『世界画廊の住人』

世界画廊の住人 (幻狼ファンタジアノベルス)
栗原 ちひろ
4344816323



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読了。

「オペラ」シリーズの作者さんの、絵に魔力の宿る中世ヨーロッパ風の都市を舞台にした異世界ファンタジー。


 セツリ・ヨクレンは孤児で錬金術師見習いの青年。提出した論文が協会に認められれば、晴れて一人前の錬金術師となる晩に、死体と絵に遭遇してしまう。この世界で絵は描かれるものではなくどこかから掘り出されてくる宝物であり、つよい魔力の宿るものだ。驚いているとその絵は自分のものだと主張するよれよれの男があらわれ、自分は画家だと名乗る。セツリは本気にしなかったが、今にものたれ死にしそうな自称画家に一晩の宿を与えた。翌日、セツリの下宿の天井には『汝、セツリを世界画廊の管理人に任ずる』と絵の具で書かれた文字があった。それからセツリは画家と共にテロ組織『深淵派』に狙われることになる。




設定に凝った物語世界を美しい言葉で美麗に描く作家さん、というイメージの強い栗原ちひろさんの作品。

今回は普段よりもターゲット年齢の高いレーベルということで、そうか、これが作者さんの描きたい世界なのかと納得の出来るお話でした。

以前からキャラクター重視ではないのだろうなと推測していたけど、やはりこの方はまず世界を、それからそこに生きる人びとを描きたいのだなと思いました。
この話はとても入り組んだ仕組みがあって、その特異な仕組みの上にのみなりたつ物語が展開されてます。

この物語では世界の仕組みを明らかにすることが主人公の使命。
よって、ヒーローであるセツリ君は真理を追究し思索する錬金術師であり、かれに敵対する『深淵派』とその幹部でありかつての兄弟子だったカルヴァスは、世界の真理を認めずに抵抗する者たちなのです。

これは情動よりも知的な興奮を味わうお話。

文章もオペラシリーズのこれでもか、という美麗文ではなく、硬いイメージはそのままですがより堅実に足が地に着いているという印象が強かったです。

物語世界の存在が際だっているため、キャラクターはすこし薄めですが、それでもちょっとしたことにお遊びめいた仕掛けがあってくすりと笑えるシーンもあり、楽しく読めました。

長大なシリーズも好きですが、一冊完結のすっきりとした作品の美しさはやはりよいものですね。

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