『泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部』

泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部
酒見 賢一
4163251200


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読了。

言わずとしれた中国の歴史伝説『三国志』を様々な資料を基に現代的な突っ込み(解説と感想)を入れつつ作者視点で描き出す、大河歴史戦記注釈付き小説。

いやはや。
こんなに面白い三国志は初めてです……といえるほどには三国志を読んできてはいない私ですが、こんなに奇天烈な三国志はこれ以外ないだろうということだけは断言できます。

その奇天烈さはというと、滅多なユーモアでは吹き出さない私が可笑しさのあまり読んでるページを見失わぬよう指で必死に押さえたまま笑いつづけたこと数知れず、というとんでもなさ。

ちまたに流布する『三国志』『三国志演義』、正史(とされている)『三國志』をふまえつつ設定したという登場人物たちをあくまでも資料に従っているといいながら奇想天外に活躍させては、堂々と大爆笑のツッコミを入れつづけるという、博覧強記の作者にしか許されないであろう前代未聞の『三国志』小説であります。

酒見せんせいの筆にかかると劉備は元手もなしに博打をうちつづける賭博ジャンキー、外見は化け猿。趙雲は人殺ししかしてこなかったために女性に免疫のないある意味少年のような心を持つ、外見はぐれ恐竜。

タイトルロールの孔明は、諸葛孔明は、泣き虫弱虫どころか、奇人変人、意地悪妖怪、口から出任せ、暗躍奇行のコスプレ変態ということにあいなるのです。

もちろん関羽と張飛だってそんじょそこらの関羽と張飛ではありません。

これでいいのか! と思いつつもその根拠は作者によって延々と語られるので納得せざるを得ません。その突っ込みのように挿入される解説話がこれまた抱腹絶倒なのです。

この本、面白さの割に読書スピードがまったく上がらないので私、自分がどうにかなったかと思いましたが、終わりに近づくにつれて理解しました。

この本の面白さは小説にのめり込んで得る面白さではない。
この本の面白さは、歴史解説書の面白さであると。

というわけで、お話に吸いこまれて物語世界をシリアスに満喫したいという向きにはあまりお薦めできない本かと思われます。
作者とともに三国志の世界をネタに楽しもうという、遊び心にあふれた方にお薦めします。

あと、サブカルチャー系のパロディーが頻繁に挿入されますので、そういったものがお好きな方にも楽しめるのではないかと。

途中で幾度も、「これ『銀魂』じゃないよね……」と呟いたのは私です(汗。

ところで、このシリーズ、まだ完結していません。
前巻は孔明が劉備軍団に迎えられたところで終わってましたが、この巻は長坂坡の戦い(逃走)の終わりまでが収録されています。

なんだー、赤壁まで行ってないんだー。

じつは私、絶賛公開中の映画『レッドクリフ』を見たくおもい、その予備知識を得られるのではと期待して第弐部を読み始めたのでした。

が、そんなこと以前にこのような『三国志』で予備知識をつけたらとんでもないことになるであろう。

赤壁まで描かれてなくてむしろよかったのでは。
いや、すでに手遅れという感がありありという気もいたします。

だからこの本、映画に便乗して宣伝したり文庫化したりしないのかもしれませんね。
本編も2007年刊行のあとつづきも出ていないしな。
もしかしてシリアス三国志ファンの顰蹙とお怒りを買ってしまったのかしらなどと勝手に推測したりして。

うーーーん。どうしよう『レッドクリフ』。
見たら映画館でひとり大爆笑してしまいそうな予感がするよ。
そんな不審人物になってまで見たいのか、自分? と問うているところです。


調べてみたら、このつづきは『別冊文藝春秋』にて連載中、だそうです。
映画はともかく、本の続きは絶対に読む、と心に決めました。

シリーズの第一巻はこちら↓。

泣き虫弱虫諸葛孔明
酒見 賢一
416323490X


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