『トレマリスの歌術師 3 第十の力』

トレマリスの歌術師〈3〉第十の力
Kate Constable 小竹 由加里
4591107590


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読了。

歌による魔法が広く行われていたがいまは滅び去ろうとしている異世界を舞台にした、本格ファンタジー三部作の完結編。

 不毛の大地を癒そうととてつもない術を施そうとした結果、身もこころもボロボロとなってしまった主人公カルウィン。
 恋人のダロウを遠ざけて、友人のミカ、トラウトとともにアンタリスに戻ったカルウィンは、氷壁に守られていたはずの故郷がすでに安息の場ではないことを知らされる。



歌による魔法「歌術」という設定がユニークな異世界ファンタジーも、これが完結編。

いきいきとした幻想描写と堅実感とともにスピード感のあるストーリー展開で、一気に読まされてしまう一冊でした。

完結編にふさわしい大きな広がりのあるお話でしたが、あくまでも個人的な事情からのやりとりで話が進んでいくところが好ましかったです。

それとサミスの妹キーラ姫が再登場。話が素直に進まない面白さを加えてくれました。

でもとくに印象的だったのはカルウィンと最大の敵サミスの道行き。敵なのに共感できるというなんともいえない雰囲気でスリリングでした。

それとくらべるとダロウはすこし印象が薄かったかも。考えてみるとかれは非常に損な役回りだったなー。

悲劇や惨劇とともに新しい出会いがあり、クライマックスへと向かうにつれてトレマリスという世界の成り立ちが次第に判明していくあたりは、定番の方法ですがやはり興奮します。

この設定はたしかにオーストラリアの作家が書いたお話だなーと感じさせてくれる物でした。ちょっとスケールが大きくなってるけど、根本はオーストラリアの歴史みたいなところがあるよね。

カルウィンの父親が判明するところはとても感動的でした。このことについてはいろいろと書きたいことがあるのだけど、これ以上書くとネタバレになるので止めます。くすん。

トレマリスの荒廃を回復させる方法も、今日的な視点から発想されたとわかるうえに古代的にも納得できる方法で、深い感慨を抱かされました。

ひとりの人物の犠牲に依らない解決、という点でも興味深かったです。
キリスト教的でないというか。

浅羽莢子さんの遺訳作(?)として読み始めた作品ですが、ファンタジーとしてとてもレベルの高い三部作だったと思います。

読んでてとっても楽しかったです。

訳者あとがきによると本国ではこのトレマリスの三部作には続編が出ている模様です。
二十年後が舞台になっていて、主要キャラクターのひとりが登場しているらしい。
誰だろう……トラウトかな?


トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手
Kate Constable 浅羽 莢子 小竹 由加里
4591103439


トレマリスの歌術師〈2〉水のない海
Kate Constable 小竹 由加里
4591104958


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