『サンシャイン&ヴァンパイア 上』

サンシャイン&ヴァンパイア〈上〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055265


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読了。


 魔物と人類が共存するアメリカを舞台に、毎日パンを焼いていた若い女性が突然ヴァンパイアがらみの事件にまきこまれていく様を、ディテール豊かに描くサスペンスダークファンタジーの上巻。


子どもの頃からパンを焼くことに魅力を感じていた彼女は、今や家族経営のコーヒーハウスの主戦力としてパンを焼く毎日を楽しんでいた。コーヒーハウスは順調で、そこには両親も友人も恋人もいる。おかげで彼女の世界はほとんどコーヒーハウスで完結していた。不満はないはずだったがそれでもストレスがたまる時はある。その夜、彼女は昔家族と過ごした湖の別荘へとひとりで足を伸ばした。そこは彼女の本当の父親の持ち物で、両親が離婚してからはときおり祖母と会うためにきていたところだ。だが、ヴードゥー戦争と呼ばれる魔物達との戦いを境に、祖母と会うこともなくなっていた。世界には人間と人間ではないものが存在している。獣人の血をひく人間など珍しい存在ではないがかれらが人間の味方であるというわけではない。とくに危険なものはヴァンパイアだ。危険を冒しているつもりはなかったが、彼女はいつのまにかそのヴァンパイア達に取り囲まれ、捕らえられてしまう。



レーベルからロマンス物かと敬遠してましたが、どうやらそうではないらしいという噂を聞き、読んでみました。

おお、これは面白いです!

ほとんどフツーの世界日常を描いているようなはじまりから、どんどん違う側面が見えてくる。
パン屋の娘の忙しくてクタクタだけれどどこまでも地に足がついた日常が、じつはとんでもない世界の上に成り立っていたことがわかっていく過程がたいへんにスリリングでした。

それだけではなく、同時に日常に溶けこむために伏せられていたヒロイン自身に関する物事があきらかになっていくので、どこを読んでいても気がぬけない。

荒唐無稽な非日常と日常の地続き感が絶妙で、うわーうわーとクロワッサンの薄皮を剥いでゆくような快感が味わえました。

物語世界の説明とヒロインの背景の説明とを、導入部の勢いの中でこなしてしまってる。
気がつくと説明的な文章はかなり多めなんですが、それをうっとおしいと思わせずに読ませてるところが、すごいなーと思いました。

それからですね、この話の中でのヴァンパイアはかなり非人間的でしかも非生物的で、生理的な嫌悪感を抱かせる存在として描かれているのですが、それでもなおかつ魅力的だと思わせるあたりも、おおーっでした。

いまのところ、ロマンス小説的な描写はなく、たしかにこれはロマンス小説ではなくファンタジーだなと納得。とはいうもののロマンス要素が皆無というわけではなく、それを予感させるようなシーンは随所に散見されてます。

ヴァンパイアものはやはり血だよね、血液。
なまあたたかい赤い液体が体をつたう感触だけで、どこかエロティックな雰囲気が漂うのです。

実際に自分の体から血液が流れ出るのを見ても、痛いかうへえと思うだけなのに、フィクションだとどうして興奮するのでしょうか。

ともあれ、この世界では魔物の存在は人類にとっては危険であり、間違っても友好関係を持つような雰囲気でないことはあきらかです。

魔物と人間が一緒に住んでるアメリカというと縞田理理さんの『モンスターズ・イン・パラダイス』が浮かびますが、根本的な姿勢が敵同士なので両者の間によこたわる世界は殺伐としています。

なんとなく妖怪達と仲良しになってほのぼのしてしまう昨今の日本のフィクションとは、かなり違いますねえ。
ロシアのルキヤネンコ作「ナイト・ウォッチ」シリーズの方が雰囲気としては似ている気がします。
やはり、キリスト教が根底にあるからかだろうか。よくわからないけど。

お話は、そんなハードな環境で出逢ったヴァンパイアとヒロインは、実際に共同戦線を張ることができるのかというところで下巻に続いてます。

人とあやかしが理解し合えるのかというテーマは、日本の妖怪ものと同じな気もするんですけど、こちらのほうがずっとハードルが高いのでクリアできたら感動しそうだなと思います。

あら、やだ。自分の感想を予想してるますよ私ったら。

余計なことは考えずにつづきを楽しみたいと思います。

サンシャイン&ヴァンパイア〈下〉 (扶桑社ミステリー)
Robin McKinley 藤井 喜美枝
4594055273


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