『夢見の猫 風の犬宮』

夢見の猫 風の犬宮 (くもんの児童文学)
牧野 礼 中川 学
4774320625


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読了。

平安朝末期の混乱期を舞台に猫と人の末裔の少女の成長を描く、児童向け時代ファンタジー。


武士である平氏が貴族を追い落とし、絶頂期を迎えていた平安の都。その都をかこむ森にある千足の里に、大陸から渡ってきた猫の子孫がひっそりと暮らしていた。国つ神からふしぎなちからを得た千足の猫は人の姿になれる特別な猫で、呪いをなりわいとする〈蠱毒使い〉の垂涎の的だった。千足の猫の少女・夜斗は、過去に犬に襲われて尾を食いちぎられた。満月になるとみる犬が封印された戸から出てこようとする夢はその恐怖のあらわれなのだと言われるが、どうも腑に落ちない。しかも十四になるのになかなか成人と認めてもらえずにふさいでいる夜斗に、大好きなおさななじみの尾長が結婚を申し込んでくれた。しかし、喜びもつかの間、夜斗はちび耳を助けるために出てはいけない里の門から外に出、直後に尾長の死を知らされる。



すっきりときれいにまとまった、かわいらしいお話でした。
舞台が、今話題の清盛の全盛期ということでちょうど読むのに良い時期だったかもしれません。

主人公はふしぎな力を持つ猫の末裔の少女・夜斗。
彼女の見る犬の出てくる悪夢から話は始まります。夜斗は幼い頃に犬に襲われて尻尾が短くなりましたが、その時のことを覚えていないのです。

千足の森に住む猫の末裔、通称千足の猫には、子猫は里から出てはいけないという掟があります。
千足の猫は呪術のかっこうの道具になるので、蠱毒師に狙われているためです。

けれど突然の出来事がきっかけで、夜斗はその禁忌を破ることになります。

それから夜斗が出会うのは、蠱毒師のもとで、道具として弄ばれながら生きてきた少年・三津丸。

さらに宮廷の片隅に封じられて暮らしてきた少女、大句。

都では栄華を極める平氏の清盛と院の仲たがいがおおっぴらになり、影で暗躍する蠱毒使いの思惑を軸に、お話は急展開をしていきます。
つらいこと、くるしいこと、いたいこと、たくさんの苦難がありますが、平易でやさしいふんいきの文章はなま臭さを感じさせず、お話の行方そのものに読み手をひきこんでくれました。

そして、きれいにまとまったすこやかなラスト。

夢とうつつを行き来し、生と死のはざまに立ち、神との約束を確認する。

そんなファンタジーらしいファンタジーでした。

これからお話の世界は戦乱の世に突入していくわけですが、かれらならばきっとたくましく乗り越えていくだろうなと思えます。

一生懸命な夜斗や、なげやりな三津丸、雄々しい大句の子供たちのキャラクターは児童向けらしく明快で好ましかったです。

猫ばばさまは賢者のスタンタードですねw

しかしわたしには、夜斗をずっと見守ってきた尾長が影の主役のように思えます。
淡々と描かれている人物の中でかれだけに萌えを感じてしまう。
つまり、尾長が好きだってことですがw

大げさなところがなく、おとなしめのたたずまいですが、とても愛らしいお話でした。

滝まくらの君
牧野 礼 照世
4265820182


余談。

ふと、ラノベと児童文学の違いは、過剰であるかないか、あるいは読み手に過剰な思い入れを期待するか否か、なのかなー。とか、思ったりした。

『宮廷神官物語 運命は兄弟を弄ぶ』

宮廷神官物語 運命は兄弟を弄ぶ (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトー ナオ
4044491135


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読了。

元気な男の子がさまざまな人間関係の中で成長していく、朝鮮王朝風異世界宮廷陰謀ファンタジー。シリーズ第九巻。


虎を神とする国・麗虎国で、奇跡の慧眼児として宮廷で神官見習いをすることになった山育ちの少年・天青。宮廷を騒がせた立太子も決着してひといきついたところ、そもそも慧眼児が必要とされた元々の問題、次期大神官の選定がつづいていた。天青は警備上の理由により大神官候補にもあげられる鶏冠付きの書生となり大喜びするが、日々を間近に接する鶏冠は沈みがちだった。藍晶王子からの大神官着任要請を固辞しつづける鶏冠は、ある秘密を抱えていたのである。そんなおり、曹鉄を第一王子として皇太后をあやつろうとしていた元神官・苑遊に呼び出された鶏冠は、思いがけない人物と再会する。



安定の筆致と展開で、安心してお話に浸れる、異世界宮廷陰謀劇です。
陰謀劇なんで話はかなり陰湿な展開をするのですが、主人公を始めとしたキャラクターが明るく楽しく描かれているのと、暗いところは読み手の好き好きによって理解度が増すような書き方がされているのとで、それほど陰々滅々とした雰囲気にならないところが好きです。

今回はとうとうシリーズもクライマックスに突入。そもそもの始まりだった次期大神官選定がクローズアップされて、メインは鶏冠に対する苑遊さんの企てに移りました。

からまれつづけてどんどん憔悴していく鶏冠に心が痛みます。

登場時は穏やかな人格者のようだったのに、苑遊さんはじつはかなり屈折したお心をお持ちなかたのようで……というかこれ、ヤンデレ?
図星を突かれて逆上するあたりからも、もう、そうとしかいいようがないような。

ひとりで苦悩しつづける鶏冠に周囲も心を痛めます。
こういうときに打開策になるのは、天青の思い立ったら突撃精神とそれを収拾する櫻嵐姫のフォローです。

はじめのうちは曹鉄がフォロー役だったのに、思いがけないヘタレっぷりをあらわにして以来、わたしにとっての曹鉄株は下がったままです(苦笑。

それを置いても櫻嵐姫の漢っぷりのよさは爽快。

それと、明るくてかわいいやんちゃな悪ガキだった天青が心身ともに成長してると、さりげなく触れられているところがとくに印象に残りました。

子供の成長に大人はふと寂しさを覚えるのですよね。

しかしそれを感じるのがまだ若い櫻嵐姫なのはどういうことなのでしょうか。
このお話で精神的に一番大人なのが櫻嵐姫だからでしょうか。

わたしが一番期待して読んでるのが櫻嵐姫で、そのつぎが紀希ちゃんなのも致し方ないと思います。

文章も話の進み方も安定してますが、こういったひととひととの関わりをこまやかに描いてくれるところが、わたしがこのシリーズを好きなところだなー。

というわけで、話の展開のせいであるとはいえ、受難続きの鶏冠に深く同情しつつ、恒例のコスプレも大いに楽しみ、うわあなんてことだこれからどうなる! なところで次巻に続く、となりました。

つぎはとうとう完結編です。
すでに刊行されてますので、手元に届くのをのんびりと待ちたいと思います。

宮廷神官物語 慧眼は明日に輝く (角川ビーンズ文庫)
榎田 ユウリ カトーナオ
4044491143

『六花の勇者』

六花の勇者 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
山形 石雄 宮城
4086306336


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読了。

「戦う司書」シリーズの作者さんの、異世界アクションファンタジーミステリ、シリーズ第一巻。


闇の底より人間を殺す魔が目覚め、人の世界が地獄へと変化する時。運命の神は六人の勇者を選び出し、人を救う力を授ける。勇者の身体には六花の紋章と呼ばれる奇妙な花が現れる。十八の少年、アドレットの右手の甲にもそれがあった。世界を救う定めを負った選ばれし勇者の証だ。ところが、魔の棲む半島の入り口で六花の勇者を名乗りつどった人物は全部で七名。ひとりは偽物だ。何をたくらんでいるのかわからない謎の存在に、勇者たちは疑心暗鬼に陥った。



異世界ファンタジー版『11人いる!』。
六人しかいないはずの勇者がなぜか七人。だれが偽物なのか、なんの思惑があるのかわからず、お互いに不信を抱きつつ、偽物探しが次第に敵探しになっていき、ついには……。

という、ミステリーでサスペンスフルなお話でもあります。

登場人物はいかにもラノベなファンタジー風で戦闘アクションも派手ですが、お話の作りががっちりとしてるので安心して読めました。いや、サスペンスだから安心してといってはいけないか(笑)、ハラハラドキドキを十分に堪能しました。

面白かったです。

ところで、注意。
一巻未読でこれから読もうとしている方は、ぜったいに二巻の裏表紙を見てはいけません。
一巻を読み終えるまで手に入れるのを待つか、買う場合はカバーをつけることをお勧めします。
一巻のネタバレが堂々と書いてあります。
見たら一瞬にして一巻を読む気力が失われるほどひどいネタバレです。
見てしまった方、ご愁傷様……。


六花の勇者 2 (六花の勇者シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
山形 石雄 宮城
4086306719

『夢の遠近法 山尾悠子初期作品選』

夢の遠近法 山尾悠子初期作品選
山尾 悠子
4336052832


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読了。

磨かれた石のような言葉で描き出される見たことのない景色に息を飲む、幻想中短編集。



夢の棲む街
月蝕
ムーンゲイト
遠近法
童話・支那風小夜曲集
透明族に関するエスキス
私はその男にハンザ街で出会った
傳説
月齢
眠れる美女
天使論
自作解説




ストーリーではなく現象そのものを受け止めていくような読み心地の、とても独特な味わいの作品集。

なかでもわたしは、ひとつの世界の終わりが描かれるお話が好きです。
「夢の棲む街」「ムーンゲイト」「傳説」などですね。
使われている言葉の概念以外にはなにも思考を誘導することのない文章に、自分がその世界で起きているさまざまな現象を直接まのあたりにしているかのような気分になりました。

なにが起きているのか、すぐには、いやあとになってもよくわからない。
けれど、脳内に描き出される光景は細部に渡って鮮明で、ときに美しくときに奇怪でたいそう魅力的。

奇怪といえば、「透明族に関するエスキス」。
これはほんとうに記された言葉をどれだけ忠実に脳内に映像化できるか、という点がポイントのお話。
透明族、作中では侏儒とかかれるそれの風に吹かれてただようありさまがとてもシュールで、なのに突然なまなましくてショッキングでした。
うわあ、何コレ。て感じw

あと、いったいどうなってるのか全然わからないようっ、て悲鳴を上げたのが「遠近法」。
SFっぽいイメージが一番色濃いけど、SFかと問われるとうーむとなります。

正直、万人にお勧めというわけにはいかないような気がしますが、すくなくともわたしはたいへんに楽しんで読みました。
言葉の芸術ってこういうのをいうのかなあ、言葉の生み出す幻想のちからに陶酔しました。


この本は『山尾悠子作品集成』の軽量版をめざして編集されたそうです。
たしかに、いきなり「集成」は敷き居が高すぎますね;

山尾悠子作品集成
山尾 悠子
433604256X

『花咲く森の妖魔の姫』

花咲く森の妖魔の姫 (ウィングス文庫)
縞田 理理 睦月 ムンク
440354178X


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読了。

小さな王国の生真面目王子と妖魔に森で育てられたピュアフル少女の、メルヘンチックな異世界ほのぼのファンタジーロマンス。


アンジェニスタ王国第六王子のリシャールは、父王からポポワトーの森を相続することになった。ポポワトーは妖魔の棲むと畏怖される森で、人々は寄りつかなず財産的な価値は何もない。しかし絶対的な価値というものなどこの世には存在しない。そう考えたリシャールは自分の領地となる森に馬で分け入った。ところがどれだけ進んでも森から抜けることが出来ない。知らず身のうちに潜んでいた畏れが意識されるようになった時、巨大な獣に襲われたリシャールを救ったのは、フィーと名乗るふしぎな少女だった。



このお話、とても好きです!

読み終えてから感想を書くまでずいぶん経ってしまっていうのもなんですが、初読から何度か読み返していたのですよ……こんなのわたしには珍しいことなんですよ(最近はけっこう読み返してますが、それまでは本は一度しか読まない人でした)。

物語全体がほのぼのとやさしく、お約束をきちんと踏んで進んでいくので安心してられて、キャラクターも類型のよさを存分に活かしててかわいらしくて、謎解きや誓約といったものがちりばめられた王道の妖精物語で。

すべてが心地よくて読んでいてとても癒されるお話でした。

なによりもポポワトーの森が輝いてます。
アンジェニスタ王国が近世のフランス風なかんじでさらりと描かれているのに対して、ポポワトーの森のみずみずしく豊饒な生き物の世界、光と闇をたっぷりと水を含んだ大気に乱反射するようにきらきらと幻惑する妖魔の森のふしぎな魅力に、すっかりやられてしまいまして。

ポポワトーの名持ちの妖魔は樹から生まれるらしいけど、それって寿命が長いからなのかなあとか。
フィーを育てたふたりの妖魔、オディロンとライルの性質の違いはどこからくるのかなあとか。
風露魚はどこで産卵するのかなあとか。
獣系の妖魔はどうやって生まれてくるのかなあとか。

話自体にはあまり関係ないところをうろうろと妄想して楽しんでおりました。

いや、お話もとても楽しいのですよ。
リシャールの妹のアルレット姫のキャラクター造形は最高です。
フィーに騎士物語を布教しまくるところ大好きだーw

フィーのまっすぐなお子様キャラクターも嫌味がなくて、リシャール視点で魅力が倍増しになってるにしろ、とても可愛くてあたまナデナデしてあげたくなりました。

それに冷静かつ理性的にみえていたオディロンが……なあたりもおかしかったw
わたしはふたりの妖魔視点に感情移入しまくりだったので、そうだもっとやれ! と心の中でけしかけてました(笑。

領土問題や外交問題とけっこう現実的な案件が絡んだりもしますが、異世界ファンタジーというより異世界メルヘンな感じがしました。生き死にや魂の問題がからまない、約束をテーマにしたお話だったからでしょうか。

締めくくりもとてもきれいで、ほわあんとした心地よいものが残りました。
これからもまた読み返してしまいそうな予感がしますv

『アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂う 英国パラソル奇譚』

アレクシア女史、女王陛下の暗殺を憂(うれ)う (英国パラソル奇譚)
ゲイル・キャリガー sime
4150205426


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読了。

人間と人狼と吸血鬼が共存する19世紀イギリスを舞台に、大柄なヒロインが獅子奮迅の活躍をする、ヴィクトリアン・スチームパンク・パラノーマルどたばたファンタジー。シリーズ第四巻。


〈魂なき者〉=反異界族のアレクシア女史は、吸血鬼群のやむことなき暗殺の試みから逃れる為、表向きは親友のはぐれ吸血鬼アケルダマ家の隣に住み、実際はアケルダマ屋敷に居候することになった。身重の身体で引っ越しの陣頭指揮をとるアレクシアだが、仲の悪い実の妹フェリシティーが訪ねてきたり、人狼になりたての若者ビフィが問題を抱えていたりとごたごたつづき。ようやく落ち着いたと思った時には突然ゴーストがあらわれ、ポルターガイスト寸前の支離滅裂さで女王陛下暗殺計画を警告される。夫のマコン卿は身体を気遣い手を出すなというが、重大懸案を前に言われて引っ込むアレクシアではない。さっそくビフィをお伴に膨らんだ身体で捜査活動を開始した。




ネタだらけwww
読んでてとってもおかしくて楽しくて、ニマニマしてしまうシーンの連続でした。
面白かったー。
これ、絶対作者さんが一番楽しんでるよねと思うファン精神満載の作品です。

性格も体格も規格外れな貴婦人アレクシア・タラボッティの行動力は妊婦になっても衰えず、むしろ理性のリミッターが外れて傍若無人さに拍車がかかっている模様。
大の男(しかもみなアレクシアより数世紀年上)が三人かかってアレクシアの怒りをなだめすかそうとする冒頭から、笑えて笑えてしかたありませんでした。

個性的でなおかつツボを押さえたキャラクターとヴィクトリアンな時代風俗に奇想天外なアイテムが目白押しです。

幽霊からの意味不明な警告から端を発する女王暗殺計画の捜査に、かつての女王暗殺未遂事件がからんできて、アレクシアの捜査は迷走気味。
その合間にもフェリシティーのなぞの行動や帽子屋兼科学者マダム・ルフォーの憔悴や、人狼になりたての子犬のビフィの大騒ぎがくわわって、息をつくまもない。

そんなドタバタとすすむ話ですが、マコン卿の不幸な過去との関連が明らかになるあたりは、ちょっといやかなり深刻で、ここが話のクライマックスになってもおかしくはないくらいの盛り上がりでした。おおう、なんということだ……。

しかし、この話はあくまでもコメディー。
深刻なままでは終わらないのです。
さらにド派手でスケールアップしたドタバタの大波がやってきて、予想外の展開へと行き着きます。

プロローグの「ハは反異界人のハ」での大まじめで変な報告書や、アレクシアの親友アイヴィとのとぼけたやりとり、そして人狼団でのあかるい阿鼻叫喚のノリに、なんだかなじみ深い雰囲気だなあと感じていたのですが、読み返していて「あ」と気がつきました。青池保子『エロイカより愛をこめて』ですよ!

それからというもの、わたしの脳内では青池保子画によるアケルダマ卿やビフィやフェリシティやアイヴィが走り回ってくれて、とんでもないことになっております。

あえてだれがだれとは申しませんがかなりあり得ないよねって想像も含んでいます。
マコン卿の配役には相当な物議を醸しそうですしね、ははははは。

しかしアレクシアだけは想像がつきませんw

シリーズは全五巻で完結。本国ではすでに完結編が刊行された模様です。つづきをお待ちしています。

シリーズ開幕編はこちら。
アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)
ゲイル・キャリガー sime
4150205329

『メキト・ベス漂流記 最後の旅』

メキト・ベス漂流記 最後の旅 (カドカワ銀のさじシリーズ)
西魚 リツコ
404110100X


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読了。

海と人のかかわりを壮大なスケールで映像的に描く、異世界海洋冒険スペクタクルファンタジー三部作の完結編。


人減らしのために貧しい故郷ダルキース島をはなれた少女エマと少年ナオ、そして不思議な力を持つ銀の若者メキト・ベス。王家の力を乱用する国王との対決で呼び起こされた嵐に巻き込まれたかれらは、気がつくと百年後の世界に飛ばされていた。国王の利己的な行為で寒冷化した世界を目の当たりにし、かれらはともに漂着した黒の旗艦のスペシダレル伯爵、ニール・ゴー元艦長とともに、衰亡していく世界を救おうとしていたメキト・ベスの行為をようやく理解した。変わり果てたベルヌン島で情報を仕入れたかれらは、現在の国王とその宮廷が存在するという首飾り諸島をめざすことにする。その海路の途中にはエマとナオの故郷、ダルキース島があった。



面白かったです。

ディテールまで作り込まれたシビアな世界観と人間ドラマがどこまでもストーリーに殉じていく作品で、お話そのものも非常にストイック。
そぎ落とされた展開の中、それでも、押さえるべき点はきちんと押さえている。
そんなにストイックなのにドラマはものすごく劇的で、文字通りなだれうっての展開の果ての怒濤のクライマックスには大興奮しました。

もともと映像的な作品だなと感じていましたが、ほんとうに映画のようなお話でした。
それも、まるで大作映画を見たようなずっしりとした読後感。

この壮大な物語を三冊で書ききった作者さん、すごいです。

そして、なによりも帆船が活躍する海の鮮やかで躍動感にあふれる描写がすばらしい。
これ、アニメにぴったりの作品だなと思うのですが、テーマもNHKあたりでアニメ化してくれてもよさそうな感じだし。

登場人物の描き方は地に足がついていて、ラノベを読み慣れた人にはその点が物足りないかもしれませんが、むしろ妄想の余地はたくさんあると思います。
映像としてみれば、文章的には地味だった登場人物にも萌え要素が潜んでいることがわかると思うのでw
メキト・ベスの銀の容姿とか、スペシダレル伯爵の黒マントとか黒マントとか!www

余談。
これ、異世界ファンタジーと銘打ってるけど、わたし的には異世界SFだなーと感じます。
なんとなく、過去の負の遺産を清算して未来を救おう、そして試行錯誤、みたいな展開だとわたしはSFを感じるみたいです。
同じ作者さんの別シリーズも、そんなふうに感じたっけ……。

あと、王家の力のもともとの発端がもうすこし具体的に知りたかったかな。

ともあれ、絶体絶命のピンチにむちゃくちゃにゆさぶられつつ、息も絶え絶えにたどりついた終着点が希望のある場所でよかったです。

シリーズ開幕編はこちら。
メキト・ベス漂流記 背中の紅い星 (カドカワ銀のさじシリーズ)
西魚 リツコ 橋 賢亀
4048741713

20120509の購入

久しぶりの遠距離通院先で、近場では手に入らなかった新刊をゲットしました。

魔道師の月
乾石 智子
4488024890


夢の上 - サウガ城の六騎将 (C・NOVELSファンタジア)
多崎 礼 天野 英
4125011990


以上、購入。

やっぱり大都会の大規模書店は違いますねえ。
こんなところが近くにあればなーと羨みつつ、いつでも手に入ると思うと買わなくなるかもとも思うあまのじゃくでした。

それからイヤフォンも購入。
カードのポイント全投入して買ってやったぜ!←やや自棄気味

DENON インナーイヤーヘッドホン ブラック AHC560K
B003LWCJIA


何度も試聴して決めたんだけど、試聴した機種が少なかったので自信はない……。

『コップクラフト 3 Dragnet Mirage Reloaded』

コップクラフト 3 (ガガガ文庫)
賀東 招二 村田 蓮爾
4094512454


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読了。

妖精や魔物の住む異世界とのゲートが開いた近未来の地球。サンテレサ市警察特別風紀班に所属するマトバ・ケイ、同じく風紀班に配属された実年齢より幼く見えるが堅物の騎士である異世界人美少女ティラナ・エグゼディリカのコンビの活躍を描く、近未来異文化接触警察アクションファンタジー? シリーズの三冊目。


サンテレサ市で名門シャーウッド高校に通う少女が薬物まみれの死体となって発見された。少女はセマーニ出身で弁護士から政治家へ転身を計るモダ・ノーバムの娘で、スキャンダルを恐れたノーバムは捜査に圧力をかけ、娘の死をもみ消そうとしていた。しかし名門高校の麻薬汚染を放置することは出来ない。上からの意向で捜査を担当することになった風紀班では、ティラナを生徒として高校へ潜入捜査させることになった。高校の制服に身を包んだティラナの姿には一片の違和感もなく、本人は憤慨しつつも任務につくことを承知する。



基本的にはアメリカを舞台に異文化に育ったふたりの刑事の活躍を描くバディー物ですが、日系おじさんの相棒が異世界美少女で堅物の騎士である、というところがギャップ萌えなシリーズです。

なにゆえそんなコンビが成立したのか、というところの設定がとんでもなわけですが、そのとんでもな部分を支える細部にいたるまで作り込まれた物語世界のリアリティーと、それがきちんとお話に絡んでいるところがわたし好みなところ。

主人公たちの属する組織内の表面的にはドライなやりとりのつづく中、じつはけっこう人情に厚くていいヤツ揃いなあたり、同著者の「フルメタル・パニック!」シリーズを彷彿とさせて安心感がありますね。

そこにもってきて、マトバ刑事とティラナ・エグゼディリカ嬢のコンビがたいそう生き生きとしてて魅力的で、読んでいてとっても楽しいです。

「フルメタ」でいえば宗介の立ち位置がティラナちゃんなんですが、あたりまえだけど宗介にはなかった萌え要素がティラナちゃんにはてんこ盛りww

堅物ですぐに荒事に持ち込もうとして成人していると言い張るわりに経験不足で不器用なティラナちゃん、すごく可愛いです。

風紀班のおもちゃにされかかってるの、本人自覚して……ないよねえw

マトバ刑事はふだんは軽い言動ですが、じつは過去に辛い経験をたくさんしている大人の男性である、てとこもティラナちゃんとよいバランスだと思います。

今回は風紀班らしい薬物絡みの事件でしたが、なぜか学園物になってしまうあたりに楽しさがありました。ティラナちゃんは大いに不満そうでしたが、彼女には先生役は無理でしょうw

事件そのものはいつも能天気なものではなく、むしろ難民問題などの厳しい現実をふまえた苦さを残すものの多いシリーズですが、話がきちんとまとまっておりコンビの距離がしだいに近づいていくのがわかるので、読後感もよいシリーズです。

わたしはティラナちゃんのセマーニ訛りがたのしいですw
つづきを楽しみにしています。

シリーズ開幕編はこちら。
コップクラフト (ガガガ文庫)
賀東 招二 村田 蓮爾
4094511725

「炎は甦る」

西東行さん作「炎は甦る」読了。

異世界ファンタジー長編、完結済み。
『神々の夢は迷宮』から始まる海人の少年ワツレンが主人公シリーズの一作で、「愚者の灯火」のつづきです。

今回はルーザ=ルーザのご家族が大挙してご登場(笑なのです)。
神々の謎がいっそう深まり、蒼い衣の吟遊詩人も大活躍なおはなしでした。
面白かったですv

神々の夢は迷宮 (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
406286617X

『RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女』

RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女 (カドカワ銀のさじシリーズ)
荻原 規子 酒井 駒子
4048742043


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読了。

山伏、陰陽師、忍者、さにわなどがいりみだれて日常と非日常が混在するなか、ひとりの少女が次第に自分を認識し受け入れていく姿を描く、青春学園ファンタジー。シリーズ第四巻。


山奥で世間知らずに育った泉水子は、東京の鳳城学園に通うようになって戸隠出身の真響や真夏たちと知りあううちに、自分が姫神の器であることをしだいに受け入れはじめた。しかし、彼女のパートナーであると周囲に認識されているらしい深行は、そのことを迷惑に感じているのではないかと思うと気が気ではない。戸隠での事件の後も深行との距離がうまくとれずに落ち込む泉水子だったが、夏休みが終わって戻った学園に違和感を覚える。間近に迫った学園祭の準備でおおさわぎのなか、とつぜん衣装の着つけモデルを引き受けることになってしまった泉水子は、封印である三つ編みをほどいても自分は自分だと言い聞かせてその場を乗り切ったかと思ったが――。




いつもほぼヒロイン視点ですすむお話ですが、冒頭、ヒロインの日記風文章から始まったので、もろに少女小説な感じに読みはじめてしまいました。

そしてあらためて、この話の文章はストーリーよりも心情に寄り添ってるんだなあと思った次第。

泉水子はいろんな事態に遭遇しているのだけど、その事態を外から眺めて見るということをあまりしないうえ、理性的に整理しようともしてくれないので、視点にどぼんと浸かって読みつづけると読み手もなにがなんだかよくわからないなあ、ということになるのですね。まあ、それはわたしが足下しか見ない読み手だから余計にそうなるということなんでしょうけども;

一歩引いて事態を俯瞰してみて、ああそうだったのか、とようやく理解したりして。

しかし、なんでしょう、この展開は。
なんとなく『西の善き魔女』とおなじような感じになってきてませんか。
こんなふうに物語世界があきらかになっていくの、なんとなくわたしにはちょっとずるいというか、あとだしじゃんけんのように思えてしまうのですが……どうなんだろう?

泉水子の青春小説としてはまちがいなく面白いのだけど、うーん、もやもやするなー。
しかし、これで『風塵秘抄』のときの謎がとけたわけですよね。
あれはこの話と同じ世界の話だったというわけか。

ところで、戸隠と陰陽師が世界遺産になるために争っている? というという、そこだけ聞くと冗談みたいなお話にも、いろいろと背景はあるのねと思いましたが、やっばりなんとなく切実感が足りないような。

中途半端なんですよね。
姫神の存在がどんなものだか、いまだに不明だからかもしれないですが。

しかし、こんな話をいきなりされたら、だれだってびっくりするよなあ。
おかげで、今回は深行くんがいろいろとあたふたしてくれたので、そこは大変に楽しめましたw

泉水子と深行くんの関係がどうなるのか。
いや、むしろいつどのようにして深行くんが本心をさらけ出すのか。
そこを読むのが、いまの一番の楽しみですww

例によってつづきはすでに刊行済みです。
RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日 (カドカワ銀のさじシリーズ)
荻原 規子 酒井 駒子
4041100399