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『異形の王権』

異形の王権 (イメージ・リーディング叢書)
網野 善彦
458228454X



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読了。

日本中世史専攻の著者が、古代から中世、近世にかけて非人や異形と呼ばれるひとびとが社会からどのように認識されてきたのかを、歴史絵や古文書から、民俗学の成果を取り入れて考察する。

この本、すごーく面白かったです。
以前借りて読んだ阿部謹也氏の著作に触れられていたので読んでみたのですが、なるほど、ヨーロッパ中世史と比べても重なる部分がかなり多いなーという印象です。人間って、やっぱり根っこは一つなんだなあと思いました。


第一部 異形の風景
 摺衣と婆娑羅――『標注 洛中洛外屏風 上杉本』によせて
 童形・鹿杖・門前――再刊『絵引』によせて
 扇の骨の間から見る

第二部 異形の力
 蓑笠と柿帷――一揆の衣装
 飛礫覚書
 中世の飛礫について

第三部 異形の王権――後醍醐・文観・兼光

あとがき
所蔵一覧
初出一覧



なるほどと思ったことをいくつか。

ヨーロッパでもそうですが、古代において聖性を象徴していた存在が、あらたな権威とシステムの導入によって貶められて卑賤視されていく、というところ。

新たな権威にとってはかつての権威が幅をきかせていると困ったことになるので、上からの圧力という面もあるのだろうけれども、そういう意識が速度はどうあれ社会に行き渡ってしまうの庶民の処世術ということなのでしょうか。

異形・非人とされるものの条件、というのも面白かった。
神々によって保証されていた権威の持ち主、というのは予想の範囲内でしたが、成人前の子供は人ではない、というのが目から鱗。
だからあやかしの名前はなんとか丸のように幼名みたいなのが多いのかと。というか、だから幼名を名乗るのか。

そういう権力から見放されたものたちが、みずから異形としての存在を主張して婆娑羅者として世の中を歩きまわっていた、というのが、南北朝から始まる動乱の時代なんですねえ。

それってまさしく『犬夜叉』の時代なんじゃ?

あと蓑笠と柿色の衣のこと。
以前の『封殺鬼』シリーズの重要な部分がようやくここで腑に落ちました。
そうか、そうなんだー。
こんなに時間が経った後、こんなところで理解するなんて、自分の無知がちと哀しいですが、理解できたのだからよしとする。

飛礫のこと。
飛礫を投げつけるのは一揆の時や抗議行動やらだけじゃなく、最高にハレな時にも投げるんですね。
でもって、一種の神意のあらわれなんだ。

ここを読んでいて思いついたのは、不甲斐ないひいきチームに向かって投げつけるメガホンやペットボトルももしや神意の表れなのか、ということだったりした(苦笑。
優勝した時に投げいれる紙テープもその一種なのかも。

それから最後の後醍醐天皇の政治について。
後醍醐天皇は古代の天皇制を復活させた上で中央集権を実現しようとした、みたいなんですけど、これって織田信長の先取りっぽいですよね。
それでもって後醍醐には天皇というアドバンテージがあったので一度は成立したんだけれど、無理が過ぎて政権は崩壊し、天皇の権威までも粉砕してしまったと。

そこで日本にはキリスト教みたいなべつの権威がやってきてあらたな意識や秩序を構築したりせず、混沌としたまま現代に至る、ということらしい。

だから精神的に宙ぶらりんなのかなー、日本人って。
個が確立してなくて、なんにでも日和る。

ヨーロッパではキリスト教と貨幣経済が同時に発展していったけれども、日本では精神的な権威のないままで貨幣経済が発展したので、拝金主義がはびこるようになってしまったのかも。

しかしいまの世の中、何を持って社会的精神の支柱とするか、と問われても難しいよなー。
他人からの押しつけではいけないと考えると、みずから見いだしていかなければならないわけだ。

そうすると全員一致で同じ方向を向いて進めるはずがない。

あんまり考えると暗くなってくるのでこのへんで。

ところで、内容は大変に面白かったですが、やっぱり古文書からの引用文は難しかった。
かなりとばして読んだことをここに告白しておきます。

それから私が読んだのはソフトカバー単行本でしたが、今は平凡社ライブラリー版のほうが手に入りやすいと思われます。というか、たぶんそっちしかないです。
内容がそのままかどうかは知りませんが(汗。

異形の王権 (平凡社ライブラリー)
網野 善彦
4582760104





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