『霧の王』

霧の王
ズザンネ・ゲルドム 遠山 明子
448801304X


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読了。

近世ヨーロッパ風異世界箱庭ファンタジー。


もうじき十四歳になる孤児の少女サリーは、館の厨房の下働き。友人は猫のカルトリーナ、その夫のルーアン。日々の労働のあと、ひとりでこっそり図書室に忍び込んで司書のウールの指南のもとに本を読むのが楽しみだ。ある夜、侍従のクリコールがとつぜん催すことにした晩餐で、サリーはひょんなことから給仕係りをつとめるよう命じられてしまう。普段は目にすることのない貴人たちの間で緊張するサリーに、侍従は欲望の目をむける。彼女を救ったのは、館の医師コルベンだった。



館が世界のすべてで、他には何も知らない少女サリーが、紆余曲折ののちに自分の置かれた複雑な状況を次第に理解していくというお話。

読みはじめて気がついたのですが、ドイツのファンタジーでした。
理由がよくわからないのですが、わたしはドイツのファンタジーがなんとなく苦手なんですよね。

でも、この本はサリーの日常生活がこまやかに描かれているところなど、苦手意識が頭をもたげることもなく、わりとスムーズに読みすすめられました。

最後の種明かしとか、話の収め方とかは、やっぱりドイツファンタジーだなあと思わざるを得ませんでしたが。

観念的というか、論理的というか。
魂と肉体ではなく頭と理論でつくった世界というか。

サリーを視点にしたおかげで話のまとまりはよくなったけど、狼の罪と苦しみが他人事になってしまった気がします。

作者のお気に入りがあれであることはよーくわかりましたがw

物語がどんどん本の中に入れ込まれていく冒頭の構造は、面白かったです。
って、エンデの有名作品もそんな感じでしたっけね。

館の日常生活の描写、とくに果樹園のシーンはすてきでした。

猫とか鼠とか狼とかの種族が、どういう設定なのかが気になりました。
同一世界を舞台にしたお話があるらしいので、それを読むとわかるのかもしれません。

『奇譚を売る店』

奇譚を売る店
芦辺 拓
4334928897

[Amazon]

読了。

古本屋で買ってしまった本(あるいは資料)のために、思わぬ事態に巻き込まれる作家の災難を描く、怪奇不条理小説連作?短編集。

収録作品は以下の通りです。


『帝都脳病院入院案内』
『這い寄る影』
『こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻』
『青髯城殺人事件 映画化関係綴』
『時の劇場・前後篇』
『奇譚を売る店』



面白かったー。

テイストは古式ゆかしい昭和日本の推理小説。
精神病院から少年探偵団、華やかなりし頃の銀幕の裏話、名のみ知られた奇怪な大河小説まで、古本屋でうっかり手に入れた本がもたらす世にも怪奇な物語が連綿とつづられています。

読みながら脳裏に浮かんでたのは高橋葉介『夢幻紳士』です。
じつは、わたし昭和の推理小説をほとんど読んでこなかったので、江戸川乱歩の少年探偵団ですら部外者として想像するしかないのですけど、『夢幻紳士』だけは大好きなのです。

この本のまとうものは、あのどうにも怪しく不条理なモノクロームの世界、に似ている気がします。

だからお話はたいてい主役である「わたし」のお約束パターンで終わるわけですが。

なんと、この話、ひとつおわってもまた次の話が「わたし」で始まるじゃないですか。

いったい、この「わたし」は何者なんだろう、この話じつは並行世界の話なのだろうか、いや、でてくる古本屋は同じとは限らないし、と短編の枠外のところでも謎が進行するあたりが興味深かったです。

それにしても、古本屋を出て「わたし」がつぶやく


 ——また買ってしまった。



のなんと身につまされることでしょう。
本屋に入ると何かしら購入して出てきてしまう本読みの人なら、深く感情移入できるのではないかと思う次第です。

20131018の購入

健康診断に行ったところ、同じ建物に本屋があったので寄り道しました。

ちはやふる(12) (Be・Loveコミックス)
末次 由紀
4063803090


以上、購入。

またしても新刊じゃなくて申し訳ない。
すっごく疲れたので元気の出るとわかってる本を買いたかったのです。
この巻のストーリーは先にアニメで見たけどやっぱり面白かった。
へこたれた心身にエネルギーが染みこみました。

表紙のしのぶちゃんが素敵v
クイーンの楽しみが鳥人間コンテストってwww
たのしいなあ。

20131008の購入

発売日だったのでリアル本屋に突撃しました。

百鬼夜行抄 22 (Nemuki+コミックス)
今 市子
402214131X


以上、購入。

まんがは発売日に配本されるから楽です。雑誌扱いだからでしょうか。

今回、箱入り特装版というのも同時に発売されてまして、どちらにしようか散々迷ったのですが、お財布と相談した結果こうなりました。

あとから、有名選者と著者本人によるセレクション本というのは捨てがたいオプションで、一度は読んだものだから、と考えたけど、やっぱり買っておけばよかったかなあと未練たらしく思っております。

百鬼夜行抄 22巻 特装版 (Nemuki+コミックス)
今 市子
4022141328

『雲の王』

雲の王
川端 裕人
4087714551


[Amazon]

読了。

『銀河のワールドカップ』の作者さんの、気象ファンタジー。


気象庁に勤める一職員・南雲美晴は、離婚してひとりで小学六年の息子を育てていた。
日ごろから空を眺め、風のにおいをかんじて五感で天気を予想する美晴は、ある日、自分が熱と風の動きから気象を読み取くものたちの末裔であることを知る。
「外番のつとめを果たせ」と一族の長老から命じられた美晴は、不本意ながら職場でも外番として任命され、通常業務と並行してゲリラ豪雨予報の研究チームに組み込まれてしまった。初めての実証観測で地表から立ちのぼる水蒸気に世界樹を見た美晴は、その後に起きるダウンバーストの兆候を発見した。



冒頭の台風の目の描写からスリリング。
気象のいろんな現象が体感的にわかりやすく解説されていて、とても面白かったです。
気象って当たり前だけど上空の大気の流れだけじゃなく、その土地特有の地形やなにやらに密接に関係してるんですね。
なのに、大気の流れの大元は地球全体で繋がっていて、自転によって傾いた風の流れが生み出す雲の帯がつぎつぎに東へと流れてくる。

想像するだけでわくわく。

日ごろ気象情報を見るのが趣味のわたしにはたいそう興味深いお話でした。
面白かった!

この面白さは科学読み物の面白さです。

じつをいうとファンタジーとしてはちょっと物語に熱が足りない感じを受けました。
読み手と物語、読み手と主人公のあいだに、距離がある。
主人公にはちゃんと彼女の物語があってそれを中心に展開しているのにもかかわらず、気象現象を読み手に分かりやすく説明するための道具のように感じてしまう。
たぶん、作者さんの視点や文章がとてもオープンだからだと思う。
文章の質というか、書き手の視点が、ファンタジー向きじゃないのかも。

じつは、ファンタジーってとてもプライベートなものだったんだなと、気がつきました。

余談。
心ならずも美晴の同僚になった気象オタクの黒木君、いい味出してます。

この作品、映像化すると面白いんじゃないかな。
アニメが一番むいてると思うんだけど、主人公が子持ちのアニメって需要があるのかなw