『二番目のフローラ 一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 下』

二番目のフローラ 下 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)
イサボー・S・ウィルス 杉田 七重
4488013341


[Amazon]

読了。

一万一千の部屋を持つ荒れ屋敷に暮らす女の子が、親に敷かれたレールからなんとか決別しようとしつつも別方向に奮闘してしまう、冒険ファンタジー。下巻。

あらすじは上巻のネタバレになるので省きます。

魔法執事に取り仕切られる壮大な屋敷を持つ名家ながら、当主である母親が魔法執事を追放したためにすべてをひとりで捌かなければ成らなくなった十三歳の女の子、フローラ。

一生の運命を左右する十四歳の成人式を控えて、フュルドラーカ家伝統の軍人になりたくない彼女が、あこがれの秘密部隊の生き残りが死刑にされると聞いてから、お話が大迷走w

親友の少年ウードを巻き込んで、あっちに行ったりこっちに行ったり、あれをしたりこれをしなかったり、その合間に家事をしたりしなかったり、衰弱した魔法執事のバレフォールに精気を吸い取られて知らない間に変な絆を作られてたりと、上を下への大騒ぎです。

ちょっと細切れに読んだので、途中のどたばたがどう繋がってるのかわからなくなったりもしましたが、無人のはずのビルスキニール屋敷にたどり着いてからがさらにたいへん。

ビルスキニールの魔法執事パイモンがなぜかぴんぴんしていたり、時間が交錯したり、なんもかもがてんやわんや。

これ、ちゃんと最後にまとまるの?
すごく不安になりましたが、ちゃんとまとまってました。
ただし、親子関係においてのみ。

いろんな謎が残ったまんま、解決されない問題も残ったまんま。
これで終わるなんて殺生な……と思ったら、やはり続編がありました。

どうやらじきに翻訳も刊行される模様です。

カリファ国のある世界の、女性の出世や人外の存在があたりまえとして、それを背景に話が進む展開がたいそう面白かったです。

それにしても、フローラはどうみても秘密部隊には向いてないと思うのよ。
こんなにいきあたりばったりで向こう見ずではねえ;

フローラの歯止め役かと思いきや、途中ひとりで突撃して行ってしまうウードくんがたのしかったですvv

ほんとうのフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)
イザボー・S・ウィルス 杉田 七重
4488013414

『水の時計』

水の時計
初野 晴
4048733826


読了。

孤独と自暴自棄のすえに破滅まで走りつづけてきた少年と、かれを信頼する謎の少女の、奇妙で危険な人助けを、ワイルド「幸福の王子」と現代の医療問題と絡めて描く、ダークで幻想的なミステリ。
第二十二回横溝正史ミステリ大賞受賞作品。


「ここから先に進むと逮捕されますよ」暴走族ルート・ゼロの幹部である少年、高村昴は、忘れた財布をとりに戻ったマンションで、執事風の男に呼び止められる。芥と名乗った男は、ルート・ゼロがしてのけた暴力行為はすでに警察の把握する所となっているが、自分に従うならばそこから逃れることが出来ると告げる。そのかわりに昴はとある病院の一室に連れてゆかれ、ある人物と対面させられる。その人物は、見えない暴走族と呼ばれるほど平然と繰り返してきた走りの提供を求めてきた。なんのために? 脳死移植の臓器を迅速にレシピエントに届けるためだった。



……面白かったです。

先日読んだ『漆黒の王子』のように、社会の底辺で虐げられたり暴力を振るったりと、けっして穏やかではない世界からスタートする話なのに、この静謐さ、切なさはなんなのでしょう。

水の時計というのは、人間のことだそうです。
体内にたくさんの水をふくんで、月の満ち欠けに左右される、ひとの肉体。

主人公の少年・昴が抱えている無力感とやるせなさ。
かれが出会う少女の異様な状態。
彼女からかれが託される、不法な、けれど切実に助けを必要としている人たちへの救いの手。

連作短編のような構成で、レシピエントに関わるひとのせっぱ詰まった人生が、情感豊かに描かれてゆくのが、とても悲しく、苦しく、哀れで、いとおしく感じられました。

そうしてしだいに明らかになっていく昴の過去と、最後まで明かされない少女の理由も、せつないです。

月の光の中にうかびあがる情景が、いつまでも印象に残りました。

これがデビュー作だということで、ちょっと強引かなと思われる所もありましたが、この話はこれでいいのだと思わせるのは、全体を覆うこの月の光のためかもしれません。

この作者さんの話、好きだなあ。

題材が脳死移植なので、いろいろと受け止め方はあるだろうなと思いますが、この話のテーマはそこではない、と思います。

ところで、予約したのは文庫だったのですが、用意できないと電話がかかってきて、ハードカバーを借りて読みました。

というわけで、文庫版はこちらです。
水の時計 (角川文庫)
初野 晴
4048793012

20111222の購入

先日読んだ『坂の上の魔法使い』が面白かったので続編をぽちりしてました。

無二の王―坂の上の魔法使い2 (ミリオンコミックス Hertz Series 114)
明治 カナ子
4813053394


以上、購入。

そういえば前巻の感想を書いてなかった。
剣と魔法の世界の模造品ではなく、きちんとファンタジーしてるファンタジーでした。
魔法使いと魔物しか出てこないのと日常が舞台なので冒険物ではありません。
たいへんに好みでした。

それと、たしかにBLでした。画面的にではなく心情的に。
あと、エロいというよりグロいほうがやや強め?

なのでグロとBL苦手な方は要注意です。

『二番目のフローラ 一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事 上』

二番目のフローラ 上 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)
イサボー・S・ウィルス 杉田 七重
4488013333


[Amazon]

読了。

一万一千の部屋のある屋敷で、ただひとり家事をしながら学校に通う十三歳の女の子が、屋敷から切り離された魔法執事と出会って、自分の夢を実現しようと奮闘する。ぶっとんだ異世界家庭問題ファンタジー。上巻。


魔力を持つ執事が名家の巨大な屋敷を管理するのが通例のカリファ王国で、クラックポット屋敷では十三歳のフローラがひとりで家事をこなし、学校に通っていた。フローラの母親で陸軍大将のバックが、屋敷の魔法執事を追放してしまったからだ。毎日が荒れ果てた屋敷と精神を病んだ父親の世話で疲労困憊のうちに終わるフローラだが、十四歳の誕生日を間近に控え、不安が募っていた。フュルドラーカ家のものは伝統として軍人になるものとされ、フローラも十四になった暁には兵舎に入ることになっていた。しかし、フローラがなりたいのは軍人ではなく、秘密部隊の隊員なのだ。母親の手前言い出せずに悶々としていたフローラだが、ある日、禁止されていた昇降機に乗って、思いもかけず図書室にたどり着いた。そこでフローラは母親に追放されたはずのクラックポット屋敷の魔法執事バレフォールと出会った。



変わった異世界の設定だなーと、読みはじめてからしばらくあっけにとられてました。
魔法執事というのは、魔法で屋敷を管理する屋敷の守護霊みたいなものでしょうか。
カリファ王国では名家の屋敷には必ず魔法執事がいて、代々一族のために屋敷を整えている模様です。

しかし、ヒロインであるフローラの屋敷には魔法執事がいず、ゆえに屋敷は荒れ放題。
住人のほとんどが軍隊に出払っていて、常時住んでいるのはフローラと父親だけ。
その父親も戦争で捕虜になった後遺症で使い物にならなくなり、フローラはただひとりで屋敷の管理を一手に引き受け、しかも学校にも通って勉強しなければならない、という現代日本ならば児童虐待として問題視されそうな状態です。

自分におしつけられた状況に苛立ちながらもなんとか雑事をやっつけて日々を過ごしているフローラですが、こまごまとした雑事に紛れて目をそらしていた運命の日が近づくにつれて次第に焦りを覚えはじめています。

フュルドラーカ家の伝統を押しつけられたくない。
自分の将来を自分で決めたい。

しかし。
忙しさからフローラを放置しつづけているものの、愛情はたくさん注いでくれる、ただし一方通行だけどな母親の存在は絶大です。
なにしろ彼女は陸軍大将です。
これがまたびっくらこいたこと。
カリファ国には男女による役割分担とか序列とかはなしの模様です。

それはそれで好ましいことですが、とにかくあまりにも強い母親にフローラは頭が上がりません。

そんなおり、フローラは母親によって追放された魔法執事が、まだ屋敷にいることを発見するのでした。

しかし、魔法執事がでてきたからってそれで万事解決とは行かないあたり、話はちょっとひねくれてます。
そもそも、フローラは魔法執事のバレフォールにたいした興味を抱きません。
自分のことでせいいっぱいなので、バレフォールが助けを求めても生返事しかしません。
バレフォールはバレフォールで、やたらと態度が大きく、横柄で、しかもヘタレで、やたらにフローラに精気を要求します。

このあたり、フローラはまだ十三歳なのでなんの感慨もなく応じていますが、母親が見たら逆上するんじゃないかしらん?

そんなわけで、話は当然そうなるものと予想した方向ではなく、意外な方向へどんどんそれていくのです。

いったい、どうなっちゃうの、この話?

荒唐無稽な異世界設定と、問題山積な家族のなかで虐げられている怒れる子供、というパターンは、どことなくダイアナ・ウィン・ジョーンズを彷彿とさせるものがあるなー。

タイトルは一番目のフローラがかつていた、ということを暗示しているわけですが、最初のフローラのことがフュルドラーカ家の問題の根っこにあるのかなーと、思います。

いろいろと仕込まれているだろう伏線が、無謀な子供たちの作戦とどんなふうに絡んでくるのかが楽しみです。

それにしても、こんなに横柄な執事はわたしは期待していなかった;

二番目のフローラ 下 (一万一千の部屋を持つ屋敷と魔法の執事)
イサボー・S・ウィルス 杉田 七重
4488013341

『夜の写本師』

夜の写本師
乾石 智子
4488024726


[Amazon]

読了。

魔道師に養い親を殺された少年の復讐を魔法にみちた世界に描く、幻想と象徴にあふれたファンタジー。


右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。エズキウムのキーラ村で三つの品を持って生まれてきた少年カリュドウは、御天守山の女魔道師エイリャのもと、本のなかで育った。カリュドウはエイリャの跡継ぎと目されていたが、それはちがった。エイリャはおまえの運命はおまえがいつか開く『月の書』のなかにあると告げる。魔道師アンジストの支配する国エズキウムでは〈収穫めぐり〉の時期に魔道師たちが訪れて、魔道の素質ある子供たちを選別する。女は魔道師にはなれない。そこでカリュドウは選ばれなかったが、エイリャがひとりの少女を隠したことが発覚し、支配者アンジストが現れて恐ろしい魔道の戦いの後にエイリャのもつウィダチスの魔法を奪い取った。いまわの際に、石の入った箱をもってパドゥキアへ逃げろとカリュドウに言い残し、エイリャは死ぬ。



面白かった!!!
久しぶりにファンタジーらしいファンタジーを読んだーという気持ちになりました。

作中では魔道師と呼ばれてるけど魔法使いのお話で、たくさん魔法使いが出てくるのも魅力的ですが、それぞれが駆使する呪法に系統があって、それぞれが国やなにやらによって出自があるとか、魔法使いは人々の影を背負って生きるのだとか、魔法使いに支配された国の成り立ちとか、もういろいろ興味深いことが目白押しでわくわくです。

それとはべつに写本師の仕事とか日常とか写本師のつくる本とか本とか本とか。
これはもう本好きにはたまらない。

主人公のカリュドウが本にまみれて育ってるあたりからすでに予感がしてたんですが、写本師のパートになったらもうこれは! とごろごろ転げ回りたいくらい楽しくてねえ。

タイトルになってる夜の写本師の実態もすごく面白いし、それから開けてきた視界がまた、目の覚めるような世界を目の当たりにさせてくれて。

話の展開も予想外でしたが、期待外ではなく。
むしろそれを上回る興奮が、どどどっとあふれました。

とにかく、本。そして魔法。
魔法による戦い。
そこにあらわれる男性性と女性性のせめぎあいが凄いです。

解説の井辻朱美さんの文章に、かつてのタニス・リーを彷彿とさせる、と書かれてありましたが、まさにわたしもそう感じました。

魔法のもつ光と闇に人間のもつそれを重ね合わせて、物語のために必要な残酷さに手を抜かず、むしろ華麗に捌ききるあたり。

それから、どこまでも緻密に構築され、収められた、細工物のような構成もすばらしかった。

ラノベなどのファンタジーを好まれる方にはキャラクターノベルではないので読みにくいと思いますが、翻訳ファンタジーがお好きな方には一押しです。

わたしはこの物語が大好きだー!!!
と最後に叫んでおきたいですwww

20111209の購入

アレクシア女史、欧羅巴(ヨーロッパ)で騎士団と遭う (英国パラソル奇譚)
ゲイル・キャリガー sime
415020540X


以上、購入。

一軒目の本屋になかったのでまた買い逃すかと不安でしたが、三軒目で無事ゲットしました。
うふふ、楽しみー。

ついでに予約していた図書館本もゲット。

つまり図書館本を先に読まなきゃいけないというわけです。
先日借りた本がまだ途中なので微妙に苦しい状態ですが、がんばります。

20111207の購入

最近、めっきり読書速度が落ちております。

坂の上の魔法使い (ミリオンコミックス 84 Hertz Series 72)
明治 カナ子
4813052274


以上、購入。

BLだけどファンタジー度が高い、という評判を眼にして買ってみました。
ファンタジー読みたーい、と思っていたらしいわたくしです。

冒頭だけ読んだ限りではそんなにBL度は高くない……気がする。

『ひなのころ』

ひなのころ
粕谷 知世
4120037193


読了。

少し前の日本を舞台に、ふつうの女の子の日常の一場面をきりとって家族の歴史をえがく、ちょっと不思議でちょっと怖い連作短編集。


雛の夜 風美 四歳の春
祭りの夜 風美 十一歳の夏
月の夜 風美 十五歳の秋
年越しの夜 風美 十七歳の冬



これまで南米を舞台にしたけっこう大掛かりなファンタジーを書かれてきた作者さんの、意外なように思える日本を舞台にしたふつうの女の子視点の話です。

と、思って読みはじめたのですが、読み進むにつれてしだいに作品世界はどんどん深くなっていきました。

最初の話で四歳だったヒロイン風美ちゃんのお話は、子供らしい奔放な想像力のひろがるものかと思われたのですが、風美ちゃんが成長するに従い、想像だけではすまないなにかが感じられるようになりすこし怖くなってきます。

おそらく、風美ちゃんの家族にはひとには見えないものを見る血が流れてるんだろうな。
そういうことはお話の中にはひとことも書かれていないんだけど、たぶんそうなんだろうと私には思えます。

描かれて行くのは風美ちゃんの病弱な弟を持って厳しい祖母に育てられたという、日常な家族関係や友人関係ですが、風美ちゃんが年を重ねる事に、だんだん自分の視野の外にあった家族の歴史が見えてくるさまが成長として描かれていくあたりがすばらしいなあと思いました。

そして、この話では風美ちゃんのきづくきっかけや弾みとなるのが、死後の世界とのかかわりなんですよね。

なんとなく、死んだ家族をミイラにして生きてるものとして扱いつづける南米の風習に通じるものがあるなあ、と思いました。

人は人が覚えている限り生き続けているんだよなあ。
お祖母ちゃんにはまだ生きている人物が、そのことをしらない風美ちゃんに“視える”ことによって生まれてくる、エピソードの不思議さや切なさが、さいごにどどどっと押し寄せてきて、涙がにじんできてしまいました。

風美ちゃんが大きくなるにつれて、あたりまえだけど老いていくお祖母ちゃんの姿も切ない。
切ないといえば、家族ひとりひとりがみな、不完全な自分のした不完全な過去を抱えて、不器用に生きている姿そのものが切なかった。

わたしは多分、物語設定からだと風美ちゃんとおなじくらいの世代で、いまは風美ちゃんの親くらいの年代なので、おもいきり感情移入して読んでしまってますね。とくにお祖母ちゃんがせつなくてもうもうもう。

死は現実のすぐそばにあるんだなーとか、思ってしまったりして。

ああ、だめ。書いてると泣きそうになるわ。ぐしゅぐしゅ。

セカンドサイトものとしてはごく地味ですが、とても地に足のついた佳品です。

わたしの読んだのは単行本ですが、すでに文庫化されてます。

ひなのころ (中公文庫)
粕谷 知世
4122049733

『風の王国 王太子の花嫁』

風の王国 王太子の花嫁 (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086014653


[Amazon]

読了。

吐蕃王に嫁いだ唐の公主の波乱万丈の運命を描く、歴史小説。
シリーズ二十一冊目。


吐蕃王にもどったソンツェン・ガムポの命により、混乱のシャンシュンをのりきった翠蘭も、戦後処理を終え吐蕃に戻って一年が過ぎた。言い渡された期間が過ぎ、翠蘭はソンツェン・ガムポとの再婚を迎えねばならなくなった。リジムの面影はいまだ心に深く刻まれている。しかし吐蕃の安定のため、リジムの残した息子ラセルのため、翠蘭は己の心をおしころして婚礼に臨むが――



唐の公主として吐蕃王に嫁いだ翠蘭が意志的に歴史の動乱期を乗り越えて行く、激動の歴史小説。久しぶりに続きが読めました。
少女向けレーベルのシリーズでシリーズ始めはかなり甘甘でしたが、このところ、こんな展開で少女向けでいいの?と心配になってしまうほど、大変にシビアーな中身です。

この巻ではなんと、ヒロインが再婚してしまいます。
すでに子持ちだし、未亡人なんだし、もう、ここまできたらネタバレとかいいですよね……;
とはいうものの、あまり書くとこれから読もうと思われる方に失礼なので詳細は伏せときますが。

この巻では、ヒロインの傷心にああ、かわいそうにと同情してたのが吹き飛ぶような衝撃の事実にぼう然とします。

よくもまあ、つぎからつぎへと試練が待ちかまえていることです。

それをなんとか乗り越えて行く翠蘭の活躍が読みどころなんですが、もうほんと、気がめいるような人間関係がつぎつぎにあきらかになるので、ほわほわ幸せになりたくて本を読む方にはお薦めできないですね。というか、そういう方はすでにここまで来る前に脱落しているものと思われますが;

むしろ、シリーズ当初の甘甘、ヒロインさらわれまくりな展開に辟易されていた方にこのあたりを読んでほしいなあと思います。

このシリーズの真骨頂は私的には「嵐の夜」あたりからだと思ってます。

そのあたりから「つづきがでるか否か」という心配をするようになってきましたのでww

正直、いまのコバルトのラインナップからは完全に浮いてますけど、このシリーズはレーベルの良心だと勝手に思っております。

この度の読みどころはラセルの花嫁探しに出かけた先の、ツァントゥー領主ゴワルのゆがんだ人格といびつな親子関係かな。
すてきに不快な人物が複数いきいきと活躍しております。シャンシュンのときにも思ったけど、こういう自分勝手な人物を書くのが本当にうまい作者さんです。そういう人物がいかに不条理でストレスフルな状況をつくりだすかというあたりの描写も、いらいらするほど臨場感があります。

意志疎通の難しさのリアルさが、この話のシビアさの一端でもあるかもなー。

あと、翠蘭に随行した女官たちが楽しい、若い女の子たちがきゃわきゃわしてる感じで、重苦しい展開の中の一服の清涼剤でした。

と、いろいろ思いながら楽しく(まじです)読んでましたが、本編がサブタイトルまで行き着かないうちに途中で短編に切り替わったのでちょっと驚いた。どうやら原稿が間に合わなかったみたいです。

収録作は「月夜の呪文」。
国王付きの魔術師になったチュツァリと女官サシャのお話。
翠蘭やリジムの知らない王宮や王国の事情がわかるせつないお話でした。

シリーズはすでに続刊が出ています。

風の王国 春の使者 (風の王国シリーズ) (コバルト文庫)
毛利 志生子 増田 メグミ
4086015013