『精神科医がものを書くとき』

精神科医がものを書くとき (ちくま学芸文庫)
中井 久夫
4480092048



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読了。

精神医学者でギリシャ詩の翻訳者でもある著者の、比較的短い文章をまとめたエッセイ集。

私がその平熱で穏やかかつ明晰な文章に魅せられている著者の、初文庫本です。
目次は以下の通り。



精神科医がものを書くとき
わが精神医学読書事始め
宗教と精神医学
私に影響を与えた人たちのことなど
近代精神医療のなりたち
知られざるサリヴァン

II
統合失調症問答
統合失調症についての自問自答
公的病院における精神科医療のあり方
精神保健の将来について

III
微視的群れ論
危機と事故の管理
エピソード記憶といわゆるボケ老人
「いいところを探そう」という問題
家族の方々にお伝えしたいこと
ストレスをこなすこと
成長と危機の境界――相互作用とカタストロフィーの力学

あとがき
解説 「システム」に拮抗する「箴言知」 斎藤環




エッセイとしては、最初のほうはかなり精神医学に専門的でとっつきにくいですが読みでがあり、だんだん短くなって対象が一般向けになってわかりやすいけれどもどこかパンフレットに掲載された一文みたいな印象のものになっていきます。

それでも、まだまだ社会的に認知されているとはいいがたい精神病についての知識を深めるには役に立つ文章だとおもいます。

そして最後の方になると今度はテーマが精神医学には留まらず、現代社会に対する考察めいたところまでひろがります。

実際、最後に掲載された「成長と危機の境界」は今現在の世界状況について言及しているように思われ、ひゃーと思いながら読んでいたのですが、1989年のインタビューをまとめたものだと知って二度びっくりでした。

エッセイ集としてはちょっと物足りないかなあという感じでしたが、中身はとても充実していると思う。

けど千二百円は高いよなー、文庫本として。
著者の他のエッセイがハードカバーで軒並み三千円台なのを考えれば、入門編としては最適なのかなとも思いますが……。

私としては、岩波書店のPR誌で連載されていたエッセイが早く本になってくれないかなと期待するところです。

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