『テンペスト 上 若夏の巻』

テンペスト 上 若夏の巻
池上 永一
4048738682

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読了。

沖縄出身の著者が、ヴィクトリア朝時代の沖縄を舞台に、ひとりの少女の数奇な人生と列強に翻弄される琉球王朝の運命を描く、歴史ロマンファンタジー大作の上巻。

これはすごい!
作品から放たれるパワーに圧倒されました。
以前から作者さんの作品には得体の知れない、というと失礼ですが、とにかくものすごいエネルギーが満ち満ちていましたが、このお話においてついに津波となって押し寄せてきた、という印象です。

感嘆、狂気、乱舞、恐怖、不安、喜び、そうか、これって感情のエネルギーなんだ、と今書いていて気づきました。

ヒロインは父親にのぞまれずに母の死と引き換えに生まれてきた子です。
父親は男の子をのぞんでいて、生まれた彼女には名前もつけず放置、かわりに親戚から養子をもらいます。
名前を与えられなかった彼女はあるとき自分で自分に名をつけます。その名は真鶴。
(あ、そうか。これって祀るに繋がるのねー。)

ところが兄となった嗣勇は学問に才をあらわさず、父親の怒りを避けるために真鶴がかわりに問題を解いてやる始末。真鶴は学問全般に秀でていて、軟禁されているキリスト教宣教師ベッテルハイムの元に通ってヨーロッパ系の外国語まで身につけてしまいます。しかし父親は真鶴を認めない。彼女は女だから。女は科試を受けられない。首里城の役人になることもそこで出世することも出来ないから。

しかし、あるとき兄が父親の仕打ちに耐えかねて家出をした。真鶴はここで最初の決断をします。すなわち、自分は女を捨てるという決意です。
父親は男装で現れた娘にかつて与えるはずだった名を授けます。孫寧温と。

そこからはもう山あり谷あり崖あり海ありというかんじで、怒濤のごとくストーリーが展開してゆきます。
作中でもまれつづける琉球さながら、押し寄せてくるエネルギーに翻弄されるまま息も絶え絶え、きゃー、ひー、うわー、ぎゃー、と読み手の心の悲鳴はあがりつづけます。

ちょっと個性的すぎる登場人物もたくさん登場。
思いこみの激しい父親。女形をめざしていた兄。親友となるライバル。賢者兼かわりもののおじいさん。陽気で酒飲みで何度も科試に落ちているおじさん。とこのあたりまでは池上作品ではごく普通。
さわやかな青年武士はいままでにないタイプでおっと思い、けれどお約束のオバァが登場しないなあと呟いたとたんに女たちのとんでもない地獄が目の前にひらけてしまったり(苦笑、かなり壊れた清国の宦官のご登場には、うわーコレだよコレ!と叫んだり。

ちょっと『彩雲国物語』を彷彿とさせるところがあったりもしますが、あちらの可憐な繊細さはこの世界では存在できないでしょう。すぐに踏みつぶされてしまうに違いない。

琉球が清と日本、そして列強の渦の中で変化していく過程がここにあるのだとおもいます。
ひとびとの悲痛な叫びを無視して突き進む、時代の流れがここにあるのだとおもいます。

表にあらわれる男の理性と物質の世界と裏にひそむ女の情と霊的な世界がからみあい、ぶつかりあい、歴史の流れとともにおおきな渦を巻き起こす。
爆発を繰り返すような力にあふれる描写にどこか遠くの世界に放り投げられているような、極彩色、絢爛豪華な琉球文化にいろどられた、壮大かつ劇的な歴史ファンタジーです。

まさに嵐。
まさにテンペスト。

これから読もうとする方は絶対に上下巻揃えておのぞみ下さい。
しかたがなかったとはいえ、つづきを求めてもだえているおバカがここにいます。
下巻がはやく読みたいよう~ょぅ~ょぅ~ょぅ~←エコー(笑。

テンペスト 下 花風の巻
池上 永一
4048738690

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