『フーバニア国異聞 水の国の賢者と鉄の国の探索者』

フーバニア国異聞―水の国の賢者と鉄の国の探索者 (C・NovelsFantasia し 3-1)
縞田 理理
4125010544


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読了。

『霧の日にはラノンが視える』の縞田理理さんによる、近代西洋風異世界ファンタジー。

 浜辺で溜息をつきつつ海を見つめている青年がいた。彼の名はエラード・グリンリー。成り上がり准男爵の三男坊で絵描きである。潮が引いた時にあらわれる海の道の向こうにかれの目的地フーバニアはある。有能なふたりの兄と比べられて、絵を描くことしかできないエラードは“役に立たない男”として存在してきた自分が嫌だった。そんな自分にアカデミー入りの話が巡ってきた。こんな機会はまたとないだろう。だが、そのためにはおそろしい人食い人間の住まうという魔境フーバニアで現地調査をするという条件が付いていた。父親の命令でしかたなく対岸の村まで着たものの、潮が引くとともに現れるフーバニアへの道を目の前にしてエラードは散々逡巡を繰り返していた――。




産業の発達で世界規模の繁栄を迎えた大カリカテア連合王国。未曾有の発展で周囲に敵を作りまくりのカリカテアは深刻なエネルギー不足に陥っていた。そこでカリカテアの宰相が目をつけたのが隣国フーバニアだった。

というわけで、のんきなエラードは自分が父親に認めてもらうことばかり考えてましたが、じつはフーバニア侵攻のための先兵として前調査をさせられることになっていた、というわけ。

産業革命を迎えたイングランドとイングランドに蹂躙されていたアイルランドを彷彿とさせるような設定で、シビアな現実も踏まえて書いてありますが、作品の雰囲気はほのぼのおだやか。いつものようにかなりグロテスクな部分がありますが、それもやはりさらりと描かれているので深刻に読まない限りそれほど気にするようなこともないでしょう(人間の中身を吸い尽くす植物とかありますが……)。

これはこの作者さんの持ち味なのかな。人間を描く視線が暖かいのと動物たちへの愛情がたっぷりで、その部分にふわふわと和まされてしまうのです。動物たちはホントに可愛いです。とくにクロアシミミギツネのちびったら! 可愛いし賢いし、ほんとにもうコイツは! て感じですv

今回の主役は、フーバニアそのもの、ですね。
この土地の奇妙奇天烈なことといったら、ガリバー旅行記を読んでいるみたいでした……といってもガリバー旅行記を真面目に読んだことはないので適当なことを言ってるのかもしれませんが。
この土地の個性がもの凄く強くて最後まで脳裏から消え去ることはありませんでした。
フーバニアの存在とフーバニアと人間の関係だけが強烈に焼きつけられた作品でした。

それに比べると人間ドラマの方はちと薄味だったような。
エラードとフーバニアの“ぼんやり”ネイリン青年の間柄にもっとなにかあるのかなーと期待して読んでいたのですが、なにもありませんでした。いや、期待していたのはBLじゃないです。今までの作品傾向から推測してみて、この作品の真の主役はネイリンではないかと踏んでいたので、当てが外れただけです(苦笑。

一冊でまとめるために駆け足になってしまったのかなと思う。結果として話全体が淡泊なかんじにしあがってしまってます。読み物としてまとまっているのはいいのですが、食い足りない。
ファンタジーとしてはいいのですが、一般読者にはさらりとしすぎているような。
私としても、ほかの作品が大好きなだけにもうちょっと書き込んで欲しかったかなーと。

というわけで、つぎの本に期待いたします。

こちらが私の大好きな『霧の日にはラノンが視える』↓。
二巻なのは一巻には書影がないからです。

霧の日にはラノンが視える (2) (ウィングス文庫)
縞田理理 ねぎし きょうこ
4403540805


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