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『イスラームの世界観 「移動文化」を考える』

イスラームの世界観―「移動文化」を考える (岩波現代文庫 社会 161)
片倉 もとこ
4006031610


[Amazon]


読了。

永年イスラーム世界でフィールドワークをつづけてきた著者による、イスラーム世界伝統の動の世界についての歴史と実体験と、それによって停滞する現代社会をも考察する比較文化論エッセイ。

うわー、この本すげえ面白い!!

ちょっと下品ですがそんなふうに叫びたくなった、目から鱗が落ちまくりの一冊です。
イスラームがわからないと思う初心者にもイスラームをちょっと囓っているひとにも、いまの時代の空気に圧迫を感じてどんよりと沈んでるひとにも超お薦め。

タイトルが大げさでは著者があとがきで書かれてますが、この本はまさにイスラームのひとびとの考え方生き方そのもの、を直に感じさせてくれる本だと思います。

読んでいて興奮興奮。
エッセイを読んでこんなに興奮したのは初めてかもしれない。

とくに、


人生とは、目的地の決まっている旅である



というくだりには、衝撃すら覚えました。
けっこう使い古されている表現なのに、この本の中にあってはこれが実に生き生きとした実感のこもったものとして心に響いたのです。
(というわりには、どのへんに載っていたのかすっぱり忘れてますが;)

そしてこの言葉は「だから道程を楽しまないでどうする」という考え方に繋がるのです。
移動文化は目的めざして一直線というものではなく、移動の過程を十分に楽しんで結果として行き着いたところが目的地だった、という文化なのですね。

詳しいことは実際に読んでいただきたく思います。
参考に、目次を載せておきます。


プロローグ――「移動文化」との出会い
 動きのある世界 動かない方がいい世界 「移動文化」との出会い 水陸両棲の遊牧民 都会の遊牧民 イスラームの「動の思想」 日本にもある「動の思想」

第一話 海の遊牧民
 海に出ていった遊牧民たち 「バーディヤ」とは 真珠とりの起源 「大きな季節」 詩や歌の役割 手づくりの香り

第二話 大海へおどりでた人びと
 「海の民」アラビア人 海上貿易ことはじめ 季節風にのって 商人だったムハンマド アラビアの大征服時代 女性商人の活躍 水先案内人たち 海の民の文化遺産 移動する学者たち

第三話 移動の哲学
 「巡礼の道」シルクロード 旅の原型「巡礼」 旅人保護の制度 「所有」しないこと みえないものを大事にする よどませない経済 無利子金融とは 根づくイスラーム銀行 国境を軽やかにこえて 「ナショナリズム」から「トランスナショナリズム」へ

第四話 文化の移動――エジプト人の場合
 属地的文化と属人的文化 流動的なエジプト社会 バンクーバーのエジプト人 異文化対応の三類型 社会的ネットワーク ふるさととの関係 「アラビア語」の問題 イスラーム学校 食と飲酒の習慣 「契約」意識の強い結婚 葬儀と墓地 断食と礼拝 クリスマスをどう過ごすか たかまるイスラームへの関心

第五話 共存か共生か
 「共存」と「共生」 「平和共存」という共存 同化の限界 「共存」の実態 「まあい共生」とは ミッレト制 ダマスカス――「迎え入れる文化」 「非構造的共生」の社会 「愛着空間」と墓

第六話 日本にもある「動の思想」
 遷宮――日本文化の基底にある「動」 永遠を支える「動の思想」 「ゆっくり」と品格 古代・中世――移動民の時代 漂泊へのあこがれ ゆたかな「動」の時代へ

第七話 ホモ・モビリタス――あたらしい遊牧民の時代へ
 移動によって「人類」は「人間」になった みえない地図 「移動」をつねとする人びと 『ルーミーの寓話』 個人移動の時代へ 二一世紀はハイモビリティ時代

エピローグ――「目的へまっしぐら」からの脱却
 「しめきり時間」ではじまった湾岸戦争 直線か曲線か 自然は曲線でできている 目的思考からの脱却 道中を楽しむ 天女たちの舞

岩波現代文庫版あとがき




いやー、以前から読みたいと思っていたんだけど、まさかこんなに面白い本だったとは!

そういえば、片倉もとこさんといえば私が最初に読んだイスラームの本の著者だったのでした。
あの本を読まなければ、大学でアラビア語やイスラームやその周辺の歴史やなんやらを学んだりしなかったと思います。

当時は一般向けの著作は他になく、一時期私自身もイスラーム文化から遠ざかってしまったりしてずいぶん長い間ご無沙汰してましたが、こんな形で再会を果たそうとは予想もしなかったです。しかも、こんなに衝撃的に。

調べてみたらまだまだ他にも面白そうな本があったので、のんびりと手を伸ばしてゆきたいと思います。

私の初めてのアラブ・イスラーム本。読んだのはNHKブックス版でした。
アラビア・ノート (ちくま学芸文庫)
片倉 もとこ
4480087265

2002年に出たのにもう絶版?(涙。

こちらは最新刊。
ゆとろぎ―イスラームのゆたかな時間
片倉 もとこ
4000254065


これも面白そうです。
イスラームの日常世界 (岩波新書)
片倉 もとこ
4004301548


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