『放浪者の書 博打うち 娼婦 ペテン師』

放浪者の書―博打うち、娼婦、ペテン師
ハイナー ベーンケ ロルフ ヨハンスマイアー 永野 藤夫
4582474330

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読了。

中世後期から近世にかけてヨーロッパで大量に発生した流民・放浪者について書かれた文献の成立過程と目的、影響についてドイツ人研究者が考察する。

この本を借りてみたのは放浪者の生活実態などが知りたかったからなのですが、ちと目的とは外れていました。
この本は、流民の群れとそれらの引き起こす犯罪に悩まされた施政者や官憲が、その手口などに注意喚起をうながすための回状として作成された文書をまとめた書物についての研究書です。

いまでいうなら、振り込め詐欺のさまざまな手口について周知徹底するためのまとめ文書みたいなものでしょうか。

というわけで、冒頭、「放浪者の書」と名づけられたその書物の成立過程が述べられているあたりなどは、まったく一方的に上からの視点でのみ書かれていて、その放浪者そのものについて知りたい私などが読んでいると非常に退屈、かつ、不公平な気分になりました。

そりゃあ、秩序を保とうとする側からすれば、あっちこっちうろうろして税金は払わず、嘘をついて物乞いをしたり、詐欺を働いたりする連中は迷惑そのものだったでしょうが、そんな人びとがたくさん生まれてしまった背景には、中世の社会構造の破綻のために地道に働いても暮らしてゆけないという現実があったわけで、つまり、誰も好きこのんで放浪者になったりはしていないんですから、犯罪を取り締まるのは仕方ないけどこれ以上増やさない努力を怠っているのに、神経質なまでに忌み嫌い排除しようとする意識を庶民にまで植えつけるのはどうかと思うのですよ。

というわけで、同情しつつそのあとの本文を読んだわけですが、うーむ。こんなことをされたらやはりずいぶんと不愉快ではあるよなと感じてしまう私(苦笑。

それにしても中世の終わりってものすごい政情不安状態だったんだなー。
これって日本なら戦国時代みたいな物だろうか。
税が払いきれなくなって物乞いしつつ放浪するって、頑健な体がないとつづけられない生活だから、弱いひとはどんどん死んでいってしまったんだろうな。
私にはとうてい生きのびることのできない時代だと感じます。

抑圧されてまだ放浪するほどではないけれども日々生きのびるだけで精一杯、という状態の庶民は、放浪者を嫌悪しながらもかれらの自由にロマンを感じていたらしいです。

そういう時代のヒーロー(?)が、ティル・オイレンシュピーゲルだったのですね。
なるほど。

というわけで、目次。


ヨハンスマイアー(Rolf Johannsmeier)
貧者への恐れ 上ラインの貧者の群れ

ベーンケ(Heiner Boehncke)
流浪者追放 『放浪者の書』の歴史
放浪者の書 乞食の群れ
類似の本
 夢幻境からの出船
 ティル・オイレンシュピーゲル(ペテン師)
 アスファルヒェのグスマン、またの名を悪漢(ピカロ)

ユッテ(Robert Jütte)
放浪者の典型 シュトラースブルクのハンス
「拷問で吊されて……」香具師の自白

ユッテ(Robert Jütte)
隠語 乞食と山師の言葉

訳者あとがき

文献
挿図出典



目的とはちがっていたけど、中世と近世の狭間のことなんて何も知らなかったので大変お勉強になりました。

放浪者が嫌われたのは第一に税金を払わなかったからだったんですねえ←何か違う?

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