソヴュールの寄宿学校を舞台に、囚われの天才少女と日本人の少年のかかわりをミステリ仕立てで描くシリーズ。番外短編集の第四巻。


プロローグ
第一話 白の女王は君臨する
第二話 黒の僧侶は祈りを捧げる
第三話 黒の女戦士は駆け抜ける
第四話 騎士はちいさな姫にかしずく
第五話 忠臣たち
エピローグ



『GOSICK VII 薔薇色の人生』の後を受けて最終章までのカウントダウンと、今までのおさらい&裏話的な短編が並ぶ、かなり微笑ましい巻でした。

クリスマス前夜、聖マルグリット学園で恒例の人間チェスゲームのどたばたのなか、挿入されるように語られる主にヴィクトリカとグレヴィール警部の兄妹の過去エピソードがかわいくて楽しい。

グレヴィールさんはなんだかんだいってとってもかわいい御仁ですねえ。
いくら苦境を救ってもらったからって、あんな理不尽な約束をくそ真面目に遂行し続けるあたり、馬鹿正直ともいえるかもw

とばっちりを受けたイアンかエバン、いい出会いがあるといいなあw

それにくらべてブロワ侯爵の非人間的な事。
このひとは徹頭徹尾悪役なんでしょうけれど。コルデリアにした仕打ちもヴィクトリカの生い立ちに関しても、かれの行為はまったく理性的でないし、非合理的です。
本当に灰色狼を武器としたいならば、きちんとした環境でもっと大切に扱って手なづけた方がなんぼか効率が良いと思うんだけど、いったいどういうふうに生きてきた人物なんでしょうね。理解不能です。

そもそも話の肝である灰色狼のものすごさというのも、いまだによく体感できないのですよね……。

アニメを見ていても、やっぱりこの話は根本的な設定に無理があるんじゃないかなと漠然と感じました。ミステリとしてもわたしが微妙な気持ちになるくらいなので、これでいいのかなあという気が;

でも小ネタの続く展開やキャラクターはとても楽しいのですよね。
ヴィクトリカと一弥の絆には、胸がきゃんきゅんします。

……このシリーズ、ラノベレーベルのままの方がよかったんじゃないかしらん。

今回、人様にお借りして『秋の花の思い出』『薔薇色の人生』これとつづけて読んだのに感想を書くのを忘れてました。しかも、読んだ記録までつけ忘れてました。暑さぼけです。

しかたないので感想はこの巻だけにさせていただきます。
じつは先の二冊、あんまり印象に残ってないのです……orz

すでにシリーズ完結編の上巻が刊行されていますね。
アニメの終わりとどう違うのかに興味津々です。

GOSICKVIII上‐ゴシック・神々の黄昏‐ (角川文庫)
桜庭 一樹
4044281211

『彩雲国物語 紫闇の玉座』上下

彩雲国物語   紫闇の玉座(上)   (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
4044499217


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読了。

女の子が官吏として頑張る中華風異世界宮廷ファンタジー、シリーズ完結編。


彩八仙の建国伝説の残る国、彩雲国。地震に蝗害と大雨と立て続けに襲う天災に苦しむ民を救うため、孤立無援の王のただひとりの信頼される官吏として、謎の縹家を訪問した秀麗。結界をはる神器をつぎつぎに破壊されていまにも命尽きようとしている縹家の当主・瑠花に会い、弱者救済の本分を取り戻させるが、無理を重ねた秀麗の命数も風前の灯となっていた。いっぽう、王都・貴陽の宮廷では、無策無能の王として非難を受ける劉輝の代わりに貴族派の重鎮である旺季が官吏の信頼を集めていた。軍の完全指揮権を劉輝からゆだねられた旺季は、蝗害救援のためとして国軍をみずから率い紅州へと旅立つ。赤い禍つ星の出現に王権交代がささやかれる中、劉輝は宰相の悠舜にとある決意を打ち明ける。




これにて全巻完結と思うと感慨深いです。
シリーズ最初の一冊を呼んだときは乙女ゲーム風の逆ハーレム小説かと思いましたが、いやそれでも十分に面白かったのですが、まさかその話がこれほどまでに広く深く大きなスケールをもつ、志の高いひとびとの相克を描く架空歴史物になろうとは、想像しませんでした。

でも、考えてみればヒロイン秀麗のキャラクターは一貫しています。
彼女は当初から、ひとびとが皆幸せで暮らすための国を願い、それを少しでも自分で実現したいと切望する、真剣な女の子でした。

彼女が求めていたのは同志であって、もたれあい馴れ合うような人間関係ではありませんでした。

そんな彼女に恋をした昏君・劉輝がしだいにめざめ、現実と自分を客観視し、おのれの存在意義となしうることを考えるようになり、ひとりの王として成長していくさまが描かれたのが、この「紫闇の玉座」でした。

シリーズの最後の最後に来てようやくか、と思いましたが、この巻の劉輝の変貌はめざましかった。
よき好敵手……といっていいのかわかりませんが、旺季様の存在がかれをここまでたどりつかせるに大きな役割を果たしていたことはまちがいありません。
これまで語られなかった劉輝と旺季様のかかわりが描かれていくあたり、ああ、そうだったのかと思いましたし、相手が高い理想を掲げる旺季だったからこそ、劉輝の行為の意味もきちんと汲んでもらえたのだと思います。

最後の対決シーン、出来の悪い子供を持った気分だったわたしは、感涙にむせびました←大げさですw

まっすぐに目標に向かってかけてゆく秀麗の姿は、やはりこのシリーズの象徴だったなーと思います。

志を高くもて、そのためにできる努力は怠るな、手を抜いて後悔することだけはせぬように。

彼女の思いはその行動によって彼女に関わったすべての人に伝わったと思います。
そう、キョンシーになったあの人にさえも伝わっていたと思います。

ぎゅうぎゅうに凝縮した物語の最後のクライマックスを、わたしも一気に読みきりました。
これまで登場してきたひとびとほとんどの物語がここにきてすべてからみあい、つながりあい、収束していく緊張感と高揚感にどきどきしながら。すごく疲れましたが、すごく充実した時間でした。

面白かった。そしてすばらしかった。

欲を言えば、あまりにも凝縮されてるのでぎちぎち感が。ほとんど説明っぽい説明文なしで、そのうち描写も最小限になり、物語に空間があまり感じられなかったですね。
でもそれが(わたしが)緊張感をきらずに最後まで突っ走れた要因でもあるような気もするので、仕方ないかもしれない。

あと、登場人物がほんとうに多かった;
全員集合したときはどうなる事かと思いましたが、顔見せ程度で終わったひと多数。それはそれで、もっといろいろ知りたかったなあと欲張りな事を考える要因になりました。名前しか出てこなかった人もいたし。黎深さんとか、黎深さんとか、黎深さんとかですが(苦笑

それと、鄭悠舜という人物。
こんな詐欺師だとは思わなかったわ!w
このひとはこの話のキーパーソンだと思いますが、これほどまでに悪人だったとは。
そりゃ、自分でも悪人だ悪人だとなんども告白してますけど、それをうわまわる悪人度でしたw

というわけで、秀麗と劉輝の物語は終わりましたが、わたしとしては主筋のために切り捨てられたこまかいエピソードがいろいろと知りたいなあと未練が残る最終巻でした。

番外短編集とか、出してくれないでしょうかねえ。


彩雲国物語 紫闇の玉座(下) (角川ビーンズ文庫 46-22)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
4044499225


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シリーズ開幕編はこちら。
彩雲国物語―はじまりの風は紅く (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
4044499012

20110630の購入

発売日なので本屋突撃しました。

彩雲国物語 紫闇の玉座(下) (角川ビーンズ文庫 46-22)
雪乃 紗衣 由羅 カイリ
4044499225


以上、購入。

さあ、これで完結ですよ!
すごいなこの本の分厚さ!
というわけで、早速上巻を読みはじめました。

それにしても世の中は炎熱地獄でした。
まだ梅雨もあけていない……はずなのに、すでに夏バテしかけております。
まだあと三ヶ月以上も暑い季節が待っているかと思うと、ぼんやりとしてしまいます。
元から冷房が苦手なので節電はそれほど関係ないと思うのですが、冷房が苦手なのと暑さが苦手なのは両立するものなのです。

だいじょうぶかなあ、今年の夏は;