「七都」

桜沢麗奈さん作「七都」読了。

少女向け未来ハードロマン長編、完結済み。

「架空革命少女小説」。
先へと突き進んでいく、つよいエネルギーを持った物語。

わたしにとってのヒロインは聖羅でしたwww

『残穢』

残穢
小野 不由美
4103970049


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読了。

現代に起きた怪異を調べるうちに社会情勢や世情をふくめた土地の来歴を遡っていく、ホラー小説。


ホラー作家である主人公は、本のあとがきで怪異現象の体験談を募っていたことがあった。手紙のひとつに興味を持ち、差出人の女性ライターと連絡をとってみると、箒で畳を掃くような音がする現象は今も進行中だという。調べてゆくうちに怪異はその部屋だけではなくおなじアパートの別室や近隣の住宅でも起きていることが判明してゆく。もとから人が居つきにくい、流動性の高い地域であるのだが、数年どころか数ヶ月のうちにどんどん住人が入れ替わってゆく事実は二人を驚かせた。ゆっくりと地道に証人の聞き取りを続けてゆくうちに、怪異が怪異を呼ぶ連鎖とも言うべきつながりがあきらかになってゆく。



主人公がホラー作家で京都に住んでいてティーンズ向けのシリーズを書き下ろしていて……とくれば、著者さんが思い浮かぶのは当然。

この本はほぼ同時に出た『鬼談百景』のつづきというか、この連載を続けていた時に著者に起きていた事件、というような形の話になっているようです。

読んでいて、怪異現象の淡々とした描写には著者自身のどこまでも疑ってしまう姿勢があらわれているように感じられました。冷静で、まったく感情の混じらない、観察者のような書き方です。

それがちょっとレポートのようだなあと思ったり。
いや、レポートだったらもっと扇情的に書いてるかな。

怪異現象のもとを探るために体験者や土地の過去を知る人物に聞き取り調査をしていく過程は、ほとんどミステリーの聞き込みみたいな感じでした。

あ、そうか。ミステリーの書き方に似ているのかも。
それも、本格派の謎解きを主体にしたミステリの、鍵となる事実を並べていくような感じですね。

というわけで、途中まではほとんどミステリを読んでる気持ちでした。
賃貸の事故物件の設定とか初めて知りました。

面白かったのは土地の来歴は土地に人が住み続けない限り受け継がれて行かないのだなと、いう事実です。しかも、情報を共有できる人間関係がないとだめなんですよね。

目次を見るとわかるのですが、話は現代からバブル崩壊、高度成長期、戦後の混乱期、戦前とどんどん時代を遡っていきます。

そして、その時代の様々な出来事によって、その土地が様々な形で利用されてきたことがわかってくるのですが、地縁のしっかりとしていた古くからの土地でも、どんどん人が流れ出たりあらたに入り込んだりして、人間関係が分断されてしまい、来歴をたどるのが困難になっている現状が、ちょっとショックで、でもとても納得でした。

本来の怪異の話よりも、そっちのほうがわたしには怖かったです。

それと、穢れの概念がよくわかったのが収穫かな。
罪とは違う、異常な状態というのが腑に落ちました。
だから伝染していくのが、一番怖いのですね。なるほどー。

というわけで、本来の怖がるというところでなく、多分民俗学や社会学の方で楽しんで読んでしまいましたが、とてもおもしろかったです。

本作の出来事と同時進行で書かれた(笑)実話怪談の短篇集はこちらです。
鬼談百景 (幽BOOKS)
小野不由美
4840146519

『ローゼンヒルのばら姫 見習いプリンセスポーリーン』

ローゼンヒルのばら姫―見習いプリンセスポーリーン
円山 夢久 ひだか あみ
4337104011


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読了。

元気な行儀見習いの女の子を主人公にした、中世西洋風異世界ファンタジー。


レグルス国王の十二騎士の一人を父親に持つポーリーンは十一歳。叔母の住むファルコンヒル城で貴婦人修行をすることになった。騎士に憧れているポーリーンにとって行儀見習いは窮屈だが、あたらしい友だちもできて楽しい日々を送っていた。唯一の不安はドラゴンヒルの騎士ギルモアが部下を引き連れて暴力的に押しかけてくることだった。ギルモアはローゼンヒルのリアナ姫をファルコンヒルがかくまっていると主張し、彼女の身柄を要求しているのだった。



『リングテイル』の作者さんの、しばらくぶりの新作です。
児童書らしく平易でわかりやすい文章ですが、中世ヨーロッパふう異世界で、元気な女の子視点で描かれる騎士物語が素敵でした。

城で見習いをする女の子たち、男の子たちの生活がていねいに描かれているのもうれしかったです。

ポーリーンといとこのコーネリアのやり取りも楽しかった。

物語世界が円卓の騎士っぽいのですが、十二騎士の顔ぶれが人間だけではないのが興味深いです。他のメンバーが出てくる話も読んでみたいなー。

続きがあってもいいような終わり方だったので、シリーズ化されるのを期待しています。

『デカルコマニア』

デカルコマニア
長野 まゆみ
4103068124


[Amazon]

読了。

中世の文字で綴られた五百年前の革装丁の本には、二百年後の少年の一夏の出来事とそれにつらなる出来事が少年自身によって記されていた。2013年に生きる十四歳の少年が読み解いた、謎に満ちた不思議な家族の物語。


2013年U大陸の西にある王国ポルトラノ。新型インフルエンザに罹患した少年シリルは、先生から宿題として王国八百年委員会が募集しているタイムカプセルに搭載するテキストを書くことを提案された。かれは伯父の図書室でみつけた《デカルコマニア》という風変わりな活字で印刷された一冊の本を見つけ、記されている一族の物語に虜になった。そこでより理解するために家系図を作り始めたが、たちまち行き詰ってしまった。〈この家族の当代の長はD卿で、2013年現在63歳になる。彼は2196年に生まれた。〉



基調は少年のひと夏の出来事です。

それに、
港町。
マシュマロデイとよばれる風変わりな帽子を被るお祭り。
ハニーブロンドの少年との出会い。
灯台。
さくさくのレモンドーナッツ。
謎の女占い師に運命のパートナーを暗示される。
きらびやかな大道芸人。
港町を描いた絵。
印の指輪。
歪み真珠。
といったアイテムが追加されたり省略されたりして、人物と年代をかえながらいくども繰り返されてゆきます。

登場人物のすくなくとも一人は同じ人物のようで、でも確証はない。
なぜならば、この話はすくなくとも二百年の間にわたって起きた出来事だから、そんなことは普通に考えたらありえない。

しかし、ここには不可能を可能にするあるものが存在する。それがデカルコ。
時間旅行装置とよぶのは不適切で、時空に歪みを生じさせ、ある時代を現代に投影させる装置、であるらしい。

少年たちの前に現れるハニーブロンドの少年は、本当は何者なのか。
一度断絶したはずのドラモンド伯爵家の系図は、なぜつづいているのか。
なによりも、五百年前の本に書かれている文章がなぜ二百年後の少年の手によるものなのか。

少年たちの繊細なこころが受け止めたひと夏の出来事の、繊細さ、みずみずしさ、あやうさ、などが印象的な反面、そこに絡まった人物と時間の謎がとても複雑で、でも魅力的で、なんなの、ちょっとまって、いまのよくわからないーと思いながらもそれも楽しくて、どんどん読んでしまいました。

面白かった!!

最初のパート、つまり幾代ものドラモンド家に関わる少年たちの一夏の出来事は、ポーの一族を彷彿とさせる謎と郷愁をただよわせた雰囲気で、これはいつもの作者さんだなと思いながら読んでいました。

なので、そのつぎのパートでは、SF的なディテールの細やかさ誠実さ、それから女性たちの存在感がにわかに際立ってくるあたりがとても新鮮でした。

それに、すごいです、この伏線。
あちらにもこちらにも、まるで蜘蛛の巣のようにはられている伏線。

時は止まったままではなく、止まったように見えていたところでもきちんと流れていたのだなーと、しみじみするような結末でしたね。

ほんとにびっくりしたのが、いきなり登場したちいさなルビちゃんがすごく魅力的なことで。長野まゆみの作品でこんなに女性が好意的に書かれるなんて……。あ、そういえば『メルカトル』でもそんな気配はありましたが。このお話もほとんどは年上の女性、つまり母親に関するエピソードが多いのですが、それも以前の作者さんからすると驚くことなので……うん、感慨深いです。

ラストの文章まで、構成から文章から情景から地理的な設定から小物まで、細部までゆきとどいた緻密で繊細な物語を楽しみました。

途中で挿入される、言葉に関する考察も興味深かったです。
言葉は手で記されないようになるとどんどん間違いが許されるようになってどんどん曖昧なものになっていく。
しかし、それは文字で記されなかった口承の時代の言葉の捉えられ方に似ている、という感じでよいのかな。

言葉遊びも作者さんの特徴ですが、それもこの話できちんと生きていたなあ。

最後に残る感想は、レモンドーナッツおいしそう。食べたいわー、でしたw

さらっと流し読めるような本ではないですが、ちょっと頭を使うお話も読んでみたいという方におすすめです。

おんのべ枕

唐突ですが、「冒頭文だけでネット小説を選んで読んでみませんか」という企画「おんのべ枕」(公開期間:8/18~9/30)に参加させていただいています。

某リアル書店の企画のネット小説版ということです。

普段タイトルで選んでいる作品ですが、冒頭文だけ眺めてみるといろいろ想起させられるものがあって、面白いものですね。好みの文章を見つけるにはタイトルよりも有効かもしれません。


ここから個人的な話。

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20120817の購入

図書館の予約本を受け取りに行ったついでにリアル書店へ凸しました。

エロイカより愛をこめて 39 (プリンセスコミックス)
青池 保子
4253194591


以上、購入。

さっそく読みました。
やっぱりとっても面白かったー!
登場人物の平均年齢がどんどん上がってますが、おじさんたちの無軌道っぷりも楽しいです。おじさんどころか、おじいさんたちも大活躍w

番外の短編二本は抱腹絶倒まちがいなしです。
NATO情報部の部長がwww

エリザベス二世即位六十周年にあわせての伯爵の話では、祖先がワルだった事がわかりますw

『金星特急 4』

金星特急 (4) (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541682


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読了。

絶世の美女の花婿になろうと行き先不明の金星特急に乗った少年と男たちの戦いを描く、サバイバルサスペンス冒険小説?  シリーズ第四巻。


絶世の美女金星の花婿になりたいものは金星特急に乗りなさい。選ばれれば栄耀栄華は思いのままになる。そんな噂に集まった男たちは東京駅にあらわれた金星特急に乗り込んだ。行き先不明の列車は途中の停車駅で乗客に試練を課し、どんどんふるい落としてゆく。しかも、乗り遅れたものは樹になって死んでしまうのだ。金星に恋する少年・錆丸は、凄腕の片目の男・砂鉄、容姿端麗な騎士ユースタスと道連れとなり、真臘、吐蕃と幾多の試練をくぐり抜けてきた。候補者たちは最新の停車駅で、戦闘部族の月氏の幕営地に招かれ、入団試験を受けることになったが――。




すんごく、面白いです!!

あらすじは、あらすじといいながら二巻までのあらすじっぽい……三巻のことを書くとネタバレしすぎる。
緻密に配された伏線があちこちで複雑に絡み合い、起伏を生んで謎が深まり、ぐいぐいと話に惹きつけられていくので、あまり細かいことは書けないのです。

えーと、自分の整理用に書いておくと、この世界は未来の地球なのかなーと想像していたのですが、むしろ平行世界というか、改変世界っぽいかなという気がしてきました。

理由は、バベルの一族の存在と設定が明らかになったから。

でもって、SFなのかなと思っていたのですが、やっぱりファンタジーなのかなというほうに傾きつつあります。

表面的に見ると、脱落者は即死するわ、傭兵や軍人やヤクザが出てくるわな物騒な展開で、主人公が殴られたり刺されたり売り飛ばされたりと、結構暴力的でシビアな世界のような気がします。

しかし、キャラクター小説的な側面もかなり濃厚なので、そこにあたたかみを感じられて救いがあったりなかったりします。

とくに月氏が登場してから義理と人情の気配が色濃くなったような気がします。
砂鉄の同僚の鎖たちの個性が際立ってて、かれらの掛け合いだけでも読んでて楽しいです。

謎の女性金星についての情報も次第に増えてきました。

前巻から行方不明になっていた砂鉄の妹・彗星が登場し、女性側から見た金星特急現象? のことも判明してきました。

言語学者だというロヴェレート王国のアルベルト王子の登場も重要なワンピースでしたね。純国語普及委員会って名称からうけるイメージと反対の活動をしてるのが興味深かったです。

といっても、謎は余計に深まるばかりなんだけどw
新たな事実がさらに謎を呼ぶというのがこの話のとてもおもしろいところです。
ミステリ的な展開というのかな。

いまのところ、消去法的な考えで金星特急は宇宙には行かないのかなーということがわかっただけのわたしです(苦笑。
いや、なんとなく銀河鉄道みたいなのを想像しちゃってたものだから……。

この巻で特筆すべきところは、イスタンブールが舞台になってる! てとこかな、あ、個人的にですが。

それと、白の一鎖・夏草さんにはたいそう共感しておりますwww
白のコンビは読んでいて楽しいです。

砂鉄はあいかわらず怖かっこよくて、ユースタスはけなげ路線まっしぐらですね!
錆丸の成長には目を見張るばかりです。

つづきを手に入れてしまったので読んでしまいたい欲求に駆られています。
完結するまでとっておいたほうがいいようなきがするのだけど……読んじゃうかも、しれない。

金星特急 5 (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541771

『銀河のワールドカップ』

銀河のワールドカップ
川端 裕人
4087748073


[Amazon]

読了。

小学生チームのコーチとなった元Jリーガーが、子供たちと理想のサッカーを創りあげていく、地に足のついたサッカー小説。
NHKアニメ『銀河へキックオフ!!』の原作その一。


花島勝は求職中。就職活動に疲れて公園で呑んだくれていたある時、小学生たちのサッカーに視線を奪われる。かつてJ2のチームをJ1へと飛躍させる原動力となったプロ選手で、子供たちの指導をしたこともある花島の鼻先で展開されているミニゲームは、小学生のレベルを超えていたのだ。つい転がってきたボールを蹴り返したところゲームに参加させられた花島は子供たちの目に止まり、チームのコーチになってくれと頼み込まれる。かれらのチームは桃山プレデター。抜きん出た才能を持ち悪魔と呼ばれる三つ子がコーチと衝突したせいで空中分解しているというのだ。



アニメを見てたのですがオリンピックの特別編成のため放送がお休み中。
続きが気になって、つい読んでしまいました。

あー、面白かったー!

淡々としたフラットな文章でどんどん話が進んでいく、スピーディーなサッカー小説です。
サッカー界の現況を踏まえたリアルな舞台で、作者の思い描く理想のサッカーを現実感覚を消し去ることなく追求していくようなお話だったと思います。

なんとなく、雰囲気的にはノンフィクション。
子供たちの能力値の部分と、八人制サッカーの大会が大きなフィクションなんだろうな。

冒頭の視点は元Jリーガー花島勝ですが、必ずしもかれが主役というわけではなく、際立った個性の三つ子がメインというわけでもなく、下手くそなキャプテンにもドン臭いぽっちゃりさんにも、勝ちゃんの彼女にも、大人も子供も登場人物はすべてに物語がある、いわゆる群像劇です。

一つの出来事に対するそれぞれの視点でのそれぞれの思い、それぞれの考え、それぞれの視野が、あたりまえだけどみんな違っていて、それが同時進行なのが、リアリティーを増してますね。それも、なんとなくノンフィクションぽいのかな。

日本サッカーの現況というか、現場の人達の考えてることがリアルで、これは取材や体験から得た物が多いんだろうなーと、サッカーコラムから著者を知ったわたしには納得でした。

ふつうの11人制のサッカーだけでなく、ブラインドサッカーやフットサル、八人制やビーチサッカーなどいろいろと取り上げてあって、それがすべてお話に絡んでくるあたりも面白かったです。

サッカーを数学的な見地から分析するのも、面白かった。

さらに、2005年執筆当時のW杯関係や、レアル・マドリーのスター選手がわらわら出てくるのも楽しいです。
名前は変えてあるんですが、分かる人にはすぐに分かるでしょう。わたしは三人くらいしかわかんなかったけどw

というわけで、情報がかなり盛り沢山なので小説としてはちょっと駆け足気味で、そのあたりもノンフィクションぽさを感じる要因だったかもしれないです。

が、そんなことはあとから考えたことで、読んでる時はどんどん大きな方向に転がってく話にドキドキワクワクしておりました。

とくにプレイシーンの臨場感には熱くなりました。
文章はつねに冷静なんだけどそこだけ描写が分厚いの。
ああ、サッカー小説を読んでるう! という満足感が味わえました。

ラストまで爽快に駆け抜けたって感じですね~。

で、アニメの今後の展開もわかってちゃったわけですがw
大丈夫、アニメは原作のそっけない部分をかなりふくらませてドラマが豊かになってますから。
子供たちのキャラクターがとくに表情ゆたかで、それは子供向けなので当然ですけども、コーチの物語も端折らずに描いてきてますし、や、さすがにあれは省略されるかもですが、これからも期待しています。

まだプレデターに参加していない青砥くんと杉山くんの登場が待ち遠しいです。
あと、玲華ちゃんの劇的アフターにも注目です!

わたしはハードカバーで読みましたが文庫化されてます。
銀河のワールドカップ (集英社文庫)
川端 裕人
4087463001


原作その二。こちらは女の子メインらしいです。
こっちも読みたいw
風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ (銀河のワールドカップ) (集英社文庫)
川端 裕人
4087468062



そしてアニメのDVD。アニメも面白いです。NHKなので再開後に再放送をするかもしれません。
銀河へキックオフ!!Vol.1 [DVD]
B00852NC00

20120808の購入

ちょうどギフト券を頂いたタイミングで四巻を読み、途中でつづきがきになって我慢できなくなり、ぽちりしました。

金星特急 5 (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541771


金星特急 (6) (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541801


以上、購入。

拙サイトよりご購入くださった方々に御礼いたします。
どうもありがとうございますm(__)m

だがしかし。
六巻で完結というわけではない、のですよね。
完結してから一気読みしたほうがいいような、鳥頭なわたし的には(汗

『宝石箱のひみつの鍵 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』

宝石箱のひみつの鍵 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ)
青木 祐子 あき
4086016486


[Amazon]

読了。

ヴィクトリア朝時代の西洋を舞台に、仕立て屋と公爵家の跡継ぎの恋の行方を描く、時代ロマンス。シリーズ完結後の番外短篇と同時代を舞台に詩人をみつめる女性を描く中編を収録。


一年目の宝石箱
灰と青のマズルカ
鏡の家の恋人
恋のドレスと湖の王子様 まんが/あき
あとがき



とても楽しく読んでいたヴィクトリアン・ローズ・テーラーの本編完結後の番外短篇集です。
とはいうものの、シリーズは三作のうちの二作だけで、残りは独立した中編。
そしてイラストレーターさんによる漫画という構成です。

冒頭の話はシャーリーとクリスの新婚さん生活。
相変わらずシャーリーがクリスにめろめろでいろいろと可笑しいです。
行き違いの原因はつねにシャーリーの余計な一言というのが……www
クリスの言葉も足りないんだけど、彼女のは信念ある沈黙なので、やはりシャーリーがいろいろと間抜けなんだよねえ。
しくじったとすぐに気がつけるあたりが、成長の証なのでしょうw

二作目は、アディルさんがパートナーを見つける話。
ジャレッドとの恋の顛末というふうにも読めます。
このふたり、ふたりともクリスが好きなところが共感しあえるところなのかな。
感情を表に出さないもの同士、クリスの聡明さで救って欲しかったふたりなのかもしれません。

ユークリッド王子が東欧の公国出身だからタイトルにマズルカなのかな。
東欧の小国というと、歴史的にはこれから困難ばかりが続くようで、アディルさんのその後が案じられます。

いっぽう、なぜかジャレッドと行動を共にしているアイリスには充実した人生が暗示されたような気がしました。

この話が別シリーズに関係しているらしいというので、そっちを読んでみたくなったりしました。

そして、最後の中編。

なぜかイングランドの桂冠詩人、ワーズワースの話です。
というか、ワーズワースを見つめ続けるひとりの女性の話ですね。
この話はこの話で読み応えがありましたが、シリーズの最後にもっとも長い話として関係のない話が収録されていると気づいた時には、がっかりしました。

読後感も、ヴィクロテに期待しているものとはかなり異なっていたので、うーん。

それでわたしは、作家読みではなくシリーズ読みをしてたんだなあとあらためて気がついた次第です。

もう少しビターなものを求めていた若い時に読んでいたら、それほどがっかりしなかったかもしれません。
なんとなくダフネ・デュ・モーリアの『レベッカ』とかの女流サスペンスを彷彿とさせる雰囲気は、シリーズの途中から濃厚になってきていたし、それはわたしにとってはけっこう面白い要素だったので。

だから、ヴィクロテの終わりに載ってなければ……と残念です。
もしかして、ヴィクロテのその後を暗示して載せてるわけじゃないですよねえ?


シリーズ開幕編はこちら。
恋のドレスとつぼみの淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (ヴィクトリアン・ローズ・テーラーシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 あき
4086007169


関係があるらしいシリーズの開幕篇。品切れですが。
忘れられた花と人形の館 霧の街のミルカ (霧の街のミルカシリーズ) (コバルト文庫)
青木 祐子 佐倉 汐
4086012197


ついでに。
レベッカ〈上〉 (新潮文庫)
ダフネ・デュ・モーリア 茅野 美ど里
4102002030

『ハリー・クラーク絵 アンデルセン童話集 上』

ハリー・クラーク絵 アンデルセン童話集 上 (文春文庫)
アンデルセン ハリー クラーク
4167812045


[Amazon]

読了。

19世紀アイルランドのステンドグラス作家ハリー・クラークの挿画による、「アンデルセン童話集」上巻。荒俣宏訳。

収録作品は以下のとおり。


ほくち箱
大クラウスと小クラウス
おやゆび姫
旅の道連れ
皇帝の新しい服
幸福の長靴
丈夫なすずの兵隊
父さんのすることに間違いなし
コウノトリ
みにくいアヒルの子
ひつじ飼いの娘と煙突そうじ人
モミの木
豚飼い王子
雪の女王 七つの話からできている物語



とにかく、挿画に惹かれて購入した本でございます。
今時のラノベのキャラクター絵とは全く違う、ファンタジックでマジカルな雰囲気のアートな挿画にめろめろしました。

収録作はアニメや子供向け絵本などでほとんどストーリーを知ってるものばかりでしたが、意外に原作を読んだことがないのですね。

現代的な感覚で読むと「えっ、そんなばかな!」といいたくなるような展開がけっこうありました。

たとえばおやゆび姫の献身的なつばめさんとのエピソードとか。

でも、幸福の形が社会的にきっちりと決まっていた時代的な背景を考えると、こうなるのが正解なのだろうなーと思い至ったり。

あと、ストーリーに伏線というものがあまりないようです。
わりと単純に、結末がぷちっと切れてしまうものもいくたりかありました。
ごくごくシンプルな童話ってこういうものなのかもしれないですねー。

それから、千夜一夜と似たようなエピソードが見受けられたのも興味深かったです。
もしかして、アンデルセンは影響を受けていたのかな。

わたしが楽しかったのは「雪の女王」で、主役の少年少女より、少女を助けるいろんな女たち。
そのなかでもとくに異彩を放つ野性的な山賊の女の子が大好きです。
恩返しするトナカイさんにもも少し個性があれば楽しいのになー。

以前、岩波文庫版で読んだ「沼の王の娘」の入ってた本は、無意味にキリスト教要素が入り込んでくるのに違和感があったのですが、それはこの本にはなかったです。もしかして、イギリスで出された版から起こした訳文だからでしょうか。

素敵な挿画に彩られた童話を、いろんな意味で堪能いたしました。
下巻も入手済みなのでその内に読みます。

ハリー・クラーク絵 アンデルセン童話集 下 (文春文庫)
アンデルセン ハリー クラーク
4167812053

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『金星特急 3』

金星特急 3 (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541615


[Amazon]

読了。

絶世の美女・金星の花婿となるために命をかけて乗る列車・金星特急。しくじれば死に直結する試練の道行で乗り合わせた男たちの変化していく関係を描く、未来冒険サバイバル(SF? )。シリーズ第三巻。

列車は中央アジアへ。

そこで待ち受けていたあらたな試練とは、現地の傭兵集団・月氏の入団テストでした。

前回は山越えの試練だったので体力勝負でしたが、今回は戦闘力と機転の勝負?

意外なことに、ここで砂鉄の過去と金星特急に乗った経緯が明かされます。
こんなどろどろしたファミリードラマが砂鉄の背景に横たわっていたとは、まったく思わなんだでございます。

それと金星特急って男にしか関係ないのだと思ってたけど、女にもなにかあるらしいということがわかってきたり。

新しく登場したキャラクター「殿下」のおかげで、白バベルと黒バベルの名前の由来から、未来っぽいとしかわからなかったこの世界の設定がすこしだけ見えてきたりもします。

殿下絡みではユースタスの背後関係もわかってくるし、だんだんとスリルとサスペンスで引っ張ってきた話に深みが出てきて、そのかわり物語の範囲が特定されてきた感じですね。

というわけでストーリーも抜群に面白いのだけど、キャラクターの個性がしっかりと立ってるのもこの話の魅力です。

暗い過去を背負った一匹狼・砂鉄の魅力は言うまでもなく(笑)
不幸な生い立ちながらも屈託の無い錆丸少年のあかるさと意外性もたのしいし(笑)

しかしなんといっても今回のわたしてきな目玉は、美貌の大食い騎士・ユースタス(笑)
なんというか……とってもかわいい!
かわいくてかわいくて、読みながら何度もにまにまと笑ってしまいました←

月氏の幹部たちもさまざまな曲者ぞろいで、読んでてほんとうに飽きない。
ストーリー小説としてもキャラクター小説としても面白くてたのしいシリーズです。

さて、今回はわたしにしてはめずらしく四巻も手に入れているのです。
さっさと続きを読みたいのだけど、さらにその続きを入手してからのほうがいいかしらとちょっと悩み中。

金星特急 (4) (ウィングス文庫)
嬉野 君 高山 しのぶ
4403541682