『薬王樹の書 暁と黄昏の狭間II』

暁と黄昏の狭間〈2〉薬王樹の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198507791



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読了。

各国の思惑の中で翻弄されながらも懸命に生きていく少女の運命と、神々の絶えようとしている世界を描く、異世界ファンタジー。シリーズ二冊目。

この世界では、人がそれぞれ七つのワンと呼ばれる気のようなものをもち、強力なそれを駆使して生命魔術を使うものを魔術師(ジーヴァ)と呼びます。

主人公の少女セフルはもともと鍛冶師の村の出身でしたが、とある事情により強いワンを持つことになり、今回は大国オラにある魔術師の学校(?だったっけ)で大魔術師サイヤーレの研究対象になってます。

前巻でもかなり孤独な状況にあったセフルですが、知人は増えてもそれがほとんど敵ばかりというのが哀れを誘います。

こんなに哀しい状況なのにセフルはいじけることなく耐えつづけ、おなじ苦境に陥っている唯一の友人といってもおっさんなんですがのエイメの心配もしていたりします。

彼女が心の支えとしているのは故国ドムオイの若き近衛騎士隊長ギルダン・レイ。
かれの誇り高く不屈な精神に憧れているセフルは、おそらく恋をしているのだと思います。

しかしレイ卿はオラの影響力に屈しつつある国王家からうとまれて、左遷され、さらに苦境へと追いやられていたのでした。

この巻では、オラの信仰対象である薬王樹とそれを護りつづけてきたオラの最高位貴族サンダーキニ皇爵をめぐる出来事が描かれてます。

生命魔術の祖と言われるサンダーキニ家と薬王樹の秘密が、魔術師の欲望の対象となり、黒い陰謀が展開されるのです。

相変わらず、ハードな話です。

ファンタジーには美しさを武器としてつねに空を飛ぶように幻想を描くものがありますが、それとは別に地を這うように人間のリアルさを追求していったさきに飛び立ちひらけた光景の美しさとして幻想を描くものがあると私は感じています。

そういう観点から見れば、この話はあきらかに後者。

地味で苛酷でときに不潔ですらある現実と真正面から向かいあう、生真面目な描写に共感しながら読みました。

うん、いいですこの雰囲気。

華麗で舞うような文章も好きだけれど、こういう地に足のついた土臭い話も大好き。

この巻では白トカゲという雪泥の土地を行くための騎乗獣が出てくるんだけど、この白トカゲと人の関わりの部分だけでもいいなあと思います。

私には、違う土地で生きている人たちの生活を見たい、という願望がいつまでもあるようで、こういうディテールにすぐに惚れてしまうんですよね。

つぎはどこに行くんだろうかと、すでに頭は三巻へと飛んでいます。

いや、サンダーキニ皇爵のツンデレっぷりは楽しかったですよ。
かれはかれなりに愛すべき人物であったと思います。

暁と黄昏の狭間〈3〉角獣の書 (トクマ・ノベルズEdge)
西魚 リツコ
4198507848


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