『蜘蛛の巣 上』

蜘蛛の巣 上 (創元推理文庫)
ピーター・トレメイン 甲斐 萬里江
4488218075



[Amazon]


読了。


アイルランド教会とローマ教会の勢力争いが佳境に入った七世紀のアイルランドを舞台に、裁判官・弁護士の資格を持つうら若き修道女フィデルマが事件の謎に挑む、時代ミステリ。シリーズ本邦初訳作品。シリーズとしては五作目だそうです。

七世紀のアイルランド!
すでにキリスト教化されているとはいえ、ケルトです、ケルトの氏族です、上王です!
舞台萌えも甚だしくとびついた時代ミステリです。

作家さんはピーター・トレメイン。学者で専門はアイルランド史。ホラー短編集『アイルランド幻想』の作者でもあります。
したがって時代考証には信頼が置けるはず。
期待に違わず、アイルランドの中世がことこまかに文章化されていて、それだけで私はうっ(感動)……となりました。

当時の社会的なあれこれ。風習や日常の生活つまり風俗。さらにアイルランド教会の元で整備されてきた法制度。アイルランド独自の社会観を浮かびあがらせるために比較対象として示される、サクソンやローマ教会の常識。
アイルランドの族長が住まう砦の模様も、絵画的なまでに緻密に書き込まれています。

いやー、これ一冊持ってればかなりディープにケルト気分にひたれますね。

もちろん、ミステリなので事件は起こります。
事件によってあぶり出されてくる人間の暗部の描き方にも手抜きはない模様。
ここではかなり物騒でもあったらしい当時の社会情勢なども描かれてゆきそうな気配です。

とても楽しめました。
ヒロイン以外は……(苦笑。

なんでも出来て美人で身分も自尊心も高く、身分序列をないがしろにされることに我慢ができない高飛車な王女様には、ちょっともうつきあいたくない気がするのですが、まだ下巻があるのですよねえ……。事件ももちろん、解決していないし。うーん……。

ツンツンの王女様が好みの方にはお薦めかも知れません。
もしかして、作者のトレメイン氏がそうなのか?(汗。

それと、訳文がものすごく古めかしいというか重くて、これは訳者さんの持ち味なんだろうけど、そこらへんもちょっと私の好みと合わなかったです。読みにくいほどではないのですが。

Comment

Comment Form

管理者にだけ表示を許可する

Trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)