『アンゲルゼ 永遠の君に誓う』

アンゲルゼ―永遠の君に誓う (コバルト文庫)
須賀 しのぶ
4086012391



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読了。

ウィルスによって人類の変化した生物アンゲルゼとの戦時下で、中学生の少年少女達が苛酷な運命と向かいあう様を描く、近未来SFシリーズ。完結編。

うわーーーん、なんという結末だ~~。
つねに少女小説としてはハードな作品を書く作者さんですが、ここまで緊密に濃密に苛酷で哀しくしかも美しい情景を描いた話は初めてではないかと思います。

ヒロイン陽菜ちゃんの視点から始まった物語は次第に世界を広げ、中盤あたりからはほぼ群像劇でした。しかも視点人物である青少年だけではなく年上の者たち、とくに親世代である中年のひとびとがしっかりと、それぞれの思いを抱えて懸命に生きている様がきちんと描かれている。

充実しているなーと思いました。
この作者さんは大人だ。

年齢的に敷島少佐に感情移入して読むことが多かったのでとくにそう感じたのだと思いますが。

かれは冷徹にふるまいながらも子どもたちのことを本当に思いやっていたんだなとわかって、嬉しいような切ないような気持ちになりました。
かれの過去がこの話の背景としてあったからこそ、この話はここまでの深みを持つことができたのだと思います。

もちろん、主役級の青少年達の不安と葛藤も切実に迫ってきました。
たしかにこれは日本の胸キュンな青春小説です。ハードすぎるけど。
でもこれまでの須賀作品には見られなかった初恋の甘酸っぱさをふんだんに味わえたです。

五巻予定が四巻になったとどこかで漏れ聞いた覚えがありますが、あわただしく詰め込んだような気配は微塵もなく、きちんと伏線を回収して緊張の糸を切らさずにラストシーンへとなだれ込んでゆくまで、実に濃密な時間を堪能いたしました。

読み終えるといろいろと感慨がわきあがり、深く余韻に浸ってしまいました。

物語としてこれほど完成されている話にひとつだけ願ったのは、かれらがアンゲルゼのいない世界で生きていたらという、まったく読み手のワガママな望みだった。←それってもうアンゲルゼじゃないから。

アンゲルゼのいないアンゲルゼ世界の妄想をバルーンのように膨らませてしまったのは私ですが、詳細は伏せます。

あとはさ、もーちゃんと湊君と少佐あらため大佐の軍隊ライフはどんなんかな、とか。このあたりはいつもの須賀作品テイストでいけそうなんですが、それよりも新作を書いて欲しいとも思うのでま、ただの欲望ですね。

ともかく、大変に面白かったし感動しました。
クライマックスシーンの美しさにも泣けました。
全四巻ですので、興味を持たれたらぜひ手にとって見てください。
少女向けが苦手な人でもけっこう平気なんではと思います。

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