『ラギッド・ガール 廃園の天使II』

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
飛 浩隆
4152087676



[Amazon]


読了。

仮想のリゾート空間〈数値海岸〉に生きるAIたちの運命と、〈数値海岸〉を開発した人びとの歪みを描く、近未来SF中編集。『グラン・ヴァカンス 廃園の天使1』の続編。

『グラン・ヴァカンス』では〈数値海岸〉の内部、つまり仮想空間のみで話が展開されましたが、今回は現実で〈数値海岸〉にかかわった人間とその周辺にもスポットがあてられ、〈数値海岸〉開発秘話や〈大途絶〉の原因などがあきらかになります。

『グラン・ヴァカンス』だけを読むと異世界ファンタジーもかくやという雰囲気なのですが、仮想リゾートのテクノロジー的な裏付けが現実側から書かれると、これはやはりSFだなあと感じざるを得ません。

物語世界の設定が相当緻密でハードなのがよくわかる。そのうえに硬質で透明で曖昧さの少ない、まるで透明硝子の上にとろりとした液体(凍る寸前の水に多少の粘度あり?)がつたわるような文章がものすごく五感に訴えてくるのに圧倒されます。

しかも、たいそう精神的に痛い。

『グラン・ヴァカンス』も相当痛かったけど、現実を舞台にしている分、痛さが心に食い込んできて身体に刻みつけられるような気がしました。

収録作品は以下の通り。


夏の硝視体(グラス・アイ) Air des Bijoux

ラギッド・ガール Unweaving the Humanbeing
クローゼット Close it.
魔述師 Laterma Magika

蜘蛛(ちちゅう)の王 Lord of Spinners

ノート




表題作の「ラギッド・ガール」の痛さは半端じゃないです。
突出したものを作り出す人間って、なにかしら欠落しているような気がしますが、この話のヒロインは生まれたときから背負っている痛みを黒い感情でもって作品に昇華していたんですね。

美しいとすら思わせる明晰な文章で描かれる世界は歪みと痛みが満載。
正直、つらくてときどき放り出したくなりましたが、それでも惹きつけて最後まで読ませる力は尋常じゃないと思います。

〈大途絶〉の前後を描く、「蜘蛛の王」も凄かった。

この作家さんは寡作でもってしられてますが、こんな話を量産する人がいたらちょっと危険なのではと感じました。

面白かったです。
けどハードです。
精神的なゆとりのある時に読むことをお薦めします。

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
飛 浩隆
4150308616


Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)