覆面作家企画6 Gブロック感想

覆面作家企画6、Gブロックの感想です。

Gブロックにいらっしゃるお知り合いは、みずきあかねさんですね。
よし、がんばるぞ!


G01 いきたいと希う

お盆の送り火のお話?

人の寄りつかない雑木林の中でヒロインが見つけたのは、透んだ青い湖と、不思議な少年たち。

辛い気持ちをつい吐き出してしまったヒロインに、変わらぬ態度で接してくれるふたり。

そのことでやすらぎを覚えた途端にあきらかになる事実に、ああ、やっぱりと思わせるのは、湖の美しさが現実から離れていたからでしょうね。

ただひたすら避難所を求めていたヒロインが、祖母との会話でふたたび追いつめられるシーンに胸が詰まりました。ラストのヒロインの選択にはほっとした。

ところで、冒頭からしばらく、なぜか読み手はヒロインが小学生くらいなんだと思い込んでまして、湖の少年たちもそれくらいなんだと思ってました。身長120〜130センチ位? それくらいのイメージで子供たちの脳内イメージが展開されていたので、途中で高校生だと気づいてから軌道修正に手間取りました(汗。

しばらくして、少年二人が某アニメの登場人物に似てるかも、と思いつき、ようやく新たな映像が結ばれまして、たすかりました。←なにがたすかったのか。すみません、読解力が貧困で。
というわけで、わたしは勝手にリサ、ナイン、トウェルブの三人のイメージで読ませていただきました。ホントに勝手なことで申し訳ありません。

ところで冷やしたスイカはお供え物か何かだったのかな。手に取れるのか取れないのか、食べられるのか←、気になる。


G02 火宅咲(わら)う

都市伝説風怪談?

終電間際の電車の中で携帯電話に向かって女が話す世間話、の「行きつ戻りつ、同じ場所を何度も通りもたもたと進んだ」という文章が好きです。←のっけからピンポイント。

てっきり三人称神視点の話だと思っていたのが、ラストに語り手が現れて、その語り手にひえーーーっ! となりました。

え、え? もしかしてこれ、○が語ってたの?
それにしては彼女のこと知りすぎてないですか、噂で○のことを語られた途端、耳にした人物の個人情報が○に筒抜けになるってことですか? というか、○人格持ってる? すでにあやかし状態? それともなにか憑いてるの?

……怖い……怖いよう……。


G03 これから朝が訪れる

ひどく孤独な生い立ちから、社会とも人とも関わることを避けるように生きている女の子の話。

感じる痛みを無視するために自分の感情を麻痺させてしまうことを覚えてしまったような、淡々とした語りに、かえって痛々しさ強くを感じました。

感情を押し殺した後は自分を自分と認識することすら止め、まるで獣や自然現象のように過ごしていく日々。
そんなときに出会った同じくらいの年の女の子エレナによって、女の子はレイラという名前を取り戻し、彼女の日々は人間のものへと変化を強いられます。

野生動物のように暮らしていたレイラが、警戒しつつも次第にエレナと関わってなじんでいき、それにつれて麻痺させていた感情がすこしずつ芽吹いて、孤独が辛くなり、エレナとのつながりを捨てきれない、しまいにはすがってしまう姿に、人間はやっぱりひとりでは生きてはいけないんだなあと思いました。

ううう、これ泣ける……。

エレナのおばあさんの態度がとても事務的だったのが哀しかったです。
おばあさんは、もしかしたらエレナの置かれている立場も知らないのかもしれないですが。

エレナがレイラに近づいた動機や関わりつづけた気持ちは、褒められたものではないけれど、それでもエレナがレイラといるときに感じていたものは軽蔑だけではないと思います。そのことを認めてエレナはレイラと対等になろうと決めたはずだから。そうしてレイラに会いに来たのだと思うから。

そうです、ふたりの朝はこれから、これから訪れるのです!←いい雰囲気が台無し。


G04 蝋燭

孤島の伝説に惹かれてボートで夜の海に出た男女。遭難した末に孤島で展開される復讐劇。

ミステリアスな少女と下心ありありな男の造形に、冒頭から不穏な気配が漂ってました。
これはきっと何かがあると思っていると、その期待を裏切らないフラグ立ちまくり展開www

読む限り、酷いやつにしか思えない男なんだけど、一見すると魅力的なんでしょうね。
外見とか態度とかで内心を取り繕うすべにたけているのか、あるいはたんに何にも考えてないだけ?

しかし、少女のほうもここまで過激な行動に走るのかと驚きます。
きっとお姉さんのことをすごくすごく好きだったんだろうなあ。
さらに、自分もあんまり幸せな環境ではないのかなあ。
ほかのことに目がいかないってことは、そういうことなんだろうなあ。

ラストのあいまいさに余計に不穏さが募りました。
まさか、彼女まで……いやいや、そうでないことを祈ります。

ところで、孤島の伝説ってなんだったのかな。伝説好きなので気になる。


G05 金糸雀に雨

灰色の街にやってきたサーカス団。背中に金の炎でできた羽を持つ少女。青い瞳の少年。

貧困や差別に苦しむ少年少女が、それでも生きていくためのなにかを見つけ出す物語を、詩的で品のある文章で描いていて素敵でした。

金糸雀、よだか、鱗といった印象的な名前や、グリの街のたたずまいなど、ストーリーを彩るあれこれに独特の雰囲気があって、いいなあ。

まったく関係ないけど、サーカスのチケットがとても気になりました。これ、紙なんだよね、たぶん、団長がまき散らしてるから。それって、手書きなのかな。印刷したのかな。気になる。


G06 ファレと変な魔法使い

国を守護する魔法使いと、かれらに使役される妖精たち。
とっても可愛くて明るくて、ふわふわと楽しいお話でした。

神殿の蝋燭の炎から生まれた火の妖精ファレの語りが弾むよう。
てきぱき家事をこなす姿が目に浮かんできますね。火の妖精ってじつは有能なハウスキーパー?
ご主人のグレン様ラブのあまり変な魔法使いライマの面倒を見るべく送り込まれたファレちゃん、目にした屋敷の惨状に言葉とは裏腹に大張り切りな様子が笑えます。

このライマさん、まるっきり家事無能なヘタレ独身男そのままですねえ……www

それが一緒の布団で一緒に夢を見ただけで←なにげに思わせぶり、夢の中でもファレちゃんが活躍してくれて、それでこの顛末とは、なんという至れり尽くせり!

あげくのくどき文句に開いた口がふさがりませんでしたw おまえはハウルかwww

まあ、わたしはいいですよ、ファレちゃんがよければ、ええ、なんでもいいですよ←

このお話のこの語り口、これはみずきあかねさんではないかしらんと、わたしは思います。


G07 TOMOSU

かなり困窮した生活を送る女性のせっぱつまった現実の話……なのかとおもいきや!

なんだ、こりゃーーーーー!
思わずひっくり返りそうになりました。

この商品、ものすごくシュールなんですけど……関節が全部動くとか、両手両足バージョンとか、そんなバリエーションが必要なのか付け爪五色セットにニーズはあるのかといろいろ突っ込みつつ、つぎには何が出てくるのかとびっくり箱に期待する子供のようになって読んでしまいましたよ、なんだよこれ!

とりあえず、可笑しかったです。

冷静になって読み返してみると、文章はとても読みやすくて情景もくっきり浮かび上がりますし、かなりお上手な方がお書きになったものと思われます。


G08 恋愛未満コンロ。

ハムスターの説明から始まる、青春恋愛小説。
バレンタイン司教に心鷲掴みされましたwww

適度に力の抜けたユーモアあふれる文章で、登場人物の人となり、人間関係、心理状態と、楽しくするすると理解できる、お上手だなあと感嘆しました。

いいお兄さんを演じる主人公の切なさがひしひしと伝わってくるあたり、泣けそうになりました。なのに、悲壮には陥らず、あくまでユーモア交じり。

変なもの食べてお腹壊したバレンタイン司教、とばっちりwww

コアラ顔のひよわっこがじつはとわかる下りに、泣き笑いです。

いいなあ、このお話、わたし大好きです。

サイト捜索の結果、八坂はるのさんのお作ではなかろうかと……思うのですが、どうなんだろう、どきどき。


G09 火球少女

火の玉のようなシュートを放つ女の子に、羨望と嫉妬とむにゃむにゃな感情をいだく少年の、青春サッカー小説。

サッカーが強くて、偏差値が低くて、公立校であるという強み!
身もふたもないリアリティーで、たしかにあるわそういう学校……と深くうなずいてしまいました。

そのリアリティーはサッカーのプレイシーンにも通じていて、畳みかけるようにつづくミニゲームの展開や、リアルにボールの軌跡やプレイヤーの動きが脳内に描ける文章に唸りました。

これはかなりサッカーに精通してらっしゃる方のお作かなあ。
わたしはサッカー部の内実なんてぜんぜん知らないので、そうなのかなあって思うくらいなんですけど、そう思わせるだけの迫力が感じられる描写です。

青山さんと相沢君のぶっきらぼうなやりとりには、不器用な青春を大いに感じてニマニマでした。
青山さんは天然。
相沢君を振り回してることにはまったく気がついていない。
まあ、相沢君が勝手に振り回されてるんだけど、そのこと自体が既に相手を特別な存在だと思ってるって証ですよね。

青山さんは男だと思うことにして平衡を保ってきた相沢君のこころが、いっきにくずれさるラストが、いろいろ想像をかき立ててくれてたいそう美味しかったです。

これから相沢君は受け身の姿勢をやめて攻勢に出られるのだろうか。いや。それよりはやく自覚しろwww

潔い文章、ストレートなお話、爽やかで好きです。楽しかった。


G10 マイノリティ・レポート

ラヒマヤ山脈ってあきらかな造語がなければノンフィクションかと信じてしまいそうな、ルポルタージュ風小説でした。

山岳地帯に暮らす少数民族の祭事・火運びの儀式に同行した筆者の、見たまま、聞いたままを描く、淡々とした文章とそこに挿入される簡潔な説明文が、非常に具体的で、ほんとうに見てきたんじゃないのかと思うほど。

考えてみれば、異世界ファンタジーを異世界ルポルタージュにしただけなんだけど、それにしてもこのリアリティーはすごいです。

作者さんは、民俗学とか文化人類学とかの資料を読み慣れている方かなあ。

グローバル化の波にのみこまれていくなかで、自分たちのアイデンティティをどう保てばよいのか、という質問はとても重たい、ほんとうにどう答えていいかわかりません。

テクノロジー水準がそれほど隔たってないときに西欧と出会った日本は、まだ幸せだったのかもなあと思ってしまったりしました。

キャプションだけの写真部分がずるいですw


G11 イレーネ

西欧近世風の、身分差恋未満哀しいお話、でした。

たったこれだけのことで……ってどうしても思ってしまうんだけれども、それが領民の人生すべてを握る昔の領主ってものなんですよね。法律がないってことの怖さが身にしみました。

宗教改革が起きてるってことは、もう活版印刷があるんだろうなー。
情報が一部の権力者だけのものではなくなってきた時代。
それで領民たちも領主の横暴と自分たちの権利に目覚めてきたてことか。

主人公は職工だから、きっと農民たちよりもそういう情報をたくさんもってるはずなんだけど、やっぱり過去の出会いがあったから、あえて仕事を受けたってところもあったのかなあなどと思ったり。

領主も時代の流れを知ってはいたんだろうけど、多分、理解できなかったんだろうな。
見るからに自意識過剰ですべて暴力で解決な人物ですもんね。
それでおそらく周囲には時代遅れの暴走気味の人材しか残ってなかった。
それがハンス君の不幸だったんだなと……ううう、不幸すぎるよう……。

イレーネお嬢様の赤いスカーフと、武装蜂起した民衆のあげた火の手。
物語を彩るふたつがどちらもかなしくて、辛かったです。

せめてハンス君の願いがかなえられますように。


以上で感想は終わりです。

Gブロックは生きてることが辛そうな人のお話が多かったような気がします。
いっぽうで、やたらとシュールなお話もありましたがw


では、物証なしのフィーリング推理。

G05の繊細さと芯の強さはスイさんかなー。
あかねさんは愛らしさでほとんどG06だと思うんだけど、G07もありうる気がして困ってます。
G08は、そこはかとないユーモアから八坂はるのさんではないかと。
G11は歴史物がお得意そうなカイリさん……?

その他はいまのところわかりません、すみません、ぺこり。

覆面作家企画6 Fブロック感想

覆面作家企画6、Fブロックの感想です。

読んだ後すぐに書くつもりだったのに、つい作者さんを知りたくなってあちこちサイトにお邪魔したりして、そこで素敵な作品を発見して読みふけったりしてたもので、感想がすっかり遅れてしまいました、申し訳ありません。

このブロックでお知り合いなのは、天菜 真祭さんとあまねさん、といっても作風を把握しているかというと自信がなかったりするおふたりですので、頑張りますとしか言えなかったりする……。
とにかく、頑張ります。


F01 アイ・アム・ファイヤーマン!

高校生とあやかしの異種交流コメディー。

かわいい、かわいいよ、火の玉!
いや、火の玉って名前じゃないんだろうけどもね、ちっちゃい番犬みたいで、蛍様のためにひたすら一生懸命で無邪気で言動がかわいいんです。見当違いの方向につっぱしってはた迷惑なんだけど憎めない。

憎めないといえば、主人公君も消防士を目指してるからってだけで、これだけ熱くなれる性格、可愛いです。

全編賑やかで楽しく、テンポのよいコメディーでした。
日野・男という呼び方には吹きました。実にありがちなんだけど。
水野美琴は、そのまんま水の巫かあ。
この短絡的な理解が火の玉ちゃんの可愛さを増してますね←そうなの?

解決の仕方も話にふさわしいシンプルさ、なのに彼女は覚えているのかなーと余韻を残しての終わりが心憎いです。


F02 命がけの結婚

滅んだ国と滅ぼした国、二つの国のシステムの受け渡し間に生じる、人間関係の悲劇をほのぼの風味で描いたお話。

命がけって二つの意味があったんですね。

冒頭でこれはコメディーなんだ! と印象づけられたので、あとからわかってくるシリアスなこれまでの経緯に驚きました。

シチュエーションの唐突さとその無理が生むギャップの笑いと、物語背景の深刻さ、少ない紙幅でこれを両立させるのは少し難しかったのかなーと思われるところもあるのですが、やはり深刻シーンの後にほっこりさせてもらえるとほっとする。ぜいたくな読み手です。

しかし、こんなに有能そうな宰相なのになんでいきなり結婚、初夜に飛んでいくのか。
そこが可笑しいところなのですが、だめじゃん宰相……笑


F03 僕も愛しているよ

魔物退治をなりわいとする孤独な若者二人の交流を描く異世界ファンタジー。

故郷を飛びだして剣士になった主人公と、女のように美しい魔術師の出会う冒頭、次々とあがる紫の火柱で魔物を倒していく魔術師の印象が強烈です。

性別詐称を早々に見抜かれる主人公のシーンを読んだ時には、まさかこれが後々効いてくるとは思いませんでした。

読んでいて脳裏に浮かぶのは、魔物の侵攻によって生活圏を脅かされている人間たちと、剣客や魔術師が魔物を追いかけて漂流者のように大森林の中をさまよっている姿。

ただひたすら、魔物退治を繰り返す若者ふたりの旅は生活感がなくふわふわとして、まるでおとぎ話のようです。

だからなのか、魔術師の背景がわかったときもぼんやりと、ああそうだったんだ、と納得してしまいましたが。
よく考えて見るとこれは、せつないラストですねえ←読みながら考えろw

欲張りな読み手としては、主人公が剣士になろうとした動機をもっと具体的に知りたかったかな。
周囲の反対を振り切ってしまうほど強い動機なのだから、主人公の行動原理に大きく影響するだろうと思います。

作者さんはラノベをお好きで読み慣れている方かなあ……。


F04 「幸福な食卓」

偉大な魔術師と不肖の弟子の、ほのぼの疑似家族物語。

技術と力にすぐれた天才型の人間が、常識やら性格やらが破綻しているのはお約束ですねw
そして不出来な弟子でも溺愛してしまうのも、ツンデレしてしまうのもお約束w

ツンデレ万歳! な私には、たまらないお話でした。

たまらないといえば、弟子の作る料理がすごく美味しそうで。
モウ乳とかホーホー鳥とかのネーミングにくすくす。ユーモアあるなあ。

魔法を使っていようがいまいが、美味しいものを食べれば幸せになれるのです。
その上なおかつ、幸せ保証付きのお店ならきっと繁盛するでしょう。
さすがに超不味いものや毒を食べさせられるのは嫌ですが、お弟子さんは善意の人みたいだしお師匠もついてることだし大丈夫、ですよね。

最後に出されたスープがどんな味だったのか、知ってるような知らないようなで終わるのもよかったです。


F05 火と水の婚姻

名前から中華風の異世界……なのかなあと思いつつ、衣食住は平安朝ぽいのかなあ。

とても純粋でかわいらしい女の子と彼女をつよく愛し大切に慈しむ婚約者のお話。
端正な文章でこまやかにつづられる背景と情感が印象に残る、そこかしこに微熱を、クライマックスでは熱情を感じてしまいました。
若さゆえの青臭さやいじらしさ、不器用さが、読んでいてとても愛らしかったです。

在景くんの遠大な洗脳計画に、思わず笑ってしまいました。
この世界、文化はかなり進んでいそうです。清司は乱読者なのでしょう。男なら物語だけ読んでいるわけではないよね。本は写本なのか刊本なのかを知りたかったなあ。←話には全く関係ない欲望。


F06 夕星☆えとらんぜ

爽やかイケメン君の正体にビックリしながらも、悪気無く爽やかで居続けるそのキャラクターに感心してしまいました。
おかげで最後まで爽やか青春SF?として読めました。
人類とエイリアンとの奇跡的な接近遭遇なのに、チョウチンアンコウが即座に通じるところ、なんとなくツボりました。

このお話を書かれた方がどなたかはまったくわからないんですけど、「○○だけど」「○○してるけど」という表現がかなり出てくるのが気になりました。こんなフェイクの仕方はないと思うから、きっと癖なんだろうと思うのですが。


F07 火のないところに煙をたてるお仕事です。

高校生活でのいじめのお話。
これ、心理サスペンスですよね。女の子グループの会話がすでに怖いです。
こうして同性をおとしめるような行為をする人たちは、社会的な歪みで傷つけられた、心の傷が癒えていない人たちなのだそうですが、自分のしてることを客観視できないのは病んでるからなんですね。

そんな彼女たちの標的にされてる理沙を、さりげなく守るヒロイン……。
あれあれあれ、どんどん怖くなってってるんですけど……うひゃあ。

やっぱりそうだったのか、と思ってしまうんだけど、タイトルがこれでしたから。
でも、お仕事といういいかたが、すごく怖いです。
生き甲斐とか、楽しみ、をとおりこして、生きるためにやってるような、レベルの違いを感じてしまいました。

このお話を書いた方は、きっと人物同士の関係性とか心理描写をたくさん書いてるかたなのではと思います。


F08 凱旋の火矢は墜されたし

第二次大戦後に東欧、じゃなかった中欧か、に襲いかかってきた東からの暴力的な嵐、それによる政治の混乱。
乱れきった治安の中、兄に託された赤子を抱いて決死の逃避行をした女性の、数十年後の回顧録でした。

具体的な情報の多い、歴史の重厚さを感じさせる話でありながら、女性の語り口がとても繊細でやわらかく、隅々までこめられた感情が読むそばからあふれでてきそう。

とても個性的で、他人の真似できない作風をお持ちの書き手さんだなーと、感嘆しました。
素敵です、うっとり………。

まだ一文が続きそうなところで、あえて句点を打ち、そのまま続ける表現が一番印象に残りましたが、そんな細かいところを見なくても、全体からあふれでる雰囲気が独特で、これをわざわざフェイクして出そうとしても無理でしょう、作者さんをしっている人ならすぐに当てられそうだと思いました。 

で、ほんのちょっと推理期間前にお邪魔したばかりの私が言うのはあれなんですが、でもこの方しかいらっしゃらないのではと思います。篠崎琴子さん。すみませんすみません。


F09 千匹皮姫

大学の演劇サークルの春公演の準備を前にしてのどたばたと、演技によって生まれる異空間を並行して描く、マジックリアリズムっぽいお話。

冒頭のシナリオを読んで、これはいったいどういうお話なんだ? 王様が娘に求婚?? 千匹皮のローブ??? てなったんで、そのままのお話じゃなくてよかったって思いました。

先輩たちがごそっと抜けたおかげで人材が不足し資金も不足し、なにもかもうまくゆかず、妥協ばかりを繰り返す仲間たちに苛々苛々しているゆめちーさんに(名前が似てるから)同情。

演じる劇の登場人物が勝手に立ちあがって、その感情に演じ手がふりまわされるという展開、なんとなく、小説を書いてる時にキャラクターが勝手に動きだしてしまう感覚に近いのかなと思いました。

しかし、劇とは直接つながりがないはずの現実に王様が干渉したところには驚きましたね。
この場合は、それで助かって、ゆめちーさんの煩悶にもケリがつき、めでたしめでたしとなったわけですが、ひゃー、びっくりしたあ。

現実も演劇という非現実を造り出す人たちの舞台裏ということで、ふつうの日常からは少し浮いているし、非現実の演劇が現実に干渉したりと、現実と非現実の境目があやふやになる、不思議な味わいのあるお話でした。

気の置けない仲間同士のセリフはざっくばらんでカジュアルだけど、地の文は硬質で歴史物でも通用しそうな達者、この話の作者さんは何でも書けそうな気配がします。

印象だけですが、これはあまねさんのような気がします。文章も、題材も。しかし、あまねさんは変幻自在という噂なので……自信はないです。


F10 灯油あります。

家業はてっきりガソリンスタンドなのだと思い込んで読んでいたところ、外見がお化け屋敷っぽいだの喫茶店に見えるだのというので、おや? と思い、読んでいくうちに、ふおおお、これは凄い、面白い、となりました。

いやー、人魂って存在するのに燃料が要るんですね、知らなかった!
人魂をお客様と呼び、古い方々と呼ぶセンスが上品で可愛くて楽しかったです。
給油するシーンは目に見えるようだし、それを現実には見えないという事実を理系の志織ちゃんというリアリストの存在によってさらに強調するあたり、うまいぐあいに書かれているな〜。

危険物取り扱い主任者資格の科学の問題など、わたしには魔法の呪文のようで何が何やらさっぱりでしたが、これを平然と扱っている作者さんは現役の学生さんなのか。でも、しっかりとした文章からはやはり、成人されて久しいような気がするので、理系に強い方なのだろうと推察いたします。

それと女の子の、自分に気合いを入れながらの独り言みたいな愛らしい語り口。
これは天菜 真祭さんのお作じゃないかと思います。違ってたらごめんなさい。


F11 愛の消火大作戦

直球の青春恋愛ストーリー、楽しかったです。
全然意識してなかった幼なじみを語る、じつに正直かつ自己中心的傍若無人なセリフが、いかにも男子高校生って感じで可笑しい。
一週間のうち半分もお邪魔しておいて、夕飯をご馳走になっておいて、何を言ってるんだこいつ。
そのレベルのつきあいを今までずっと続けてこられたというところからして、すでに普通じゃないと思うんだけど、無自覚にも程がありますよね。

で、案の定、彼女を意識しだした途端に……でありました。

このお話の楽しいところは、主役の鈍感さを際立たせる脇役の変人・戸川くんの存在でしょう。
クールに暴言を吐きつづける戸川くん、将棋盤の上でひとりオセロをする戸川くん。
キテレツグッズは、本当はいったい何だったのでしょう。そして戸川くんは何を期待していたのでしょう?

すごく、気になりますw

で、この戸川くん、すずさんのサイトでお見かけした委員長くんに似ているような気がしたのですが……。
どうなんでしょうか。


というわけで、感想は終わり。
推理は、各作品の感想に書いた以外のことはすみません、わかりませんです。

20140917の購入

最寄り駅前の書店で発見できなかったブツを求めて、反対側の駅前へ出撃しました。

クジラの子らは砂上に歌う 3 (ボニータコミックス)
梅田 阿比
4253261035


以上、購入。


以前に一、二巻を一度に購入したことを書いたマンガ。
すごく好みだったので発売日を楽しみにしていたんです。
なのに、行きつけ書店では見つからず……先日一軒閉店してしまったせいでしょうか。

最寄り駅には数年前まで四軒本屋があったのに、いまや半減。
売り場面積からしたら、半減どころか四分の一くらいまで減ってます。

いやだなあ、マンガすら手に入らない本屋なんて……。
今回はタイトルが少しマイナーだったのかなとも思うけど、同日発売の同じレーベルの他のタイトルはあったので、売り切れたのかもしれないけど。

でも出版社では一押ししてるみたいいなのになあ。あ、一、二巻を買った本屋が閉店しちゃったから、購入情報が活かされなかったのかな。でも、そこが閉店するなんてあの時は知らなかったしな。

とにかく、これ以上購入環境が貧しくならないように祈るばかりでございます。

覆面作家企画6 Eブロック感想

覆面作家企画6、Eブロックの感想です。

Eブロックにおいでのお知り合いは、冬木さん、塩さん、文月夕さん、盲管さん、白馬さん、紅月さん。これは心してかからないといけませんね、とくに冬木さんは当てたいです。


E01 生きてさえいれば

異世界でのひきこもりのお話。
劣等感と孤独感と後ろめたさと自己弁解が痛い独白で、原因経過日常が描かれた後、突然の暗転。
そして雨降って地固まるなのかと思ったら、、、。

引きこもる間にすっかり自分に自信を無くしてる主人公が哀れでつらかったです。
お父さんが、そしてお母さんが怪我をした時、きっかけはあったのに部屋を出ていくことが出来なかったのは、まだお姉さんが頑張っていたからなのかな。

お姉さんがふつうに倒れていたら、今度こそ勇気を奮っていたかもしれない。もしかしたら。

しかし、そんな機会は与えられなかったのですね。うるうる。

ところで、火を出すという力といってもいろいろバリエーションがあるものだなあ、と感心しましたが、他の種類の能力者はいないのかな、という素朴な疑問も。

あと、逃げた時に持ってたのがお父さんの同人誌ってのに腰が砕けました。
いや、これそういう話じゃないですから、きっと。

と、ここで他の方の感想を読んできて知った事実、あれ、途中までとーちゃんの同人誌だったの!?

浅はかな読み手で申し訳ありませんorz


E02 キドニーパイをひとくち

イングランドの中流階級くらいのお屋敷に務める女料理人のお話。

クリスマス当日の厨房の様子が生き生きと描かれていて、賑やかかつ華やかでした。料理に華やかは変かしらと思うけど、メニューの数々がつらなる文章を見てるととても現実の話とは思えなくてですね、つまり中身が想像できない料理下手には魔法の呪文なわけですね横文字メニュー。

ついクリスティーの『クリスマスプディングの冒険』を思い出して構えていましたが、別段殺人事件などは起きず、料理人のミセス・ストーの個人的な履歴とお屋敷への愛着、新しい環境を望むか否かの決断と、たいそう地に足のついたあたたかなお話となりました。

個人的には、ミセス・ストーの旦那さん誰でどこ? ってのが一番の疑問です。

……これ、冬木さんじゃないかな。
冬木さん、最近ついったーでお料理についてつぶやかれてることがあるのですが、その時の文章がこんな感じな気がするのですよね。イングランドの階級社会や料理メニューなんかは、冬木さんがたくさん読んでこられただろう英国児童文学にたくさんでてきますし。

文章も、いつもの冬木さんを文字数制限できりきりしぼった感じがします。

とか書いて大丈夫かな、別企画で自信たっぷりに名指ししたのが大外れだった過去が(汗。


E03 火を目指して飛んでいけ

体の弱い幼なじみの従姉妹との交流の話。
暗い予感が影を落とす独白に、読んでいて切なくて苦しくなりました。
ヒロインの不安と焦りに、すでにひとり失っているという前提があるのが効きます。
大切にしなきゃ、と思っても自分だって大切にされたいお年ごろなんだもの。
いい子じゃない自分が歯がゆくてたまらないのですよね。
たまちゃん、なんでしんじゃったの……。理由が書かれていないのも、胸に来る原因かも。

方言での語りは、いいですね。
よくわからないところはもちろんあるけど、平易な標準語に直したらきっと失われてしまうだろう、複雑なニュアンスをそのまま届けてくれる懐の深さがあるような気がします。

で、これがどこの方言かは、全然わからないのですが。

内容的にこのお話は塩さんが作者だろうと私の第六感が告げております。
塩さんがこれじゃなかったらきっと当てられない、というギブアップ宣言とも言う。


E04 酔夢春秋

自然豊かな深山で暮らす天狗の眷族と人間の女の子のお話。

文章自体が滋味のある大地で育まれた多種多様な生き物たちの世界、て感じの、とても分厚く濃厚で骨太なところが、ものすごく印象的でした。

お話もいい話なんだけど、とにかく、描かれるお山の自然そのものに圧倒されます。

これはきっと白馬さんですよ、動物だし、塊だし。ね、ね?


E05 グラスキャンドルライト

クリスマスに誘われた人気急上昇中のバンドのライブで、元彼との再会を果たす女の子のお話。

少女漫画のキラキラ感が眩しいです。
過去の別れ話をひきずってる前半と、ライブで気がついたあたりのドキドキ、終わった話だと自分に言い聞かせつつも彼の現在を知らないことへの不安と、女の子の恋心がみずみずしくて、読み手の中古の乙女心がきゅんきゅんになりました。

しかも、彼、歌ってますよ。
歌詞もAブロックのとは違う、まともなラブバラードですよ〜。

なんだ、彼ますますカッコよくなってるやん、これでふられたら目も当てられないよ〜〜。

なんて心配してるところに心憎い展開がwwww

これはきっと作者さん恋愛物がお得意なのに違いない。
それにきっとお若いに違いない。


E06 ことのはに

新婚から少したって奥さんとのコミュニケーションが雑になってしまったサラリーマンのお話。

冒頭から窓ユーザーですねと突っ込みつつ読むのはリンゴ使用者のお約束。

登場人物の物腰から丁寧にこころのうちをすくいとるような、さりげなくやさしい地の文がすっとなじんでてとても読みやすかったです。

出来事も何気ない日常で起きるささやかな事件で、これは大掛かりなイベントを仕掛けずとも心理描写や人物の関係性でしっかりとしたお話が書ける、地に足ぺたりの作者さんだなーと思いました。

不思議なお店が消えてしまうのはお約束なんですが、その場合、出された料理はちゃんと体に吸収されているのだろうか。それとも夢幻霞で、じつはなんにも食べてなかったりしたらどうするんだろうか、と思ってしまう貧乏性な読み手です。

第一印象、文月夕さん。印象だけで物言ってますので当てにはしないでください。


E07 暁の女神と黄金の悪魔(※注)

これは……!

キラキラ輝いてますよ、非日常性が爆発していますよ、ドラマティックですよ。
きらびやかさで鮮やかで、ものすごく華のあるお話ですね。

異世界での国同士の戦いを背景に、勝ち戦のシンボルとして祭り上げられたお姫さまの理想と現実、敵として闘わざるを得なくなった幼なじみとの恋と裏切りと、こんな短い紙幅によくもここまでと思うくらいの内容がつぎからつぎへと怒濤のごとく展開するのに圧倒されました。

とくに、彼との再会シーンが、かっこいい!
今回読んだなかではここまで一番ハラハラドキドキわくわくしました!

ファンタジー要素は考えてみたらなかったけど、キラキラしさの演出として異世界が必須なお話でしたね。

これを書いたのはどなただろう。
すごく当てたいです。そして他の作品も読みたい><。

ここで他の方の感想巡りをしてきたのですが、冬木さん説があがってますね。
うーん、冬木さんの文章と思うとそうかも……と思えてくるなあ。
「彼らの粗末な褥となった。」とか、冬木さん書きそうだなあ。
でも、冬木さんはこういう戦記物は書かないような気がするんだよなあ……。


E08 女神は灰の夢を見る

職場で際立った存在感を放つ、ひと呼んで女神の秘密を知ってしまった私のお話。

S女史の存在感、ハンパ無いですね。
どこもかしこもきりっとしていて、なおかつ艶やかで色っぽい。

なぜ私が彼女の秘密を知ってしまったのか、いろいろほのめかされてますが結局謎なままなのが悔しい。セクハラと訴えられるっておびえてますが、じつは私にもなにか能力があるのではなかろうか、などと邪推したりしてみたり。

じつのところ、彼女の秘密そのものは物語上はたいしたことではなく、そのことを打ち明けたシチュエーションの方が大事だったような気がします。

ところで弟さん……ちゃんと生きてるんですよねえ?

段落冒頭一字下げがない文章とアルファベットと記号が半角なのは、フェイクなんでしょうか、それともいつも通りなんでしょうか。


E09 The Phantom Circus, Fire Funeral

なんだかすごいんですが、そのすごさがうまく理解できていない気がする。
あこがれたサーカスと過去の動物園火事のつながりが私の頭では処理しきれませんでした。
淡々とした文章でたたみかけるようにつながって描かれるサーカスのシーンが、くるくるとひらめいてまるで夢のようです。って夢なのか。

サーカスに憧れる少年たちというとブラッドベリを思い出すのですが、あれも私には理性的には理解できなかったからな。いや、何でも感覚的にしか理解できない人なんだけどね。

幻想小説が得意な書き手さんなのかなー、と思いました。


E10 朱樂院家の焼失

退廃と背徳の香りがする、弱者の反乱のお話。
由緒あるらしき旧家のたたずまいと、良家らしい少し気取った名前の数々に、雰囲気あるなあと思いました。

旧家のプライドを笠に着て、自分の得しか考えない嫁さんと姪に太刀打ちできずに縮こまっていた理弌さんが、愛するものを得て少しずつ抵抗しはじめるあたりで、なんとなーく展開が読めるのですが、とにかく、隅々にまで気を配った言葉の織りなす文章が雰囲気を盛り上げます。

ヘタレおじさま様と少女の組み合わせもなかなかのものだなあ、と思ってしまいました。
どれだけヘタレでも、歳が離れていれば経験の積み重ねでなんとか女の子に対抗できるのですねえ……ひとつ学んだw


E11 種火

冒頭、元号からは江戸末期だということが理解できなかった日本史ビギナーです。
でも「歳」て名前を呼んだ途端にあ、と来ました。しかし浮かんだのが『銀魂』だった私には何も言う資格はないでしょう……。

だから池田屋事件のことは聞いたことあるけど、くらいの読み手からすると、きな臭い事件の前触れを告げられた緊迫感と、そのなかでとるいつもの朝食の対比を感じつつ、聞いたことのある固有名詞がいくつかあるなあとかの瑣末事をよぎらせながらの読書、ということになりました。

日本史そのものがお好きなのか、とくに幕末や新撰組に思い入れがあるのか、いずれにせよ、知識が豊富な方が書かれたんだろうなあ。ありきたりの感想で申し訳ありません。

ラストで明かされるタイトルの意味が重かったです。


E12 プロメテウスの崖

単座式二脚戦闘車EPT。
温暖化による海面上昇。
先鋭的エコロジスト。
黒海とカスピ海の間というとバクー油田辺り?
エネルギー安全保障。
ミリタリー知識凄い。
ギリシャ神話のプロメテウス。

うまいこと感想が書けなくて目に付いた部分を過剰書きしてみました。

視野の広さ、スケールの大きさ、必要最小限で状況を説明し、なおかつ描写する文章力と、ヒロインの半生がオーバーラップする展開。

この硬派でありながらさりげなくキザな言葉遣いがアクセントになった文章と、緻密な構成、話のスケール感、どれをとってもこれは盲管さんです。
ですよね!

しかも、さりげなく書かれてるけど、ヒロインが乗ってるのロボットじゃん!
かっこいいお話でした。
どなたかに短編映画にして欲しい。


感想はここまで。

感覚でしか物事を理解しない読み手による根拠の無い印象推理。

冬木さんは02だと思う、07かもしれないけど。
文月さんは06じゃなければ、10かもしれない。
塩さんは03じゃなければわからない。
白馬さんは04でしょう、たぶん。責任は負わないけど。
紅月さん……すみませんわかりません。
12は盲管さんです。とここだけ断言。

20140908の購入

図書館予約本を受け取るついでにリアル書店に行きました。

夏目友人帳 18 (花とゆめCOMICS)
緑川ゆき
4592193687


以上、購入。

マンガで著名なタイトルなら、発売日から遅れても手に入ります。

今回、夏目の雰囲気が少し変わったかな。
あやかし対決の審判を頼まれる話を読んだら、『百鬼夜行抄』の律を思い出しました。
名取さんの顔が見るたびに違う気がするのはきっと私の記憶力が悪いせいですね。
柊のイメージには揺るぎがないんだけどw

覆面作家企画6 Dブロック感想

覆面作家企画6、Dブロックの感想です。

巷で噂のDeathブロックを前にして緊張気味。
ここにはお知り合いだと於來さん、茅さん、鈴埜さんがいらっしゃいますね。
まあ、於來さんは順当として←、茅さん、鈴埜さんまでDeathに加わってらっしゃるとは、なんということか。


D01 とある罪人の告白

淡々とした独白に惹きつけられました。丁寧な語り口で灯火の番人の生活や価値観がよく判ります。
仕事柄、つねに見守るだけの傍観者でいなければならないことを、誇りと感じていたはずの主人公が、とある事件をきっかけに義憤に駆られて禁忌を犯してしまう、その過程もとても納得できる。

そうだよね。これを見て見ぬふりができるなら清らかな善人とはいえないよね。

しかし、その後の急転直下にびっくり。

ええ、なんなの、どうしてなの?
番人さんならずとも納得がいかないよ!

まんまと作者さんの仕掛けにハマる読み手でありました。

ふと、番人さんがずっと傍観者のまま話が展開したら、どうなったのかなあ、などと考えてみたりして。書くの、難しそうですね。

そして、のっけからもう数人死んでいる。


D02 顔(※注)

日本の民話風残酷物語。

稲荷神社のお祭りで狐のお面を被って舞う若い男女。
華やかな舞台の上で起きる事件が衝撃的でした。

これって狐のお面に宿る神の化身なのかなー、お信さんのお母さんなのかなー、狐のお面があれば誰でもなれるのかなー。

途中、語り手の口調が変化するところがあって、そこから語る相手が変わったように感じられたのですが、実際はどうなんでしょう。

狐につままれたような心地のお話でした。

これ、於來さんに似てる気がする。気がするだけかも。

流血事件だけど意外と死者はいないような?


D03 Gore -青き死神-

エボラ出血熱? と思いながら読みはじめました。
伝染病の名前が鳳仙花というのが美しいですね。それを焼き尽くす力を持つDBは、はい、条件反射的に思い浮かべてしまいましたが、もちろん某プロ野球チームではありません。

新婚のご夫婦なのに、なんだか少し変、と思いつつ、その違和感の正体が判明したらもう取り返しがつかなくなっていた←読み手的にです。

言語によって同じ単語でも意味が違う、そのことで生まれるふくらみというか、複層的な認識が、かれにもたらした解放が印象的でした。

悲劇なのに美しく、悲壮でもないラスト。よかったです。

そして、死に至る伝染病が蔓延している世界なので背景ではたくさん死んでらっしゃると思われますが、主要人物が複数お亡くなりに。


D04 アマヤドリズム

死人続出怨念噴出のブロックの一服の清涼剤でした。

雨降りの田舎のバス停で生まれた、予想外で素敵なセッション。
音楽の表現が豊かでこまやかで専門的。
これはかなり音楽に造詣が深く表現にも慣れた方の筆だなあと思いました。

タイトルもかっこいい。
このままアルバムのタイトルにできそうです。

死ななかった、死ななかったよ。あーよかったあ。


D05 記憶

お墓参りをかねた縁遠い親戚との会合に駆り出された、現代的な彼女の思い出ホラー。

祖父母の住む田舎だというから祖父母がいるはずなのに、出てこない。両親も兄弟も出てこない。まるで意図したように親しくない親戚ばかりが集まっているかのような集合場所の描写に、すでに居心地の悪さを覚える冒頭です。

しかも、奈美さん、お墓参りになってカッコをしてきてるの。
親御さんの監督もないのかなあ、でも親戚の集まりにいやいや来る程度にはつながりがあるはずだよね。親とも疎遠なら親戚なんかには絶対寄りつかないと思うんだけど。うーむ。

奈美さんを見て不審な態度を取る親戚の男性の登場から、夢の少年に結びつくくだりは。ひいぃ。

こんな過去があったら、親御さんも把握していると思うんだけど、その上で娘を行かせたというなら、親子関係も殺伐としているのかなあ。

事件とは無関係なところで薄ら寒さを覚える、方向音痴の読み手でありました。

過去に死者。未来に死者?


D06 ひだね

平仮名で書かれた童話風な出だし、集落滅亡の危機を迎えたシリアスな本文。
おとぎばなしとしてまるくなった伝承と、ごつごつしたリアルな現実みたいなギャップ感が興味深いお話でした。

しかも、円環構造?

これがエンドレスで繰り替えされるなら、気の毒なのは魔女様の方なのではなかろうか。

このお話、鈴埜さんのような気がするんだけど気のせいとも思えます←どっちだよ。

戦やなんやかやで大量に死んでいると思われますが、確定できるのは……?


D07 Waiting For The Fire Never Come

横文字タイトル……!
このフレーズなんか見覚えある! でも思い出せない!

SF風味の西部劇コメディでしょうか?
ワイルド・パンチ強盗団の刹那的な馬鹿騒ぎが賑やかで楽しいです。
神様のシステム?も印象的。
軽快な会話で展開する話がアクションで彩られてて、たいそうスピード感にあふれたお話でした。

これも鈴埜さんぽいわ……どうしよう←どうしようがあるのか。

これも死んでない(歓喜)。


D08 火童子

冒頭からはっとなる筆力の高さ。
民話風だけどずっしり中身が詰まってて、骨太で土の香りのするような描写力。
火童子の存在を説明することなく、読み手にそのまま受け入れさせる文章の説得力が凄かったです。

ダッシュとリーダの長さがかなり特徴的ですね。

死者、タイトルロール。


D09 焦げた着物の少女

男子大学生の悪夢の話。
あー、そうか。彼が見ていたのは前世じゃなくて土地の過去だった……のかな?
女の子が安堵したのはそれでかな、復讐エピソードはどうなったのかな。
読解力が不足しててすみません。

居眠り主人公にさりげなく絡んできた吉信青年の存在に興味津々です。
いったい彼はどういう存在でどういう力を持ってるのでしょう。
彼を主役にしたらシリーズができそうだな、と思いました。

死んでないけど死んでた話でした。

うーーん、これが鈴埜さんという気がした。鈴埜さんの名前を出すの何回目でしょう。

D10 灼かれた者

心理サスペンス小説と呼べばいいのでしょうか。
ひりひりと辛いお話でした。
弟を自殺に追いやったものへの復讐に身を焦がすヒロイン。
卑劣な周囲の反応と、焼けるような心理描写に、冷や汗が流れそうでした。
彼女の心情に共感しきったわたしは、そうだ、弟を傷つけたその友人には天誅を与えるべし、と心の中で叫んでおりましたが、まさかこんなことになろうとは。

世の姉族の心胆を寒からしめる展開でした←一応弟のいる姉。


D11 葬送

オレオレ詐欺か! と早合点しそうになった冒頭、おばあちゃんの独り昔語りの始まりになるとは思いませんでしたが、なんだかものすごい人生経験値のあるお話になってって、うわーすごい女の一代記じゃあ〜となりました。

内縁夫婦の微妙な関係と、戸籍上の関係が切れずにいた本妻さんとの会見と、おばあちゃん、すごい貫録ですね。複雑な男女関係から本妻さんの息子さんのひととなりまですうっと理解できてしまう文章もすごい。

旦那さんの置き土産をあっさりやってしまうおばあちゃん、かっけー!

何の脈絡もなく、これ……茅さん? と思ったのだけど、多分違いますね、うん。

今までの理不尽な死と違っていうなれば心残りなく天寿を全うされたものだったので、これはうん、納得でした。


D12 業火

これも女性の語り手のお話です。
このブロック、多いですね。娼館絡みも二作目ですね。
女の業が叫ぶからなのでしょうか←。

娼婦の母親を早くに亡くした姉妹。
娼館で姉に守られて育った妹は姉が大好きで、姉を蛍にたとえたあたりが印象的でしたが、これはその姉の美しさが招いた悲劇って事なんでしょうね。

しかし、わたしが言いたいのは、世間知らずにも程があるぞ、男! ということです。
義理堅いなら最後まで面倒見てやれよ、こんな中途半端な放り出しかたするなよ。

まあ、これがもっと世慣れた男だったらこの話成り立たないんですが。

とりあえず、平穏そうなシーンで終わったのでほっとしました。

死者一名……で済んでるのかな?


Dブロック、感想は以上。
推理としては鈴埜さんを複数発見したということで、またあとで検討します。時間があったら。

覆面作家企画6 Cブロック感想

覆面作家企画6 Cブロックの感想です。

ここにはお知り合いだと御桜さんと藍間さん、桂木さんがいらっしゃいますが、以前別の企画の作者当てでは全員外したという過去があります。とくに桂木さんには手も足も出なかった思い出が。
なので推理はとくにせず、おもに感想を書きたいと思います。


C01 天翔る竜と天下無双のドラゴン娘!(仮)

冒頭の道化テンションから想像したのと全く違う! シリアスストーリー!
人類の存亡の危機に命をかけて闘った功労者に対するむごい仕打ちにこころが震えます。
てか、敵の最後の一頭くらい残しておいてもいいんじゃないの、ほら研究とかに使うんでもいいんじゃないの? 心が乗り移った理由とか知りたくないの? あ、だれも信じてないからか、そういうことか……。

アクションシーンと説明的な文章のあいだに少々ギャップが感じられるのは、作者さんお若い方なのかなあと類推。

構成が上手いなーと思いました。ラストが希望に満ちたシーンで終わるのが切ないです。


C02 桜都狂騒劇場

大正レトロな帝都で起きた事件をキテレツな文筆家がキテレツに解決する、このままシリーズになりそうなキャラクター立ちまくり小説。

東に北、と出てきたので期待を持って読んでいたら、まったく裏切られずに西と南も登場してくすり。
探偵役の東氏の気品あふれる横柄さと、庶民派北氏とのかけあいから、切り裂きジャックを彷彿とさせる連続殺人から、東氏のトンデモ仮装から、いやはや、すみからすみまで遊び心満載で楽しかったです。

文章にリズムがあり、なおかつ、描写がこまやか。

読んですぐに御桜さんが思い浮かびましたが、このあと御桜さんは私の頭に何度も浮かんでくるのでありまして。つまりあてにはなりませんorz


C03 時よ止まれ、汝は美しい

なんとなく居心地が悪いなと感じるのは、主人公の名前は判明しているのに地文では「男は」とずっと書かれているからなのでしょうか。
話自体も、相当居心地の悪い話ですね。この女は現実なのか幽霊なのか、どちらかに決めつけるには何かが足りない、もしくははみ出してしまう、このなんともいえないもどかしさ。

あー。どっちなんだよう。

と読み手が悩むのを見て、作者さん楽しむんだろうなあ……。

私としては、幽霊だったほうが長い間怖さがつづくなあと思います。
主人公、こうなるってわかってて本当につきあえるのでしょうか、彼女と。


C04 ほんとうの救世主

ラ・ピュセル? 六花の勇者?
既存の話を思い出しながら読むのは私の悪い癖ですが、この話、魔王討伐のあとが凄かった。
魔王と人間は対立していたんじゃない、というとこまでは想像するけど、そのあとの壮大な飛躍に恐れ入りました。スケール大きい、なんてもんじゃなかった。ほえーーー。

で、私は思うわけです、ささいなことを。
魔王の息子って母親誰?
それに魔王ってどうやってなるのだろう?

C05 ともしびの揺れる

断片的な情報が重なるようで重ならず、なかなか全体像が見えてこないお話。
ミステリみたいな読み心地でしたが、わかってしまうと今度は非常に現代的で重く身につまされる話でした。

淡々と書いてあるけど、これ、すごく葛藤があるんだろうな。
携帯電話の使い方というか、携帯電話を忘れて捨てることなく、ちゃんと使い続けてくれるのが救い?

C06 あの温もりを思い出せない

これも葛藤系。
危険物に驚いてびくびくしながら始まるのだけど、地の文は「彼」なのに現実では「せんせぇ」って甘え気味に呼ぶ女の子の登場にさらに不安が高まってしまう。

読みながら、ああ、この子はすごく不安定なところにいるんだなと強く思いました、どちらに足を踏みだそうかとふらふらしている夕方の公園の情景がなんともいえないです。

でもお願いだから燃やすのは写真だけにして><


C07 深夜ドラマは30分ものに限る

家族の出払った深夜にドタバタ探偵ドラマを見ていたら——。
話自体もドタバタで日常的非日常ドラマのチープさをネタにしつつ、軽快にすすむコメディーです。ヅラに物を隠すなんてすごい芸当だと思うわ。

これも一応枠物語かな。しかも傍観者だったはずの主役が途中で内容に関与するようになるメタ構造。異世界召喚物というよりそっちのほうが近い印象。

ニート探偵もおもしろいけど、部下を持ったばかりの若手サラリーマンの悲哀がリアルで印象的でした。


C08 火刑に処す

明治時代なのかなあと思いつつ、あまりにも不穏な刑罰に異世界なのかなとも感じる物語世界。
たおやかな筆で描かれる情景と繊細な少女の心の機微がみずみずしいです。
悲劇を背負った南雲どのの瞳に映る夕映えが目に見えるように鮮やかでした。

これ……御桜さんぽいんだけどなあ。御桜さん二作目だ。

一ヶ所—が罫線みたいなのになってるところがあるけど、これはミスっぽいな。フェイクではないと思います。


C09 真夏のブーメラン

おれはフリーしか泳がない、とかいう話じゃなかったですねwww
幼なじみの正面切って三角関係やってこなかった三人のうちのふたりが、高校生活最後の夏に決着着けようとする青春物かと思いきや。

元気で少々乱暴な会話が飛び交う、男同士の友情がさわやかです。
おちびたちの賑やかな様子がかわいかった。

しかし、どっちと付き合うかを勝手に決めるな、それは彼女の選択だ。
てか、彼女も水着着用なの?
学校のプールに無断で入るのの常習犯だな、こいつら。

数字は全角だけど、疑問符などが半角になってますね。全編そうなのでフェイクかもしれない。


C10 あなたの健康を損なうおそれがあります

すごく楽しかったです。
突然異能が発現して転職するまでと、現職場での結構大変なお仕事がスムーズに繋がってる。読み手をそらさない簡潔でいて不足なく、センスも感じられる文章。上手いなー羨ましいなー。

主役の臨時パートナーになった鈴木さんの、さばさばして色気の無い、かといって男ともちがう個性が素敵でした。

確かに、この仕事、健康を損なう畏れが高いですね。
やはり力を得るには何かを犠牲にする必要があるってことなんでしょうか。


C11 この気持ちにつける名前をまだ知らない

リリカルな雰囲気。長命の異種と彼に仕える幼いメイドの愛らしいお話。
大の月のお祭りに屋台とか提灯とか、この世界は和洋折衷なのかな。
エミールとティカの会話が可愛くて楽しくて、読んでいてほっこりさせてもらいました。
それになんといっても百合の提灯が素敵にきれいですばらしい。この情景だけでしばらくうっとりしてしまいました。

いつまでも続かないとわかっていても、いつかは変わってしまう、終わってしまうとわかっていても、この日、この時を分かち合い、大切だと感じられることはとても幸せなことだなあと思いました。

たぶん、エミールが鈍感なのはそのへんのことが無意識にあるからですよね。

なんか、藍間さんぽいかなと思ったのだけど、自信はないです、きっぱり。


C12 緋蓮

うおおおお、この話すごい。
すごいカッコいい。カッコいいというと変だと思うんだけど、迫力が凄い。

シルクロードの要衝ぽい都市の豪商の跡取りに嫁いできた女性の心理が狂おしいまでに迫ってきて、こころのなかでキャーキャー言いながら読んでました。

夏は暑く、冬は寒い。たぶん大陸の真ん中か盆地なんだろうな。
住みよい街ではないのに繁栄している。上昇志向のある人たちが集ってるんだろうな。

ただひたすら、復讐だけを望んで嫁いだはずなのに、夫の真情に触れていつのまにか変化していく自分に戸惑い、それを拒絶しようとする女性。

熱情あふれる旦那さんのふるまいが魅力的に色っぽくて、ドキドキです。
冷たさを抱いた女性と旦那さんの熱さの対比と、硝子が溶けていくさまが印象的でした。
これは凄いもの読んだわ。興奮しました!

で、これも御桜さんに読めてしまったわたし。御桜さん、何作投稿したんですか!←大いなる濡れ衣。

そして、やっぱり桂木さんぜんぜんわからない……。
藍間さんは勇者の話もそれっぽいかなと思ったんですが。
リリカルと滅び……うーむどっちだ。どっちでもないのか。

悩みつつ、次のブロックに参ります。

20140903の購入

ネットで頼んだ本が到着しました。

竜鏡の占人 リオランの鏡 (単行本)
乾石 智子
4041021421


以上、購入。

ところでわたくし、以前も書いたと思いますがネットではe-hon利用者です。
このサービスはマイ書店を登録して店頭受け取り現金払いができるところが気に入ってるのですが、登録していた書店が七月に閉店したため、受け取り書店を変更したのですよ。

なのに、変更したばかりの書店の近日閉店お知らせメールがやってきてびっくり。
受け取りに行ったら、本当に閉店のお知らせがあちこちに掲示されててがっかり。

こんなに頻繁にリアル書店がなくなるなんて、寂しいを通り越して寂寥を感じてしまいます。

でも、リアル書店の利用が減る理由もわかる。
品揃えが悪いんですよ、買いに行ってもたいてい見つからない。するとわざわざ交通費かけてまで行こうという動機がうすれます。

ただ、書店側の事情もわかるんで、もうどうしようもないような。

棚に陳列しきれないほどたくさん出版されるから小規模店だと確実に売れる線しか仕入れられないし、入荷もしない。

で、ますます魅力がなくなる。
わたしもマンガ以外は諦め気分ですから。

わたしは出版点数が多すぎるんじゃないかと思うんだけど。どうでしょう。

覆面作家企画6 Aブロック感想

覆面作家企画6、Aブロックの感想です。

いったん全部を読み終えてから、さあ書こうとしたら始めの方がわからなくなってしまいまして、また読み返しながらだったので時間が無駄にかかってしまいました。
十二作もあるんだから、こうなることは考えればわかりそうなものですよね。
最初から大ボケかましてしまったorz


A01 世界の秘境から ~夏だ!花火だ!お祭りだ!真夏の六千文字スペシャル~ 今回は通常放送より三千文字拡大版!豪華六千文字にてお届けいたします!

タイトルからすでに際物感が漂いまくりなんですが、冒頭で早々に吹きだしてしまいます。
美しい自然に育まれた異国の祭りの紹介ドキュメンタリー番組の映像的な描写が鮮やか。
なので、テロップの翻訳と現地語のセリフの現実とのギャップがたまりません。
こういうの実にありそうだなー、表面だけ見て面白がる外国人を相手にささやかな金もうけってやつですね。
真面目そうなまじない師さんが気の毒です、はじめから反対してたのに!www
プロ野球中継延長のおかげで彼女は救われたのか、どうなのか。
いや、再放送があるんじゃん……。

それと拡大版で六千文字ってことは普段は三千文字くらいの話をよく書いてらっしゃるのかなあ、とか邪推してみたりした。


A02 真夜中のラブレター ~男子学生より愛だけを込めて☆~

全寮制の男子校でくりひろげられる涙と笑いの青春ストーリー、おバカコメディー。
始めのうちはケルベロスの二つ名を持つ三人の教師たちの個性が際立ちますが、なんといっても破壊力抜群なのが三バカの練り上げた恋文もしくは恋歌。
読んでいて真顔が作れなくなりました。

この三バカ、きっと学園の伝説になるね、きっとなる。
ちょいチャラってなにさ!w

明るい雰囲気が楽しかった。
普段からおちゃめな話を書かれている方なのかな。


A03 鬼の泪

寂しくて哀しい、和風の異種交流譚。
意外だったのは日本昔話風の物語世界が、じつはすでに開国されてて異国人の文化を受け入れてずいぶん経ってるようだとあとでわかるところ。

異種と異人種とふたつの異文化の出会いだったのですねえ。

異人種はどうやら西欧人みたいなので、鬼の方の背景をもっと知りたいなと思いました。
実際どのような生き物でどのように暮らし、どんな歴史や伝承を持ってるのかとか。

気になったのは——記号がすべてーの長音記号になっていたところ。
ディスプレイで見てると区別がつかないんですが、iPod touchのテキストビュアーで縦書き表示をするとかなり目に付くのです。

あと、終わりにかけてまとめるのに苦労されたのかなあ、と。
もしかして駆け込み参加だったのかも。


A04 灯

これも異種交流譚で近世西欧風異端物。
異種交流譚は哀しみが付きものなのですねえ。
斜陽の帝国が舞台で主人公は森へ赴く神父。相手は魔と噂される女。
「森のような人」という表現がとても印象的で、ああ、そうなんだと納得してしまいます。
感情を石にするという設定は乾石智子さんのファンである私にはたぎるものがあります。
そして、流れの民が留まることの意味が凄かった。びっくりしたー。てことは最初はかれらは種なのかな←余計な妄想。
畏れと裏表にある憧れがせつなかったです。


A05 エダの花火

ずっと戦争をしている国のお話なのか、とふむふむ思っていたら、なんと打ち上げ花火で戦っているという。しかも、その花火の材料は。
ぽかーん。

この奇想天外なネタがごくごく日常的に淡々と描かれる様が、なんだか凄い。
平然と受け入れてる人々と社会の様子が、かなり怖い。
文明が発達し、学校制度やなにやかやが整備されている現代に近い世界であることも、薄ら寒い違和感を増長します。

志願者にとっては、死に花咲かせて見せましょうってやつなのかしら。
世の中、何が常識で非常識なのか、基準は何。慣習になると何でもふつうに受け入れてしまえるものなんだろうかと思ったり。

読みながら、私にとってはこれはちょっと星新一ぽいかなー、などと思ったりしました。


A06 羽虫

孤独な若者の孤独で悲痛な叫び。それを理解し癒してやれなかった者の、喪失と苦悩と哀しみのお話でした。
強い筋立はないのですが、設定に秘められた痛みを丸ごととりだして、日常にむきだしにしてみせるようなところがつたわってくる文章で、主役二人の関係性とともに惹きつけられました。

彼は彼の中で花火になったのかな……。
あ、05と被った。

A07 一生分の

美しくて残酷。
こういうのってヤンデレって言うのでしょうか?
主人公の不遇が不幸を生む、まさに負のスパイラル。
カスガの理由には納得がいきましたが、伏せられたままのファリエルの背景が気になって仕方ありません。
あと、主役に物言うことのできる幼なじみとの関係がどのように築かれたのかも興味がありますね。
同性じゃないのでよけいに。

不自然な改行は、なんとなく一定間隔で使われているようなのでフェイクでしょうか。
文章自体は整っているので無意識ってわけではない気がする。


A08 dead???:エンドorスタート

冒頭の臨場感を感じる描写から一転してはっちゃけコメディーに。
ぽんぽんと続く会話に、え? この子女の子だったのJKだったの? ってなりながら、ドピンクにのけぞりました。歌舞伎町のドピンク。つまり舞台は現代日本だ。

レインボーの少年とのふしぎな関わりにそのうち、なるほどーとなる展開にほのぼのとなりました。
しかし待てよ、死に際を看取るのが元親族の役割ならコロナを出迎えたミヤは彼女の誰かだったのかしら。

始まりはアレですが、なんとなくハッピーエンドな雰囲気で終わり、ほのぼのとなりました。


A09 火消し参り

そういうものだから、そういうものなのよ、うん、そうだね。
ってそういうことだからやってることの意味が子孫に伝わらないんじゃないかあ、てかわたしに教えてください火消しの意味を。

主人公が幼いところは仮名が多く、成長してからは漢字が増えて、見ただけで成長したのね、とわかるところが面白いです。

なのにまだ、そういうものなのですねえ。

これから経験を積んでいくうちに、そういうものの中身がわかってくるのかなと想像しますが、なにか事故でもあってぽっくりしちゃったらどうするんだよう、と余計な心配をしてしまう読み手です。

男の子(文字通り子供)との共同作戦がうまくいったときにはやったね!と思いました。
そして、ああ、こういう形で補佐してくれる存在がいることはいるのねと安心しました。

事件解決して一件落着、みたいな話は結構好きです。


A10 キャンドル・ミッドナイト

日本の中の異世界、それはでっかいどー。
大自然を満喫しながらの若者の自由気ままな一人旅がとても具体的です。
若いですねえ、うらやましいですねえ。
それができる時間と体力と気力をわけて欲しい……。

宿泊先はコテージなのか、コテージにおかみさん、というセットはちと違和感がありますが、美人らしいので何も言うまい。
これって、ひと夏のアレになるのかなあ……もやもやもや。

地に足のついた文章と展開だったのに、おかみさんのおかげでいろいろと不穏な妄想が……。


A11 PT

本文がすでに問いかけてますが、PTとはなにか。もしくはどれか。
私はピッチャー・チームが読みたかったです。
でも、全員ピッチャーじゃ、チームワーク的にはよくないか。
ピッチャーはマウンドで君臨する王様じゃないとね。
だけど、キャッチャーの君は連れないじゃないですか、これはピッチャーが情けなかったのかも。

なんて勝手なことを考えているうちに、答えが判明しておおおお……となりました。
ピッチャーであることより名前の方が重要だったのですねえ。
しかし地水火風の漢字は入ってない名前の方が多いのでは。
参加資格のえらい厳しいゲームなんですねえ。

ここはなんとか、うまいことパーティーが作れるように祈っておきますね。

会話のテンポがよくて面白かった。


A12 IRCオリンポスログ@プロメテウス炎上

ネットのチャットでギリシャ神話が進行する、ギャグコメディー……。
すごいハイテンションで最初から最後まで疾走してるので、ついていけるかどうか危ぶみましたが、やはり途中で振り落とされました。

いえ、私が悪いのですギリシャ神話の設定と固有名詞が頭の中で混沌としてるから。
うろ覚えなので、あれ? あれ? と思ってるうちに、インドや日本やほかの神様たちも出てきて、それぞれにらしいことをのたまわってくださるので、つい笑いつつ、混乱するというわけわからない状態。

読みながら、聖☆おにいさんのノリに似ているかなあと思ったりしました。
面白かったwww

ギリシャ神話に詳しい方なのかなあ。
いや、創作クラスタ的にはこれくらいは普通なのかもしれない。


駆け足ですが、以上です。
作者さんがどなたなのかは、現在うろうろと探しております。しかし初めて読む方ばかりなので取っ掛かりが何もなく、苦戦しております。
なんでそんな五里霧中のブロックを最初に選んだんだろう、自分。

今現在当てられる気が全くしておりませぬorz