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『矢上教授の午後』

矢上教授の午後
森谷 明子
4396633211


[Amazon]

読了。

現代学園ミステリ。高齢者大活躍のほのぼの風味。


夏休みのある日。東京は多摩地域にある某大学生物総合学部の老朽化した研究棟では、それぞれの用事に精を出すひとびとが人知れず活動を続けていた。研究棟の名物・矢上教授をはじめ、締め切りに追われる院生たち、かれらのお目付け役の助手。複数の教授とその助手たち、さらに外部からの来訪者三名だ。午後になり、天候が悪化。雷鳴とともに豪雨が降り始めた。棟内を点検してまわっていた助手は、階段の途中で死んでいる男を発見して悲鳴を上げる。ところが停電で固定電話もインターネットも携帯電話もつながらず、もちろんエレベーターも停止。さらに階段の外側でなにかが障害となってドアが開かず、外部との行き来は不可能となっていた。途方くれた関係者たちだが、なぜかはりきる矢上教授の指示のもとに行動を開始した。




都会の郊外で突如出現した嵐の孤島。
謎に挑むのは、理系学部で日本古典文学を教える七十代の名物講師“矢上教授”。

おんぽろ研究棟を走り回る人々。二転三転する状況。こっけいだけど真剣な脱出劇。予想外の闖入者。そこかしこに痕跡を残す動物たち。迷惑方面に個性的な教授たち。もちろん平均年齢高し。

ミステリとしての仕掛けはわたしにはよくわからないけど、面白かったです。
途中あまりにもネタが多くてちょっとダレかけましたが、矢上教授のキャラクターがたいへんに好み。

生物専門学部なのに日本文学を教えてて、講師なのに教授と呼ばれてて、研究棟に一室もってて、そこの蔵書の七割がミステリ。

しかも老教授という言葉がよく似合う容貌のお方だというw

佐々木倫子に漫画化してほしいわー、と思いながら読みました。
『動物のお医者さん』的な雰囲気が漂ってるようなw

作者さんの現代物は初めて読みましたが、そんなに無理な感じもなかったです。
わたしは幻想風味のもののほうが好きですけど、幻想話もわりとミステリぽい仕掛けがあるし、基本的にミステリ好きな方なんだなと思いました。


こちらは紫式部が探偵役のミステリ。
千年の黙 異本源氏物語 (創元推理文庫)
森谷 明子
4488482015


幻想的な連作短編集。
七姫幻想 (双葉文庫)
森谷 明子
4575512540
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『封殺鬼 帝都万葉』 

封殺鬼 帝都万葉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ 也
4094521852


[Amazon]

読了。

軍国主義へと傾きつつある時代の日本を舞台に、平安時代から続く陰陽師の家系の少女当主・桐子とふたりの使役鬼の、人ならざるものとの事件を叙情性豊かな筆致でシャープに描くシリーズ。『封殺鬼 鵺子ドリ鳴イタ』のたぶん直接の続き。



昭和六年、秋。武見志郎は黒い蛇のような影のまとわりつく簪を、そのために具合の悪くなった近所の隠居からもらい受けていた。そこに陰陽師の神島家の使役鬼・戸倉聖がとうとつにやってきた。当主の桐子が京都の本家からやってきたので挨拶しにこいという。桐子は帝都で広がる霊障騒ぎを調べに来たのだ。聖は簪を霊障騒ぎと関係あるのではと神島家に持ち帰ったが、猫又がくわえてもっていってしまう。猫又を追って志郎と鉢合わせをした桐子。そこに簪に未練があるという記憶喪失のしゃべる達磨が流されてきた。




今回はすこうし軽めの雰囲気で始まりました。あいかわらず、さらりと書かれる文章に詩情があってすてきです。

しかし、話そのものはかなり深刻。いや、たぶんこの本が書かれ、刊行された一月に読んだらそれほどは感じなかったと思われるのですが。

せつない哀しい苦しい、そんな念を抱いてただよう怨念のことを実感として切り捨てられなくなりました。

いつも時代の社会的な情勢まで組み込んだ話をきちんと描かれる作家さんですが、そうか、昭和の初めの日本は大震災の爪痕からまだ立ち直ってなかったんだね、というかむしろそのせいで余計に不景気が募って情勢が悪化したのかな、ということをわたしはこれで初めて意識した気がします。お勉強させてもらいました。

話自体はいつもどおり、鬼と陰陽師と産女の息子の掛け合い漫才が楽しく続きます。

とくに桐子ちゃんはとってもほほ笑ましいツンデレさんで、志郎くんは模範的な朴念仁で、これでもかこれでもかと桐子をスルーしまくって、いやはははははw ニヤニヤが止まりませんでした。

聖と弓生の桐子可愛い度の競いまくりも可笑しい。
かれらの愛情はせつなさを含んだもので、そのことがあらわになるたびに泣きそうになるのですが、志郎に対するふたりの正反対な態度も可笑しいです。

それに鬼以外の人外キャラクターも大活躍。きな臭い関係がでてこなかったので、今回は全体的に人情ばなしの雰囲気となりました。

姐さんの人生相談がナイス!

つづきはまだ出ていないようですが、このあと桐子と志郎はどうなっていくのかな。
楽しみにお待ちしています。


シリーズ開幕編はこちら。
封殺鬼―鵺子ドリ鳴イタ〈1〉 (ルルル文庫)
霜島 ケイ 也
4094520082

『魔法の庭』全三巻

魔法の庭〈1〉風人の唄 (ファンタジーの森)
妹尾 ゆふ子 春日 聖生
4939073076



再読。

魔法の気配に満ちあふれた、音楽のひびきわたる幻想的な異世界ファンタジー。


南方王国のうたびとアストラは、北方王国との境にある宿『はて見』亭で寒さに衰えた身体を癒していた。アストラは北の音楽にとりつかれ、うたびとの地位を捨てて北方にやってきたのだ。四十年前に南方王国との戦に破れた北方王国は、王女イザモルドの呪いによりすべてが凍てつき、生き物の気配も絶えた死の世界となっていた。そこに不思議な眼をした少年シリエンが訪れ、アストラを王女の常春の庭への案内役として指名する。アストラはそこにたどり着いて戻ってきた唯一の人間だというのだ。南方王国の追っ手からシリエンに救われたアストラは、妖魔の王だというシリエンとともに極寒の北の大地をふたたび王女の庭を目指すたびに出る。




北の音楽にとりつかれたうたびとアストラの数奇な運命を描く、ディープな異世界ファンタジーです。

始めから最後まで、濃厚な魔法の気配としびれるような音の感覚がまとわりついているのに、どこか宙に浮いているような非現実感がただよいつづける、幻想の物語です。

北方王国の王女イザモルドの悲劇に端を発し、凍りついた北の大地を開放しようとする妖魔の王シリエンの試みと、同行者となったアストラが体験するさまざまな信じがたい出来事に、読み手はめくるめく幻想の世界にひきこまれていくことになります。

名前の魔法は作者さんの中心的なテーマですが、この話でクローズアップされるのは音楽。
うたびとアストラの喉が現出させるこの世のものならぬ力の唄や、泉から湧き出るような水の唄、風妖の風鳴り、ひとつひとつの音がそれぞれに魔法をはらんで周囲に与える影響が、臨場感をもって伝わってくる描写の力がすばらしいです。

北方と南方の音楽の違いから、ふたつの文化の違い、神々への相対し方や世界そのもののとらえ方、そのはぐくまれた気候風土と経験してきた歴史にまでふみこんでゆく、いってみれば少しずつ過去を探り出してゆくような進みかたに、夢の中に深く深く潜り込んでゆくような心地になりました。

それはわたしにとってはとてもすてきな酩酊感でした。
おかげで、初読のときのわたしは話の輪郭をあんまり意識しないままだったような気がします。

振り返ってみると、これは伝説級のうたびとだったアストラの出奔の物語であり、その背後にあった北への憧れの要因を探る物語で、北方王国を呪いで凍てつかせた王女イザモルドの、孤独な魂と喪失の嘆きの物語なのですね。

基調として低音で響き続けるのは、まだ見ぬ故郷への憧憬だろうかと感じます。

自分が自分として存在できる、それがなんの障害もなく許される、突き詰めていえばここで死んでもよいと思える場所。

戦で命を失った戦士の魂も、天界から追放された神も、求めているのはおのれの在るべき場所に帰りたいという願いだったのかなーと思ったり。

『翼の帰る処 3』を読んでいて出てきた北方の物語を確かめようと読み返し始めたのですが、これはもう一度読んでよかった。いまになって、ようやく理解できた所がいろいろありました。というか、話を理解せずに読んだ気になる癖を止めたいですorz

『翼』関連で言うと、主人公のアストラは北方王国の塔で宙づりになってたうたびとです。
かれはなんでこんな存在になったんだっけ、という疑問が解けました。うたびととセットでヤエト先生のヴィジョンにあらわれる銀髪氏がシリエンですね。

そしてイザモルドの子孫が北方王国の公家のひとびとなわけですよねえ。
なんだ、またしても子育てでおんなじことを繰り返してるよ。人間てヤツは過去に学ばないのねorz

読み終えてですが、作品がまるごとつるんと生まれてきたような印象を受けました。
対するに『翼』は、大きな鉱脈からあるべき姿を模索しつつ懸命に彫り上げているようなイメージなんですよね。なにか力技が入っているような気がします。

おさらいをし終えたのでもう一度『翼3』を読もうかな。

魔法の庭〈2〉天界の楽 (ファンタジーの森)
妹尾 ゆふ子 春日 聖生
4939073157

魔法の庭〈3〉地上の曲 (ファンタジーの森)
妹尾 ゆふ子 春日 聖生
4939073254



『翼の帰る処』シリーズ開幕編はこちら。
翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344814665

「祝福の地」

西東行さん作「祝福の地」読了。

異世界ファンタジー長編、完結済み。
これまで書かれたのとおなじ物語世界の、寒さ厳しい北国の迷宮をめぐる物語。
数学による理知的な魔法がつくりあげる精緻と明瞭さに、幻想の美しさがくわわってめくるめく、良質のファンタジー。

フィリグラーナからきた性格の悪い迷宮管理者くんがお気に入りですw

『翼の帰る処 3 歌われぬ約束』上下巻

翼の帰る処(ところ)〈3(上)〉歌われぬ約束 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-5)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344820002


[Amazon]

読了。

隠居願望の強い主人公が魔法の気配と人間界の権謀術数が交錯する中で踏ん張る、格調高くも親しみやすい異世界ファンタジー。
シリーズ第三部。


虚弱で隠居を夢としていた尚書官ヤエトは三十六歳。放置区と呼ばれた北領に左遷されて喜んでいたのもつかの間、領主として赴任してきた十四歳の皇女の副官に任命されてしまった。さらに北領王となった皇女につりあうようにと四大大公のひとつ〈黒狼公〉に叙爵される。人も羨む出世を遂げたヤエトだが、本人は気苦労が絶えず不満だらけのまま生来の生真面目さで増えるばかりのつとめをこなしていた。ある日、倒れたヤエトは気がつくと北領にいた。前後の記憶が定かではないヤエトと、かれを連れ帰った鳥シロバの異変に周囲は不安と懸念を持つが、ヤエトはもっと現実的で切迫した問題を提示する。魔法の力がつよくなりつつあるのは、魔物を封じた力が弱まっている証拠。遠からず異界から魔物が姿を現すに違いないということだ。ヤエトの言葉は半信半疑で受け止められる。皇女はそれでなくとも皇位継承争いのさなかにある。北嶺の麓をめぐる踏野郡太守との会談には五の皇子が姿を現し探りを入れてきた。そんなおり、冬に侵攻してきた北方からの使者が北嶺を訪れたという報告が届く。



あーー、面白かった!!!

待ちに待った『翼の帰る処』第三部です。
上巻が出てからおよそ一年、なのですがわたしは下巻が出るまでと読むのを我慢していたのでじつに二年ぶりの北嶺との再会です。
自業自得なのですが、さすがに二年も間隔が開くと話をほとんど覚えてません。
というわけで、無印から読み返してようやく六冊読み終わり、それから3をもう一度読み直し、それから感想を踏まえてなんどか拾い読みをし、ついでに関連の別作品まで読みはじめたりして、いつのまにか感想を書くのを忘れそうになってました。

いや、もう満足満足堪能堪能、それでいいんじゃない?

と思ったりもしましたが、それではこの作品のどこが好きなのかが伝わらない、布教しなくては!

このお話の魅力は、ファンタジーのディープな世界を描いていながらも、キャラクター小説としていきいきとしていて、権力争いの歴史小説としても読みごたえがあり、それがどれも分離せずに絡み合い相乗効果を上げている所だなーと思います。

神々にあたえられた恩寵の力をめぐる世界全体の動向から、皇帝の後継争いにまきこまれる末の皇女の生き残りを目指しての戦いに、さまざまな気候風土にはぐくまれたその土地ならではの文化風俗精神世界のいろいろを折り込みつつ、外見若者だけどじつは隠居したがり中年と二十二歳離れた皇女との???な関係の動向を追いかけるという、じつに重層なお話です。

しかしです。
なによりも大切なのは、巨きな鳥が人を乗せて飛ぶことです。
この飛翔感覚、めくるめく浮遊感、スピード感、俯瞰した世界の美しさの魅力は何ものにもかえがたいです。

おまけに、この人を乗せる鳥と乗り手の間には精神的な深い絆があります。話ができるのです。乗り手として選ばれた人間だけですが。
鳥はひとを選び、ひとは鳥に尽くす。
北嶺のひとびとは鳥を肉親のように大切に扱いますが、場合によっては、鳥とひとの一対は肉親よりも近しい関係のような気がします。

これって、じつに理想的で濃厚なパートナー関係だと思いません?

ひとの心を感じ取る賢い鳥はひとを魅了し、鳥馬鹿にしますが、それもむべなるかなと思います。

そのひとと鳥との絆を直接的には感じ取れない主人公の視点で描くからこそ、その不思議さや特殊性や、憧れというか羨ましさというか、が読み手にも伝わってくるのも憎い演出だと思います。

主人公は鳥と意思を通じえませんが、かわりに別の恩寵持ちで過去視の力を持っています。
虚弱ですぐに熱を出して倒れるヤエト先生が、どのタイミングで恩寵を発動させるか、のタイミングも読みどころになってるような気がします。かれの視る過去の映像もそのやり方の描かれ方も、とても幻想的でなおかつ、体感的でファンタジーです。制限付きなのが希少価値を上げてるよね。

さらにヤエト先生をめぐるひとびとの立体度。自己主張の強さ。キャラクター小説として、にまにま読める要素は大切です。このあたりは以前の作品と比べると格段に人間世界度があがってますね。北嶺のひとびとの愛らしさと素朴さ、帝国のひとびとの複雑さと翳りのコントラストも印象的。とくに皇妹殿下の底知れなさと皇帝陛下の容赦のなさがすてき。なのに皇女に嫌われたくない陛下がかわいいのw

まったく自覚なしにひとをタラシつづける主人公・ヤエト先生と、先生を振り向かせようとする周囲の人々という構図がすっかりできあがってるのが、とてもとても楽しかったです。

先生の最大の被害者、商人のナグウィンにはすっかり同情しているわたしです。

今回は舞台が北方にまで広がり、いままで散々過去の“幻影”として登場してきた人物がついに肉体を持ってあらわれました。話の主筋もほぼあきらかになって視野がひらけてきた感があります。

これからも、魔界の罅をめぐる話と皇位継承陰険展開がつづくんだろうなー。
もしかして、ひとつ話が終わるたびに皇子が一人ずつ脱落していくのかしらん。
だとしたら、まだまだシリーズは続きそうですねw
楽しみ楽しみ。

つづきは気長にお待ちしています。

あと。
馬馬鹿の《灰熊公》にはたいそう好感を持ちました。
シロバの雛がかわいいよ、かわいいよ。
ヤエトは皇女の髪が好きだよねー。


翼の帰る処 3 ―歌われぬ約束― (下) (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344820762

[Amazon]


シリーズ開幕編はこちら。
翼の帰る処 上 (幻狼ファンタジアノベルス S 1-1)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344814665

『トロイメライ』

トロイメライ
池上 永一
4048741004


[Amazon]

読了。

十九世紀の那覇を舞台に庶民の日常の事件を描く、時代小説連作短編集。


第一夜 筑佐事の武太
第二夜 黒マンサージ
第三夜 イベガマの祈り
第四夜 盛島開鐘(ケージョー)の行方
第五夜 ナンジャジーファー
第六夜 唄の浜



江戸なら岡っ引きとよばれる存在・筑佐事になった若者武太を狂言回しにした、短編連作です。
同著者の『テンペスト』とおなじ物語世界が舞台になっていますが、王宮で時代の波を直接描いていた『テンペスト』とは異なり、こちらは庶民の日常がメイン。

美しい那覇の自然を背景に、貧しくも逞しい庶民の悲喜こもごもが描かれています。

なかでも印象的なのは雑多なひとが集まるお寺・涅槃院の住職、大貫長老。
世にも美味なる料理を庶民に供する宿屋兼料理屋『をなり宿』の女主と三姉妹。
超絶美貌で男をもてあそぶ恐怖のジュリ・魔加那姐さん。

このひとたちは池上作品に特徴的な強烈無比なキャラクターでして、かれらの登場シーンはハイテンションなギャグマンガみたいな調子で展開します。
この荒唐無稽さが、いつもながらわたしはとても好きなのです。

それだけでなく、控え目ながら存在感を発揮する武太や三姉妹を見守ってきてくれたサチオバァや、親に売られる子供たちや、借金苦で墓を売る未亡人などの普通だけどそれぞれに苦労しているひとびとも登場します。物語の骨格は地に足がついてます。

かとおもうと思うと、意志を持った三線なんてのも出てきます。

笑いつつ、ほのぼのしみじみするような読後感のお話が多かったです。

『テンペスト』でおなじみの面々もちらほら出てくるので、そちらを読んでいるとウフと楽しいです。

タイトルの『トロイメライ』は、ドイツ語で夢を見ること、夢想すること、だそうです。

うたかたの夢のように消えた、名もなき人々のものがたり、というような意味なのかな。
かまえずに読める、琉球時代小説。
つづきも刊行されているようです。

トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ
池上 永一
4048742027

「愚者の灯火」

西東行さん作「愚者の灯火」読了。

異世界ファンタジー短編。
『神々の夢は迷宮』『大祭の夜に』の直接のつづきです。

祭りの最終日のできごと。
登場人物が生き生きとしていて楽しかった。
とくに迷宮管理管理長の人となりと、ズライカ姫がとても愛らしいのにうふふと思いました。
あと、ルーザ=ルーザとオレクタンテのやりとりにもにやにや。
ワツレンが意外にいい玉なのでまたびっくり。

お話は隣国との関係でなにかが始まりそうです。
さらにつづきが読みたくなる短編でした。

神々の夢は迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
406286617X

大祭の夜に 神々の迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
4062866684

20110914の購入

ネットで予約していたCDが届きました。

夢みる力
谷山浩子
B0058X1BIO


発売記念のネット生中継も見ました(初めてのニコ生でした)。
ジャケット写真は谷山さん二歳のみぎりだそうです。

新譜は四年ぶりとおっしゃってました。
コンスタントに出ている気がしたので、え? そんなになるの? という感じ。
それと視聴者の年齢層が幅広くて、やっぱりコアでマニアなファンが多いのねーと思いました。

アルバムはこれからゆっくりと楽しもうと思います。

追記。
タイトルの年を間違えたorz

『妖精の女王』

妖精の女王 (創元推理文庫)
メリッサ・マール 相山 夏奏
4488544029


[Amazon]

読了。

現代アメリカを舞台に妖精王に見初められた少女の恐怖と葛藤と成長を繊細な筆致でえがく、アーバンファンタジーロマンス。シリーズの第一作。


アッシュリンはフェアリーを見ることができる女子高生。両親はいず、同じ資質を持つ祖母にフェアリーの注意をひかないようにと教え込まれて育てられてきた。警戒心の強さのためボーイフレンドのセスとの距離も友達止まりのアッシュリンはそんな日々を窮屈に感じはじめていたが、町をうろついては悪さをするフェアリーへの恐怖はそれに勝った。ところがある日、彼女の前にそれまでみたことのない強い力を持つ若い男のフェアリー、キーナンがあらわれ、近づいてきた。祖母直伝の撃退法をことごとく突破してアッシュリンを執拗に追い続けてくるキーナン。アッシュリンはキーナンの理由のわからない執着とかれに対すると起きる自分の反応に怯えて、次第に追いつめられていく。




妖精界におけるサマーキングとウィンタークイーンの争いに終止符を打つというサマークイーン。
サマークイーンはサマーキングに見初められた娘が、ウィンタークイーンの課す試練に打ち勝ったときに初めてなることのできる存在です。

この話は、次代のサマークイーンとして目をつけられた少女が、サマーキングに骨抜きにされそうになりながらも自分の自由意思を保ち続け、課された試練を受け入れていく過程をたどりつつ、二組のカップルの恋愛を描いていくお話です。

といっても主役はアッシュリンなので彼女の恋愛がメインなんですけどね。

ここの妖精界には三つの宮廷がある模様です。
サマーキング・キーナンの支配するサマーコート。
ウィンタークイーンでキーナンの母・ベイラの支配するウィンターコート。
そして得体のしれない闇妖精の集うダークコート。

キーナンがアッシュリンを切望するのはウィンタークイーンに力を封じられてしまったから。
かれの力が弱まっている間に世界の均衡が崩れ、人間の世界も滅びへと向かっている、とかれは認識しています。伴侶としてサマークイーンを得なければ封印は破れず、ウインタークイーンに対抗することができません。

キーナンはアッシュリンの前にも幾人もの娘をサマークイーン候補として見初めていますが、そのすべてが試練を拒否するか、失敗してウィンタークイーンの支配下に置かれているのです。

その最近の失敗例が、ウィンターガールとなってしまったドニア。
ベイラに虐げられつつもキーナンを慕い続けるドニアの物語もまた、この話の重要な部分を担っています。

というか、わたしにはドニアの話の方が興味深かったですね。

妖精の怖さと魅力をえがく丁寧で視覚的な文章はとてもうつくしく、サスペンスホラーのようなダーク展開も妖精譚ならではと思えます。

でも、アッシュリンの歩む道はとても現代的で、作品そのものも全体的にこれまでの妖精譚とはすこし肌合いが異なるのです。
なんとなく、妖精が人狼や吸血鬼と同じレベルの存在であるようなかんじといったらいいのかな。

そもそも、この話に出てくる妖精たちは土地に縛られていないように思えます。
すんでいる所はロフトだし、パーティーをしているのも人間の施設だし。
魔法のノウハウに植物が出てくる程度で、物語世界にも自然描写が少ないです。
それは、アメリカだからなのかそうではなく都市が舞台だからなのか、どちらかはわたしにはわかりませんが、もはやフォークロアから派生したファンタジーではないみたい。

この話をすんなりと受け入れるひとたちは、自分の住んでいる土地の気候や風土に対する思い入れがないのかなとおもったり。
もしかして、土地に根ざした歴史の短さのせいなのかな。
そもそも、アメリカには独自の精神世界を持った文化が存在しているわけですが、そのことにもまったく無頓着なまま進んでいくお話に、地味なショックを受け続けつつ読んでいたような気がします。

おなじ新大陸が舞台になっても、ネイティブの文化をも視野に入れたファンタジーとは、まるで違いました。

旧大陸の妖精譚をまねて造った、よくできたレプリカのような、あるいはテーマパークのような、ふしぎな浮遊感の漂うお話でした。現実世界にも同レベルでのふわふわ感があるのはロマンスものだからでしょうか。
妖精界にも現実にもよりどころがないって、へんな感じです。

ときどき、ここ笑う所じゃないだろ、て冷静になると思うような所で噴いてしまったり、しました。ギャグみたいに感じてしまうんですよね、なぜか。

そうそう、アッシュリンの選択にもぎょっとしました。
ロマンス的にはめでたしめでたしなんだけど、ファンタジー的にそんなこと可能なの?
破綻はないの? ねえ、ねえ? って問い詰めたいような心持ちです。

登場人物的には、セスは出来過ぎの男の子だと思います。
こんなに辛抱強く献身的な若い子が、現実にいるかー!!!w
むしろサマーキングの方が、ありうるような……。

や、ドニアはけなげですよ!
ドニアをヒロインにしたらまっすぐファンタジーになった気がする。気がするだけかもしれないが。

続編があるのですが、どうやら今度はアッシュリンの友人がヒロインになる模様。
いったい、どうやってシリーズに決着がつくのか知りたいですが、全四巻だそうですので先は長いです。世界は滅ばないの?

闇の妖精王 (創元推理文庫)
メリッサ・マール 相山 夏奏
4488544037

作家・西東行さんのサイト

拍手コメントで、講談社文庫ホワイトハートで活動されていた作家・西東行さんが開設されたサイトを教えていただきました。ありがとうございます。twitterでは昨日流しましたがあらためて記事として残したいと思い、書いておきます。

架空の東 空想の西

サイトによると、どうやら事情でしばらく本を出されないようです。
好きな作家さんなのでとても残念ですが、創作は続けておられるようで『大祭の夜に』の続編など短編が公開されています。さっそく読みます。

どうかまた別の場所を得て活躍されることを願ってます。

西東行さんの既刊はこちら。

鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
4062865874

神々の夢は迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
406286617X

大祭の夜に 神々の迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
4062866684

覆面作家企画5

ネジ子さん主催の「覆面作家企画5」が開催中です。

お題をもとにして書いた短編作品の作者さんを当てるという企画です。
現在は推理期間中で、九月一日~十月八日まで。
結果発表はその翌日、十月九日です。

タイトル通りもう五回目の企画なのですが、わたしは一度も参加したことがありません。これで最後かもというお話だったのでなんとかと頑張ってみましたが、結局見送りました(つまり、書けなかったのですな)。

気分だけ味わおうと、参加作品を読んでお知り合いだけでも当ててみたいなあと、できたら感想も書きたいなあと思ってたりします。

テーマは色。
字数制限6000字まで。
なので、ちょっとした時間に読めます。
レベルはいろいろですが、思わぬところで好みの作品と出会えたり、すげえええと驚くようなものと衝突したりできます。

それと、作者当てがとても盛り上がっています。
知ってる作者さんが参加されていたら、その方を探してみる、という楽しみもあります。

驚いたのは、参加人数。
AからHまでブロックがあって、それぞれ12~11人ずつ振り分けられてるのですよ。
ということは、全部で……?

というわけで、現在のわたしは参加作品を読みふけっているところです。
感想文は、すこし休むかもしれません;

『別冊 図書館戦争 II』

別冊図書館戦争II (図書館戦争シリーズ 6) (角川文庫)
有川 浩 徒花 スクモ
404389810X


[Amazon]

借りて読了。

言論統制が現実となった近未来を舞台に、唯一の抵抗集団となった図書館の戦闘職種としてがんばる女の子のアクションラブコメディーシリーズ「図書館戦争」の、番外編的中短編集その2です。

目次は以下の通り。


一、もしもタイムマシンがあったら
二、昔の話を聞かせて
三、背中合わせの二人(1)
四、背中合わせの二人(2)
五、背中合わせの二人(3)

単行本版あとがき
文庫版あとがき

ウェイティング・ハピネス

文庫化記念 有川浩インタビュー その2



豪快な隊長の優秀な補佐である緒方副隊長の、意外な過去とロマンスを描く「もしもタイムマシンがあったら」。

堂上と小牧の新人時代を描く「昔の話を聞かせて」。

柴崎と手塚の恋の行方を描くサイコサスペンス「背中合わせの二人」。

玄田隊長と稲嶺元指令の会話から隊長のロマンスの決着へとすすむ「ウェイティング・ハピネス」。

過去編ふたつと後日譚がふたつ、という構成でした。
緒方副隊長の話はとてもまじめなロマンス小説。
堂上・小牧コンビの話は熱血青春バディーもの。
玄田・稲嶺コンビのは、しみじみとしたエピローグ、といった雰囲気で、これらはみな基本ほのぼの路線でした。

そのなかでとても異質だったのが、柴崎・手塚のロマンス話。
てっきり、別冊Iの堂上と郁みたいなラブラブを予想していたら、なんと。
とってもサイコなサスペンスじゃあ、ありませんか。
柴崎に襲いかかる精神的な恐怖と不安と焦燥と苛立ちの連続に、ひいいいいと心の中で悲鳴を上げること数知れず。

たしかに柴崎はめったに根を上げないつよい女ですが、ここまで苛めなくとも~と思いましたよ~。
さんざん翻弄されて傷つけられてぼろぼろになるまで追いつめられないと弱音をはけない女に設定された柴崎がかわいそうでなりませんでした。

この事件ってそうとうなトラウマになりそうです。経験があるからって書いてありますが、そのぶん柴崎は病んできたわけで、それがここまで痛めつけられたら手塚の愛を得たからって完治するとは思えないんです。

途中の展開や描写にとてもリアリティーがあるので、よけいに楽観的になれないのですよ。
はれやかな舞台が描かれてハッピーエンド、になってますが、なんだかなー。

というわけで、一番好きな手塚・柴崎のエピソードがもやもやーっとなってしまったのが残念ですが、シリーズ全体はとても面白かったし、楽しかったし、作者さんの真摯さが強く伝わってくる、好ましいシリーズでした。


シリーズ開幕編はこちら。
図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
有川 浩 徒花 スクモ
4043898053

20110831の購入

発売日に本屋へ突撃しましたが空振りだったので二日連続での遠征です。

翼の帰る処 3 ―歌われぬ約束― (下) (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子 ことき
4344820762


以上、購入。

以下、少々愚痴ります。

入荷するかしないかぎりぎり、入荷するとしても一冊だけな本は、やっぱりみつけたところで即購入します。
この本も最初に入った本屋ですぐにレジに持っていきました。
しかし、ひとつだけ不満が。
帯にねじれと破れができていたのですよ。
で、もう買ったんだからそのまま満足してればよかったのですが、たまたま時間が余っててほかの本屋に行ったのがまずかった。
そこにも一冊入荷してるのを見つけたのですが、それはきれいな帯の本だったのです。

あああああ、こっちで買えばよかった……orz

といくら嘆いても後の祭りです。

中身はおんなじだから、いやおんなじはずだから我慢しますが。

本屋さんには商品をもっと丁寧に扱ってもらいたいものだと思いましたことでありまする。

『クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー III』

クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅢ (ハヤカワ文庫JA)
五代ゆう 前田浩孝
4150310386


[Amazon]

読了。

近未来終末SF。ゲーム原案小説「アバタールチューナー」の、緊張感あふれるシリーズ第三巻。



死に至る忌まわしい奇病が蔓延する地球で、人類は滅亡の道をたどりつつあった。恋人・蛍を失っ自暴自棄の日々を送っていた穂村一機は、大学時代の友人で蛍の双子の兄・水無瀬眞から仕事の打診を受ける。蛍から兄は悪魔だと警告されていたにもかかわらず、一幾は蛍そっくりの美しい顔に魅入られてニューヨークへと旅立ってしまう。到着後、武装した何者かに拘束された一幾は、機密保持と称して外部との接触を断たれたのち、眞からことの次第を告げられる。共感能力を持つがゆえに飛び抜けて優秀な精神技術者である一幾は、巨大な権力により人類の存亡を賭けた造りあげられた〈女神〉とも呼ばれる少女の姿をした異質な存在=テクノシャーマンへのアプローチ役を期待されていたのだ。




うわーーー。
こんな種があったのかーーっ!!

全巻まではすでに文明が崩壊した世界で物語が展開されていましたが、この巻ではいままでの世界を内包した外の世界の現実が明らかになっていきます。

この場合は別の世界=現実世界の直接の延長とされる近未来世界です。
ここで文明はまだ崩壊しきってはいません。けれど、死に至る病の席巻に現実に衰亡は進行しつつあり、いまにも終末が来ようかという危機的な状況に陥っています。

国家は瓦解し、多くの地域が無法化し、わずかな富める者たちのみが高価な科学技術によって命ながらえている、荒んだ世界。

ここに描かれているヴィジョンは、前回までのゲーム的な世界から抜け出てきたわたしにとって非常に強烈なものでした。
まさに、いま現在だからこそ書かれたとでもいうような、切実さと不安と焦燥の空気がリアルに伝わってくる迫力があります。

さらに、蔓延する奇病のメカニズムや、遺伝子操作によって生まれるデザイナーズ・ベビーなどの予測可能な未来のテクノロジー、精神医学的だったり、哲学的だったりするアプローチや、ミリタリーの要素、などなどハードSFのエッセンスがたっぷりと詰め込まれてて、近未来ものを読む喜びに充ち満ちてて。

面白かったー!!!

その話はというと、謎のテクノシャーマンをめぐる謎解きであり、権力闘争の行方を描くサスペンスであり、破滅へのみちのりを避けようとしながらも吸い寄せられてゆくような、緊張感にあふれた力のある物語でありました。

ジャンクヤード成立より過去の物語ですが、そのクリアーな回答ではなく、謎が謎を呼んでいくのも興味深いです。

そして、パート1での素朴な人間関係をあざ笑うかのような、不信と疑心暗鬼にみちみちた世界が描かれてもいます。
その、誰も信用できないという雰囲気こそがよりリアルな現実的空気をもたらしていることは、残念なことですがしかたがないですね。

物語はスカッとわりきれるのが読み手の癒しにつながるのだとおもいます。

しかし、その単純な爽快感だけでは物足りないと感じるときはあります。そんなときにはできるでけ現実に裏打ちされた設定で、丁寧にいらだちにみちた現状をすくいあげつつも、それでもなおかつ何かにむかって進んでいる実感が体験できるのが、フィクションのよいところなのかなーと思ったりしました。

あれ、わたしはいったい何を書いてるんでしょうか;

閑話休題。

突然キャラ語りになりますが、パート1からひきつづきの出演者シン・ミナセの人物像には驚愕しましたよ、もー。
これがサーフのモデルなんて、あくまでもモデルでしかもテクノシャーマンの解釈を通したものなわけですが、それでもこんなの嘘でしょーとしか思えない人物だった。
双子の妹に悪魔だと言われる人物なだけのことはあります。

それに対して、穂村一幾がああなるのは、よくわかりました。かれはセラにとってはつねに怒りの象徴なんですね。

その他のパート1のキャラの原形人物がだれかを推理するのも面白かったです。

それで、水無瀬眞が何者で、他人にどう思われているのか、ということは、翻弄されまくる穂村一幾の視点で散々に描かれてますが、本人が何を思って何をめざしているのかはいまだに謎のままです。

テクノシャーマンであるセラがかれを見いだした理由にポイントがありそうな気がしますが、どうなのだろう。

そこらへんの謎は今後明らかになっていくのだろうなと思うのですが、そもそもテクノシャーマンという存在が、わたしにはちょっと理解不能でした。
概念としてはわかるのですが感覚的には疑問符付きのまま;

でも、テクノシャーマンを生み出した電算機の頭脳がどこからきたか、という点はなんとなく納得していたりするので、自分でもこの世界をどう理解しているのか、謎です。

はやくつづきを読んで、理解を深めたいです。

四巻はすでに刊行済み。で、購入済みです。読むのが楽しみですv

アバタールチューナーⅣ (クォンタムデビルサーガ)
五代 ゆう 前田浩孝
4150310440
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