『鳥は星形の庭におりる』

鳥は星形の庭におりる (講談社X文庫―ホワイトハート)
西東 行 睦月 ムンク
4062865874



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読了。

神秘の塔の迷宮を巡る陰謀と子供時代に別れを告げる少女の成長を描いた、異世界ファンタジー。

うさぎ屋さんの記事で興味を持ち、読んでみました。

素敵なファンタジーでした。面白かったー。

理屈っぽく可愛げがないと家族から疎まれて、祖母とのみ親密にしていたオパルス伯爵令嬢、十三歳のプルーデンス。
その祖母を亡くしたプルーデンスは家族と共に旅立とうとしていた。商業の要衝として栄えるアラビニカ島の大公を兄に持つ祖母エヴィケムの遺品を、故国に収める儀式のためだ。オパルス伯爵一家は、嵐のために港で足止めされていた。手配した吟遊詩人も到着が遅れている。いよいよ出港という間際に、蒼い衣の吟遊詩人を名乗る男が伯爵の依頼状を手に現れ、一行の一員となった。
鳥と吟遊詩人の集う島アラビニカでは、祖母の兄である現アラビニカ大公が伯爵一家を歓待してくれた。しかし、その裏では風の霊鳥ナサイアの訪れるという鳥の塔をめぐり、国際的な陰謀が動きだしていた。



背景のきちんと設定された物語世界で描かれる、人間の醜い争いとそれとは無関係に流れていく神々の神秘の時間。
ふたつの流れを同時に感じさせて、なおかつ流れが分離せずに綺麗に収束していく様が見事でした。

一冊の分量で必要十分で大変に満足な物語をつむぎだす手際に感心。

なんといっても詩人さんが素晴らしい!
かれの存在がこの話のファンタジー的な魅力そのものだなーと思います。

名前を持たず、ゆえにどこにも属さず、何からも自由な風のような存在。
世界の始めから世界に存在しているのに、その世界にも属していない。

詩人の存在が魅惑的なのは、それが物語の中で唯一、物語を外から語ることの出来る存在であるからなのではないか、と私は考えているのですが、この作品に出てくる詩人さんはそのことに非常に自覚的で、まさに吟遊詩人の元祖、という感じ。

さらにどこにも属さない、流浪の身であるという状況が、いかほどに孤独で無防備なものであるかをシビアに描いているくだりには唸りました。

でも、どんな暴力にも詩人は屈しない。
かれは歌ですべてに対抗するのです。

これってペンは武器よりも強し、ってのと同じことかしら。

ヒロインのプルーデンスは非常に理知的な現実感覚もある、けれど自分の理想を曲げられるのに怒りを渦巻かせている、その点ではまだ子供です。十三歳だしねえ。

詩人と出会ったことで彼女は世界の広さを認識し、人の温かさを知らされます。
彼女がまだ子供であることが確認されるいくつかのシーンが、とても印象に残りました。

あとがきによると作者さんはパズル好きなのだそうで、確かに緻密に組まれた物語はたいそう理知的に展開してゆきます。

私の好みとしてはもうすこし曖昧にして雰囲気的に描いてもいいんじゃないかなーというところも、クリアに文章にされていましたが、パズルがキーポイントとなるお話だし、ヒロインも賢いし、これはこれで美しいと思いました。

プルーデンスなんて、英米の家庭小説の登場人物みたいな名前だなーなんて思ったことは、もう忘れましたv

新人の第一作だとは信じられないほどに完成度の高い、読み応えのあるファンタジーでした。
次作も期待しています。

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