『雷の季節の終わりに』

雷の季節の終わりに
恒川 光太郎
4048737414



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読了。

民俗学的要素を濃厚に持つ現代ファンタジーホラー。

『夜市』で第十二回日本ホラー小説大賞を受賞しデビューした作家の、受賞後第一長編。


社会とは隔絶した場所、穏。
冬と春の間の長い雷の季節にたったひとりの姉を失った少年は、ひとりの少女との出会いをきっかけに孤独から遠離る。
ただ、人ならぬ存在“風わいわい”に憑かれているという事実は秘めたままだった――。



『夜市』がたいそう面白かったので借りてみました。
テイストは素朴なのに謎めいているという不思議な感じ。
日本だろうと思えるのだけどどこかが違っている、穏という場所を舞台に、古い言い伝えや素朴な信仰やら自然現象や超自然現象とともに生きている人びとの生活の中で、肉親のいない孤独な少年の生い立ちが日常的に描かれていきます。

物の怪や何やらがでてくる漫画作品などが思い浮かぶ風景ですが、この作家の明らかにことなるところは、人間の悪意がかなり露骨に描かれるところかな。
むしろ物の怪のほうにどこか愛嬌があって、ネーミングもかわいい。

前二作とおなじような、もしかしたらおんなじかもしれない(というのは私が忘れてるからですスミマセン)異界を舞台にして、その異界をたんなる憧憬の場所としては描いていないあたりが、この作者に新鮮な印象を受ける理由かとも思います。

でも、異界というものはそもそもそういうところだったのではないか。

異界を描いてそこに憧れをもつとファンタジー。
畏れと恐怖をもつとホラー。
になるのかなあ、と感じました。

にしてもこの恐怖の正体がじつは……というところが一番怖いんですけどね。

今回も意外な展開がひきつづき面白く読めましたが、ところどころアレ? と感じるような部分がありました。

この作家さん、長編よりも短編のほうが向いているのではないでしょうか。

おんなじような性格のおんなじような役割の人物が二人、もともとはひとりにするつもりが展開のせいで分裂したような印象で出てきたりしてちょっと興が削がれました。
構成的にもちょっと残念なところがありました。

でもその辺は今後に期待ということにして、他の作品も読んでみたいと思います。

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