『風の王国 星の宿る湖』

風の王国―星の宿る湖 (コバルト文庫)
毛利 志生子
4086012154



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読了。

政略として吐蕃王に嫁いだ唐の公主・李翠蘭の波瀾万丈の生を描く、歴史小説。シリーズ十六冊目。

前巻で大きな節目を乗り越えた翠蘭の新たな旅立ち、といった趣の一冊でした。
夫の残した息子を王位に就けるための、心苦しく切ないけれど政治的には必要な決断。
それがゆえにソンツェン・ガムポの駒として利用されることになり、さらなる困難と立ち向かうことになった翠蘭の、けして折れない迷わない、不屈の闘志がまぶしいです。

翠蘭はいってみればなんでも出来るスーパーウーマン。
心は普通にゆれ動くけれど軸がぶれず、どこまでも理性的な判断を冷静に下しつづける冷静さと、果敢さと度胸も持ちあわせ、周囲にも気配りのできる稀な資質の持ち主です。しかも武術もできる。

こんなヒロインが自然に活躍できて、感情移入もできるというのは、やはり歴史ものだからだろうなーと思います。

このシリーズは、はじまりこそ少女小説でしたがいまでは若い女性がヒロインをつとめる普通に上質な歴史小説だと思います。

今回の目玉は新たな舞台シャンシュン。
吐蕃王が攻略を目論むシャンシュンで、翠蘭はふたたび異文化との遭遇を体験します。
初めと違うのは、今回の翠蘭はいればいいという存在ではなく、一行の統率者であり外交の責任者でもある重たい立場で、得体の知れない相手と向かいあわなければならないというところでしょう。

いつもかたわらにいた頼もしい存在はなく、これからの翠蘭はひとりで困難に対処しなければならないのだということがひしひしと感じられて、なんだかつらいなあと読みながら思ってしまいました。

それから、王族の育児だからしようがないんだけれど、娘のイェルカとの距離の遠さが哀しかったです。

ほんとなら育児の一番大変だけれど一番楽しい時期なのにイェルカの世話はみんな乳母がしていてそれでなくても遠いのに、長期にわたる海外出張のあいだにイェルカはお母さんを忘れてしまうんだろうなと、いやいまでも認識してないみたいだから、まったく認識せずに育つのかなと、考えてしまって心が痛みました。

そんなこんなで、翠蘭の周囲は為政者の孤独だけではないいろんなしがらみによる不安に満ちていて、これから先も困難ばかりなんだろうなー。

考えると憂鬱になりますが、シャンシュンの内情をとても知りたいのでまたつづきも借りることにします。

ようするに面白いんです!
よけいなことを書きすぎか……(汗。

表紙と内容には大きなずれがあるので、あまあまは敬遠しがちなハード好きにもお薦めです。
シリーズの冒頭の少女向け展開を乗り越えたら、歴史好きにも読めるのではないかと思うのですが。
いかがなものでしょうか。

風の王国―黄金の檻 (コバルト文庫)
毛利 志生子
4086012340

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