『チーム・バチスタの栄光』上下巻

チーム・バチスタの栄光(上) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 599) (宝島社文庫 599)
海堂 尊
4796661611


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読了。

とある大学病院にアメリカから招聘した心臓外科のスペシャリストを中心に組織された“チーム・バチスタ”。成功率60パーセントの手術で連戦連勝を重ねたチームにあるとき異変が訪れる。立て続く術中死を調査する命令を受けた万年講師田口の孤軍奮闘と、突然あらわれて指揮を執ることになった厚労省の役人白鳥の怪捜査を描く、医療ミステリ。

第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作品。

ちょっと読んでみたいかなあと思っていた矢先に持ってる人がいたので、貸してもらって読みました。

うーん、面白かったです。

うーん、というのは私の予想とはだいぶ雰囲気が違っていたことをあらわすのですが、娯楽ミステリとしてはかなり高水準の作品だと思いました。

ムードとしては冲方丁と『銀魂』を掛け合わせて割ったような感じ?
洗練度とキャラクター度は上記のふたつにはおよびませんが、医療知識と医療現場の臨場感で圧倒します。構成、ストーリー展開ともいうことなし。
ラノベっぽいけど、幾分社会派っぽい雰囲気も備えていて、スピーディーに進むスリリングな小説。
読みやすいことは間違い無しです。

現代の医療現場の抱える矛盾や問題点などの隠しテーマもきちんと活かされているし、ミステリとしてカタルシスが味わえるのもよいと思います。

娯楽作品はこうあるべきなんだろうな、という見本みたいな感じ。

というわけで以下は個人的な違和感の正体をさぐる文なので、興味のない方はすっ飛ばしてください。


チーム・バチスタの栄光(下) 「このミス」大賞シリーズ (宝島社文庫 600) (宝島社文庫 (600))
海堂 尊
4796661638



私が読んでいて抱いた違和感は、おそらく、この作品が終始医師視点で描かれていることからくるものだと思います。
不定愁訴外来の意義など、患者に対する配慮もきちんとされているのですが、あくまでもそれは医師の見ている風景である、という気がする。

立て続いた術中死はケースナンバーで呼ばれ、患者は名前が出てくるだけ。かれらの不安や恐怖、苦痛はどこにも描かれていません。かけがえのない家族を失った遺族の存在もまた、出来事の背景でしかない。

そんなことを掘り下げていたら娯楽作品にはならない、ということは重々承知しています。生と死の狭間に置かれたものの心中など描こうとしたら、それは娯楽作品の一部分として片手間に中途半端におこなえるものではない。それだけで一作品かけてもまだ足りないくらいの大きなテーマだから。

でも、その存在のかけらでも匂わせてくれるような描写があればよかったのになと、思わずにはいられませんでした。

たぶん、私はこんなに長く医者とばかりつきあっていて医者も人間だとよくわかっているのに、まだどこかで医者に依存しているところがあるんだとあらためて指摘されたことがイヤだったのかもしれません。

そんな自分に呆れつつ、でも医者ってやっぱり頼りになる存在でいて欲しい。と思ってしまうのも事実なのでした。

というわけで、読み終えたあとでドラマのキャストを調べてみたら茫然。
全然イメージと違うんだもの。
と私のイメージの源泉はどこにあったかとさぐると、すべて今まで出逢った医療関係者であることがわかって笑っちゃいました。

そういえば、どんなに相性の悪い医師でも、頭悪そうなひとには会ったことはありません。どんなに優秀な役者さんでもその頭の良さそうな雰囲気を出せる人はあんまりいないような気がします。

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