『パワー 西のはての年代記III』

パワー (西のはての年代記 3)
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
430920497X

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読了。

『ゲド戦記』原作者による若者向け異世界ファンタジー。三部作の完結編。


十一歳の少年ガヴィアは水郷の生まれ。まだ幼児の頃に姉と二人掠われたかれは、それから都市国家エトラの名家アルカマンドで奴隷として育った。ひとびとはアルカマンドの奴隷は幸せだという。他の家の奴隷よりもはるかに待遇がよく、一定の年齢までは教育も受けられる。ガヴィもなんの疑問も持たず、アルカ家の支配下にある生活におおむね満足していた。問題は奴隷仲間のホビーがなにかと目の敵にすること、アルカ家の次男トームのエキセントリックな性格だけだった。そのうち姉のサロは恋していたアルカ家の長男で公正かつ穏やかなヤヴンにのぞまれ、かれのギフトガール(愛妾)となった。

ところが、あるとき、エトラは自軍の遠征時に不意を突かれ、隣国の軍隊に突然に包囲された。消耗戦を戦うことになった都市は、働き手として奴隷を供出するように命じ、ガヴィにも順番が回ってきた。他家の奴隷とともに挽きつぶされるように酷使されたかれは奴隷の現実を目の当たりにした。さらにつぎには都市の古文書の整理係として働かされるうちに、教育を受けた奴隷たちによって館の教育係に固く禁じられていた新たな思想を孕んだ詩人の存在を知ることになる。

ようやく自軍が帰還し、包囲戦から解放されて館に戻ったガヴィアだが、かれを待ち受けていたのはとてつもない悲劇だった。



『ギフト』からはじまった物語もこの作品で完結。
どの本も高密度なすばらしい作品でしたが、掉尾を飾るこれはとくにものすごいお話でした。

『パワー』はひとりの少年の成長物語であり、支配の力とそれに対抗する自由を考えつづけ文学であり、波瀾万丈の冒険物語であり、極上のファンタジー小説でもあります。

かなり苛酷な話であり、悲劇性の強い話でもあります。そのためにつねに緊張感のみなぎる話でもあります。それゆえに読むのがかなり辛いときもありました。そんなときにははじまりに置かれた美しく楽しいエピソードがかなりの救いになってくれた。(あと、『ケロロ軍曹』も・笑)それに、つづきを知りたいという欲望も衰えることはなかった。

辛いけど、読みたい。
読みたいけど、辛い。
でもこの世界に浸っていることは、私にとっては幸福なときだったのだと読み終えたのちの放心状態のなかで感じました。

ガヴィとともに暗くつらい道のりをゆき、痛みと苦悩の果てに見いだした光は、とてつもなく尊い、美しく輝くものでした。

異世界ファンタジー好きにはぜひとも読んでもらいたいシリーズです。

作者のル=グウィンは1929年生まれ。
八十近くになってもこんなにすてきな作品が生み出せるのだと思うと、そのことにも勇気をもらったような気がしました。

シリーズの既刊はこちら。

ギフト (西のはての年代記 (1))
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
4309204643


ヴォイス (西のはての年代記) (西のはての年代記 2)
アーシュラ・K・ル=グウィン 谷垣 暁美
4309204783


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