『はじまりのうたをさがす旅 赤い風のソングライン』

はじまりのうたをさがす旅 赤い風のソングライン
川端 裕人
4163226206



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読了。

現代日本からオーストラリアへ。行方不明だった曾祖父の軌跡を辿った先に見えてきたものは。アボリジニの歴史や現実と世界情勢を絡めた社会派冒険小説。

主人公は社会に出たばかりの青年、隼人。ミュージシャンを志しているけれどまだ芽は出ず、社会の経験を持ったほうがいいかとサラリーマン勤めをしているが、このまま音楽が趣味で終わるのかと焦りを感じているところ。
そんなかれの元に曾祖父の遺言を伝える使者がオーストラリアからやってきた。
戦前、出稼ぎにオーストラリアへ渡ったまま戻ってこなかった曾祖父ワジマ・ヨウ。
かれは遺産をとあるゲームの勝者に残したという。隼人にはそのゲームに参加する資格があるというのだ。
使者はリサという名の若い女性。なんと、国際的にも名が売れ出したアボリジニの血の混じったシンガーで、やはりワジマ・ヨウの曾孫だという。乱暴だが流暢な日本語を操る彼女の存在と、父親の言葉をうけて、隼人はオーストラリアへ旅立つ決意をする。



アボリジニのソングラインについての本を読みたいと思っていたところで、ふと思い出したので借りてみた。なんで小説なのかというと、そのとき借りられるのがこれしかなかったからです……。さまざまな資料を基にして書かれているらしいので、それほど間違ってはいなかろうと踏みまして。

けっこう面白かったです。

すごくと言い切れないのは、私の好みとはちとずれていたからですが、前半の主人公たちがチームを組んで曾祖父の足跡を辿っていく旅のところはファンタジーにもなりそうな題材で、あともうすこし突きぬけてくれればとじれながらもかなり楽しみました。

後半はミステリ仕立てのサスペンスになって、私にとってはなんだか別の作品のようでした。
いや、ストーリー的には一貫しているんですけどねー。個人的な興味だったものがいきなり社会的視点に立たされたもので、とまどってしまったのかも。

いずれにしろ、これはアボリジニーの過去と現在の話であり、そこに日本がどう関わってきたかの話でもあるのだなーと思います。
その象徴が主人公の曾祖父なんですね。

全体的にいろんなものが詰め込まれていて、ちょっと話が窮屈な感じだったのと、文章が絵画的かつ説明的なのが印象に残りました。

私の感じたもどかしさは、音楽を題材にしているにもかかわらず、視覚的に入ってきてしまう情報にあるような気がします。音楽用語などふんだんに使われているのですが専門的な言葉は私にはわからないし、文章から音を体感するより解説されていると感じる部分が多くて、あ、だからファンタジーになりきれないと思ったのかもしれないですね。というか、この話はファンタジーじゃないから。そういう事を求める話じゃないから。なんにでもファンタジーを求めてしまう自分がアホなのですよ。おバカだ。

というわけで、それなりに楽しんで、あらたなお勉強をしたなあという気持ちになれた本でした。

これはもう、この本の種本ともなっているブルース・チャトウィンの『ソングライン』を読まねばなりますまい。

それから、この本はじきに文庫版が出る模様です。文庫ではタイトルがすこし変わってます。「うた」が「歌」になってる。

はじまりの歌をさがす旅
川端 裕人
4043748035


余談。

この作者さんの小説を読むのは初めてなんですが、文章はほぼ毎日拝見しています。
じつはブログ読者なのです。某スポーツ雑誌のエッセイがきっかけです。私個人としてはエッセイのほうが好みかも。Macユーザーなのもポイントです。超個人的な親近感(笑。

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