『旅芸人のいた風景 遍歴・流浪・渡世』

旅芸人のいた風景―遍歴・流浪・渡世 (文春新書)
沖浦 和光
4166605879



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読了。
日本の中世から存在した「旅芸人」の変遷と実態をエッセイ風に描く本。

旅芸人というタイトルに惹かれて読みました。

旅芸人が出てくる小説はたくさんあるんですけど、旅芸人そのものについて書かれた本って意外に少ないんです。

流浪する被差別民のことについてはもともと資料が少なく、それも体制側からの物が大半であるという理由は、考えてみればすぐにわかることですが。以前に探したジプシーもそんな感じだったし。

というわけで若干期待しながら読んだんですが、なんとなく著者の体験談がベースでそれから先は推測という雰囲気。

元々資料が少ないから推測するしかないんだろうけど、その推測が自信たっぷりに書かれているのを見るとちと疑念を抱いてしまうのは何故でしょう。

話が回想風であちこちに飛ぶので、そのときは「ふーんそうなんだ」と思っても次の瞬間には忘れてしまったり。

なんだか読むのにつかれる本でした。

いっそのこと、最初からエッセイとして読めば良かったのかも知れません。
旅芸人と実際に出会った体験は、第二次大戦後から下の世代にはないもので、それは貴重なものですし。
それがこんなに細部まで豊かにつづられているだけでもこの本は価値があると思うので。

読んでいて、私の母の思い出話の意味がわかったりして、それなりに楽しみましたし。
(母は九州出身なんですが、ドサ回りの人形浄瑠璃一座を見たことがあるらしいんです、それも戦後のことらしいです)。

以下、目次を記しておきます。


はじめに――近世文化の残影を求めて

第一章 街道に生きる遊芸民
 一 遊行する渡世人
 二 乞食巡礼と御詠歌
 三 「辻芸能」としての大道芸

第二章 「物乞い、旅芸人、村に入るべからず」
 一 川端康成の『伊豆の踊子』
 二 宝塚歌劇、温泉、箕面の滝
 三 修験道の行場と西国三十三所巡礼

第三章 ドサ回りの一座と役者村
 一 芝居小屋と活動写真館
 二 最後の役者村・播州高室
 三 村に旅の一座がやってきた

第四章 香具師は縁日の花形だった
 一 一晩で出現する祝祭空間
 二 舌先三寸の啖呵売
 三 大道芸の王者「ガマの膏売り」
 四 ひとり旅の「フーテンの寅さん」

第五章 医薬行と呪術の世界
 一 香具師の本義は愛嬌芸術
 二 市川団十郎のお家芸「外郎売り」
 三 大江戸の辻芸――非人・乞胸・願人坊主・香具師

第六章 遊芸民を抑圧した明治新政府
 一 近背の身分制と芸人
 二 香具師からテキヤへの「渡世替え」
 三 ヤブ医者・渡医師・辻医師

まとめ 旅芸人の生きてきた世界

おわりに――「道々の者」への挽歌





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