『生と死の北欧神話』

生と死の北欧神話
水野 知昭
4775400134


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読了。


古英語を専攻した研究者による、言葉の側面から読み解く北欧神話の精髄。

著者は古英語と古ノルド語つながりで北欧関係の資料にのめり込んでいった方の模様です。
北欧神話については、神話そのものよりも二次創作(といってもそれなりに古典ですが)のほうばかり読んでいた私ですが、とても面白かった!

この本を読んであらためて『エッダ』を読み返したいと思いました。

読んでいて感じるのは、北欧神話の殺伐とした雰囲気は厳しい風土だけではなく人類が最初に創りあげた哲学を生のまま受け継いだものなのではないかということ。

なにかというと集団暴力の果てに殺害、殺害されたものを糧として再生へと循環する世界は、文化という装飾をまとわないむきだしの生存競争の世界観であるように思えます。

初めのうちはなんという野蛮な世界かとあきれていましたが、その行為の裏には豊穣や再生を願うための深い祈りの精神が息づいていたのですねえ。

それにしても、北欧神話の神様ってこうしてみると人間とあんまりかわらない。ただひたすら暴力的なだけで。そういえばこの暴力的な雰囲気は『ヴィンランド・サガ』のヴァイキングたちに通じているような。

内容は説明しきれないので例によって目次。


序 北欧神話ことはじめ

第一章 『詩のエッダ』と『散文のエッダ』
 1 口承詩について
 2 北欧の国引き神話と国譲り神話
 3 「ギュルヴィの幻惑」の枠組み構造

第二章 宇宙創生論における水と火
 1 無から有へ
 2 生と死の発生源としてのニヴルヘイム
 3 炎熱の国ムスペッル
 4 巨人ユミルの誕生
 5 ユミル殺害と宇宙の創生
 6 太古の虚無ギヌンガガプ
 7 洪水説話と「流され王」伝説

第三章 よみがえる女神
 1 この世で最初の戦闘
 2 グッルヴェイグの虐殺と再生
 3 黄金で飾られた乙女
 4 ヴァン神族との和平
 5 運命の女神
 6 「槍の神」オージンの自己犠牲
 7 性的な恍惚と陶酔

第四章 掠奪された若返りの女神
 1 牡牛料理の神話
 2 棒振りの所作
 3 ロキによるイズン奪回の旅
 4 迫害と解放の図式
 5 蜜酒の女神と若返りの女神をむすぶもの

第五章 ロキの笑劇
 1 怒れる山の女神の来訪
 2 山の女神と悔神の聖婚と離婚
 3 性器露呈の神話
 4 綱引きの習俗
 5 冬至の山羊祭

第六章 殺されたバルドル
 1 序
 2 バルドル殺害神話の粗筋
 3 理想的なバルドル
 4 不死になったバルドル
 5 ロキ女装の旅
 6 ロキとホズの協同
 7 チェスゲームとバルドル虐待のゲーム
 8 神々の虚脱感とオージンの「喪失感」
 9 バルドルの運命
 10 イズン掠奪神話とバルドル殺害神話の類似
 11 万物の嘆き

第七章 王の犠牲と豊穣
 1 王殺しの伝説
 2 王の事故死
 3 『風土記』にみる供儀
 4 「はふり」の古代思想―「謀反」を起こした王の討伐―
 5 アガメムノン王と犠牲獣

終章 ラグナロク―神々の滅びゆく定め
 1 バルドルの葬送
 2 ロキの業罰
 3 神々の犠牲者
 4 円の呪縛
 5 魔の軍勢の襲来
 6 バルドルの再来と世界の新生

あとがき
索引




本文を読んでいていきなり『風土記』だの『記紀』だのが出てくるのでびっくりしましたが、精神史というものは遡れば遡るほどに地域のバリエーションはあれど本質的なものは同じみたいです。

日本民俗学の成果が北欧神話を読み解くのに役立つなんて、少し前なら疑問だったでしょうが、あれこれと囓るにつれてそうであっても不思議ではないなと納得できるようになりました。

ギリシャ神話が北欧神話に通じるのはそれを思うと何でもないことかと。

最後に、『エッダ』も読み返したいですが、幾度も引用されている『金枝篇』をものすごく読みたくなりました。
いまはちくま学芸文庫で手にはいるのですね。
しかし一冊1500円かー。うーむ、悩むなあ。

初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)
James George Frazer 吉川 信
4480087370


初版金枝篇(下) ちくま学芸文庫 フ 18-2
James George Frazer 吉川 信
4480087389


新刊として流通しているエッダも、高っ(汗。

巫女の予言―エッダ詩校訂本
Sigurdur Nordal 菅原 邦城
4486012259


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