20131127の購入

なんとか人並みに歩けるようになってきたのと、おんなじ所ばかり巡ってたので飽きてきたのとで、いつもは行かない別方向行きのバスに乗ってみました。

たどりついた先で本屋に寄るのは当然でしょう。

黒猫の刹那あるいは卒論指導 (ハヤカワ文庫JA)
森晶麿 丹地陽子
4150311358

明治失業忍法帖 巻ノ1―じゃじゃ馬主君とリストラ忍者 (ボニータコミックスα)
杉山 小弥花
4253097146


以上、購入。

本命は見つからなかったけど、対抗を見つけました。

黒猫シリーズはあっというまに最新刊までたどりついてしまいました。
このあと、しばらく寂しいんだなと思うともうちょっとゆっくり読めばよかったと後悔したり。

しかし、本屋でほくほくしたあと、バスの時刻表を見たら鼻の差で一本逃し、次が来るまで60分と表示された(携帯で検索できるのです)時には、思わずへたり込みそうになりました。

お腹が空いたからって途中でのんびりお茶をしている場合ではなかったのだ……。

『ゼラニウムの庭』

ゼラニウムの庭
大島 真寿美
4591130754


[Amazon]

読了。

明治末期に生まれた祖母の昔語りを、作家になった孫娘が書き留めた手記、という形で表される、家族の秘められた謎と歴史の物語。

面白かった、と同時になんともいえない読後感の残るお話でした。

語り手・るみ子が作家になるらしいと知った祖母・豊世が、「るるちゃんは書く人としてうまれたのだから、このことを記しておいて欲しい」と言って語り出した、彼女の一生。

それは、戦前からつづくある一家の歴史であるとともに、一家に生まれた双子の娘、豊世と嘉栄の、不思議で恐ろしく悩ましい、隠された物語だった。

豊世の話に自分が見聞きしてきた事実を照らし合わせ、推測を交えながらるみ子はつづり出す。
だれにも読ませる予定のない、ただ書きおえることだけを目的とした、長い記録を。


——というようなお話です。

時代が時代なので、途中に第二次世界大戦が挟まり、おさだまりの苦労話なども挟まってくるのですが、それよりも双子にあたえられた境遇の違いがドラマティックかつ息苦しいまでにリアルで、心理的なサスペンスのような雰囲気を醸し出しています。

設定はとっぴだけれど、ディテールのこまやかさと丁寧さ、こころのひだをなぞるような描写が話を絵空事と感じさせません。

架空の「もし」を設定して話を展開させるということでいうならば、この話はSFに分類されるのだろうか。
わたしとしてはファンタジーとは言いがたい。
前半は伝奇物として読めるけれども、最後まで読むとそうとも言いきれない。
ふしぎな物語だなあと思いました。

嘉栄という存在に、豊世をふくむ一般人がいだく複雑な感情がこの作品の肝かなー。

しかし、後ろ半分を読むとこれが、どうもわたしには萩尾望都の某作品へのオマージュとしか思えないんですよね。
あとは『メトセラの子ら』とかが思い浮かびました。

もしかして、作者さんはこちらを先に構想していたのかもしれない、なんて勝手に考えてみたり、しました。

そのせいで、なんか話の前半と後半で受ける印象ががらっと変わってしまったのですが。

着地点がかなり俗世っぽいのが、わたしとしてはちと残念でしたが、さばさばしていて、これはこれでよかったのかもしれないです。

『黒猫の遊歩あるいは美学講義』

黒猫の遊歩あるいは美学講義
森 晶麿
4152092483


[Amazon]

読了。

気鋭の若き美学者、通称黒猫と、その付き人を仰せつかる学者の卵わたしとが会話により日常の謎を読み解く、短編連作ミステリ。

第一回アガサ・クリスティー賞受賞作。


第一話 月まで
第二話 壁と模倣
第三話 水のレトリック
第四話 秘すれば花
第五話 頭蓋骨のなかで
第六話 月と王様

第一回アガサ・クリスティー賞選評



面白かったです。

美しくなければ推理など意味はない(うろ覚えですたしかこんなかんじ)と言いきる若き大学教授・黒猫と、その付き人でいまは博士課程の学生わたしとの会話で話が進む、日常の謎系ミステリ。

謎と謎解きのためにつくりあげられた世界とストーリーなので、リアリティーを求めると当てが外れますが、黒猫が散歩するように自由自在に展開する美学による解釈と論説がかなり面白くて、物事はこんなふうに読み解くことも出来るんだなあ、なるほどーとひたすら感心してしまいました。

ひとことでいうなら、頭いいなあ。

一般人代表として、雑魚を強調してあらわれる語り手「わたし」ですら大学の博士課程に在学する学者の卵なので、黒猫との会話は庶民のレベルからいうと浮世離れしている感ありありなのですが、それでいて、ミステリの謎解きとしては納得できるというか、すくなくともわたしは納得しました。

現実的なことを言うなら、事件そのものがとっぴなものもあるし、ほとんどが実況検分だのの、聞き込みだのの現実に即した捜査などはせず、あくまでも机上の空論ではあります。

しかし、実際、事実を突き止めることはそれほど大切なことだろうか、とも最近のわたしは思ってたりするわけです。

事実を知るのも大変労力のいることですが、しかし事実を知っても納得できなければ、それは当事者にとっての解決にはならないのではないか。

必要なのは納得できることで、それはべつに厳密に事実に即していなくてもいいのかもしれない。

そして、辻褄の合った解釈、できれば美しい解釈は、納得するためには重要なのかもしれないと。

黒猫の学術的なきらめきをおびた言葉による解釈を、「わたし」とともに受けとめることが、このミステリの楽しみ方なんだと思いました。

ところで、「わたし」がエドガー・アラン・ポオを専攻しているため、話はどれもポオの作品を背景に進みます。

それぞれの冒頭に下敷きとなった作品の解説が付されているのですが、これを読むとやはり作品そのものを読みたくなってしまいます。

なので、解説を読むたびに作品を探して予習をする、ということをやっていたため、一冊読み切るのにずいぶん時間をかけてしまいました。

手に入らなかったものは予習なしで読んでますし、それでもちゃんと楽しめたので、べつにそんなことはしなくてもいいのですけど、まあ、自己満足です。

単行本を読みましたが、文庫版が出た模様です。
黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)
森 晶麿
4150311285


シリーズの続きはこちら。
黒猫の接吻あるいは最終講義
森 晶麿 丹地 陽子
4152092971

『スロウハイツの神様』上下巻

スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)
辻村 深月
4061825062


[Amazon]

読了。

クリエイターをめざす若者たちが共同生活をするスロウハイツを舞台にした青春ミステリ小説。

すごく面白かったー。
事件が起きて、それを解決するというスタンダードな形のミステリではなく、登場人物の複数視点でそれぞれの死角になった部分が謎になるタイプのお話です。

新進気鋭の女性脚本家、赤羽環の誘いによって古い旅館を改造した下宿スロウハイツで暮らすことになった若者たち。

漫画家を目指している狩野壮太。
映画監督修業中の長野正義。
正義の彼女で絵を描いている森永すみれ。
環の長年の親友だった円屋伸一。

そしてかれらに多大な影響を与えてきた若きベストセラー作家チヨダ・コーキ。

クリエイターを目指すものにとっての憧れであり目標である「神様」のようなコーキを間近にして、懸命に努力し、焦り、苦悩する若者たちのかかわり合いと心情が、鋭くかつセンシティヴに描かれていて、読んでいてぐっとひきこまれました。

自分は何者かになりたい、なりたいから努力している、けれど本当になれるのだろうか。
そんな中途半端な境遇にあるお互いに共感しつつ、それぞれに事情も資質も異なる人間だから、すべてを完全にわかりあえることも、受け入れられることもない。

そして、最後のところでは自分だけの何かをつかまなければ先へは行けない。

謎はあちこちにちりばめられていますが、話はとりあえず謎を提示したままで進んでいきます。

視点が切り替わるたびに、あらたな人物によりあらたな情報が得られる、そんなかんじ。

上巻の終わりで初めて事件らしい事件が起きますが、そこまではふつうに青春群像劇として読んでいたくらいです。

しかし、ラストの大どんでん返しには参った!
初めからわかってたはずなのに、そこにこんな関わりが秘められていたとは思わなかった!
思わず上巻から読み返したくなりました!

あんまり書くとネタバレなんでこの辺でやめときます。

ときにトゲも毒もある後味の悪い話になりそうな話を、ほんわりとした存在感で救ってくれているチヨダ・コーキことコウちゃんが、一番リアリティはないけれど一番この話で重要な人物でした。

なにしろ、神様なんだもんねえ。
神様にぴったり張り付いてる編集者の黒木さんは悪魔かもwww

環と桃花ちゃん姉妹のエピソードには泣けました。本当に泣けました。

スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)
辻村 深月
4061825127


わたしは新書で読みましたが、とうに文庫版が出ています。

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)
辻村 深月
406276556X

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)
辻村 深月
4062765578