『翼の帰る処 下』
翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)
妹尾 ゆふ子


[Amazon]
読了。
キャラクターと物語世界が陰影を持って薫り高くうかびあがる、幻想と現実、陰謀と日常の異世界ファンタジーの下巻。
購入後、即読み始めました。
私にしては例外中の例外ですが(自腹本は大抵一、二ヶ月は寝かせておくのが普通)、それだけ、上巻を読んでの感触がファンタスティック! だったので待ちきれなかったんです。
期待は違わず、しかし大いに予想を外されました。
隠居希望の三十六歳文官が元気いっぱいの男前皇女と任地のために、虚弱な身体に鞭うって頑張る奮闘記、であることはおんなじなんですが、舞台がいきなり冷涼な北嶺から蒸し暑い王都に移り、物語は陰謀と画策の暗い雰囲気をおびてゆきます。
ヤエトは皇女の療養命令で皇女の同腹の兄である第三皇子の下に身を寄せるのですが、このあたりの陰々滅々たる展開は舞台であるところのラングールの蒸し暑さと軟禁されてる石造りの塔の暗い重苦しさとヤエトの息絶え絶えな感じが相まって、なかなかに陰謀劇の雰囲気を盛り上げてくれてます。
しかし、病人をこんな気候の場所に送り込んで療養というのはなあ……。
第三皇子でなくても信用しないと私などは思いますよ(汗。
その第三皇子に閉塞感たっぷりの石造りの塔に押し込まれて(蒸し暑いのに石造り!)の、非常にストレスフルな環境にヤエトは置かれてしまうわけで、これでは身体は弱るばかりでけして元気になんかならないと思います。
救いは皇女が幼い頃からつとめているという伝達官のおじさんの飄々とした存在感と、ヤエトが虚弱なだけで特定の場所が常に特別に痛むわけではないらしいってところでしょうか。
私なら急激に病状を悪化させて、人生最悪状態になってるな。
自分でも言ってますが、ヤエトは存外しぶとくできていると私も思います。
しかし極限状態になっていることはなっているらしく、陰険な人間関係と悪環境の中でヤエトの恩寵は自分の意志を超えてあきらかな暴走状態に。
そのたびに瀕死に陥りながら頑張るヤエトくんに私は感嘆というかなかば呆れの混じった感動を覚えました。
いきなり話が変わりますが、この本のタイトル、まさに物語のテーマそのもの、生きる目的を持たない根無し草だったヤエトが自分の宝物を見つけて人生の転換期を迎えるときを描く展開そのものを印象深く表現した、極上のタイトルだと思います。
艱難辛苦に見舞われながらも這いずるように前進するヤエトの心にはまだ無自覚ながらみずからの居場所をようやくみつけたのだ、この場所を自分の拠り所となる宝物を守らねば、という想いが強く強くわきあがっているんだなと感じ、これだけ必死になれるものを見つけたかれは本当に幸せだと、どう考えても不幸な状況の主人公を読みながらも私はそう思わざるを得なかったのでした。
多分、ヤエトはあんまり認めたがらないでしょうけれどね。
でも本心ではこんなに苦労しながらも、ものすごく安堵して充実しているんだと思いましたよ。自分にかけられた呪いだと思っていた恩寵の力を、これだけ躊躇なくふるってしまうんですからねえ。
恩寵の力と言えば、ヤエトの見る幻視が現実と交錯してゆくシーンが、のちの話の展開に大きくかかわり、失われたはずの過去の奇跡が甦るまでにゆきつく展開には、ファンタジー読みの血がざわざわぞわぞわと騒ぎました。
クライマックスで甦ったいにしえの伝説は、まさにこれがファンタジーであるといいたいような魔法の力に満ち満ちていて、私はこのシーンを何度も読み返しました。
圧倒的な威厳と存在感をもつ力がひとの子にもたらす奇跡の実現は祝福となり、上空へと飛翔します。大空の開放感にあふれたラストシーンにはちょっとうるっとしてしまったよ。
そしてしばらく茫然として物語の余韻に酔いしれました。
すてきな物語をありがとう、と作者様には深く御礼を申し上げます。
ところで、この話は今までの妹尾作品にはまれなキャラクター小説であったなと読み終えて思うわけですが。
エンディングは、ラヴシーンなんですよね?
私は皇女的には絶対にそうだと思うのですが、ヤエト的にはどうなんだろう?
皇女の乗鳥(?)クラルはなにを皇女に言ったんだろう?
もしかして、つづきでは無自覚ヤエトをめぐって皇女とセルクの戦いがくり広げられるのでしょうか。
鳥たちはとてもかしこくかわいらしく、物語をほのぼのと彩ってくれました。
そういえば、あの感動的なシーンを鳥視点で感じてみたかったなー。
あと、皇妹殿下の現実にはひょえーとなりました。まるでエレン・カシュナーのトレモンテーヌ公爵夫人みたい。ルーギンってマゾなのかしら。
忘れちゃいけないのは皇妹騎士団長ジェイサルド様。
きゃー、かっこよすぎですー!
上巻読んだ時に目をつけた私は間違っていなかった。砂漠の悪鬼なんて二つ名を持ってらっしゃるとは思わなかったけど。商人ナグウィンとのやりとりが非常に楽しかったです。かれが唯一忠誠を捧げた黒狼公ってどんな人なんだろうか。ああ、知りたい知りたい!
続編の刊行がほぼ決定ということなので、とても楽しみにしています。
ヤエトが忙しい合間に北方文字を解読する話になるのかなーとか、勝手に予想して勝手に悶えて待ってます。
翼の帰る処(ところ)〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子


作者様が「積読山脈造山中: 翼の帰る処(下)」で感想コメント・トラックバックを募集されています。今回もドキドキしながら送ります。
妹尾 ゆふ子

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読了。
キャラクターと物語世界が陰影を持って薫り高くうかびあがる、幻想と現実、陰謀と日常の異世界ファンタジーの下巻。
購入後、即読み始めました。
私にしては例外中の例外ですが(自腹本は大抵一、二ヶ月は寝かせておくのが普通)、それだけ、上巻を読んでの感触がファンタスティック! だったので待ちきれなかったんです。
期待は違わず、しかし大いに予想を外されました。
隠居希望の三十六歳文官が元気いっぱいの男前皇女と任地のために、虚弱な身体に鞭うって頑張る奮闘記、であることはおんなじなんですが、舞台がいきなり冷涼な北嶺から蒸し暑い王都に移り、物語は陰謀と画策の暗い雰囲気をおびてゆきます。
ヤエトは皇女の療養命令で皇女の同腹の兄である第三皇子の下に身を寄せるのですが、このあたりの陰々滅々たる展開は舞台であるところのラングールの蒸し暑さと軟禁されてる石造りの塔の暗い重苦しさとヤエトの息絶え絶えな感じが相まって、なかなかに陰謀劇の雰囲気を盛り上げてくれてます。
しかし、病人をこんな気候の場所に送り込んで療養というのはなあ……。
第三皇子でなくても信用しないと私などは思いますよ(汗。
その第三皇子に閉塞感たっぷりの石造りの塔に押し込まれて(蒸し暑いのに石造り!)の、非常にストレスフルな環境にヤエトは置かれてしまうわけで、これでは身体は弱るばかりでけして元気になんかならないと思います。
救いは皇女が幼い頃からつとめているという伝達官のおじさんの飄々とした存在感と、ヤエトが虚弱なだけで特定の場所が常に特別に痛むわけではないらしいってところでしょうか。
私なら急激に病状を悪化させて、人生最悪状態になってるな。
自分でも言ってますが、ヤエトは存外しぶとくできていると私も思います。
しかし極限状態になっていることはなっているらしく、陰険な人間関係と悪環境の中でヤエトの恩寵は自分の意志を超えてあきらかな暴走状態に。
そのたびに瀕死に陥りながら頑張るヤエトくんに私は感嘆というかなかば呆れの混じった感動を覚えました。
いきなり話が変わりますが、この本のタイトル、まさに物語のテーマそのもの、生きる目的を持たない根無し草だったヤエトが自分の宝物を見つけて人生の転換期を迎えるときを描く展開そのものを印象深く表現した、極上のタイトルだと思います。
艱難辛苦に見舞われながらも這いずるように前進するヤエトの心にはまだ無自覚ながらみずからの居場所をようやくみつけたのだ、この場所を自分の拠り所となる宝物を守らねば、という想いが強く強くわきあがっているんだなと感じ、これだけ必死になれるものを見つけたかれは本当に幸せだと、どう考えても不幸な状況の主人公を読みながらも私はそう思わざるを得なかったのでした。
多分、ヤエトはあんまり認めたがらないでしょうけれどね。
でも本心ではこんなに苦労しながらも、ものすごく安堵して充実しているんだと思いましたよ。自分にかけられた呪いだと思っていた恩寵の力を、これだけ躊躇なくふるってしまうんですからねえ。
恩寵の力と言えば、ヤエトの見る幻視が現実と交錯してゆくシーンが、のちの話の展開に大きくかかわり、失われたはずの過去の奇跡が甦るまでにゆきつく展開には、ファンタジー読みの血がざわざわぞわぞわと騒ぎました。
クライマックスで甦ったいにしえの伝説は、まさにこれがファンタジーであるといいたいような魔法の力に満ち満ちていて、私はこのシーンを何度も読み返しました。
圧倒的な威厳と存在感をもつ力がひとの子にもたらす奇跡の実現は祝福となり、上空へと飛翔します。大空の開放感にあふれたラストシーンにはちょっとうるっとしてしまったよ。
そしてしばらく茫然として物語の余韻に酔いしれました。
すてきな物語をありがとう、と作者様には深く御礼を申し上げます。
ところで、この話は今までの妹尾作品にはまれなキャラクター小説であったなと読み終えて思うわけですが。
エンディングは、ラヴシーンなんですよね?
私は皇女的には絶対にそうだと思うのですが、ヤエト的にはどうなんだろう?
皇女の乗鳥(?)クラルはなにを皇女に言ったんだろう?
もしかして、つづきでは無自覚ヤエトをめぐって皇女とセルクの戦いがくり広げられるのでしょうか。
鳥たちはとてもかしこくかわいらしく、物語をほのぼのと彩ってくれました。
そういえば、あの感動的なシーンを鳥視点で感じてみたかったなー。
あと、皇妹殿下の現実にはひょえーとなりました。まるでエレン・カシュナーのトレモンテーヌ公爵夫人みたい。ルーギンってマゾなのかしら。
忘れちゃいけないのは皇妹騎士団長ジェイサルド様。
きゃー、かっこよすぎですー!
上巻読んだ時に目をつけた私は間違っていなかった。砂漠の悪鬼なんて二つ名を持ってらっしゃるとは思わなかったけど。商人ナグウィンとのやりとりが非常に楽しかったです。かれが唯一忠誠を捧げた黒狼公ってどんな人なんだろうか。ああ、知りたい知りたい!
続編の刊行がほぼ決定ということなので、とても楽しみにしています。
ヤエトが忙しい合間に北方文字を解読する話になるのかなーとか、勝手に予想して勝手に悶えて待ってます。
翼の帰る処(ところ)〈上〉 (幻狼ファンタジアノベルス)
妹尾 ゆふ子

作者様が「積読山脈造山中: 翼の帰る処(下)」で感想コメント・トラックバックを募集されています。今回もドキドキしながら送ります。
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