『スプライトシュピーゲル II Seven Angels Coming』

スプライトシュピーゲル II Seven Angels Coming (2) (富士見ファンタジア文庫 136-9)
冲方 丁 はいむら きよたか
4829119497



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借りて読了。

近未来のウィーン。それぞれに暗い過去を背負った三人の少女達が、戦闘サイボーグとして敵と戦う、近未来SFサスペンスアクション。シリーズの二作目。

一巻は短編集で鳳(アゲハ)、乙(ツバメ)、雛(ヒビナ)、三人の少女達の紹介編でした。
第二巻はそれを踏まえて、彼女たちの戦いを一つの大きな事件を通して描いていくものになりました。

発端は人工衛星の墜落。
そこから展開されるのは、敵味方入り乱れてのスケールの大きな総力戦です。
味方同士の足の引っ張り合いあり、国際謀略あり、暗号解読あり、先端技術を駆使した兵器の活躍あり、身を犠牲にしたテロルあり、誘拐事件あり、裏切りあり、フェイクあり、何でもあり!

まだ、始まったばかりなのに、すごいハイテンション、すごいスピード感、それこそ疾走する速度で駆けぬけていくストーリーでした。

読んでる時はページを繰るのがもどかしいくらいでしたが、内容をすべて消化しきったかどうかはちと疑問な気がする(汗。

一巻でとまどった文体にはかなり順応できていて、主語=述語は、「主語は述語する」と素早く変換できるようになりました。するとどんどんイメージが具体的に脳裏に浮かんでくるようになりまして、スピード感を殺さない読み方が出来るようになりました。よかったー。

豪華絢爛てんこもりな仕掛けを施しつつも、中心である三人の少女達と彼女たちと立場を同じくする陣営の結束は固く、プロフェッショナルな動きがぐんぐん面白さを増していきます。これがチーム戦の面白さ、なのかしら。

彼女たちが敵対する組織は冒頭ではまだ正体不明ですが、次第に姿が明らかになるにつれ、これらの背景によってこの話の物語世界の状況も明らかになっていくのですが、これがまた驚天動地なんです。けれど実にリアリティーを感じる。とくに一巻で国が無くなったとされた日本の事情なんて、「あー、なんてバカなんだ。でもそうなってもおかしくないよな」と思えるのが哀しいです。

あくまでフィクションなんですが、今現在の世界状況を踏まえての近未来である、というところが作者さんお勉強しているなーと感心しました。

とくに「ロケットと弾道ミサイルの技術は同じものである」という件には、しみじみと感じ入りましたことです。

登場人物も格段に多くなって、立場もいろいろで性格もいろいろで、そのあたりもいろいろと面白く読みました。

ヘルガさんが暗号解読のための助力を請うエピソードは、『羊たちの沈黙』みたいだなーと思ったし。

突如現れる合気道達人の老人モリサンのフルネームには、吹いた(苦笑。
かれと乙(ツバメ)の交流は、この殺伐とした事件の中の数少ない人情エピソードだったなあと思います。

それからこの事件は姉妹編?である『オイレンシュピーゲル』でも視点を変えて展開されている模様です。

古い人間である私は「ダーティ・ペア」と「クラッシャー・ジョウ」の試みを思い出しました。
あんまり本を読み返さない私が、あの二冊は何度も読み返したんですよね。それくらい好きだった。
同じ事件を同じ時空間で、視点を変えて、それぞれに別の話として成立させるのって、読み手はいろいろと楽しめるけど書く方はすごく大変だろうなー。

読んでみたいなーと思いましたが、他人頼みで入手しているシリーズなので多くは望みますまい。

『スプライトシュピーゲル』のつづきはこちら。

スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)
冲方 丁 はいむら きよたか
482911973X


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