『あたしと魔女の扉』

あたしと魔女の扉 (ハヤカワ文庫 FT ラ 3-1) (ハヤカワ文庫FT)
ジャスティーン・ラーバレスティア 大谷 真弓
4150204799



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読了。


オーストラリア作家による現代ファンタジー、三部作の開幕編。


 十五歳の少女リーズンは、生まれた時から母サラフィナとともにオーストラリアの僻地を転々としてきた。理由はサラフィナの母つまりリーズンにとって祖母であるエズメラルダから逃げるためだ。サラフィナはリーズンに、魔法など存在しないのにエズメラルダは悪い魔女を自称している邪悪な人物だと教えており、その魔の手から逃れるための対抗手段として数学をもちいることを仕込んだ。リーズンはサラフィナとの放浪人生を楽しんでいた。ある日サラフィナが自分を見失い精神病院に収容されるまでは。それまで逃げてきた祖母の保護下にはいることになってしまったリーズンは、シドニーのエズメラルダの家から逃げ出そうとして、偶然ひとつの扉をあけてしまう。その扉の向こうには、なにもかも真夏のシドニーとは違う世界がひろがっていた。




はー、面白かった。

オーストラリアの自然あふれる環境と、突然開ける大都会の光景と、
あくまでも理性に従えと数学を教え込まれた少女と、魔法の力を信じるひとびとと、
他人から搾取しようとするものと、与えようとするものと、

対照的な価値観のぶつかり合う、精神的にすこしばかり緊張する場面の多いお話でした。

とくにヒロインであるリーズンの心中が過激です。
母親に植えつけられたフィルターを通して見ているのだから仕方がないのですが、とにかく自分の祖母を敵視しつづけてそれを態度に表しつづける姿が痛かった。
おばあちゃんは一生懸命に友好関係を築こうとしているのに、その態度はなんだとイライラしてしまいます。特殊な育ちだからと言い聞かせても、どうしてもおばあちゃんに感情移入してしまうのは、私の歳のせいでしょうか(苦笑。

しかも、平静を取り戻すための呪文がフィボナッチ数列ときた。
なんですか、フィボナッチ数列って?
ちょっと調べてみましたが何が何やらまったく理解不能でした。(参考「フィボナッチ数-Wikipedia」)
そんな数学的に普通でない才能を持っている少女に感情移入するのは、私にとってはなんだか難しいような気がするものでした。

それでも、リーズン=理性という名がダテではないあかしに、物事を観察する視線はけっこう公平なのが救いです。

母親のいったことと違う、ということをきちんと認める彼女だから、そのあとの事態にもわりと速く対応できたんだろうなと、思う。

物語はリーズンが巻き込まれるトラブルによって母親によって隠されてきた真実があきらかになっていく、というあたりが、この巻の読みどころか。

書けば書いただけネタバレになるという状況で、ほんのすこしだけ書いてみますが、この話に出てくる魔法の設定はかなりシビアーなもののようです。
魔法に対する態度によって、みずからの立つ位置、ひいては人生そのものが定まってしまうような、深刻さを感じました。

原書タイトルを見たときには「うわお!」と思いましたですよ(苦笑。

かわいげのなかったリーズンも、二人の友人のおかげでとっつきやすくなってきたし、この先の展開がとってもたのしみです。

三部作の残りはこちら。

あたしをとらえた光 (ハヤカワ文庫 FT ラ 3-2) (ハヤカワ文庫FT)
ジャスティーン・ラーバレスティア 結布 大谷 真弓
4150204837


あたしのなかの魔法 (ハヤカワ文庫FT)
Justine Larbalestier 大谷 真弓
4150204888


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