『中東・北アフリカの音を聴く 民族音楽学者のフィールドノート』

中東・北アフリカの音を聴く (地球音楽出会い旅)
水野 信男
4903238199


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読了。

民俗音楽学者である著者が、中東・北アフリカの音楽の歴史と現状を自身のフィールドワークの体験とともに記す。エッセイ付の入門解説書みたいな本。

すごく興味深い本でした。
歴史的に西洋音楽と密接に接触しながらも独自の音楽文化を築いてきた、中東・北アフリカの伝統に、なるほどーと思いました。

以前、音楽民族叢書というシリーズを読みましたが、あれよりもずっと一般向けでわかりやすく、しかも俯瞰した視点を持つ記述だったのがよかったです。

音楽を専門にしている方らしく、音に関する描写には感心させられる部分が多々ありました。そのかわりときどき顔を覗かせる専門用語にとまどいました。旋法とか微分音とかいわれても? なんですよ私には(汗。

読んでいるうちにこのあたりの音階は一オクターブ七音ではなくて二十四音くらいある、ということが判明して、ああなるほど1/4音とか3/4音とかあるから微分音なのねと理解できましたが。だから弦楽器はともかく、ピアノでは弾けないのだそうな。

時代による変遷も地域ごとの記述に述べられていて、歴史的な背景とつながって変化していった過程がよくわかり、ここでもなるほどーでした。

民族楽器の写真もふんだんに載っていて、たいそう親切な本でした。

参考に目次を載せておきます。


第1章 沙漠の音風景――エジプト

 1サーキアを追って
   ナイル川グリーンベルト サーキア サーキアその後
 2自然の音、都市の音
   水の音 都市の喧噪
 3シナイ半島を歩く
   沙漠と海のあいだに 風の音、動物の声 歌と器楽 自作の楽器で得意曲をうたう ダッヒーヤ

第2章 アザーンとコーラン朗唱――エジプト、モロッコほか

 1アザーン
   ムアッジン アザーン アザーン定句 多様な旋律 ウマイア・モスクのアザーン
 2コーラン朗唱
   イスラームの根本聖典 声にだしてとなえる 開扉の章 どこでもつねにアラビア語で コーラン聴体験

第3章 神秘主義教団の歌舞――チュニジア、トルコ

 1イスラームと音楽
   音楽論争 スーフィー
 2ジクル
   ジクルとは? シャージリー教団のジクル
 3スーフィーの歌舞
   メヴレヴィー教団の旋舞 「踊るデルヴィーシュ」 ネイ
 4タンヌーラ
   宗教儀礼から民族舞踊へ

第4章 東方教会の聖歌――エジプトほか

 1東方の諸教会
   「東方教会」の概念 東地中海地域の東方教会
 2南シナイの聖カトリーナ修道院
   要塞型修道院 クリスマス・ミサ
 3コブト教会
   コブト聖歌との出会い エジプトのキリスト教徒 コブト音楽の形態と性格 コブト学院とモフタハ師 コブト語 ナークース

第5章 ユダヤ音楽――イスラエルほか

 1カンティレーション(旧約朗唱)
   創世記冒頭 ジェルバ島のユダヤ教会
 2シナゴーグ聖歌
   ピユート シェマ コル・ニドレイ
 3ハシディーム(敬虔派)の音楽
   ユダヤ讃歌 ニグン
 4カイロ・ゲニザ
   カイロ・ゲニザ
 5ディアスポラと音楽
   ディアスポラの歴史 イエメンのユダヤ人 現代イスラエル
 6エルサレムの音風景
   鐘とアザーンと祈りの声と
 7中東・北アフリカ音楽とユダヤ人
   越境するユダヤ人音楽家

第6章 民衆がはぐくみ、つむぎだす響き――エジプト、イラク、モロッコほか

 1フォークロア
   ジャマー・エルフナー広場
 2カシーダ
   「詩の民」
 3民衆の歌
   ムハンマダーウィーとアブーディーヤ
 4吟遊詩人
   アブーザイディヤー スース地方のラーイス
 5ペンタトニック圏
   中東・北アフリカ各地にあるペンタトニック圏
 6民族舞踊
   ダブカ ベルベル人の踊
 7民族楽器
   弦鳴楽器 気鳴楽器 膜鳴楽器と体鳴楽器 楽器名称の混乱 ブリコラージュ
 8アラビア半島の音楽
   湾岸諸国 真珠採り作業歌 サウジアラビアとイエメン
 9モロッコとセネガル
   グナーワ グリオとコラ

第7章 アラブの古典音楽――イラク、エジプト

 1アラビアンナイト
   物語のアラベスク アラビアンナイトの音楽
 2バグダードの宮廷音楽
   ギリシャ古典注釈派の活躍 イラキ・マカーム
 3アラブの古典音楽
   古典音楽の成立 古典音楽の楽器 楽器の製作 古代エジプトの楽器 マカーマート イーカーアート タクシーム

第8章 アンダルス音楽――スペイン、マグリブ

 1アンダルス音楽の系譜
   ジルヤーブ 中世スペイン マグリブへ
 2アンダルス音楽巡礼
   チュニジア訪問 アルジェリアからモロッコへ
 3アンダルス音楽のかたち
   ヌーバの伝承 ヌーバの楽器 ヌーバのかたち 音楽のアラベスク 演奏される機会・場

第9章 近代音楽への道のり――エジプト、レバノン

 1カイロ会議一九三二
   カイロ会議のあらまし カイロ会議の成果と課題
 2西洋音楽の導入
   カイロ・オペラ座 音楽院の現状
 3アラブ近代歌謡の誕生
   カイロの実験 ウンム・クルスームとムハンマド・アブド・アルワッハーブ サバーフ・ファフリー
 4アラブ・ポップ
   ベイルート ファイルーズとラハバーニ兄弟
 5西洋音楽にみるオリエンタリズム
   音楽のオリエンタリズム アジアをとりこんだ洋楽作品

第10章 地中海の島々の音楽――マルタほか

 1シチリア
   パレルモ散策 ジューズハープ マリオネット シチリアーナ オペラ
 2サルデーニャ
   ラウネッダス 民俗楽団「アトビオス」
 3マルタ
   ヴァレッタのカーニヴァル 楽器製作家訪問 ナフラ民俗合奏団

あとがき




書いていて気づいたんですが、イスラーム圏の歴史についての事前知識があるとないとでは内容の理解に差が出てくるかもしれません。
けっこう親切に解説してあるけれど、テーマが音楽なのでやはり限界というものが。

それから、導入部を除いた著者の個人的な体験談はなくてもよかったような。

あとはやっぱり、音楽は聴いてみないと本当のところはわからないってことにつきますね。
コブト教会の音楽だけは聴いたことがあるのですが、あとは全然想像がつきません。

この本をみつけたのはアマゾンだったんだけど(何故か推薦された)、その関連でこのようなCDもお薦めされました。

これ聴いてみたいです。

マグレブ音楽紀行 第1集~アラブ・アンダルース音楽歴史物語 (2CD)
オムニバス
B0013HDHTA


それから中で触れられていたウンム・クルスームとかアラブ・ポップのファイルーズとかも聴いてみたいなー。

iTunesStoreにないかしら。

アラブ歌謡の貴婦人
ウム・クルスーム
B0016P8SOI


エルサレム・イン・マイ・ハート
ファイルーズ
B000R9TMNK


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