『宮廷神官物語 双璧の王子』

宮廷神官物語 双璧の王子 (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトー ナオ
4044491100


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読了。

やんちゃな男の子をみまもる周囲の視線があたたかい、朝鮮王朝風異世界宮廷陰謀ファンタジー。第七巻。


人の悪しき心を見抜く力を持つ少年・天青は、若き神官・鶏冠にみいだされ、宮廷で神官見習いをするうちにしだいに王位継承争いの渦中にまきこまれつつあった。立太子式の最中に王母によってあばかれた、第一王子の生存。敬愛する藍晶王子を脅かす存在の出現、しかもそれが兄貴分だった武官の曹鉄であるという事実に、天青は驚き悩む。藍晶王子の王位継承を望むのなら曹鉄に会ってはならないと命じる鶏冠に反発し、こっそりと曹鉄のいる王母の宮にもぐりこむ天青だったが、その事実は本人の意に沿わない結果をもたらした。王母によって隔離され孤立感を深める曹鉄は、亡き母のおもかげをやどす婚約者にひきあわされる。




やーっと読めました、第七巻。
面白かったです。

藍晶王子の民に沿う政策を快く思わない王母様の実態が次第に明らかになってきて、うわ、怖ーい、となる巻でした。
人心掌握に香がふんだんにつかわれてるのも、女性の陰謀ならではでしょうか。

その巧みなやり方に翻弄される藍晶王子派の焦りと緊張と不安に、天青がまっすぐに子供らしく反応するあたりが、とてもかわいいのでございます。

この子供らしいってところ、重要ポイントだなー。
子供の無邪気な無謀さを嫌味なく書くのって、案外難しいような気がする。
無謀な行為はともすると「なんでここでこんなことするの」と読み手がキャラクターに対して白けてしまう要因になるからなー。

天青の場合は、ほんとうにまだ子供で、子供の狭い知識の中で一生懸命考えてやってしまった、というふうに受け取れるので、それがありません。

多分、鶏冠とのやりとりがいいんだろうなー。
風邪を引いた鶏冠をさらに悪化させるエピソードには、笑いがこらえ切れませんでしたwww

そして、鶏冠が天青のまっすぐさにいろいろ影響を受けていると語るあたりも、うんうん、そうなんだよねとうなずいてしまいました。

王母様に先手を取られていろいろ大変な巻でしたが、心理的なあれこれがきっちりと描かれていてたいへん説得力があり、安心してハラハラドキドキできる展開にたいへん満足いたしました。

最後に王母様の事情もわかってなるほどーと思わされます。

しかし、そうするとどうやって決着するかが今後の読みどころですね。
つづきがはやく読みたいです。世間的にはとっくにでてますが……;

個人的には、王様の存在感がなさすぎなのが気になります。
出てきても、どんな人物なのかまったく印象に残らないんだ……王様なのに。

宮廷神官物語 鳳凰をまといし者 (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトー ナオ
4044491119

『伯爵と妖精 愛の輝石を忘れないで』

伯爵と妖精 愛の輝石を忘れないで (コバルト文庫)
谷 瑞恵 高星 麻子
4086014718


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いただいて読了。

ヴィクトリア朝イギリスを舞台にした妖精博士とたらし伯爵のロマンティックファンタジー。シリーズ……何冊目なんだろう?; 「永久の想いを旋律にのせて」のつづきです。


妖精国へと至る道をどうにか見いだしたリディアとエドガー。しかしエドガーはリディアを守るためにプリンスとして組織の中に入り込んだ。プリンスとして振る舞ううちに内なるプリンスの魂に侵食されていくエドガーの傍らにはアーミンがいた。アーミンはフランシスの意向によりエドガーを監視していたのだ。エドガーと離れたことに不安を覚えつつ、リディアは伯爵夫人として妖精国への旅立ちの準備を進めるが――



複雑になった物語のあらすじはどうにもうまくまとめられません;

そもそも、なんでふたりは妖精国に行かなければならなくなったんでしたっけ?
根本的な所を忘れています、しようもない鳥頭の読み手です。

フランシスってだれだっけ、という疑問は読んでるうちになんとなく溶けました。新婚旅行で出会った自称医者でしたね。恋人が異界に行ってしまったという……それがもう何百年も前の話とは想わなかったけど;

とりあえず、エドガーはプリンスになったと偽って組織を中から崩して行こうとしているところです。
疑われないようにプリンスらしくふるまううちに、プリンスの魂がふくれ上がって行くのを感じてます。
リディアへの想いを支えにがんばるエドガーの奮闘がつづきますが、子犬のエピソードがかわいいですw

リディアは不安を抱えたままですが、こちらは支えてくれる仲間がたくさんいます。
しかし、そのなかで受難なのがニコ。なんども組織の手に落ちかかってます。
ニコが大変なのでレイヴンは気が気ではありません。
そのレイヴンをフォローしなければならないケリーちゃんがさらに大変です。
せめてレイヴンの誤解くらい解いてあげたいですね。

読んでいて、エドガーの話はごくシリアスなのに、リディア周辺に移るとコメディーになるのがおかしかった。
登場人物が多くて勝手なことばかりしてるので、やりとりが深刻化しないんですよね。
ニコとレイヴンとケリーちゃんしかり、ニコとケルピーしかり、ロタとポールしかり。

エドガーとリディアのさりげなく艶めいた会話も、どたばたにまぎれてあれっとおもうまに蹴散らされていきます。

なんとなく、この雰囲気がこのシリーズの定番のように思えてきました。
「月なき夜は鏡の国でつかまえて」のあたりからかな。

船出してからの展開はさらにどたばたで落ち着きませんが、さりげなくファンタジー色が濃くなっていくのが興味深い。

あまりにもさりげないのがちょっと不満なんですが、メインがロマンスなので諦めます。

つづきはとうに出ていますが、すでにどのタイトルなのかわからなくなっているわたしです;

あ、これかな?

伯爵と妖精 あなたへ導く海の鎖 (伯爵と妖精シリーズ) (コバルト文庫)
谷 瑞恵 高星 麻子
4086015005

『聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015773


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読了。

ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に、仕立て屋と公爵家の跡取りの身分差恋愛を心理描写こまやかに描く、時代ロマンスシリーズ。二十六冊目。番外中短編集。

収録作品は以下の通りです。


十二夜の手紙
私の美しい人だから
聖者は薔薇を抱きしめて

あとがき




ミステリめいた「十二夜の手紙」以外は、パメラちゃんのための一冊でした。

クリスがシャーロックとあれこれやってる間、パメラちゃんだってあれこれあったのよーというお話。
作者さんは元々は本編で同時進行でという心積もりがあったらしいのですが、諸般の理由により別仕立てでということになったらしいです。

読んでみて、それもむべなるかなと思いました。
とくに最後の中編なんて、これだけで一冊にして欲しかったくらいの深さと厚みを持ったお話になってます。

わたしには、最初はともかく堅実に進んでいったクリスの本編よりもドラマ度が高いように感じられました。
いわれてみれば、そういえば最初の頃から伏線は張ってあったなーと思うのですけど、これだけ読むとえらい予想外なお話で……。ドリームっていうか、めっちゃロマンス小説してるわーーって思いました。

描き方がシリーズ初頭の頃よりも堅実になってるので、荒唐無稽にならずに上品にまとめられてて、うわーうわー、って楽しくなる展開です。

時系列としては、「翡翠の森」からあと。「花ひらく淑女」とだいたい並行してて、本編では書かれなかったハクニール家での晩餐からスタート。

お話としてはパメラちゃんとイアン先生とアントニーくんの三角関係ともいえない微妙な関係が中心なんですが、どこまでもどこまでもいい人の立場から抜け出られないアントニーくんがせつない、ていうかいっそ不憫ですwww

イアン先生のお人柄の懐の深さと大ざっぱさが表裏一体なあたりとか、ものすごく存在感ありありですww

個人的には、イアン先生は外科には向いてないんじゃないかなーと思う。医者としての使命感は立派だけど、野戦病院に行って傷病兵になにをするのって思った。手術以外のことをしてもらったほうがいいでしょう……。

イアン先生のご家族はみなさん医療従事者らしいです。
たぶん、そのおかげで女性に対する旧弊な考えから逃れているんでしょうね。

それにしても、イアン先生はものすごくじれったいお方です。
鈍い、鈍すぎる!
と何度心の中で叫んだことか!

恋敵なのになぜか味方をしてくれるおひとよしのアントニーくんがいろいろと可愛そうなので、もういい加減勘弁してやってよーと思いました。

ほんとうにアントニーくんは苦労性で、シャーロックに振り回されてるのと同時進行でイアン先生にも振り回されてたんだわ、パメラちゃんの手助けもクリスへの心遣いも一緒にやってたんだわ、と気がついて、ああ、もう、なんというか……だれかかれをねぎらってやってよ。お願いだからさー。

ここでちょっとだけ、シャーリーの株が上がるエピソードがありましたねwww
(そういえば、シャーリーがジェイン・オースティンを読んでたのにびっくりしたな)

というわけで、ヴィクトリアン・ローズ・テーラーの最終巻の目的はこれだ。
アントニーくんに絶対に幸せになってもらうこと!
候補としては、薔薇色に新しく入った縫子さんですね。

パメラちゃんの決断は実に彼女らしくて、まあ、そういうことになるんだろうなと予想の範囲内ではありました。
予想といえば、パメラちゃんのお話は女子力が高そうだなとは思ってたけど、予想をうわまわる高さでした。
正直にいうと途中で挫けそうになりました。
どのあたりがとか具体的には自分でもわからないんですが、わたしは乙女ゲーとかがこっぱずかしくて(おなじくらい面倒くさくて)出来ない人間なんですよねー。

だからなんだといわれても返答のしようがないですが;

というわけで、たぶんこの次が完結編なんだと思うのですが、完結編に期待するのはアントニーくんの幸せです。
はやく出ないかなー、わくわく。

シリーズ開幕編はこちら。

恋のドレスとつぼみの淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086007169


ついでに。
19世紀イギリスの看護婦さんがでてくる、ということで思い出したミステリ。
とても面白かったのに絶版みたいです。
見知らぬ顔 (創元推理文庫)
アン ペリー Anne Perry
4488295010

『折れた竜骨』

折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
米澤 穂信
4488017657


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読了。

中世イングランドの孤島を舞台に、領主の娘と誓約を立てた騎士が殺人事件の謎を追う、呪いと魔術と詐術に彩られた時代ミステリ。


ブリテン島の東の北海に浮かぶ二つの島からなるソロンは、北海交易の要所として栄えていた。その領主エイルウィン家の当主ローレントは、館を巡回するひとりの夜警の死をきっかけに傭兵を募集し始めた。ソロンに集まったのは遍歴騎士とその部下たち、ウェールズの弓兵、マジャールの女戦士、サラセンの魔術師の四組。そしてもう一組、修道騎士団の正騎士ファルク・フィッツジョンとその従者ニコラに港で出会った領主の娘アミーナは、領主に会いたいという彼らを小ソロンの館へと案内する。領主ローレントはアミーナを含めて集った者たちの前で彼らの集められた理由、すなわちソロンに呪われたデーン人の襲撃が迫っていることを打ち明けて契約を求めた。その翌日、領主ローレントは作戦室で胸を剣で貫かれた姿で発見される。



中世ミステリというと思い出されるのは「修道士カドフェル」シリーズですが、この話はそこから少しくだった時代を舞台にしています。
女帝と王の内乱は終息し、獅子心王リチャードが十字軍に行ってる時代……たしか……です。

舞台となっているのはたぶん架空のソロン諸島。
とくに領主の館しかない小ソロンは天然の要害で、ソロンとの行き来は危険な浅瀬を乗り切る技術を持った船頭の渡し舟のみ、という孤島です。

ここで起きた領主殺人事件が話のメイン。

探偵役は領主の娘十六歳(たしか)のアミーナ。
そして魔術に手を染めて悪事を働くかつての同胞を始末すると誓約をたてた聖アンブロジウス病院兄弟団の正騎士ファルク・フィッツジョンとかれの従士のニコラです。

容疑者は領主の周辺にいた数人。つまりほとんど使用人と傭兵たちということに。

見知らぬ広い世界に憧れを抱くアミーナと、重い過去と使命を背負った苦悩する騎士ファルク、小柄で品は悪いけど身が軽く頭の回転も速いニコラ。

色恋はないですが萌えがちらりとみえる組み合わせの探偵役たちと、背景的にも性格的にも能力的にも個性的なくせ者揃いな容疑者との、たいそう現実的理論的な捜索と推理の過程が面白いです。

どれだけ呪いや魔術といった非現実的な要素が出てこようと、その成立する法則がきちんと定められていれば、むしろ推理はそれを容易に排除できて論理的には純粋化するのかもしれないなーと感じました。

というわけで、ここにでてくる魔術はひとつの技術に過ぎず、魔術そのものを探求するものでもなく、ひとつの行為から得られる結果もはっきりとしていますので、わたしはこれを純粋にミステリとして読みました。

まあ、呪われたデーン人とかいろいろあるから、ファンタジーだと思う人もいるでしょう。
でもやっぱり、わたし的にはミステリということで。

時代的な背景がきちんと話にからんでいるのと、ひとびとの生活や風俗がおりこまれてるのが、中世好きには楽しかったです。
カドフェルのすぐ後の時代だということは『大聖堂』の時代のすぐ後でもあるわけですよね。

(なのに、もとは異世界を舞台にしたネット小説だったとは……www)

なんだかんだいっても世界史ではイングランド周辺の歴史がわたしには一番飲み込みやすいみたいだなと、思った一冊でもありました。(それもカドフェルのおかげ;)

カドフェルの人間洞察はありませんが、世界が広いことを実感するお話でした。
面白かったですvvv

聖女の遺骨求む ―修道士カドフェルシリーズ(1) (光文社文庫)
エリス ピーターズ 大出 健
4334761259

『恋のドレスと花ひらく淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

恋のドレスと花ひらく淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015676


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読了。

ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台に、仕立て屋と公爵家の跡取りの身分差恋愛を、こまやかな心理描写であたたかく、ときにサスペンスに描く、少女向け時代ロマンス。シリーズ二十五冊目。本編二十一巻。


親類縁者からクリスを正式な伴侶として認めてもらえないシャーロックは、廃嫡されたあとの自分とハクニール家のことを考えてさまざまな手を打ち始める。いっぽう、ジャレットによって二度とドレスの作れないからだにされた母親リンダと再会したクリスは、いままで考えまいとしていた長年のわだかまりを抱えて悶々とする。そんなふたりを見守るパメラは寂しさと苛立ちを抱えていた。そうこうするうちにようやく『薔薇色』に戻ってきたパメラとクリスは、店の再開に向けて動き出した。




いろいろと堅実な展開にうーん、と唸りました。
もっとドリームな話になるのかと思いきや、地味なくらいに地に足がしっかりとついてるのに目を見張りました。

とくに、シャーロック。
恋するお馬鹿さんであることに変わりはないけど、たしかに現実的な仕事は出来る男なんだわね、とちょっと見直しました。
まだまだ貴族意識は根深いけれど、それを克服できればさらに世界が広がるということを暗示するかれのエピソードは未来への希望を暗示していて、しあわせになれました。

そしてクリスは強い。
そうです、手に職がある人は強いのです。
いまでいうなら、クリスの職業はオートクチュールのデザイナーですよ。
ブランド名がローズカラーズ。
そう考えたらシャーロック一人養うなんてなんてことないですよね。

バーンズ夫人に商魂を注入されれば、もう向かう所敵なしですwww
バーンズ夫人、なんてことない脇役だと思ってたけど、考えてみればかなり重要な指南役ですね。
貴族につてを作ってくれたのもバーンズ夫人だし、社交界に同伴してくれたのもそうだし、最後にはお店の経営にまでアドバイスを。なんていい人なんだ、ちゃっかりもしてるけどwww

いい人といえばアントニーくん。
きみはシャーロックには過ぎた使用人です。たしかにローレンスには仕えないほうがいいけど、もっといい場所があるよ、待たないほうがいいよ、きみが警戒していた一夜にあんなことしてるんだからねーーー
と思いましたが、見捨てられたらシャーロックが可愛そうなので、それもいいかと思いましたwww

あとはパメラちゃんですね。
実質的に最終巻といってもいいような内容でしたが、パメラちゃんの今後がわからないとどうにも落ち着きません。

イアン先生ほんとにアフリカに行くんでしょうか。ボーア戦争で大変なところなのに。
そんなところにパメラちゃんを連れて行ったら承知しませんからね、と一人息巻く読み手でした。

あと、アディルさんも気になりますね。まさか、ジャレッドとどうこうなんてならないですよね。ね?

それにしても、前巻収録の登場編の読後、ジャレッドの印象がまるで違うのに驚きます。こんなに重要な話はもっとはやめに読みたかったなー。

おさえた筆致でありながら繊細に描かれる夜と朝のシーンと、母子喧嘩がたいそう印象的な一冊でした。

さて、つぎは番外短編集です。
表紙がパメラちゃんなのでとても期待しています。

聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015773

『七姫物語 第六章 ひとつの理想』

七姫物語〈第6章〉ひとつの理想 (電撃文庫)
高野 和 尾谷 おさむ
4048705520


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読了。

天下を取ると公言する男達についていくと決めた女の子の、好奇心いっぱいの瞳に映るシビアな戦乱の世界を、丁寧にたおやかに情景豊かに描く、異世界歴史小説。シリーズ完結編。

面白かった、そしてすてきでした。

七人の巫女姫をいただく七つの都市の勢力争いから戦乱へ、またそこから収束へと至る困難で複雑なみちのりを、これだけ隅々にまでこころをくばって描き出す力量に、感動しました。

戦という血なまぐさいものをきちんと描いているのにも関わらず、ここに流れる空気がやさしいのは、巫女姫の視点を通して描かれているからかもしれません。

まだ恋も知らない少女たちは、どれだけ政治的な思惑を持とうとも、純粋に自分たちの都市を思っているとわかるから。

そして彼女をまもる、まもりたいと願う人たちも、彼女たちの意志を損ないたいとは思っていないから。

できるだけ、多くの人々を幸せにしたいと願うこころが、この物語にはみちている、と思いました。

この巻のメインは二宮スズマでした。

ひとつの主張意外は認めない、真都同盟の気持ち悪さの理由を辛辣に描きながらも、そう流れて行ってしまう人々の弱さと、そんな人々支えようと頑張るけなげな巫女姫の孤独を描いて、共感へとみちびきなおかつ警鐘を鳴らす。

そんな流れの話の中で、翡翠姫と異国のはぐれ王子とのあいだに交わされる会話が、とても興味深かったです。キャラクターノベル的にも今回の主役はこのふたりだったのではないかと。

七宮カセンを率いるテン・フオウとトエル・タウのふたりが目指したものがなんだったのか、という大きな謎も、真都市同盟との対比の中でうかびあがってきます。

東和というひとつの国の中でおきた古い社会システムの崩壊と再編成へといたる道。
それが、この物語のメインストリームだったんだなあと、あらためて思い至った次第です。

話が大きくなった分、カラとヒカゲくんの出番は個人的なものではなく彼女たちの属する陣営のものとして描かれることが多くなりました。

世の中にはたくさんのひとが、それぞれにことなる意志を持ったたくさんのひとがいること。
そのことをきちんと認めて互いに尊重しあうことの難しさと大切さと通じ合えたときの喜びと。

さまざまな出来事を見て、経験して、ここまでたどり着いたカラカラさん。
彼女とうさん臭い二人の男が成し遂げたひとつの到達点に佇んだラストシーン。

庶民の視点で終始ほんろうされた絵師のエヅさんのしたたかなエピソードを読み終えたときには、とてもゆたかでやさしい気持ちになりました。

たいそう、すてきな物語でした。読めてよかった、しみじみそう思います。

シリーズ開幕編はこちら。
七姫物語 (電撃文庫)
高野 和 尾谷 おさむ
4840222657

『キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015587


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読了。

ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に仕立て屋と公爵家の跡取りの身分差恋愛を描く、ロマンス時代小説。シリーズ二十四冊目は番外短編集。

収録作品は以下の通り。


七日目の憂鬱
キスよりも遠く、触れるには近すぎて
彼の懐中時計
石の王子と花姫の結婚

あとがき



「七日目」はジャレッド登場話。
ジャレッドの個人事務所のひとたちも登場してかれのひととなりの一端が判明します。
個人事務所ってなんかうさんくさい名前ですが、いまなら私立探偵とか名乗るんでしょうね。きっと。
話もミステリ仕立てで、こういう話も面白いなと思いました。

「キスよりも遠く」はクリスとシャーロックの恋愛中です、なお話。
なんだかだいって、シャーロックはクリスにいろいろ甘やかされてるよなーと思います。
包容力はクリスの方が大きいと見たw
シャーロックは保守党なんだろうけど、じっさいはどういう政策をしてるんだろう……。

「彼の懐中時計」はアントニーくんの苦労話。
シャーロックになんでもかんでも言いつけられて、それは信頼の現れなんだろうけど、一日中走りまわされているアントニーくんに深く同情いたします。
だけど、このむちゃぶりをこなしているうちにアントニーくんはどんどん使えるようになってますよね。シャーロックをしのぐ有能さを手に入れるのも遠いことではないかと。
もしかしたらそのうち影の権力者になれるかもしれないよ、がんばれwww

「石の王子と花姫」はシャーロック父とシャーロック母の恋愛話。
なんという慇懃なひねくれもの若アルフレイドwww
なんという天然美少女ソフィアさんwww

手紙のやり取りに吹き出してしまいました。後半、アルフレイド絶対に焦ってるよね焦りまくってるよね。

競走馬の繁殖を手がけていた父親の息子が馬嫌いなんてなんという皮肉でしょうかww
ここでもまたオークスが重要なイベントになってて、親子二代で、とまたほほ笑ましくなりました。

ハクニール家編を読んだときからとても楽しかった夫婦の若かりし日々を読めてたいそう楽しかったです。

あと、イラストレーターあきさんのおまけまんが「シャーリーの憂鬱な毎日」。
子供嫌いな人は自分が子供なのよ、シャーリーw

物語世界も登場人物もずいぶん深みを増してきたなーと、感慨深い一冊でした。
つづきが楽しみです。

恋のドレスと花ひらく淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015676

『イングールの天馬 黒の王子と月の姫君』上下巻

イングールの天馬―黒の王子と月の姫君〈上〉 (カラフル文庫)
篠原 まり 睦月 ムンク
4861765803


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読了。

異世界ファンタジーの魅力がぎゅぎゅっと凝縮された、正統派の物語。


“銀の泉の清らかな流れと、炎の剣のまばゆき光が出会うとき、青き大地に真白き天馬降り立ち、そのひづめの下に杯は砕ける”
神聖なる青の神殿に下された予言夢のもと、奇跡の王の両親となるものとして選び出されたふたり、バーゼオン国第三王子ガイルズ十歳とエルマス国第二王女アリシア七歳は婚約者となった。それから八年後。未だに対面したことのないふたりの婚礼の日取りが正式に決まった。国境警備軍総司令官として赴任中のガイルズは、国王である父親から届いたアリシア姫の肖像画に顔がなにも描かれていなかったことに興味を惹かれ、エルマスまで花嫁を迎えに行くと言い出す。最小限の供回りを連れてお忍びで花嫁行列に近づいたガイウスが出会ったのは、行列から離れて先行し賊に襲われていた一行だった。中に姫君の姿を認めたガイウスは、ここにいるのはアリシア姫だと直感する。




面白かったです。

神官たちの見た予言夢により定められた、若い王子と王女の政略結婚から始まった物語は、お互いによる身分詐称。誤解による苦しい恋。横恋慕に、内部の抗争と外部からしかけられる陰謀両方に対処を強いられる緊張と不安と、盛りだくさんの内容です。

それを上下巻に冊に詰め込んでいるので、展開は大変にスピーディー。
つぎからつぎへと起きる出来事に息をついている間もありません。

主人公の王子ガイルスは武将で乱暴な言葉遣い、王女アリシアはメリューナイという魔法を持つ魔女の系譜で中性的にと、キャラクターの描き方はちとあからさまで児童書ぽいですが、おかげで性格はたいへんわかりやすい。

誤解や横恋慕や他人の思惑をのりこえてそれぞれが惹かれあっていくというロマンス部分と、陰謀や抗争やかけひきを二人で切り抜けて行く姿が等価な感じ。女の子にも男の子にも配慮した描き方ですね。

ふたりをとりまく人々がたくさん出てくるのですが、それぞれに登場理由が明確で、きちんと話の中で生きているのがよかったです。

それは書かれているすべての事柄に言えることで、忘れていた頃に回収されて行く伏線にも驚きました。

きっちりと構成された、濃密な物語です。
ファンタジー色も、さらりと書かれてるけどじつは結構濃かったり。

なによりおどろいたのは予言夢関係です。
ネタバレになるのでこれ以上書けないけど、ああ、こんな展開、わたしは初めてです。

欲を言うともっと書き込んで欲しかったなあという部分がたくさんありますが、対象年齢を絞った(おそらく小学校高学年から中学生)本なので、そういう余剰部分はそぎ落とされたのでしょうね。

読後感がたいへんによい、大団円の物語でした。

作者さんは『ナルニア国物語』がお好きだそうですが、たしかに雰囲気が似ているかも。

個人的には、神殿の修道士たちに興味があります。
それにちょっとしか出てこないけど長老たちの存在感にはやられましたw

イングールの天馬―黒の王子と月の姫君〈下〉 (カラフル文庫)
篠原 まり 睦月 ムンク
4861765811

『恋のドレスと翡翠の森 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

恋のドレスと翡翠の森 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015404


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読了。

ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に、仕立て屋と公爵家の嫡男の身分差恋愛を描く、心理描写のこまやかな時代ロマンス。シリーズ二十三冊目、本編二十巻。


仕立て屋「薔薇色」のクリスとハクニール公爵家のシャーロックは、おたがいの気持ちを確かめあい、結婚の許しを得るためハクニール家本領のガイアスタイン城を訪れた。しかし、シャーロックの父親アルフレイドはクリスの本館への立ち入りを認めない。離れに親友のパメラとともに滞在する間に、公爵家の取り巻きたちによる嫌がらせを再々受けつづけたクリスだったが、ようやくアルフレイドの承認が下り、ついにハクニール家のひとびととの対面が近づいてきたが――




ハクニール家編の後編です。

前回はシャーロックを狙っていた女性たちのいじわるに苦労したクリスですが、今度はシャーロックの地位をうかがう男性たちの攻撃に晒されます。攻撃っていうか、なんというか。本人たちは興味本位での遊び感覚ですね。それで、できたらシャーロックがハクニール家の跡取りの地位を追われるといい、という不届きな思惑がくっついている。

というシャーロックの事情に、クリスとクリスの母親リンダ、そしてリンダの不倫相手の娘リコの複雑に絡み合う愛憎がからんできて、前編よりもさらに大掛かりなサスペンス劇へと発展します。

ポイントはリコという娘の存在でした。
理解できない人物という印象ばかりが強かったリコですが、これはかなりいかれたお嬢さんでしたねえ;

リコについて明らかになったことで、いままで納得できなかったいろいろがようやく繋がった気がします。

とても気の毒だったのはクレア。
クリスに敵意を持つ母親マーシャル夫人とドレスを作るリンダと友人になったクリスに挟まれて、ジャレッドにはいろいろと翻弄されて。
でも、彼女がだんだん主体的になって自分で動けるようになっていくようすがとてもよかったです。

ジャレッドはもしかして本当に王族の血をひいているのかもと思いました。

シャーロックは、恋するお馬鹿さんを熱演中www
世話をするアントニーくんお疲れさまです。

アディルさんから派遣されたメイド頭のブリジットさん、厳しい先生をすてきに演じてたのに急におとなしくなった理由が知りたいですw

シャーロックの両親、アルフレイドとソフィアさんの関係も楽しかった。
兄をとられそうで焼きもち妬いてるフローレンスちゃん、可愛いし。
ハクニール家はいろいろと愉快です。

パメラちゃんは相変わらず最高でした。
このあと主役たちがどうなるのかより、パメラちゃんがどうするのかのほうが興味あるなあ。
ヒロインの保護者という地位をゆずったあと今後をパメラちゃんがいろいろと考えてるあたりのことがきちんと書かれているのも、このシリーズの魅力だと思います。

ということで、つぎは番外編でしょうか。

すみやかに読みたいと思います。

キスよりも遠く、触れるには近すぎて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086015587

『漆黒の王子』

漆黒の王子
初野 晴
4048735691


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読了。

暴力により社会の底辺に追いやられたものの憎悪が破壊へ、そして破滅へとつきすすんでいくエネルギーを強く描き出す、復讐ミステリ。


外来のワカケホンセイインコが飛び交う地方都市。インコの墓場の下には住民の知らない暗渠があった。社会からドロップアウトした七人の浮浪者たちは〈王子〉と呼ばれる少年のもと、中世オランダの職人になぞらえた名前を名のって暮らしていた。いっぽう、地上の世界では凄腕の若き組長代理紺野のもと数多ある暴力団を強引にまとめあげた藍原組で、構成員が睡眠不足の果てに謎の死を遂げる事件が連続して起きていた。藍原組にあずかりの身の水樹は、紺野に見込まれ紺野の右腕で藍原組の参謀・高遠の指示を受けて動くことになった。組には組員の死を言い当てる脅迫メールが送られてきていたのだった。




暗く不潔で非現実的な暗渠の世界と、暴力が支配する暴力団の世界を行ったり来たりしながら、死にまつわるエピソードが連続するという、どうにもあかるくなりえない雰囲気の話です。

プロローグからして、子供の苛めがエスカレートしていく話で、しかも、その苛めをうけた子供はその後もとことん辱めを受けて育っていったらしいことが、続きを読んでいるうちにあきらかになっていくという……。

しかも、本編でのその子供はすでに被害者ではなく加害者となっているわけで。
加害者として復讐の対象となって、追われる対象になっているわけで。

とまならい暴力と憎悪と復讐の連鎖に震えが来ました。

暴力と辱めによって生まれた強い怒り、憎悪のエネルギーがどれだけの破壊を希求するかという、まるで破滅へと向かうカウントダウンのような展開を、暴力団同士の抗争とからめて、暴力の連続と滴る血と痛む傷跡と秘めた感情とをもってぐいぐいと推し進めていく文章が圧巻です。

その凄惨な地上と隔たった暗渠の世界の、悪臭がしたり不潔だったりと悪夢のようでいてどこかやすらぎのある雰囲気とがとても対照的です。

たぶん、暗渠の世界はすでに彼岸なんだろうなー。

冒頭から、中世ヨーロッパ関係のいろいろが謎解きにはめこまれてますが、それもこの破滅的な話をがちがちの社会派のどろどろさからちょっと救っているようにおもいます。

そして、一番の救いは、最後まで登場人物たちが本当の孤独には陥らなかったこと。
友人との絆を最後まできらずに、終焉を迎えたことだなーと思いました。

紺野と高遠。
千鶴と彼女。
そして水樹と幼なじみ。

これは、暴力と理不尽にも負けなかった、絆の物語だったんだなー。

話全体から放たれるエネルギーの大きさに目がくらみました。
面白かった。けど怖かった。そしてしみじみしました。

藍原組のシノギの設定には驚かされました。書かれた当時はこれはフィクションだと言いきれたと思うのに、いま読むとあながちないとも言いきれないあたり、寒気がします。

読んだのは単行本ですが、もちろん文庫化されています。

漆黒の王子 (角川文庫)
初野 晴
4043943156

20111103の購入

おかげさまで密林さんからギフト券をいただきました。
たいそう久しぶりなのでちょっと舞い上がってしまいましたw
さっそくぽちりさせていただいたところ、翌日には現物が届いてしまいました。
密林、すげーww


金星特急2 (新書館ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541534


オリヒメ(CRコミックスDX/ふくやまけいこ作品集) (CR COMICS DX)
ふくやまけいこ
4861767938


以上、購入。

『金星特急』は以前もギフト券で買わせていただいたものの続き。
面白かったので虎視眈々と狙っていました。
『オリヒメ』は単行本未収録作品集だそうです。『ヒコボシ』もあるんだけど、こちらは買えるかどうかわかりません;
のでリンクをぺたり。

ふくやまけいこ作品集 ヒコボシ (CR COMICS DX)
ふくやまけいこ
4861768306

20111101の購入

病院帰りに本屋によりました。

聖者は薔薇を抱きしめて ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ)
青木 祐子 あき
4086015773


以上、購入。

今回は始めて行く病院だったので、行きは自家用車で家族に送ってもらったのですが、帰りは自力。
ということで事前にいちおう駅までの地図を調べて行ったのですが、病院から出た途端に「駅の方角はどっちですか?」状態に陥りまして、しばらく住宅街をさまよってしまいました。

結構おおきな病院なんだけど、まわりがマンションばっかりで道端に目印になりそうな建物がほとんど見当たらないんですよねー……。

大きな道路をみつけたので「たぶんこっちだろう、こっちじゃなかったら泣くよ」と黙々と歩き続けてたらなんとか駅にたどり着けたのでほっとしました。

空きっ腹を抱えていたので、心は遭難寸前でした。
焦っていたせいかかなり必死で足を動かしていたもようです。あとになって筋肉痛が襲いかかってきましたよorz