『彩雲国物語 黄梁の夢』

彩雲国物語 黄粱の夢 (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣
4044499187



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読了。

中華風異世界官僚ファンタジー(?)、シリーズ十八冊目は番外中編集。

元気で前向きな女の子が理想の官僚を目指して奮闘するファンタジーの最新刊。
今回は番外編で、なんと、秀麗ちゃんの出番がほとんどありません。

でも面白かったー。
楽しいのとは違う面白さですが、でもすごく面白かった。
本シリーズよりもかなり凄惨な物語がほとんどですが、彩雲国の実態と秀麗ちゃんがどれだけ大切に育てられてきたかにしみじみとしてしまうお話ばかりでした。

収録作品は以下の通り。


鈴蘭の咲く頃に
空の青、風の呼ぶ声
千一夜

あとがき

千一夜のそのあとに



「鈴蘭……」は静蘭こと清苑公子、十三歳のみぎりのお話。
第二公子として生まれた清苑の、それはそれは殺伐とした子供時代がせつなく語られます。
母親の実家の後ろ盾がきちんとある生まれなのに、なぜにここまで孤立無援かと哀しくなってしまう展開ですが、そのぶん末の弟・劉輝(三歳)との出会いと交流がこころ温まるシーンとなって心に残ります。

この話で初めて出てきた先王・戩華さまは懐は深いんだろうけど、じつに子供に対して中途半端な御方。きっちり子どもたちに責任持って教育を施せよ、補佐もつけろよ、ご学友もなしかよ、と言いたくなりましたが、後宮のあるシステムでは王様の権限外のことなのかもなー。

「空の青……」は、やはり十三歳の燕青の話。
燕青の過去は以前の話で明かされてましたが、なにぶん、この作者さんは出来事の輪郭をくっきりと書かれない方なので、曖昧模糊としたまま漠然と「燕青にも暗い過去があったのねえ」くらいにしか感じておりませんでしたが、実態はこんな残酷な話だったのですねえ。はあ。

とても辛い話ですが、読んで燕青がいかに強くて明るく優しいかについて再認識いたしました。
燕青と出会った人は多かれ少なかれ救われるようです。かれと出会えたおかげで清苑公子も人間界に戻ってきましたしね。秀麗ちゃんは燕青の存在を大切にしないとダメだよ、と言いたくなりました。言われなくても彼女ならきちんとわかってると思いますが。

やっぱり燕青はイイオトコだ!

燕青のお師匠様・南老師の破天荒なお茶目ぶりも楽しかったです。後の借金地獄の発端が笑えた。
銀色狼はただひたすらにかっこよく、愛おしいです。しかし何故にネーミングが銀次郎……。

「千一夜」は秀麗ちゃんの両親のお話。
紅家のぼんくらな長男を演じつつ、影では兇手・黒狼だった邵可が、最後のターゲットとして臨んだ薔薇姫との恋が描かれてます。

薔薇姫=紅仙の図式は過去に何度もほのめかされてきましたが、きちんと明かされるのは多分これが初めてではないでしょうか。

さきのふたりに負けずおとらずの凄惨な人生を送ってきた邵可が、ひととしてのしあわせを勝ち取るお話として、この話だけはせつなさだけではないあたたかさの感じられる結末で、ああ良かったなーと思える本となりました。

あとがきの後に載ってるおまけ短編は、さらにほのぼの感たっぷりでした。
紅家のおじさま達と秀麗ちゃんの関係は、こんなふうに始まったのですねv

秀麗ちゃんを中心とした本編では描かれなかった、彩雲国の現実という感じの一冊でしたが、これだけの犠牲を払ってきた上で秀麗ちゃんが平和に育つ土壌が生まれたのだと思うと感慨深いです。

そして、守られてきたことを理解した秀麗ちゃんが向かいあうことになった現実のシビアさがどれほどのものか、ということがこれで読み手にもようやく伝わった、気がします。

本編だと、ほのぼのおバカなだったテイストがいきなり変化したような気持ちがしたのですが、これでようやく世界が見渡せたという気分になりました。

購入する時に本の分厚さに怯みましたが、いままでで一番充実度の高い巻だったと、私は思います。

本編のつづきが楽しみです。

前巻はこちら。
彩雲国物語 黒蝶は檻にとらわれる (角川ビーンズ文庫)
雪乃 紗衣
4044499179


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