『仮面祭 夢語りの詩・番外編』

仮面祭―夢語りの詩・番外編 (花丸ノベルズ)
妹尾 ゆふ子
459286056X



読了。

華麗な文章でつづられる幻想小説短編集。「夢語りの詩」シリーズの番外編。

これも再読。
これで既刊の「夢語りの詩」は終わりです。
もっと出ると思っていたんですが、いつのまにやら……しくしくしく。

ともあれ、この本には前二作とおなじ物語世界でおなじ人物のものがたる三編が収録されています。

収録作品は以下の通り。


仮面祭
影なる波の唄
湖に映る月

あとがき



幻想的な上に耽美で残酷。じつにストレートにタニス・リーを彷彿とさせる表題作は、著者のデビュー作だそうです。
文章に酔って読む私はこの展開がぜんぜん予想できませんでした。再読なのでしょうか、ホントに(汗。
こんな冷酷かつ痛い展開はファンタジーだからこそ成立する世界だなあとしみじみと思いました。

二作目の「影なる波の唄」は、語り手と聞き手が幾重にもかさなっていって、夢とうつつの境目も交錯してゆく、めまいがするような構成に凝ったお話。
波の下の王国というのはすなわち異界。
異世界にふくまれる異界には美しく残酷に人の精神世界が投影されています。
重箱形式の話というと「千夜一夜」などは典型ですが、この作品はその形式すら幻想の源としていて、余韻の深い物語になっています。

うーん、すごい。

三作目、「湖に映る月」は玉精というちと中国的なモチーフを扱って、人ならざる存在との恋愛を哀しく美しく描いたお話。

このお話も入れ子構造になってますが、「影なる波の唄」よりはわかりやすい構成。
玉精の王と玉造の妻の悲恋がきわだって印象的でした。

どれも話の筋をたどってしまえばそれほど驚くようなものではないのですが、描き出す文章のちからが物語の陰影を深く華麗に彩っていて、これぞ幻想文学、といいたいような雰囲気をつくりあげています。

いまはより身の詰まった実のある文章にシフトして、幻想のシーンの美しさとともに登場人物に血肉を感じるような文章になってきていますが、それは臨場感あふれる重厚なファンタジーを描くのにふさわしいものだと思いますが、この繊細でより美を意識した文章もこの作品群には似つかわしいものだと思いました。

タニス・リーやマキリップ、ジェイン・ヨーレンなどの欧米の作家の雰囲気と似たところがあるので、これらをお好きな方におすすめです。

――といいたいのですが、これも絶版。
書影はまたも私が作りました。著作権的にちょっと不安なんですが。
アマゾンでつけられている価格がものすごいので、吃驚いたしました。

表題作の「仮面祭」は作者様のサイトで公開されているので、まずはそちらでお読みになることをお薦めいたします。

妹尾ゆふ子【うさぎ屋本舗】内 「仮面祭」

トップページからたどろうと思ったらたどり着けなかったので直リンク(汗。

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