『流れ行く者 守り人短編集』

流れ行く者―守り人短編集 (偕成社ワンダーランド 36) (偕成社ワンダーランド)
二木真希子
4035403601


[Amazon]


読了。

アニメ化された『精霊の守り人』を始めとする「守り人」シリーズの番外短編集です。
描かれているのは本編よりかなり過去のこと。

バルサがまだ十代のはじめで、育ての親ジグロとともに逃亡の旅をつづけながら様々なことを体験する物語。

収録作品は以下の通り。


浮き籾
ラフラ〈賭事師〉
流れ行く者
寒のふるまい



どれも物語世界の深みと人間へのぬくもりある洞察に満ちた、しみじみと余韻の残るお話でした。

「浮き籾」はバルサよりさらに幼いタンダ視点で描かれた、フーテンの寅さんみたいな近所のおじさんの人生にまつわるお話。

「ラフラ〈賭博師〉」は、バルサが年老いた賭博師の女性にさまざまなことを教えられるお話。すこし『マルドゥック・スクランブル』を彷彿とさせました。

「流れ行く者」は、ジグロとともに加わった隊商で流れ者の末路を見届けるお話。かなりハードなアクションものでもあり。

どれも人間に流れてゆく歳月の積み重ねが身にしみましたが、人生って甘くないけどやろうと思う意志があればいろんなことができるものだということも感じました。

今回、興味深かったのはジグロが生きて登場している! ということ。
かれがバルサにどう接し、どうやって育て、どんなことを学ばせてきたかがよくわかって、なるほどーと思いました。こうやってあのバルサ姐さんができあがっていったんだなーと。

それからこの世界の賭事のこと。
アニメ版にもサイコロ博打がでてきましたが、ここに出てきた賭博はさらに複雑で、戦略や戦術をも駆使する高度なものになりえて、さらにバルサがこのゲームを得意としているというあたりがなるほどでした。

全体的に幻想色は薄めでしたが、バルサにはその手の素養が欠けていたし、まだ自分のこと以外を背負い込む能力はないので、いたしかたないかなと思います。

唯一、タンダ視点の「浮き籾」が濃厚な異界性を持っているのは、タンダには生まれつきの能力があるからで、そのことがけして歓迎されていたわけではないこともわかります。

本編ではけっこうのほほんと日常を送っていてバルサの故郷みたいな雰囲気でいたタンダですが、かれはかれなりにいろいろと苦労があったんだろうなあ、というかこれから苦労するんだろうなあ、と思わされました。

それでも、最後の短篇でやはりタンダはバルサにとっての家のぬくもりを象徴している存在なんだなとあらためて感じ入った次第です。

読み終えた時にはシリーズ本編の最後がかさなって、なんとなくじわーっと来てしまいました。

とても上質な短編集だったと思います。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)