『影の皇子 タザリア王国物語』

影の皇子 (電撃文庫―タザリア王国物語 (1287))
スズキ ヒサシ
4840234868



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読了。

中世~近世ヨーロッパ風異世界を舞台に、孤児の少年がとあるきっかけにより王家の中に連れ込まれ、さまざまな苦労を味わいつつも成長していく姿を描く、異世界陰謀ロマン。シリーズ開幕編。

ネットで見かけて気になっていたシリーズ、ようやく借りてみました。
冒頭、すこし入り込みにくいなあと感じましたが、厚みある世界描写、複雑な人間関係、身分差による屈辱感とそれをこえて培われる情の通い合い。さらに陰謀の顛末まで、ラノベレーベルにはめずらしい細部まで書き込まれた文章で描かれる、少年ジグリットのシリアスハードな運命にどんどんひきこまれていきました。

ストーリーはそんなに込み入っていないのですが、書き込みによる臨場感がすばらしくて先読みを許さない。

王宮においてほぼ孤立無援のジグリットが、自分の力で前進してゆく過程、それにより味方を得、あるいは敵を作っていく顛末。すべてにおいて緊張感が途切れません。

キャラクターノベルとは言いがたいですが、登場人物はそれぞれの持ち場でそれぞれの役割を十二分に果たしている印象。

とくにジグリットをつねに虐待する皇女リネアだけは別格でキャラ立ちしています。
こういうのって、ヤンデレというらしいですね。私にはヤンツンとしか読めませんでしたが(苦笑。

残念なのは、文章がときどきひどく読みにくいこと。冒頭の入りにくさはすでに書きましたが、あとは常套句や慣用句にあれ? と思うような勘違いが散見されます。全体的に重々しい雰囲気のなかでこうした間違いがあるとよけいにがっくりしてしまいます。
格調高くいこうとするあまり、無理をしているのでしょうか。

ラノベを読んでいるとこういう「がっかり」がけっこうあるのですが、そういえば最近はふつーの文芸書でもそういうのが見つかったりするので、油断できません。

言葉を扱うひとには言葉そのものの持つ意味に敏感になってほしいなあと、自戒を込めて思うのでありました。

しかしお話そのものはたいそう面白かったのでつづきも読みたいと思います。

黒狼の騎士―タザリア王国物語〈2〉 (電撃文庫)
スズキ ヒサシ
4840236070

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